中山間地域のある市内13地区に配置している「地域活性化推進
員」の活動について報告します。
少し前の話になりますが、活動を始めてから2年目が終了する地
域活性化推進員の皆さんとの懇談会を、各地区の住民自治協議会
(住自協)の会長さんなどにも同席していただき、3月24日に開
催しました。
当日は、全推進員に平成22年度の1年間の活動報告と平成23
年度の主な施策と事業について説明をしてもらい、その後、住自協
の会長さんからもご意見を頂きました。人口が減少している地域で
の活動ですが、さまざまな施策・事業実施について知恵を絞り、そ
れぞれ一生懸命に努力をしていることに感激しました。また、住自
協の会長さんはじめ関係の皆さんのご協力に対しても大変ありがた
く思いました。
や集落維持の支援などを目的としてスタートし、この3月末で丸2
年が経過したところです。それぞれの地域の実情に応じた支援を行
っており、話を聴く中で、ようやくある程度の成果が見え始めてき
たと感じているところです。
推進員の役割は、地域に入り、何が必要で、何に取り組むべきか
を住自協をはじめ、地域の皆さんと話し合いながら自分で判断し、
地域と一体になって取り組んでいくことです。
ただ、活動は多方面にわたることが多く、一人の推進員ができる
ことに限度があると感じていることも事実です。そこで住自協が必
要な人材を雇用してくだされば良いと思っているのですが、そのた
めの補助を増やすべきかどうか、住自協の平成22年度決算が出そ
ろったところで決めたいと担当の地域振興部などと相談していると
ころです(推進員とは別に、市内32地区全ての住自協から、事務
局の人件費が足りないと言われていましたので、こちらは平成23
年度当初予算で措置しました)。
推進員の配置は、解決策のなかなか見いだせない中山間地域の課
題に対処することはもちろん、地域のコミュニティーの再生に向け
て、初めて職員を配置するという人的支援を行ったものですが、ま
だまだ課題が多いと認識しています。
中山間地域の活性化に向けては、人的支援だけではなく、平成
23年度の予算においても、多額の関係予算を計上しています。具
体的には、中山間地域支援事業(*1)、中山間地域輸送システム
運行費補助金(*2)、野生鳥獣被害防除対策事業補助金(*3)、
中山間地域等直接支払制度(*4)などですが、これら主なソフト
事業を合計すると、3億円以上の予算を計上しています(道路整備
事業などのハード事業に係る予算は除きます)。
いずれにしても、市内の中山間地域の面積は、市域の4分の3を
占めているわけですから、できる限りの活性化対策、支援を行って
いくつもりです。
今回の懇談会の最後、総括として以下のことを申し上げました。
(1)今回の大震災で、社会がどう変わるか予測が付かない、柔軟
に対応してほしい。
(2)住自協は、地域経営の視点から、地域でもうける仕事にも手
を出してほしい。
(3)住自協には、自由に使える資金もある程度提供している。使
途は特に制限していないので、人の雇用、パソコンの購入なども含
め、柔軟な発想で活性化に役立たせてほしい。これについては住自
協決算が発表されてから、意見を申し上げたい。
地域ごとに行った事業について、主なものを列挙してみますと、
都市部の小学生や中学生を中心とした農家民泊事業の手伝い、野生
鳥獣被害防除のための緩衝帯の整備、ごみの不法投棄パトロール、
トレッキングコース整備、遊休農地の活性化、自主防災会、地域の
祭りなど地域団体事業への協力、集落点検マップの作成とその更新、
新規就農者支援、野生鳥獣被害防除対策の地区内での話し合いの実
施、やまざと支援交付金を活用した事業計画(草刈り、側溝清掃、
野ねずみ駆除、除雪など)の策定、農業体験や地域の自然や歴史に
親しむグリーンツーリズム事業への協力などがあります。
農家民泊事業については、既に13学校、1,940人を受け入
