長野市選出の県議会議員の皆さんと長野市との懇談会は、3年前
から定期的に開催している懇談会です。長野県と県都長野市は、基
本的には協力し合っていくことが大切ということで、村井県知事と
はいろいろと意見交換をしていますが、議員の皆さんにも市の意図
を理解していただくことが必要ということで、この懇談会を開催し
ています。
長野市選出の県議会議員さんは現在10人おられますので、県議
会内でも大きな勢力になっています。先日、本年度の懇談会を開催
したのですが、今回は、市選出の県議会議員の皆さん全員が出席し
てくださいました。議員の皆さんに恒例行事だとお考えいただける
ようになってきたのであれば、大変ありがたいことです。
昨年の懇談会で県議会議員さん側から提案していただいた「長野
県短期大学の四年制大学への移行」、また、市側から提案した「持
続可能な地域公共交通の再構築」などの案件は、それぞれ順調に前
進しています。懇談会冒頭のあいさつでは、私からまずそのことの
お礼を申し上げ、その後、今回の議題を説明させていただき、意見
交換を行いました。
議題の概要は、以下のとおりです。
議題1 福祉医療費の給付対象範囲の拡大について
現在対象とされていない小学校1~3年生の通院について、所
得制限を設けずに県補助金を交付していただくよう要望しました。
議題2 妊婦健康診査の財源措置について
妊婦健康診査の公費負担拡充に対する国の財源措置は平成22
年度までとされています。平成23年度以降も事業を継続するた
めに、補助率を増やした上で財源措置を継続するよう、県から国
へ要望してほしいとお願いしました。
議題3 企業誘致における長野県の支援について
県議会議員の皆さんや県が行う企業誘致活動において、市が用
意している用地や制度などについて、PR、あっせんなどをして
いただくよう、協力をお願いしました。
議題4 長野地域職業訓練センターの今後の運営について
雇用・能力開発機構が運営する「長野地域職業訓練センター」
について、国では、平成22年度末に廃止し、建物を希望自治体
へ譲渡するとの決定がされています。その施設を県が引き継ぐよ
う要望するとともに、同機構が運営する「ポリテクセンター長野」
をはじめ、市内に点在する訓練施設などの整理・統合を含めて、
公共職業訓練の効率的かつ効果的な運営の在り方を検討していた
だくようお願いしました。
議題5 「上水内北部地区広域営農団地農道 豊野幹線」の建設促
進について
県営事業により平成28年度の全線供用開始を目指しているこ
の道路について、国の支援を継続してもらうため、県として対策
を講じていただくよう要望しました。
議題6 中山間地域における国道・県道の整備促進について
市町村合併による市域の一体化や中山間地域の活性化、災害防
止のためには、道路整備は不可欠です。しかし、中山間地域の道
路整備率は低く、整備が進んでいないことから、一層の取り組み
を要望しました。
また、中山間地域以外の平坦部でも、歩道整備、渋滞解消など
大事なことはたくさんあります。これらの改良工事の推進も併せ
てお願いしたほか、五輪大橋で社会実験として通行料を無料にし
ている時間帯をもう少し延長してほしい、ということもお伝えし
ました。
議題7 白馬長野有料道路の日高トンネル無料化について
有料の日高トンネルを迂回(うかい)するために、多くの車両
が七二会、中条地区の集落内を通過しています。これらの地区の
生活環境保全、安全確保のために、日高トンネルの通行料を無料
にしていただくよう要望しました。
議題8 文化財の保護・保存に要する費用に対する支援の拡充につ
いて
多額な事業費を必要とする国および県指定の文化財の保護、整
備に取り組むためには、国・県からの事業費補助が不可欠です。
現在、縮小傾向にあったり、0%に凍結されていたりする県の財
政支援を拡充していただくよう要望しました。
議題9 県営水道の市・町への移管について
