2006年2月23日木曜日

トリノ冬季オリンピックと長野市


 2月10日から、イタリア・トリノでオリンピック冬季競技大会
(以下、トリノオリンピック)が始まっています。開会式はさすが
にファッションの国、イタリアらしく素晴らしかったですね。皆さ
んもテレビにくぎ付けになって、寝不足ではありませんか?

 ただ、これを書いている時期、前半戦の日本選手の活躍は、惜し
い場面も多いのですが、もうひとつメダルに手が届かない・・・
ちょっと残念ですが、最後まで期待しましょう。

 長野オリンピック冬季競技大会(以下、長野オリンピック)では、
早い時期にスピードスケート500メートルで清水宏保選手がいき
なり金メダルを獲得。ムードも盛り上がって、日本選手団に勢いが
ついたような感じでメダルラッシュになったのですが、その意味で
は今回は厳しいのかもしれません。

 残念ながら2年前の夏のアテネオリンピックに、長野からは一人
も参加できませんでしたので、トリノオリンピックには、冬季オリ
ンピック開催地の長野から、大勢の人が出場してほしいと願ってい
ました。結果として長野市関係者が9人も出場権を得たということ
で、さすが「長野」だと、私は大喜びなのですが・・・さらに今度は
何とかメダルを・・・人間の欲は限りないものだとつくづく思います。

 長野オリンピックは、大いに盛り上がり、私たちに夢のような思
い出をたくさんつくってくれました。そして、有形無形の財産を残
してくれました。特に、長野で始まった一校一国運動は、シドニー
(夏季)、ソルトレークシティー、トリノへと引き継がれ、さらに
今後、夏の北京大会にも引き継がれることになったようです。長野
発の運動が世界につながっていく、本当に嬉しいことです。

 もうあれから、8年も経ってしまったのですネ!

 この時期、長野オリンピックの開催を記念して「長野灯明まつり」
が行われています。長野青年会議所が中心になって、商工会議所、
商店会連合会、地元商店会の青年部が、一体になって、準備、そし
て運営をしてくださっています。今回で3回目となる灯明まつりは、
善光寺・五色のライトアップ、ゆめ灯り絵展、ゆめ演奏会、仲見世
賑わい屋台、宿坊ゆめ茶会、表参道宵まつり、長野オリンピック関
連イベントが行われ、回を重ねる毎に、賑やかになっています。こ
の灯明まつりを、夏の祭りの「長野びんずる」と並ぶ冬の祭りにし
たい、冬の賑わいをつくりたい、将来は札幌の雪まつりに匹敵する
規模にしたい・・・大きな希望を持って皆さん頑張っています。

 今年の長野灯明まつりのオープニングセレモニーには、トリノオ
リンピックと同時開催ということもあって、マリオ・ボーヴァ駐日
イタリア大使ご夫妻が参加してくださり、トリノ市長からの長野市
民にあてたメッセージを頂きました。私からもトリノ市長セルジョ
・キアンパリーノさんにあてたメッセージを読み上げ、大使に託し
ました。

 大使は、長野を大変気に入っていただいたようで、雑談の中で、
「私の日本人スタッフはこんな素晴らしい場所があることを、ちっ
とも教えてくれない」と言っておられ、通訳さんは、困ったような
苦笑いをしていました。

 表参道宵まつりの中で、ナガノとトリノのハーモニーということ
で、イタリアイベントが行われ、カンツォーネコンサート、ダンス
パフォーマンス、イタリアンフェア(観光PR、物産や料理の販売、
イタリア車の展示など)が、賑やかに行われました。

 そしてこのまつりのハイライトは、なんといっても五輪の色にち
なんだ善光寺周辺の五色のライトアップでした。これは日本有数の
照明デザイナー石井幹子さんが、大変力を入れていただいているお
陰で、五色に彩られた善光寺周辺は、夢のような雰囲気で、この雰
囲気に誘われてたくさんの方が訪れてくださいました。「長野灯明
まつり」オープニングセレモニー終了後に中央通りを下りてきたの
ですが、善光寺に向かう人の波に逆らって歩くのに大変苦労しまし
た。

