ここ数年、市民の皆さん、業界、議会、マスコミも含めていろい
ろな議論を巻き起こしていた大型店出店希望の申請に対し、一応の
結論を出しました。
過去において大型店から出店希望があった場合、商工振興担当、
まちづくり推進担当・都市計画担当、あるいは農政担当、交通政策
担当等々が、それぞれ担当部門の立場から検討し、適否あるいはそ
の条件を決めていました。しかし、最近多くの大型店出店計画の動
きが出てきたので、関係する部署がみんなで検討し、市として総合
的に判断する必要があることから、一昨年の11月、商業環境形成
指針を決定・発表し、出店計画のある企業はあらかじめ申請するこ
とを要請したものです。
昨年2月の締め切りで募集したところ、6店(1店は市街化区域
内、5店は市街化調整区域(農業振興地域))の申請がありまし
た。そこで、庁内で総合的に検討をする中で、指針の定めるところ
により大型店等出店土地利用委員会を設置して検討をお願いしてき
ました。委員会では、学識経験者等の皆さんが、それぞれの出店計
画について総合的に検討していただき、また、出店計画を届け出た
事業者や大型店等出店地域対策協議会からヒアリングをする中で、
昨年11月末、長野市に対し報告をしていただいたものです。
この報告の内容は、市のホームページに載っていますので詳しく
はそちらをご覧いただきたいと思いますが、皆さんご存じのとお
り、社会状況、少子化社会、農業問題、法規制、等々、大きな流れ
はお示しいただきましたが、ズバリの適否は述べていただけません
でした。そこで、それらを咀嚼(そしゃく)して市の責任として、
考え方を決定する必要に迫られていたわけです。
報告を受けて以来、約2カ月、産業振興部を中心に、報告の内容
をその紙背まで意味をくみ取りながら、庁内挙げての検討が続きま
した。市長への手紙である「みどりのはがき」を含めていろいろな
方々のご意見もいただきました。遅い、哲学がない、あるいは、長
野市の未来をどう考えているのか・・・といった意見もいただきま
した。ただ大変重要なテーマであるだけに、慎重を期す必要があっ
たわけで、「遅い」という批判は当たらないと私は感じています。
それらをすべて承知した上で、1月下旬の政策会議、2月1日の
部長会議で結論を出させていただきました。詳細はホームページを
ご覧いただくとして、若干補足させていただきます。
根本問題として、大型店出店計画について、長野市がどこまで権
限があるか・・・という問題があります。すなわち都市的利用と農
業的利用について、都市計画法、農地法、農業振興地域の整備に関
する法律(農振法)の相互調整が必要であり、仮に長野市が必要と
判断しても県や国レベルで調整が調わない可能性はあるということ
です。ホームページに発表した文章で「出店を促すことは出来な
い」という表現はそのことを表しています。
長野市では、すでに都市計画マスタープランでコンパクトシティ
の考えを示しており、また、現在策定中の長野市第4次総合計画で
もその方向性が検討されていることから、これ以上郊外に広く・薄
く開発が拡散していくスプロール現象を助長すべきでないという意
見は、政策には一貫性が必要という意味で、根強いものがありまし
た。少子・高齢化や人口減が進む現在、右肩上がりの社会は望めな
いとすれば、これ以上都市部の面積を広げることはいかがなもの
か・・・。中心市街地の再生、公共交通機関の再生等に取り組んで
いる現在、それと矛盾する政策をとるべきでないといった意見でし
た。
もうひとつ、国の動きも無視できないものがありました。農業政
策の転換、まちづくり3法の見直し・・・それらは国の政策の根本
を変えるものであり、長野市の政策もそれらが整備されてからつく
るべきで、その法律改正前に駆け込み的にその方針に反する政策を
採用することには、抵抗感がありました。食料生産の基地としての
農用地は減らしてはいけないということも、いろいろな方から言わ
れました。
以上、長野市が「出店を促すことは出来ない」と決定した理由の
補足です。
一方、私の思い、ある意味でこういう決定を出さざるを得なかっ
たことの反省ですが、
まず資本主義社会の基本原理として、規制は少ない方が良いとい
う思いがあります。それぞれの企業が検討の結果、自己責任で出店
したいという思いを止めることは、本来どうなのか・・・迷いまし
た。過去、オリンピック道路周辺、荒瀬原線沿線等、アッという間
に新しい商店街(?)が生まれ、まちづくりが進んでいるあのバイ
タリティーは、大きな魅力でした。まちづくりには大型店の存在は
重要な意味がある・・・という思いです。商業環境形成指針に基づ
いて受け付けしたとき、地域共生度評価が高い6店の届け出があっ
たこと、これは商業者にとって長野にはまだまだ魅力がある地域と
認められたからであると密かに喜んでいましたが・・・。結論を出
す間際には、出店賛成の声が小さくなって、ある意味では賛成しに
くくなってしまった感じがあり、私は天の邪鬼になるべきかなと考
えたことも事実ですが・・・。
市民の皆さんの中にも、便利で楽しいから大型店は欲しいという
方はたくさんいらっしゃいました。郊外店の比較優位の状況は、政
策的に商店街と住宅団地を分けた40年以上前から発生している傾
向で、簡単には是正できない。モータリゼーションの進展は、市民
が望んでいる結果であり、社会構造の面からもこの流れは止まらな
い・・・。
一番辛かったのは、農業者、特に地権者の方々の期待を裏切る結
果になったことです。みどりのはがき等で「現在の農業は苦しいば
かりで先が見えない、大型店が土地を借りてくれるというのは、最
後のチャンス、ぜひ許可して欲しい」ということでした。新しい、
儲かる農業政策の必要性を痛感しました。
もう一つ具体的な場所を申し上げるのは避けるべきとは思います
が、あえて申し上げますと、篠ノ井地区のことです。篠ノ井地区の
意見は、超大型店出店に関し、真っ二つに割れていました。私はそ
の原因は長野市の副都心でありながら、もうひとつ求心力になる宝
物がないことでしょうか。それを真剣に考えなくてはならないと思
っています。
政策決定に際し、政策会議で関係部局の議論を十分聞き、結論が
出てから私から指示した事柄は、次の三点です。
1.周辺市町村とよく調整して欲しい。
2.新しい農業政策について、国・県への提言を含め全力を挙げ
ること。
3.既存商店街の奮起を促したい。中心市街地だけでなく、10
年来生まれてきた郊外店のまちづくりへの貢献を期待した
い。北信地域の中心都市としてはお客さんの吸引力係数が低
すぎる。コンパクトシティを目指す長野市の施策は、既存商
店街に大きな優位性を与えることになる、そのことに既存商
店街がどう応えるか・・・問われている。
いずれにしても、このような経緯の中で、大型店出店希望の申請
に対し結論を出しましたことをご理解いただければと思います。