れ、訪れた人も受け入れ側も大変貴重な体験をしたそうです。台湾
からの学生を受け入れた地域もあるとのことです。
こうして、主なものだけ並べてみましてもやることはたくさんあ
ります。行政は縦割りで仕事をしていると言われますが、推進員は、
全て総合的に考えて取り組んでいることが分かると思います。そう
なのです。中山間地域の皆さんからは、人口減で悩み、何をやるに
も人手がないという嘆きをお聴きしています。そこを補うために、
推進員を配置させていただいたのです。
住自協の会長さんや支所長などと連絡を取って、できることは何
でも取り組む姿勢が大切だと思います。本庁各課にはその支援に回
ることを命じています。
地区内のボランティア育成も大切ですが、地区外からのボランテ
ィアの受け入れも検討したい項目です。さらには、企業関係の皆さ
んとの協働作業も生まれれば、素晴らしいですね。
「買い物難民」なんていう言葉も出てくる状況ですから、いろい
ろ工夫が必要でしょう。
平成23年度の目玉事業の一つである新規就農者支援事業も、専
業農業者を育成する事業ですから、数年後には大きな戦力になるは
ずだと考えています。
実は新規就農者に対しては、もうかなり前から支援を行ってきま
した。1人に年間10万円を支援する制度を利用した就農者は、過
去10年で約100人に上ります。追跡調査を行いましたら、ほと
んど全員が現在も農業に従事しており、大変良い制度だと思いまし
た。ただし、新規就農者といっても、その多くの方が農家の後継者
であったため、対象者をもっと広げ、外からの就農者を増やし、よ
り魅力ある農業を育てようと考えました。その結果、支給額を月に
最大10万円に増額し、そして最も大事なポイントは、農業につい
て根本的に勉強してもらうため、農業大学校などへの研修を義務付
け、これに対しても支援することとしたことです。そして、やはり
「もうかる」農業をしてほしい。もうからなければ仕事は長続きし
ない。「もうける」こと。これが活性化だと思っています。
同席した住自協の会長さんからは、おおむね推進員には良くやっ
てもらっているとの評価を頂いたと感じています。一人では無理が
ある、できたら人員を増やしてほしいという、行政にとっては頭の
痛いご意見もあるようで・・・。それぞれの地域の平成22年度の
事業報告、決算報告を見て、そして「やる気」を見て、検討したい
と思っています。
中山間地域という「やまざと」の持つ魅力や資源を生かし、総合
的な振興施策を展開していきたいと思っています。
*1:中山間地域支援事業
人口の減少と少子高齢化が進行している中山間地域の互助機能の
向上を図るため、地域住民が行う課題解決の活動に対し支援金を交
付するもの
*2:中山間地域輸送システム運行費補助金
中山間地域への生活交通確保策として、市内6地区の各運行組織
が主体となって実施する乗合タクシー運行に対し、補助金を交付す
るもの
*3:野生鳥獣被害防除対策事業補助金
市内19地区の「有害鳥獣対策委員会(協議会)」が行う防除対
策事業に対し、補助金を交付するもの
*4:中山間地域等直接支払制度
耕作条件の不利な中山間地域において農業生産活動が継続的に行
われるために交付金を支払うもの
2011年5月26日木曜日
地域活性化推進員
2011年5月19日木曜日
長野市の災害対応の具体策(2)
収束の気配がなかなか見えない今回の原発事故。放射性物質の拡
散は重大な懸念事項です。
気象関係者の話を聞くと、長野市は福島第一原発と距離は遠いし、
東風が少ないので多分大丈夫でしょうとのことでしたが、どんなも
のでしょうか。私は偏西風を考えると長野市では福井県若狭湾岸の
原発が怖いと思っていましたが、これも距離的に遠いとのことで、
やはり一番怖いのは最も近い柏崎刈羽原発ではないかとのことでし
た。
菅総理大臣が中部電力浜岡原子力発電所の全面停止を要請し、中
部電力は5月9日にそれを受け入れました。浜岡原発は、東海地震