 長野駅東口でも2月11日、12日の2日間「長野オリンピック
メモリアル第8回東口フェスティバル」がユメリア通りを中心に行
われました。芹田地区区長会をはじめとする住民の皆さんや地元商
店街の皆さん、そして企業関係者があのオリンピックの時の賑わい
を再現しようと毎年努力していただいています。ここは、長野市が
行っている東口の区画整理事業がかなり進展し、新しいまちづくり
が急ピッチに進んでいる地区ですが、街づくりは人づくりという精
神で、まちの皆さんが心を合わせて頑張っている姿は将来のこの地
区の発展にかなりつながるものと信じています。

 オリンピック遺産は確実に育っており、新しい長野が生まれつつ
ある・・・こんなことを感じさせてくれる長野の冬、明るく、前向
きです。

2006年2月16日木曜日

長野市の審議会・委員会等について


 地方自治体には、たくさんの審議会、委員会、懇話会等が設置さ
れています。長野市も例外ではなく、多くの審議会等を設置し、広
く意見をお聞きしたり、提言をいただいております。これらの審議
会等は、私の標榜している「市民とのパートナーシップ」を実現す
る根幹のひとつと考えていますが、今日はそのことについて、お話
させていただきます。

 長野市の全体計画、市条例の制定や改廃、予算案、重要人事につ
いては、原則として市長が提案して、市議会で審議・決定されます
(もちろん議員提案もありますが)。ただ市長の判断や議会の判断
だけでなく、さらに広く市民の皆さんの意見も必要であることから、
議会に提案する前に、市民の皆さんのご意見を伺う、あるいは、ア
イデアを求めるということで、各種審議会や委員会が設置されてい
ます。

 審議会等において、審議や提案をしていただく委員さんには、市
民の方々を中心にお願いするのが基本ですが、テーマによっては市
外から造詣の深い方をお願いすることもあります。県のように中央
の方ばかりを人選し、東京で開催されている審議会等はどうかと思
いますが、広く意見を求めたいということでは一致しています(長
野市でも広域連合のごみ焼却施設について、技術的なことについて
は専門部会として、中央の権威ある方をお願いし、東京で開いたこ
とがあります)。

 委員さんには、テーマによって、公平で片寄らない人選、その道
に造詣が深い方をお願いすることも大切ですし、男女の比率も常に
考えなくてはならないことで、担当課がいろいろ検討します。市内
の関係団体長から推薦いただいた方、学識経験者(主として大学の
教授等)、そして一般市民の方をお願いしていますが、原則は担当
課で原案を決め、市長が決裁します。最近はすべての審議会等に公
募委員さんをお願いすることが原則ですが、この場合は応募された
方に小論文を提出いただき、担当課で審議して、決定しています。
ただ、この人選については、公平にやっているつもりですが、市に
都合のよい人を選んでいるのでは?とのご意見はあるようです。

 審議会等で、委員長さんあるいは座長さんが決まりますと、市長
から案件を諮問させていただき、審議が始まります。審議は、年度
単位の長い期間をかけて検討することもありますが、短い期間で審
議していただくときもあります。

 審議会等の事務局は、原則として担当課がさせていただいていま
す。外部の方に事務局をお願いすることはその方の負担が大き過ぎ
ますし、議論が案件とは外れた方向へ行っても困るからです。ただ
最近言われているのは、事務局が市役所の都合の良い方向へもって
いくのではないかとの意見もあるようで、難しいところです。ただ
効率を考えるとこの方法が一番良いようです(あくまでも最終決定
は市議会ですから)。