県企業局が、長野市と千曲市、上田市、坂城町への移管を検討
している県営水道について、市の現況を説明させていただきまし
た。
議題10 長野オリンピック記念基金終了後の冬季スポーツの振興
について
長野オリンピック記念基金の支援終了後、大規模な国際競技大
会などを誘致・開催する際には、基金創設前と同様に県でも応分
の財政支援をしていただけるよう要望しました。
県議会議員の皆さんには、詳しい資料もお渡しして説明させてい
ただきましたので、市の意図することは、おおむねご理解いただけ
たと考えています。長くなりますので、ここでは、各議題の理由説
明を簡略化させていただきました。お許しください。
そのほか、議題には含めませんでしたが、県議会議員の皆さんに
承知しておいていただきたいこととして、2点付け加えさせていた
だきました。
一つは、真島にあるアクアパル千曲(千曲川流域下水道上流処理
区終末処理場)の敷地内に社会体育館を建設することについてです。
もともとここには県立武道館を建設することで、地元合意ができて
いたという過去の経緯があることから、市としては、県に応分の費
用を負担していただきたいと考えていることをお伝えしました。
もう一つは、市内に私立小学校が開校しそうなことについてです。
私立小学校の設置認可は、もともと県の権限に属すことですが、市
に及ぼす影響がとても大きいと考えており、私の考え方もご承知い
ただきたいということで付け加えさせていただきました。
繰り返しになりますが、最後に私から、県と市はいろいろな場面
で協力し合うことが大切であること、県議会議員の皆さんにもご理
解いただき応援していただきたいことを強調して、会議を終了しま
した。
なお、県政に関係する案件としては、県営浅川ダムの問題もあり
ます。しかし、すでに着工へ向けて動いていることでもあり、今回
の懇談会で触れることはありませんでした。
2010年2月25日木曜日
長野市選出県議会議員の皆さんとの懇談
2010年2月18日木曜日
もう2月中旬です
早いもので、新年になったと思ったら、あっという間に時間が過
ぎてもう2月中旬。再来週は3月です。毎日、予定表に追われなが
ら、一生懸命に考え、走っています。今回は、1月末以降、私が参
加させていただいた主な行事などについて述べさせていただきます。
1月29日、安茂里地区の犀川沿いの築堤工事現場見学会が行わ
れました。安茂里地区の築堤は、20数年前、耕作者の皆さんのご
協力を頂いて堤防用地を確保していたのですが、長い間未完成のま
ま、途中で切れている状態が続いていました。
このため、犀川の水位が上がった時には危険なこともあり、土の
う積みなどの水防活動が行われたこともありました。住民懇談会な
どでは、地元の区長さん方から築堤の要望が出されており、そんな
声に押されて工事が実現したものです。
3月末までに2,200メートルの堤防が完成します。これで堤
防がつながることになりますので、皆さんようやくひと安心という
ところでしょうか。それに先立ち、工事を進めている国土交通省の
千曲川河川事務所の提案により、この日、地元の皆さんなどに参加
していただく見学会が開催されたものです。
堤防の上は、素晴らしい直線道路のようになっています。お聞き
すると、舗装する予定はないとのことでしたので、ここをチップ舗
装して、ランニングコースや散歩道にしたらどうでしょうかと所長
さんに提案しておきました。
2月4日、もんぜんぷら座の8階に第一地区から第五地区の住民
自治協議会の合同事務所を設置し、開所式を行いました。
市中心部の5地区には支所がありませんので、今まで住民自治協
議会の活動拠点となる事務所が確保できていませんでした。そこで、
5地区のほぼ中心にあり、交通の便も良いもんぜんぷら座を利用し
て合同事務所を整備することになり、昨年11月から進めていた工
事などが完成、この日のオープンとなったものです。