の想定震源域にあり、マグニチュード8クラスの大地震が、今後
30年間で87%の確率で発生するとのことから、この要請になっ
たわけです。
浜岡原発の停止により、中部電力の電力供給能力が下がり、その
供給範囲にある長野市にも、大きな影響が出そうだと感じています。
ただし、この要請は浜岡原発だけで、国内の他の原発は全て安全だ
そうですが・・・。
この場合、私たちがまずやらなくてはならないことは、節電です。
これは、今すぐにもできることで、当然のことながら全市民、全国
民が取り組まなければならないことだと思います。それと同時に、
節約でしょう。これは、私たちの生活スタイルを見直すことになる
ため、本当に大変なことだと思います。今の社会や生活を相当縮め
なくてはならないかもしれません。ものづくりの分野でいうと、電
力不足でものがつくれなくなった場合には、日本の輸出などに相当
影響が出るかもしれませんし、工場の海外移転も心配です。
また、代替エネルギーの活用がどこまでできるのかといった問題
もあります。
原子力発電は日本の発電量の約3割を賄っているとのことですが、
この分を火力発電に頼るとしたら、二酸化炭素の問題、地球温暖化
の問題も当然出てきます。ヨーロッパや北米のように隣国と地続き
の国ならば、電気を買うという選択肢もあるようですが・・・。
いずれにしても、省エネルギー化(節電)と代替エネルギーでど
こまでやれるのかを国全体で努力して、将来の計画をきちんと立て
る必要があるわけです。長野市としても、できるだけエネルギーの
地産地消を行いたいと思いますが、どの程度のことができるのか。
これから研究して、実行していかなければならないと考えています。
例えば、エムウェーブに太陽光発電設備を設置することをはじめ、
太陽光、水力、風力、バイオマス、ごみ発電など、あらゆることを
検討する、やれることは何でもやっていく必要があります。
放射能の拡散についてですが、農作物に被害が出る可能性もあり
ますが、東京の混乱を見ていると、「水」については考えておきた
いと思います。長野市の水道水の主な水源は、表流水、伏流水と深
井戸です。この中で、表流水は放射性物質が広がってくると心配で
す。
もし、水源としている表流水から放射性物質が検出された場合に
は、上下水道局では取水源を伏流水や深井戸に切り替えることを計
画しています。表流水から切り替えることができない地区について
は、安全確保のため乳幼児への摂取制限を実施するとなれば、給水
車を出動させて、乳幼児や妊婦さんのいる家庭を中心に安全な飲料
水を給水することにしています。
都市のインフラの維持は、決定的に重要です。電気・ガス・水道
・通信手段の確保が主たるものでしょうが、これらも、もしもの時
はどうするか、考えておく必要があると思います。
特に電気ですが、県内には数多くの水力発電所があり、発電量で
見るとその多くが東京電力系統で、次いで関西電力、中部電力の順
番となっているようです。長野市の電力は、中部電力により東海地
方から信濃幹線という送電線を通じて送られているとのことです。
数年前から、直江津港に中部電力が上越火力発電所を造っていま
す。信濃幹線に事故が発生したとき、上越火力発電所からの送電に
切り替えるという話を聞いたことがあります。私はそれを聞いたと
き、重要なことで、素晴らしい方策だと感じました。お金も掛かる
ことですが、いざという時に備えて、道路も含めインフラは、常に
2つ以上の選択肢を持つことが大切である、余裕を持つことが重要
であると私は思っています。
今、上下水道局では、配水ブロック化事業に取り組んでいます。
これは1カ所で問題が発生した時、そこだけに影響をとどめ、他の
ブロックに影響が出ないようにして、被害を最小限にしようという
取り組みです。
そして災害対策で忘れてはいけないことは、「予防活動」の重要
性です。
防火対策としては、消防局職員が市内のホテルや事業所などの立