 審議会等の素案作成は長野市が行うことが多いのですが、審議内
容によっては審議会等に原案作成からすべてをお願いすることもあ
ります。そして、審議終了後、市長あてに答申をいただき、さらに
一般市民に向けたパブリックコメントを行う場合もあり、市民の皆
さんからいただいた意見も参考に市の原案を作成することが多くな
ってきました。

 今年度どんな審議会等が開かれたか、いくつかをご報告しますと

【長野市ごみ焼却施設建設地検討委員会】
 長野広域連合が建設する焼却施設について幅広く検討し、2カ所
の建設候補地を報告いただきました。

【長野市財政構造改革懇話会】
 将来にわたり安定した行政サービスが提供できる「持続可能な地
域社会の構築」を目指し、財政構造の転換を実現するための改革の
方向性について提言いただきました。

【長野市大型店等出店土地利用委員会】
 商業環境形成指針に基づき、市内6店舗の大型店の出店計画につ
いて審査・報告いただきました。

【長野市犯罪防止に関する条例策定委員会】
 安全神話が崩れそうな危機感のある中で、条例の必要性を含め、
内容について審議・答申いただきました。

【長野市都市内分権審議会】
 市が推進しようとしている都市内分権の必要性を含め、内容につ
いて審議・答申いただきました。

 このほか、長野市廃棄物減量等推進審議会、長野市社会福祉審議
会、長野市国民健康保険運営協議会、長野市農業集落排水処理施設
使用料等審議会、長野市まちなか居住調査専門委員会、長野市住宅
対策審議会、長野市保育所等のあり方懇話会、長野市交通対策審議
会、長野市観光推進審議会・・・まだまだありますが、名前でどの
ような会か大体ご想像いただけると思います。

 これらをすべて包含する計画、すなわち第四次長野市総合計画を
審議する審議会が動いていますし、都市計画の基本である都市計画
マスタープランの改定も進んでいます。

 以上、思いつくままいろいろ書いてみましたが、このほかにもあ
らゆる分野で市民の皆さんから、広く意見をいただくシステムが動
いています。私が各地域や団体の活動している現場にお伺いして懇
談を行う元気なまちづくり市民会議やみどりの移動市長室、市職員
が皆さんの要請により近くまでお伺いし、市政についてお話をする
市政出前講座・・・ぜひご利用いただきたいと思います。そういう
場所で出されたご意見が審議会、委員会、懇話会に反映され、パブ
リックコメントなどを通して市の正式提案になって議会で決定して
いく、そんな仕組みをご理解していただければと考え、このメルマ
ガを書きました。

2006年2月9日木曜日

大型店出店問題に結論を出しました


 ここ数年、市民の皆さん、業界、議会、マスコミも含めていろい
ろな議論を巻き起こしていた大型店出店希望の申請に対し、一応の
結論を出しました。

 過去において大型店から出店希望があった場合、商工振興担当、
まちづくり推進担当・都市計画担当、あるいは農政担当、交通政策
担当等々が、それぞれ担当部門の立場から検討し、適否あるいはそ
の条件を決めていました。しかし、最近多くの大型店出店計画の動
きが出てきたので、関係する部署がみんなで検討し、市として総合
的に判断する必要があることから、一昨年の11月、商業環境形成
指針を決定・発表し、出店計画のある企業はあらかじめ申請するこ
とを要請したものです。

 昨年2月の締め切りで募集したところ、6店(1店は市街化区域
内、5店は市街化調整区域(農業振興地域))の申請がありまし
た。そこで、庁内で総合的に検討をする中で、指針の定めるところ
により大型店等出店土地利用委員会を設置して検討をお願いしてき
ました。委員会では、学識経験者等の皆さんが、それぞれの出店計
画について総合的に検討していただき、また、出店計画を届け出た
事業者や大型店等出店地域対策協議会からヒアリングをする中で、
昨年11月末、長野市に対し報告をしていただいたものです。