開所式の後には、地区主催の祝賀会に出席させていただきました。
会場で5地区の役員さん方とお話しする中で、今後、この事務所を
有効に活用して、住民自治協議会の活動を盛り上げていただけそう
だと感じることができました。
2月6日、7日、「長野オリンピックメモリアル東口フェスティ
バル」が開催されました。このイベントは、フェスティバル実行委
員会の主催で、長野オリンピック以来、毎年行われており、今回で
12回目です。オリンピックを契機に長野駅東口を長野の顔にした
いとの思いから、毎回、関係の皆さんが斬新なアイデアを取り入れ、
いろいろ工夫を凝らしていますので、年々盛り上がってきています。
私は6日の開会式に招待いただいたのですが、地元選出の市議会
議員、長野商工会議所、長野商店会連合会、そして地元の放送局と
いうことで長野朝日放送の皆さんなども参加され、開会式終了後、
みんなで「お宝まき」をさせていただきました。大変なにぎわいで
したが、ひどい雪降りで、県警音楽隊の参加がかなわなかったこと
が残念でした。
同日、長野灯明まつりのオープニングセレモニーが行われました。
日本を代表する「冬まつり」を目指して始まったこのイベントも、
今年で7回目を迎えました。以前の長野のまちの傾向として、春夏
秋には全国から多くのお客さまに来ていただけるのですが、冬はま
さに“冬枯れ”状況だったのです。
そこで、オリンピックを契機に、冬にも長野市に多くの皆さんに
来ていただきたい、ということで、長野オリンピックの開会式が行
われた日を中心に、このお祭りを開催しています。多くの市民ボラ
ンティア、商店街の皆さん、そして特に長野びんずると同様ですが、
長野青年会議所の皆さんが頑張ってくれています。
日本を代表する照明デザイナーの石井幹子さんの企画により、善
光寺を中心にライトアップするイベントも、もうすっかりおなじみ
になりました。ありがたいことです。
2月8日、こども広場「じゃん・けん・ぽん」の入館者が40万
人に達したことを記念するセレモニーを開催しました。ささやかで
はありますが、40万人目の方には私から記念品をプレゼントさせ
ていただきました。
平成15年6月にオープンした「じゃん・けん・ぽん」は、長野
市の子育ち・子育て支援施策を進める上で、重要な位置を占める施
設の一つです。運営は、NPO法人「ながのこどもの城いきいきプ
ロジェクト」にお願いしていますが、大変評判が良く、連日大にぎ
わいです。4月からは、篠ノ井のこども広場「このゆびとまれ」も
指定管理者による運営に移行することにしています。こちらも素晴
らしい運営をしていただけるものと期待しています。
同じ2月8日、村井県知事立ち会いの下、株式会社八十二銀行と
長野市の間で「森林(もり)の里親契約」の調印式が行われました。
八十二銀行さんは、長野県のトップ企業として環境保全活動に積極
的に取り組む姿勢を表すということで、今回は長野市だけでなく、
上田市や飯田市とも契約を締結されました。
この契約に基づくご支援により、飯綱高原大座法師池周辺の市有
林で、間伐などの森林整備を進めていただく予定です。この森は、
市民や観光客の皆さんが森林浴やキャンプに訪れる場所であり、さ
らに親しみやすい森になっていくことを期待しています。
2月9日、塩崎ドリームファイターズの皆さんが、「第3回春季
全日本小学生女子ソフトボール大会」に出場されることになり、市
長室にあいさつに来てくださいました。
このチームは、昨年10月、東御市で開催された長野県ソフトボ
ール協会主催の長野県予選大会に初出場、初優勝の快挙を成し遂げ、
全国大会への切符を手にされたものです。全国大会は、熊本県菊池
市で開催されるとのこと。遠い場所で、行くだけでも大変ですが、
大いに頑張って良い成績を挙げていただくよう激励しました。
2月13日、長野市消防出初式を開催しました。今年は、信州新