入検査を行い、火気の取り扱い方や、階段や通路に避難の際に障害
になる物を置いていないかなどの問題点を指摘し、改善指導をして
います。また、住宅火災による死者の減少と被害を最小限に食い止
めるため、「住宅用火災警報器」の設置促進も図っています。都市
計画道路などは、防火帯の役割を果たしているはずですが、中心市
街地の裏通りなどは、火事が発生しても消防車が入れない場所がま
だあります。
長野市は現在、宮城県塩竈(しおがま)市と名取市へ行政事務支
援のため職員を派遣しています。被害はどちらも甚大ですが、塩竈
市の方が、死者は若干少ないようです。その理由は、地域として津
波を想定しての防災訓練に熱心に取り組んだことにあるようだと派
遣した職員から報告を受けています。また、テレビ番組の中で、名
取市の方は、ここまでは津波は来ないだろうと考えていたと話され
ていたそうです。都市内分権による地域の絆の再生、これが根本的
に重要だと痛感させられています。
長野市では、3年に一度、長野市総合防災訓練を実施しています。
この訓練は、長野市および自衛隊や県といった関係機関ならびに住
民自治協議会、さらには、ライフラインに関係するガスや電気の事
業者、建設事業者などが連携して、総合的に訓練を実施することに
より、災害対応技術の向上と相互協力体制の確立を図ることを目的
に実施しています。こうした訓練に地域の皆さんも参加していただ
き、地域住民同士の連携の強化を図り、さらには、防災意識や知識
の高揚を図っていただくことが大変重要だと考えています。
近年多く発生している局地的な豪雨や土砂災害に対する訓練を土
砂災害特別警戒区域や土砂災害警戒区域に指定されている地区で毎
年実施しています。災害時における情報伝達・収集手段および適時
適切な避難勧告の発令など、住民の避難方法や避難場所の確認など
を行っています。今年は、5月28日に松代町東条地区で実施する
予定です。
市職員の防災教育の一環として、危機(防災)意識の向上と水防
活動に必要な土のうなどの備蓄を強化するための職員防災訓練も毎
年実施しています。今年は、5月11日降雨の中、136名の職員
が参加し、風水害などに備え、約7,800袋の土のうを作成し、
市内の支所、消防署、消防分署などへ備蓄を行いました。
この他、消防局および消防団が中心となった水防訓練や、市内に
結成されている自主防災会の防災訓練があります。
多くの皆さんが訓練に参加し、防災に関する必要な知識や技術を
日頃から習得しておくことが重要だと思います。
「長野市の安全・安心を求めて行動する」。口では簡単に言えま
すが具体的に実行していくことは、なかなか難しいことです。“絶
対”はないと考え、あらゆる場面を想定して準備をしておくことが
重要でしょう。「天災は忘れた頃にやってくる」・・・寺田寅彦の
名言と言われており、常に念頭に置いておくべきことであろうと思
っています。
それともう一つ。今回の大震災の初期活動の段階で、組織的にし
っかり活躍できたのは、自衛隊、警察、消防、そして水道だったと
思います。自衛隊の活動は本当に頼もしかった。それと長野市消防
局もその重責を十分果たしてくれました。
これは、国全体として、災害対応のルールが確立していたことが
理由だと思います。3月11日14時46分の地震発生直後、総務
省消防庁から県を通じ代表消防機関である長野市消防局に、宮城県
へ支援に出動してほしいとの指令が来ました。長野市消防局はすぐ
対応し、県内の消防本部をまとめて、3月11日の夕刻には出動し、
翌12日午前には、塩竈市、多賀城市、七ケ浜町で救出活動を開始
しています。
これは、日頃から各消防本部間の連絡調整がうまく機能していた
証拠です。地方分権の時代とはいえ、このたびのような大震災では、
国の危機管理対応ルールの確立が、あらゆる面で重要なことを痛感
しました。
なお、東北地方に向かっていた兵庫県と奈良県の緊急消防援助隊