 この報告の内容は、市のホームページに載っていますので詳しく
はそちらをご覧いただきたいと思いますが、皆さんご存じのとお
り、社会状況、少子化社会、農業問題、法規制、等々、大きな流れ
はお示しいただきましたが、ズバリの適否は述べていただけません
でした。そこで、それらを咀嚼(そしゃく)して市の責任として、
考え方を決定する必要に迫られていたわけです。

 報告を受けて以来、約2カ月、産業振興部を中心に、報告の内容
をその紙背まで意味をくみ取りながら、庁内挙げての検討が続きま
した。市長への手紙である「みどりのはがき」を含めていろいろな
方々のご意見もいただきました。遅い、哲学がない、あるいは、長
野市の未来をどう考えているのか・・・といった意見もいただきま
した。ただ大変重要なテーマであるだけに、慎重を期す必要があっ
たわけで、「遅い」という批判は当たらないと私は感じています。

 それらをすべて承知した上で、1月下旬の政策会議、2月1日の
部長会議で結論を出させていただきました。詳細はホームページを
ご覧いただくとして、若干補足させていただきます。

 根本問題として、大型店出店計画について、長野市がどこまで権
限があるか・・・という問題があります。すなわち都市的利用と農
業的利用について、都市計画法、農地法、農業振興地域の整備に関
する法律(農振法)の相互調整が必要であり、仮に長野市が必要と
判断しても県や国レベルで調整が調わない可能性はあるということ
です。ホームページに発表した文章で「出店を促すことは出来な
い」という表現はそのことを表しています。

 長野市では、すでに都市計画マスタープランでコンパクトシティ
の考えを示しており、また、現在策定中の長野市第4次総合計画で
もその方向性が検討されていることから、これ以上郊外に広く・薄
く開発が拡散していくスプロール現象を助長すべきでないという意
見は、政策には一貫性が必要という意味で、根強いものがありまし
た。少子・高齢化や人口減が進む現在、右肩上がりの社会は望めな
いとすれば、これ以上都市部の面積を広げることはいかがなもの
か・・・。中心市街地の再生、公共交通機関の再生等に取り組んで
いる現在、それと矛盾する政策をとるべきでないといった意見でし
た。

 もうひとつ、国の動きも無視できないものがありました。農業政
策の転換、まちづくり3法の見直し・・・それらは国の政策の根本
を変えるものであり、長野市の政策もそれらが整備されてからつく
るべきで、その法律改正前に駆け込み的にその方針に反する政策を
採用することには、抵抗感がありました。食料生産の基地としての
農用地は減らしてはいけないということも、いろいろな方から言わ
れました。

 以上、長野市が「出店を促すことは出来ない」と決定した理由の
補足です。

 一方、私の思い、ある意味でこういう決定を出さざるを得なかっ
たことの反省ですが、

 まず資本主義社会の基本原理として、規制は少ない方が良いとい
う思いがあります。それぞれの企業が検討の結果、自己責任で出店
したいという思いを止めることは、本来どうなのか・・・迷いまし
た。過去、オリンピック道路周辺、荒瀬原線沿線等、アッという間
に新しい商店街(?)が生まれ、まちづくりが進んでいるあのバイ
タリティーは、大きな魅力でした。まちづくりには大型店の存在は
重要な意味がある・・・という思いです。商業環境形成指針に基づ
いて受け付けしたとき、地域共生度評価が高い6店の届け出があっ
たこと、これは商業者にとって長野にはまだまだ魅力がある地域と
認められたからであると密かに喜んでいましたが・・・。結論を出
す間際には、出店賛成の声が小さくなって、ある意味では賛成しに
くくなってしまった感じがあり、私は天の邪鬼になるべきかなと考
えたことも事実ですが・・・。

