3期目の市政をお預かりするに当たり、私がお示ししたマニフェ
ストの最重要課題の一つに「中山間地域の活性化」を掲げているこ
とは、これまでも申し上げてきたとおりです。
催しました。この市民会議は、中山間地域を活性化することを目的
に、市の支援施策や地域での取り組みなどを題材にして、住民の皆
さんと市が直接話し合うために開催している会議です。
8回目となる今回は、信州新町地区と中条地区から参加いただい
た皆さんも含め、100人を超える方々にご参集いただき、とても
にぎやかな会議になりました。
この会議を始めたころに比べ、長野市の中山間地域は大きく広が
りました。平成17年の合併に加え、今年1月の信州新町、中条村
との合併により、市内の中山間地域は市域の約4分の3、実に74
.3%を占めるまでになっているのです。
本市の一番の魅力は、この中山間地域と都市部とが共存した姿に
あると思っています。しかし、中山間地域では、平坦部に比べて人
口の流出や高齢化の進行が著しく、社会的な共同生活の維持が難し
くなってきている、という状況も生じてきているわけです。
中山間地域で暮らす皆さんの生活を守るため、さらには、本市の
「アイデンティティ」とも言うべき、都市と自然が調和した姿を次
世代に受け継いでいくためにも、中山間地域の活性化は何としても
必要です。地域に愛着を持って暮らしている皆さんや、この地域を
何とか元気にしようと農業や特産品の生産などで地域おこしに取り
組んでいる皆さんと力を合わせ、全力でこの課題に取り組んでいく
必要があると考えています。
まずは、お互いがパートナーとして活発な議論を交わし、地域内
で収入が得られる仕組みや、地域内で長く暮らしていける環境づく
りを構築し、新たな「長野モデル」を発信していきたいと思ってい
ます。この会議は、そのきっかけづくりの場、という意味合いもあ
ると考えています。
今回の会議では、長野市農業公社の“ながのいのち”推進事業の
報告、地域活性化アドバイザーの活動報告のほか、本年度、長野市
観光集中キャンペーン「おでやれ鬼無里」の開催に取り組んでいる
鬼無里地区の事例を発表していただきました。
鬼無里地区は、奥裾花渓谷や奥裾花自然園、ブナの原生林など、
豊かな自然の魅力があふれる地区です。その一方で、この35年間
で人口は53%も減少し、現在の地区内人口は1,870人。その
うち905人が65歳以上、高齢化率は48.4%に達しています。
このような背景もありますが、とても心強い取り組みをお聴きす
ることができました。
(1)エゴマを活用した地域おこしの取り組みについて
エゴマは、血液の流れを良くするアルファリノレン酸を多く含ん
でおり、生活習慣病の予防やアレルギー症状の改善などに効果があ
ると言われています。また、特有のにおいがあり、有害鳥獣による
被害の心配がなく、栽培の手間も掛からないとのことです。
鬼無里地区では、平成8年ころからエゴマを活用した特産品開発
に着手。新しい使い方を研究する中で「えごまクッキー」を商品化
しました。今では、鬼無里を代表する人気商品の一つになっていま
す。
このクッキーは、以下のような評価も受けています。
・平成8年 第6回信州の味コンクール商品加工の部 最優秀賞
・平成17年 長野推奨土産品選定事業 最優秀グランプリ
第46回全国推奨観光土産品審査会 全国推奨観光
土産品認定
現在のところ、鬼無里地区でのエゴマの生産は、出荷農家が約6
0人、栽培規模は一戸当たり約3~8アール(1アールは100平
方メートル)、出荷量は平成21年度で約700キログラム。「え
ごまクッキー」が人気商品となっていることもあり、これでは収量
が足りないそうで、「鬼無里えごまの会」を結成して生産拡大に取
り組んでいます。
会では、地域の皆さんと事業者との協働体制を進め、エゴマのさ
らなる特産化を目指すとともに、「えごま油」やエゴマの葉の活用
など、新たな挑戦もしていくそうです。
(2)エゴマと「みそ」を活用した「ながのいのち」新商品の開発
について
平成16年に地元産の大豆や米を使って自家製の「みそ」を作ろ
うと「鬼無里手づくりみその会」を結成。平成17年に自家用とし
て550キログラムを仕込み、これを手始めに昨年は、自家用、販