(345人)が、12日未明に発生した長野県栄村を中心とした地
震を受け、急きょ目的地を変更して長野県に入るなどの対応もあっ
たようです(実際、栄村では人命に関わるような被害がないという
ことで、再び東北地方に出発したとのことです)。
さらにもう一つ。支援対象を絞ることも重要と感じました。被害
の大小にもよりますが、例えば「長野市は、この地域を支援せよ」
と国が指示してくれたら、具体的な活動方針も明確になり、職員の
士気が高揚し、そして支援効果も上がります。全般に目を向けるの
ではなく、役割分担を明確にし、局所に限って必要なことを独自判
断で行うことが可能になれば、対応も早くなったのではと感じてい
ます。
以上、災害発生時の長野市の対応について、私なりに考えてみた
ことを羅列してみました。いざということがないことを望みながら、
常に最悪の事態を想定して対策を練ることの重要性を改めて痛感し
ています。他の地域の方には申し上げにくいことではありますが、
長野市は本当に恵まれているなあと感じています。近年では、昭和
60年に発生した地附山地すべり災害は大きな被害をもたらしまし
たが、それ以外に人的被害を伴う甚大な災害というものは、ほとん
どないといってもよい地域です。それだけに、他の地域に被害があ
った場合には、率先して支援体制を組んでいかなくては申し訳ない。
そんな気持ちでいっぱいです。
2011年5月12日木曜日
長野市の災害対応の具体策(1)
今回の震災報道に接し、感じていることを少し述べさせていただ
きます。
地震・津波・原発被害と東北・関東地方の皆さんは大変な苦痛を
強いられておられるのですが、自然災害に限った場合、長野市では
どう対応するかということを考えてみました。
怖いのはやはり、地震、次に洪水、地滑り、雪崩、土石流、そし
て火事などでしょう。地震について言えば、糸魚川・静岡構造線と
いった日本で最大級の断層が長野県を縦断していることを子どもの
ころから聞かされていました。
長野市の地域防災計画のうち震災対策については、1847年の
「善光寺地震」を基準に考え、同じ規模の地震が発生した場合にど
う対応するかということを想定しています。江戸時代末期のことで
すから、記録は正確ではないようです。私もいろいろ勉強していま
すが、地震による建物の倒壊を防ぐには、当然建築基準法にのっと
った建物を造ることだと思っていました。しかし、先日建設業界の
皆さんから、「建築基準法は、最低限の規定であって、もっと強い
建物を造っても良い。ただ、お金さえあれば・・・」と言われまし
た。考えてみれば当たり前で、最後の「お金さえあれば」が問題な
のでしょう。ただ、そのお金をどのくらい掛けたら良いか分からな
いわけですから、結局は、建築基準法を頼りにするより仕方ないと
いうことになってしまうのです。
次に、地震に限らないのですが、建築物以外の道路・えん堤など
の土木系構造物の問題として、洪水、山崩れも怖い災害です。
日本では、毎年時期になると台風が襲ってきます。幸いなことに
長野県は山に囲まれているせいか台風の影響を受けにくく、大きな
被害を及ぼすような台風は少なかったように感じていますが、記憶
の中では、昭和34年の伊勢湾台風の被害が一番大きかったのでは
ないかと思っています。しかし、被害を受けないわけではないこと
を心しておかなければなりません。ダムを含めた河川改修、遊水地
の確保、強風対策が必要でしょう。浅川ダムの主目的は外水対策で
すが、内水対策も重要でしょう。
また、昭和40年から5年間続いた「松代群発地震」では、1年
以上にわたり毎日のように揺れましたが、多くの建物が倒壊するよ
うな大きな被害は少なかったと思います。ただ、1日に震度5の地
震が3回もあったような記憶がありますし、かなり激しかったこと
を覚えています。観光客が来なくなるいわゆる風評被害も大きかっ
たように思いますが、今回のような大災害とは比較になりません