 市民の皆さんの中にも、便利で楽しいから大型店は欲しいという
方はたくさんいらっしゃいました。郊外店の比較優位の状況は、政
策的に商店街と住宅団地を分けた40年以上前から発生している傾
向で、簡単には是正できない。モータリゼーションの進展は、市民
が望んでいる結果であり、社会構造の面からもこの流れは止まらな
い・・・。

 一番辛かったのは、農業者、特に地権者の方々の期待を裏切る結
果になったことです。みどりのはがき等で「現在の農業は苦しいば
かりで先が見えない、大型店が土地を借りてくれるというのは、最
後のチャンス、ぜひ許可して欲しい」ということでした。新しい、
儲かる農業政策の必要性を痛感しました。

 もう一つ具体的な場所を申し上げるのは避けるべきとは思います
が、あえて申し上げますと、篠ノ井地区のことです。篠ノ井地区の
意見は、超大型店出店に関し、真っ二つに割れていました。私はそ
の原因は長野市の副都心でありながら、もうひとつ求心力になる宝
物がないことでしょうか。それを真剣に考えなくてはならないと思
っています。

 政策決定に際し、政策会議で関係部局の議論を十分聞き、結論が
出てから私から指示した事柄は、次の三点です。
 1.周辺市町村とよく調整して欲しい。
 2.新しい農業政策について、国・県への提言を含め全力を挙げ
   ること。
 3.既存商店街の奮起を促したい。中心市街地だけでなく、10
   年来生まれてきた郊外店のまちづくりへの貢献を期待した
   い。北信地域の中心都市としてはお客さんの吸引力係数が低
   すぎる。コンパクトシティを目指す長野市の施策は、既存商
   店街に大きな優位性を与えることになる、そのことに既存商
   店街がどう応えるか・・・問われている。

 いずれにしても、このような経緯の中で、大型店出店希望の申請
に対し結論を出しましたことをご理解いただければと思います。

2006年2月2日木曜日

地方経済の悩み


 ある会合に出席した折に、そこに出席していた方からこんな話を
聞きました。それは、東京で開かれた同業者との情報交換した時の
話だそうですが「どの企業(特に地方の販売店)も、外商(店売り
ではなく、訪問販売のこと)売り上げで大苦戦している。その原因
は出先機関の官庁や企業が、経費削減・合理化の一つとして地元か
らの購入をやめ、本社(本部)で一括購入してしまう、販売店には
何の落ち度もないのに・・・」このような内容です。

 また、何気なくある業界紙に目を通していたら、次のような記事
に出会いました。それは前記の話の顕著な例といえるかもしれませ
ん。概略を申し上げますと「全国の郵便局は長年、文具事務用品を
地元の業者から購入してきた(年間40億~50億円)。それをオ
リジナルカタログによる通信販売の導入に切り替え、地域の文具納
入業者を排除した事業展開としたため、郵政公社の事務用品購入に
ついての再考要望書を提出した。」このようなものでした。

 同じような現象は、郵政だけでなく、いろいろな業界でも、大手
商社や大メーカーのような全国ネットの企業でも、多かれ少なかれ
既にある現象です。いままでは各支店や営業所などが近くの販売店
から購入していた物品、例えば複写機や事務用品、家庭用品、玄関
マットのようなものまで、本社で一括購入することは珍しくないよ
うです。その方が安くなるとすれば、経費節減が時代の潮流でやむ
を得ない事ではありますが・・・・・・。

 更にまた、コンピューターメーカーや家電メーカーなどが、大量
仕入れをする販売会社には安く卸す、大手マンション建設業者が、
中央で一括仕入れを行って地方へ納品させる・・・極端な例では、
地方販売会社の仕入れ価格より中央の販売会社の売り価格の方が安
いという現象も出てくるわけで、いずれにしろマーケットの大きさ
が違いますから、地方販売会社の商売は苦しくなることは事実です。