町と中条村との合併がありましたのでこの日の開催となりましたが、
例年は1月早々に開催している行事です。
市中行進後に長野市民会館で開催した式典には、北沢防衛大臣、
村井県知事をはじめ多くのご来賓、関係団体の皆さん、そして信州
新町・中条分団を加えた大勢の消防団員の皆さんにご参加いただき
ました。博愛保育園幼年消防クラブの園児からは「火遊びをしない
誓い」、市民代表の方からは「火災追放の誓い」、また、参加者全
員で「火の用心三唱」を行い、火災など災害のない防災都市づくり
の推進を誓い合いました。
2月13日には、このほかにも行事がありました。
国際アイスホッケー大会長野カップ2010が11日からビッグ
ハットで開催されていたのですが、13日はその最終日でした。
今回は、日本のほか、デンマーク、カザフスタン、スロベニアが
参加。この日、短時間でしたが、カザフスタンとスロベニアとの試
合を観戦することができました。すごい迫力で、さすが氷上の格闘
技といわれるだけあります。優勝はカザフスタン。一時は日本優勝
の可能性もあったようですが、結局4位に終わってしまいました。
この大会は、長野オリンピック記念基金を活用した大会の一つで、
(財)日本アイスホッケー連盟を中心に実行委員会を組織して開催
してきました。先日のメルマガでご報告したように、基金の助成が
終わる来年度からどうするか、今後、詰めなければなりません。
みどりの移動市長室として、「おはなしポケット」の皆さんと懇
談させていただいたのもこの日です。昨年から市では、赤ちゃんに
1冊ずつ絵本を贈る長野市版ブックスタート「おひざで絵本」事業
を始めました。市内で読み聞かせ活動をされている「おはなしポケ
ット」の皆さんには、保健センターなどでこの事業にご協力いただ
いています。
懇談では、読み聞かせが赤ちゃんや幼児、小学生だけでなく、中
学生やお年寄りにも喜ばれていることをお聴きし、少々驚きました。
読み聞かせの大切さをあらためて感じたところです。私からは、グ
ループのメンバーをどんどん増やしていただくようお願いさせてい
ただきました。
夕方には、「長野市民平和の日のつどい」をトイーゴ広場で開催
しました。この「つどい」は、市が平和都市宣言を行ったことを契
機に、世界平和を願い、その輪を広げていこうと始めたものです。
23回目となる今回は、長野オリンピックなどで日本代表選手と
して活躍されたスピードスケートの野明三枝さん(旧姓上原)、シ
ョートトラックの北村千景さん(旧姓田中)にお越しいただき、ス
ポーツと平和をテーマにお話しいただいたほか、ピースフルコンサ
ート、ビデオ上映、平和PRポスター展なども行い、長野から平和
をアピールしました。
また、この「つどい」に合わせ、市内の小学生に平和を願うメッ
セージ付きの折り鶴を募集したところ、約4,000羽もお寄せい
ただきました。2月26日まで市役所玄関棟に展示していますので、
ご覧ください。
このほか、詳しくはご紹介できませんでしたが、1月23日には、
身近な風景を描いた絵画を募集・展示した「長野市風景画展」の表
彰式、1月31日には長野県書道界をリードする市内在住の川村龍
洲さん、笠原聖雲さん、一色白泉さんの作品展「新春書道三人展」、
2月10日には、俳優の菅原文太さんを講師にお招きした「長野市
農村いきいきフォーラム」などにも出席させていただいています。
以上、最近の主な出来事を報告させていただきました。
2010年2月11日木曜日
中山間地域市民会議
3期目の市政をお預かりするに当たり、私がお示ししたマニフェ
ストの最重要課題の一つに「中山間地域の活性化」を掲げているこ
とは、これまでも申し上げてきたとおりです。
催しました。この市民会議は、中山間地域を活性化することを目的
に、市の支援施策や地域での取り組みなどを題材にして、住民の皆
さんと市が直接話し合うために開催している会議です。