・・・。
なお、松代群発地震の名前ですが、当初は北信地震となりそうだ
ったようですが、北信では広すぎる、観光客が来なくなるとのこと
で「松代」になったと聞いています。
今回の被災地もそうですが、わが国の防災計画は、既往最大の地
震、あるいは洪水・津波を基準として決められているとのことです。
数年前の浅川ダムの議論の過程で「既往最大は“過大”だから下
げるべきだ」ということを主張されていた学者さんたちがおられま
した。素人の私にはよく分からなかったのですが、今回はその既往
最大をはるかに超えた地震・津波が襲ったということですから、
「既往最大」なんていう言葉は当てにならないのだと感じています。
そうはいっても、何か基準が必要なことは事実です。阪神・淡路
大震災の時、高速道路がひっくり返った映像を見てびっくりしたの
ですが、今回の地震・津波の発生で、今後日本の土木基準や建築基
準がどう変わるか、ちょっと見当が付かなくなったと感じています。
長野市とすれば、地滑りや土石流の危険のある場所(防災マップ
などで確認できます)の点検、補強工事はやらなくてはいけないで
しょう。
「善光寺地震」では、建物被害は大きかったようですし、善光寺
御開帳の最中だったこともあって死者も多かったとのことです。特
に、信更地区の虚空蔵山(こくぞうやま)が崩壊し、土砂が犀川を
せき止めて、21日間一時的なダム湖になってしまいました。その
後、せき止めた土砂が崩壊し、たまっていたダム湖の水が一気に流
れ出して、善光寺平一円が大水害になったとのことです。当時、重
機などはない時代ですから、手の打ちようがなかったのでしょう。
長野市西部の山地は、比較的崩れやすい地質だと聞いています。
見回り点検と擁壁などの補修工事は、小まめにやる必要があるので
しょう。
いずれにしろ地震による山の崩壊は恐ろしいことです。
もう一つは、自然災害とは言えないかも知れませんが「火災」で
す。
昭和40年代ぐらいまで、火事はかなり多かったと記憶していま
す。善光寺さんも今の場所に再建される前は、元善町の町の真ん中
にあったそうですが、記録に残るだけでも13回、火事に遭ってい
るそうです(もらい火が多かったのでしょう)。そこで当時より北
側の今の場所に移ったそうで、それ以後火事には遭っていないとの
ことです。
木造建物が多かった昭和40年代まで、特に学校の火事が多かっ
たように思います。私が通った城山小学校では、昭和20年代の6
年間に隣接する蔵春閣も含めて3回火事に遭った記憶があります。
昭和48年に市長に就任された柳原市長さんは、そういったこと
を気にされたのでしょうか、市内の小・中学校を昭和50年代前半
までに鉄筋コンクリート造や鉄骨造に改築されました。そのためで
しょうか、味も素っ気もない建物になったと評判は必ずしも良くな
かったのですが、学校の火事は激減したと私は感じています。
昭和56年、建築基準法の改正により、耐震基準が大幅に変わり
ました。その結果、昭和56年以前の建築物は、全て既存不適格と
なってしまいました。
既存不適格とは、違法ではないけれど、いずれ何か増改築などし
たりするときは、適法な建物にしなくてはならないということです。
先ほどお話ししたように、市内の小・中学校は、不燃化を一度に
やってしまったが故に、耐震補強をやらなくてはならない建物が多
くあるとも言えるでしょう。市としては、一生懸命に耐震補強や建
て替えに取り組んでいますが、学校施設だけでも、全て完了するの
は平成31年度の予定です。
これは小・中学校に限った話です。そのほかにも公共の建物はた
くさんありますし、民間建築物は住宅も含めてさらにたくさんある
わけですから、全部終了するのはいつのことか分かりません。
ただ、ここにきて、違う心配も出てきました。
国が公共建築物には、できるだけ木材を使うべきとの指導を始め
たのです。木質系の建物は、優しくて気持ちが良い、日本の森林資