 しかし、地域経済にとっては大変な事態だと感じています。郵政
に関しては私も、郵政民営化に原則賛成した立場であった者として、
正直ショックを受けました。考えてみれば、厳しい競争社会の中で
郵政公社も生き残りをかけて頑張っているわけで、コスト削減と事
務効率化を推進する行為そのものを批判するのは難しいと思います
が、でも、その「程度」が問題だと思っています。

 地域社会が疲弊してしまったら、ますます人口は減るでしょうし、
郵便物も減るでしょうし、儲からなければ貯金をすることもできま
せん。そうすれば、郵政そのものが存続できなくなる・・・互恵の
心、共存共栄の精神を大企業ほど、持たなくてはならないと思うの
です。もちろん地域企業の努力、近代化は必要です。品質の良いも
のを安く提供するシステムを作ることは必要です。ただ新規参入を
困難にし、地域企業の存在を無視するようなシステムは民営化を志
向する郵政であっても、いかに国際的な競争に打ち勝つためとはい
え桁違いの大きな企業であるだけに問題です。

 話は少し違いますが、たばこ税の問題でも同じようなことが起き
る可能性があります。たばこ税は県・市町村で売れた分によって地
方に配分されることはご存じだと思いますが(長野市には毎年
約21億円ぐらい入ります)、例えば東京に本社がある大手スーパ
ーが東京で仕入れて地方の店に配分していれば、税金だけは東京へ
入ることになる・・・。

 もう一つの地方販売企業が苦戦している原因は、インターネット
の普及が大きいと思います。大手企業は、いち早くインターネット
による見積りシステムを導入して、全国への販売が、誰でもどこか
らでも見積りに参加できるようになって、パソコンと電話があれば、
いつでもどこからでもできるシステムが広がってきました。ただこ
の現象は、一方で平等に地方販売企業にも機会が生まれているとい
う側面があるかもしれません。

 官公庁でも電子入札・見積りのシステム化が図られている昨今、
訪問しての売り込みは必要なくなり、価格だけの世界で顔も見えな
い、手配さえできれば全国誰でも商売ができるようになってきてま
す。そんな急激な構造変化の中で、地方の企業がますます衰退して
いく・・・企業として特色を持った商品を作る、あるいは探し当て
なければならない事は言うまでもありませんが、地域が地元にある
企業を育てるという機運やシステムも必要な事だと思います(入札
制度改革の論議でも常に問題になるポイントです)。

 規制のない自由な経済活動が、資本主義社会のよいところであり、
それぞれが切磋琢磨することによって、社会は進歩し、豊かな社会
を実現することができると私は信じています。ただ、このような風
潮が続くと、地方社会にとっては由々しき問題です。ITの発展で、
急に加速・顕在化されてきた現象とも言えます。

 地方分権と言いつつ、このままでは国も経済もますます一極集中
の気配がしますが、その一方で、地元経済が発展してこそ、会社の
利益があがると考えている企業もあるようです。そういう会社は地
元購入を主体に、地域の活動にも積極的に協力してくださっていま
す。その方が長期的に考えれば自分に利益があると考えておられる
のだと思います。

 最近は多くの企業が「地域に密着した活動・営業を行う」と言っ
ています。「地域に密着した」という意味合いが必ずしもはっきり
しませんが、もう少し大きな目でみた施策が必要なのかもしれませ
ん。地域社会を大切にするコストとして、多少は高くても地方で調
達する、地域の企業を育て、共存共栄をはかる、そのことによって、
地域の皆さんの支持が得られる・・・そのことによって自分の会社
も儲けさせていただく・・・地域に根ざして永続発展する組織とす
れば、そのことの大切さをもう少し知ってほしいものです。

 行政とすれば、地域の企業の努力・奮闘・そして工夫に期待する
と同時に、それぞれの企業が地域社会にどんな貢献をしているか・
・・を評価・判断(この基準が難しいのですが)して取引会社を決
めていくことが大切だろうと思います。現段階ではこんなことしか
申し上げられないのは残念です。