8回目となる今回は、信州新町地区と中条地区から参加いただい
た皆さんも含め、100人を超える方々にご参集いただき、とても
にぎやかな会議になりました。
この会議を始めたころに比べ、長野市の中山間地域は大きく広が
りました。平成17年の合併に加え、今年1月の信州新町、中条村
との合併により、市内の中山間地域は市域の約4分の3、実に74
.3%を占めるまでになっているのです。
本市の一番の魅力は、この中山間地域と都市部とが共存した姿に
あると思っています。しかし、中山間地域では、平坦部に比べて人
口の流出や高齢化の進行が著しく、社会的な共同生活の維持が難し
くなってきている、という状況も生じてきているわけです。
中山間地域で暮らす皆さんの生活を守るため、さらには、本市の
「アイデンティティ」とも言うべき、都市と自然が調和した姿を次
世代に受け継いでいくためにも、中山間地域の活性化は何としても
必要です。地域に愛着を持って暮らしている皆さんや、この地域を
何とか元気にしようと農業や特産品の生産などで地域おこしに取り
組んでいる皆さんと力を合わせ、全力でこの課題に取り組んでいく
必要があると考えています。
まずは、お互いがパートナーとして活発な議論を交わし、地域内
で収入が得られる仕組みや、地域内で長く暮らしていける環境づく
りを構築し、新たな「長野モデル」を発信していきたいと思ってい
ます。この会議は、そのきっかけづくりの場、という意味合いもあ
ると考えています。
今回の会議では、長野市農業公社の“ながのいのち”推進事業の
報告、地域活性化アドバイザーの活動報告のほか、本年度、長野市
観光集中キャンペーン「おでやれ鬼無里」の開催に取り組んでいる
鬼無里地区の事例を発表していただきました。
鬼無里地区は、奥裾花渓谷や奥裾花自然園、ブナの原生林など、
豊かな自然の魅力があふれる地区です。その一方で、この35年間
で人口は53%も減少し、現在の地区内人口は1,870人。その
うち905人が65歳以上、高齢化率は48.4%に達しています。
このような背景もありますが、とても心強い取り組みをお聴きす
ることができました。
(1)エゴマを活用した地域おこしの取り組みについて
エゴマは、血液の流れを良くするアルファリノレン酸を多く含ん
でおり、生活習慣病の予防やアレルギー症状の改善などに効果があ
ると言われています。また、特有のにおいがあり、有害鳥獣による
被害の心配がなく、栽培の手間も掛からないとのことです。
鬼無里地区では、平成8年ころからエゴマを活用した特産品開発
に着手。新しい使い方を研究する中で「えごまクッキー」を商品化
しました。今では、鬼無里を代表する人気商品の一つになっていま
す。
このクッキーは、以下のような評価も受けています。
・平成8年 第6回信州の味コンクール商品加工の部 最優秀賞
・平成17年 長野推奨土産品選定事業 最優秀グランプリ
第46回全国推奨観光土産品審査会 全国推奨観光
土産品認定
現在のところ、鬼無里地区でのエゴマの生産は、出荷農家が約6
0人、栽培規模は一戸当たり約3~8アール(1アールは100平
方メートル)、出荷量は平成21年度で約700キログラム。「え
ごまクッキー」が人気商品となっていることもあり、これでは収量
が足りないそうで、「鬼無里えごまの会」を結成して生産拡大に取
り組んでいます。
会では、地域の皆さんと事業者との協働体制を進め、エゴマのさ
らなる特産化を目指すとともに、「えごま油」やエゴマの葉の活用
など、新たな挑戦もしていくそうです。
(2)エゴマと「みそ」を活用した「ながのいのち」新商品の開発
について
平成16年に地元産の大豆や米を使って自家製の「みそ」を作ろ
うと「鬼無里手づくりみその会」を結成。平成17年に自家用とし
て550キログラムを仕込み、これを手始めに昨年は、自家用、販
売用を含めて4,000キログラムを仕込むまでになったそうです。
原料は、大豆と米がすべて地元産、麹(こうじ)も自家製、海水