売用を含めて4,000キログラムを仕込むまでになったそうです。
原料は、大豆と米がすべて地元産、麹(こうじ)も自家製、海水
から作った沖縄産の塩を使用するなど、なかなかこだわっています。
私も食べてみましたが、確かにおいしい「みそ」だと感じました。
そして、気になる売れ行きについてです。平成19年度に仕込ん
だ「みそ」までは順調に完売。ただ、販売用の仕込みを1,500
キログラムに増やした平成20年以降は、本当に完売できるのか心
配になり、新たな販売経路を模索していたのだそうです。
その中で、市農業公社の仲介により市内のパン屋さんと共同で新
商品の研究を開始。ケーキやパン、ピザなど、さまざまな試作を繰
り返す中で、昨年秋、ラスクと組み合わせた商品が出来上がりまし
た。
このラスクは、「鬼無里みそラスク」と「鬼無里えごまラスク」
として販売中です。どちらも大好評で、一気に人気商品になったと
言ってもいいでしょう。私は、甘い「えごまラスク」が好きですが、
「みそラスク」も酒の肴(さかな)には絶品です。
ただ、「鬼無里手づくりみその会」の会長さんの話によりますと、
最近ようやく人件費が出せるようになった程度で、これから導入し
たい機械のことを考えると残るお金はほとんどない、「みそ」はも
うからないと言うのです。
当日もコメントさせていただきましたが、これについて私は、会
の法人化が大事だと思っています。法人化する意義はいろいろある
と思いますが、組織の永続性の担保や責任・役割分担の明確化、社
会的な信頼の獲得、収支の明確化などができることでしょう。
本年度から市農業公社では、この会のような農産物加工グループ
など、農業グループが法人化する際に1件250万円を限度に出資
できるよう体制を整えました(出資額は、今後、増やす必要がある
かもしれません)。
中山間地域を活性化するためには、産業を興し、中山間地域の中
で暮らしていけるように所得を増やすことが第一だと私は考えてい
ます。この資本金を使って必要な機械をそろえ、ぜひ「鬼無里手づ
くりみその会」にもうけてもらいたいと思っています。
今回ご紹介したラスクや「みそ」は、一昨年から市農業公社で取
り組んでいる“ながのいのち”ブランド商品として、鬼無里地区に
ある鬼無里農林産物直売所“ちょっくら”や、昨年5月に中央通り
にオープンした「ながのいのち」アンテナショップ“ひっぱりだこ”
などで販売しています。皆さんもぜひ一度ご賞味ください。
そして、鬼無里地区だけでなく、ほかの地区でも価値ある製品を
特産ブランドとして売り出すことを考えましょう。たくさんあるは
ずです。売り出す際には、ぜひ“ひっぱりだこ”をご利用ください。
2月2日、東京都内で「ふるさとNAGANO応援団」意見交換
会を開催しました。この応援団は、“ふるさと長野市”を応援して
ほしいとの思いから、首都圏で活躍されている本市にご縁のある方
々にお願いして平成19年10月に結成したもので、皆さん既にご
存じのことと思います。
メンバーの方々については、以前のメルマガでもご紹介させてい
ただきました。その後、佐野幸男さん(株式会社協和エクシオ N
TT営業本部長)、幡野保裕さん(郵船クルーズ株式会社専務取締
役)、恩田乾次郎さん(株式会社ウイングメディカル代表取締役社
長)にも加わっていただき、現在は総勢30人です。
今回は、中山間地域の活性化をテーマに、まず私から本市の動向
を説明させていただき、ご出席いただいた13人の方々からご意見、
アドバイスを頂きました。
ご提案やご意見を頂くばかりではなく、こちらからもお願いをさ
せていただくなど、とてもありがたい意見交換会でしたが、ことに
中山間地域の活性化については、情報発信力不足というご指摘が多
かったと感じました。「長野市が頑張っていることは市長の説明を
聞いて理解できたが、東京にはぜんぜん聞こえてこない」と、手厳
しいご指摘も頂いてしまいました。
一方で、情報発信のお手伝いをしてくださるというメンバーの方
々もいらっしゃいましたから、うれしい限りです。いろいろな方の
声をお聴きすると、チャレンジしてみたいと思うことが増えていき
ます。中山間地域を活性化するために行政として取り組むべきこと
は、まだまだたくさんありそうです。