源を活用すべきであるということは分かりますが、強度や耐久性に
は心配もあります。大きな建物は・・・とりわけ火事が心配です。
しかしながら、低層建築物については、小規模の市有施設を中心に
木質建築の促進を図るため、木材の利用促進に関する方針を策定し
ようと検討しているところです。
一時期、国は、震災復興予算を組むために、学校施設の建て替え
への補助金をやめる、あるいは延期することを検討するといった新
聞報道を目にしました。結局そうはならなかったのですが、もしそ
うなったとしたら、国が決めることではありますが、市町村はどう
対処するか、頭を悩ますことになるでしょう・・・。状況は違いま
すが、今回の震災で、あの大地震と大津波に遭っても、写真で見る
限り、しっかりした鉄筋コンクリート造の建物は、残っているので
はないかと感じているのですが。
自然災害が発生した場合の長野市の対応について書いてみました。
来週は、深刻な今回の原発事故と災害の予防活動の大切さなどにつ
いて述べてみたいと思います。
2011年5月5日木曜日
連休の最中
3月11日の大震災以降、世の中の雰囲気が変わってしまいまし
た。長野市においても既にいろいろなところに影響が出ており、困
っていることは事実です。
震災のあった3月中旬は、新年度予算成立に向けて大詰めを迎え
ていた時期です。
新年度予算の具体的な手順についてお話ししますと、担当課が予
算編成に係る基本方針の下、半年以上も前から新年度事業について
議論・検討を行い、関係機関とも調整を重ね、本市にとって必要な
事業について予算要求を行います。その後、財政課が中心となって
編成作業を行い、市議会各会派のご要望も踏まえて原案を固め、最
終的に市長査定を経て、予算案を市議会に提出し審議が始まりまし
た。東日本大震災は、まさにそのとき発生したのです。
提出後は、たとえまだ議決がされていないとはいえ、この段階で、
行政として新たな提案や事業内容の大枠の変更は不可能でしょう。
それが行政のルールだと思っています。そして、3月市議会定例会
の最終日に議決していただいて、4月から執行していくこととなっ
たものです。
従って、未曽有の大震災が発生したから、当初予算の内容を一部
変更もしくは廃止して、その費用を被災地復興のために何とかしよ
う、何とかしなくてはと考えたとしても、予算決定までの手順など
を考えれば、問題が大きければ大きいほど、この時期に予算を組み
替えることは現実的にも時間的にも難しいのです。あえてやろうと
すれば、これまでの多くの関係部局や関係機関・団体との協議も含
めて、行政が一つ一つ積み上げてきたことを否定することになりか
ねませんし、準備不足で予算原案を組み立てることもできないでし
ょう。そのため、長野市としては、予備費を充当して見舞金1億円
を被災地に送ることにしました。
現に国においても、3月までに予算を決めるために、さまざまな
検討、調整そして決定を積み重ねてきているわけで、大震災が発生
したからといっても急な変更はできない。当初予算は決めたとおり
変更せず、震災対応は新たな補正予算で実行しましょう・・・とい
うことになったわけです(既に第一次補正予算は成立、第二次補正
予算も検討中とのことです)。
極論を言えば、国は独自の判断で、補正予算の財源を借金などで
確保することが可能ですが、地方自治体にはそうした余地はないわ
けです。
すぐ対応すべきというご意見はもっともな部分もありますが、こ
れまでの過程を独断で変更することはできません。方向転換するに
は議会との関係も含め、きちんと手続きを踏む必要があるわけです。
こうした中、先ほども述べましたが、長野市としては、災害など
の緊急時の支出に備える予備費全てを充てて、被災地への1億円の
見舞金を盛り込んだ平成22年度一般会計補正予算を3月市議会定
例会において議決していただき送金したほか、人的支援として消防