から作った沖縄産の塩を使用するなど、なかなかこだわっています。
私も食べてみましたが、確かにおいしい「みそ」だと感じました。
そして、気になる売れ行きについてです。平成19年度に仕込ん
だ「みそ」までは順調に完売。ただ、販売用の仕込みを1,500
キログラムに増やした平成20年以降は、本当に完売できるのか心
配になり、新たな販売経路を模索していたのだそうです。
その中で、市農業公社の仲介により市内のパン屋さんと共同で新
商品の研究を開始。ケーキやパン、ピザなど、さまざまな試作を繰
り返す中で、昨年秋、ラスクと組み合わせた商品が出来上がりまし
た。
このラスクは、「鬼無里みそラスク」と「鬼無里えごまラスク」
として販売中です。どちらも大好評で、一気に人気商品になったと
言ってもいいでしょう。私は、甘い「えごまラスク」が好きですが、
「みそラスク」も酒の肴(さかな)には絶品です。
ただ、「鬼無里手づくりみその会」の会長さんの話によりますと、
最近ようやく人件費が出せるようになった程度で、これから導入し
たい機械のことを考えると残るお金はほとんどない、「みそ」はも
うからないと言うのです。
当日もコメントさせていただきましたが、これについて私は、会
の法人化が大事だと思っています。法人化する意義はいろいろある
と思いますが、組織の永続性の担保や責任・役割分担の明確化、社
会的な信頼の獲得、収支の明確化などができることでしょう。
本年度から市農業公社では、この会のような農産物加工グループ
など、農業グループが法人化する際に1件250万円を限度に出資
できるよう体制を整えました(出資額は、今後、増やす必要がある
かもしれません)。
中山間地域を活性化するためには、産業を興し、中山間地域の中
で暮らしていけるように所得を増やすことが第一だと私は考えてい
ます。この資本金を使って必要な機械をそろえ、ぜひ「鬼無里手づ
くりみその会」にもうけてもらいたいと思っています。
今回ご紹介したラスクや「みそ」は、一昨年から市農業公社で取
り組んでいる“ながのいのち”ブランド商品として、鬼無里地区に
ある鬼無里農林産物直売所“ちょっくら”や、昨年5月に中央通り
にオープンした「ながのいのち」アンテナショップ“ひっぱりだこ”
などで販売しています。皆さんもぜひ一度ご賞味ください。
そして、鬼無里地区だけでなく、ほかの地区でも価値ある製品を
特産ブランドとして売り出すことを考えましょう。たくさんあるは
ずです。売り出す際には、ぜひ“ひっぱりだこ”をご利用ください。
2月2日、東京都内で「ふるさとNAGANO応援団」意見交換
会を開催しました。この応援団は、“ふるさと長野市”を応援して
ほしいとの思いから、首都圏で活躍されている本市にご縁のある方
々にお願いして平成19年10月に結成したもので、皆さん既にご
存じのことと思います。
メンバーの方々については、以前のメルマガでもご紹介させてい
ただきました。その後、佐野幸男さん(株式会社協和エクシオ N
TT営業本部長)、幡野保裕さん(郵船クルーズ株式会社専務取締
役)、恩田乾次郎さん(株式会社ウイングメディカル代表取締役社
長)にも加わっていただき、現在は総勢30人です。
今回は、中山間地域の活性化をテーマに、まず私から本市の動向
を説明させていただき、ご出席いただいた13人の方々からご意見、
アドバイスを頂きました。
ご提案やご意見を頂くばかりではなく、こちらからもお願いをさ
せていただくなど、とてもありがたい意見交換会でしたが、ことに
中山間地域の活性化については、情報発信力不足というご指摘が多
かったと感じました。「長野市が頑張っていることは市長の説明を
聞いて理解できたが、東京にはぜんぜん聞こえてこない」と、手厳
しいご指摘も頂いてしまいました。
一方で、情報発信のお手伝いをしてくださるというメンバーの方
々もいらっしゃいましたから、うれしい限りです。いろいろな方の
声をお聴きすると、チャレンジしてみたいと思うことが増えていき
ます。中山間地域を活性化するために行政として取り組むべきこと
は、まだまだたくさんありそうです。
2010年2月4日木曜日
理念と具体論(対立と協調)
理念と具体論ということについては、昨年末のメルマガでも少し
触れさせていただきました。今回は、違った視点も含めて、もう少
し書かせていただくことにします。多少、重複する内容もあるとは
思いますがお許しください。
「どんな論理であれ、論理的に正しいからといってそれを徹底し
ていくと、人間社会はほぼ必然的に破綻(はたん)に至ります。言
うまでもなく、論理は重要です。しかし、論理だけではダメなので
す。どの論理が正しくて、どの論理が間違っているかということで
もありません。これは日常用いられるすべての論理に共通した性質
です。」(藤原正彦著『国家の品格』より抜粋 お茶の水女子大学
名誉教授)
以前からご紹介させていただいている例の一節です。最近、この
文章のすごさをますます実感させられています。
何を行うにも、理念は大切だと言われています。私も理屈っぽい
人間ですから、確かにそうだろうと感じています。
ただ、大多数の人にとって、いわゆる理念というものは、あらた
めて説明されるまでもなく、頭の中で納得してしまっていることが
多いのではないでしょうか。理念とは、誰も反対できないという要
素を持った言葉だと感じています。
年末にも例示させていただきましたが、政治スローガンのような
理念は、幾つでも思い浮かびますよね。
・美しい街にしましょう
・市民が主役
・すべての市民に幸せを
・自然を大切に
・安全安心のまちづくり
・失業は人間の尊厳を損なう。失業率回復の道が大切
・利他の精神
・ごみはなるべく少なく、再利用、リサイクルを
・コンクリートから人へ・・・民主党のキャッチフレーズ
・みんなの声が“ながの”をつくる・・・これ、私のキャッチフレ
ーズです
思い付くままに、さらに10ばかり書いてみました。もっと、と
言われれば、まだまだ書けるような気がします。ここに挙げた多く
は、誰も反対しない、反対できないと、ほとんどの人が感じる印象
が良い言葉だと私は思います(評論家的とも言えます)。
でも、それぞれを具体論に移すと、誰も反対しないというわけに
はいきません。総論賛成、各論反対ということでしょうか。具体論
になると、考えていること、感じていること、皆さんすべて違いま
すから、対する意見も千差万別だと思います。
具体論での対立はある意味で仕方ないことだと思いますが、実際
にはいつまでも対立しているわけにはいきません。知恵を働かせて
妥協を図るとか、相手を説得することによって解決の道を開くこと
になるはずです。
一方、理念の段階での対立となると、不幸なことが起こってしま
う可能性すらありますよね。資本主義と共産主義のような対立が代
表的なものでしょうか。行政がどこまでかかわればいいのかという、
いわゆる大きな政府と小さな政府のどちらが良いのかという考え方
の対立も、理念の対立ということになるのかもしれません。
理念と理念、つまり正論らしき論同士の対立なのですから、解決
するのは至難の業です。力でねじ伏せるわけにもいきません。やは
り説得と妥協以外に解決の道はないのでしょうし、解決できずにず
っとくすぶり続けてしまうのかもしれません(最後は戦争の危険す
らあるでしょう)。
地方自治体は、国という大きな枠組みの中で行政を行っているの
ですから、理念の対立という哲学的な話ではなく、一定の理念(憲
法や法律、上位団体の意思)の下で具体論を考えることが大切だと
思っています。また、それが限界だとも思えます。
民主主義の原点は、多数決だという方がいらっしゃいます。私も
そうだとは思います。でも、それだけで決めるのはポピュリズムで
あるとおっしゃる方もいます。政治経済の世界では、大局的見地に
立って導き出した結論が、多数決とは違う結果になることも起こり
得るでしょう。特に政治的なテーマになりますと、多数意見に沿わ
ないことでも実施せざるを得ない、ということも、少なからずあり
そうです。
実務的な段階になると、必ず具体的に説明しないと真意は理解さ
れないでしょう。しかし、誰も反対しないような理念に基づいてい
ても、具体的に説明したことで厳しい対立が生じる・・・常々経験
していることです。
「みんなの声が“ながの”をつくる」と言っても、この理念だけ
で、市政課題がすべて解決できるわけではありません。個々の課題
にはそれぞれ具体的施策を打ち出し、それを実行に移さなくては意
味がないのです。そのための「みんなの声」なのです。
少し話題を変えます。一般に労働組合は、賃上げの必要性につい
て、「給料が上がらなければ、結局需要が増えず、日本経済の景気
回復につながらない」と主張しています。これは多数意見だと私も
思います。しかし、賃上げすると、「企業の経営状態を悪化させか
ねないし、結果的に税収も減って日本社会全体が沈没しかねない。
ゆえに賃上げはできないのではないか」と心配されていることも事
実でしょう。
究極的に考えれば、「一物一価」ということになるのではないか
と私は思うことがあります。モノの価格だけでなく、人件費も同じ
・・・新興国の人件費ベースが上がって日本と同じになる、あるい
は日本の人件費が下がって同じレベルになる・・・長期的には、さ
らにグローバルスタンダード化が進み、人件費も「一物一価」にな
ってしまう・・・絵空事ではないようにも感じてしまうのです。
先週、(社)日本経済団体連合会(経団連)と日本労働組合総連
合会(連合)のトップ会談が行われたことで、事実上、今春闘の論
戦が始まりました。連合側は、「厳しい現状を認識し、ベースアッ
プの統一要求を見送り、定期昇給の死守」を主張しているのに対し、
経団連側は「賃金より雇用を重視し、定期昇給凍結・延期を含めた
総人件費抑制姿勢」を前面に打ち出しているとのことです。
どちらの要求も、現状を考えれば当然だとは思いますが、結局ど
こかで妥協することになるのでしょう・・・昔の交渉のように対決
姿勢をあらわにするのではなく、話し合いが基本になっていること
は大変いいことだと思いますが、解決には時間を要することになり
そうです。理念と理念がぶつかり合った時は、話し合いが大切です。
連合の主張、すなわち、経団連がリーマンショック以降の厳しい
状況から回復していないことを強調したことに対し、ベースアップ
を要求しないという選択をされたとのこと・・・現在の状況を考え
れば苦渋の選択だろうとは思いますが、日本経済にとっては良かっ
たなあと思います。
私が会社経営をしていたころは、原理主義というのでしょうか、
労働組合側は「労働者の生活を守ることがただ一つの目標だ」と主
張し、経営状態はそっちのけで「断固賃上げ」を要求、場合によっ
てはストライキ権を行使するなんて話があちこちにありました。一
方で、当時の経営側にも経営情報を公開するという発想が乏しく、
労使協調路線という考え方もなかったように思います。
でも最近は、経営側ももうければ良いということではなく、CS
R(企業の社会的責任)を大切にしており、労働者と一緒に会社を
維持していこうとする姿勢が生まれてきていることは事実でしょう。
昔の日本労働組合総評議会(総評)や全日本労働総同盟(同盟)
といった大労働組合組織が合併して「連合」という組織になり、労
使協調の話し合いが始まったのは、恐らく長野オリンピックの少し
前ぐらいだったでしょうか。対立ではなく協調に重きが置かれるよ
うになり、長野でも、経営者側の労働問題専管団体である(社)長
野県経営者協会と連合長野が定期的な話し合いを持つようになりま
した。
理念の対立では物事が解決しない、協調路線が大切だということ
です。社会は大きく変わったと思っています。