職員や保健師、事務職員などを派遣。また、市民の皆さんからご提
供いただいた多くの救援物資を被災地に搬送、大勢の皆さんからお
寄せいただいた義援金も日本赤十字社に寄託しました。新年度予算
は変更こそしていませんが、市としてできる支援には、既に全力を
注いでいます。
いずれにしても、当初予算については、本市にとって必要な事業
を予算化しているわけですし、被災地の復旧・復興支援とともに、
被災地以外の自治体が元気を出して取り組んでいかなければ、日本
全体の景気や雇用が沈んだままとなってしまいます。
今後、復興財源の確保のため、国からの補助金・交付金の減額と
いった影響が出るかもしれませんが、所要の財源の中で、市民の皆
さんの暮らしを守り、地域の活性化を図るべく、当初予算の着実な
執行に努めていかなければならないものと考えています。
さしあたり、国が第二次補正予算を組む段階で、財源が足りない
からという理由で、地方自治体へ影響を及ぼすような対応をするこ
ともあるかもしれませんが、そのときはそのときで、市議会とも相
談しましょうと申し上げています。
市民の皆さんが一番望んでおられること、それは地域の経済を元
気にし、雇用を増やすことであると感じています。そのために一番
効果があると思われるのは、公共事業をできるだけ行い、地域にお
金を流すことであろうと私は考えています。
避難して来られた人の受け入れも始めていますが、受け入れにつ
いては、それぞれの事情に応じた対応が必要であると考えています。
じっくり考えて対応しなければならないことがありますし、これか
らさらに多くの人を受け入れる必要があるでしょう。本番はこれか
らです。
最近、被災地の膨大な災害廃棄物(がれき)について、長野市で
どの程度処理できるかという問い合わせが、被災地の自治体から来
ています。遺体の火葬についても問い合わせがあったようです。
いずれにしろ、長期的な視点での対応が必要ですから、短期的に
対応できることは別にして、慌てて対処しようとするのではなく、
将来にわたる長野市の財政状況を考えながら引き続き被災地支援、
復興のために最大限対応していこうと決意しています。
話は少し変わります。
大震災後、日本中に自粛ムードが広がり、あらゆる業種が閉塞
(へいそく)感で苦しんでいます。長野市の重要な産業の観光では、
善光寺さんでさえ参拝客が激減しているとのことで、他は推して知
るべしです。長野オリンピック記念長野マラソン大会・長野車いす
マラソン大会が中止となったほか、私の大好きなスキーやAC長野
パルセイロの試合日程にも影響が出ました。
戸隠スキー場では、大きな余震の心配からお客さんの安全を第一
に考え、リフトの営業本数を減らしゲレンデエリアを縮小しました。
また、スキー場周辺の宿泊施設には春休みということもあり、多く
の予約が入っていましたが、ほとんどがキャンセルになってしまい
ました。聞くところによると、野沢温泉スキー場もお客さんが全然
いなかったとのことです。
私事ですが、3月12日(土)から13日(日)にかけて1泊2
日でスキーに行くつもりだったのですが、11日と12日未明に発
生した地震のため中止しました。その後も自粛し、3月中旬から4
月上旬までに予定していた週末のスキーも全てやめました。残念で
したが、仕方ありません。
毎年の例ですと、そろそろ私のスキーシーズン総決算を「かじと
り通信」に書く時期ですが、残念ながら今年は遠慮させていただき
ます。来年に期待してください。
観光資源の一つに数えているサッカーJFL(日本フットボール
リーグ)についても3月中旬に開幕する予定でしたが、大震災の影
響を考慮し、4月23日まで延期されました。
翌24日、昨年JFLに昇格したAC長野パルセイロの公式戦第
1戦(ホームゲーム)が、南長野運動公園総合球技場で開催されま
した。この試合の相手は千葉県市原市のジェフリザーブズです。J
2ジェフユナイテッド千葉の下部組織で、JFLに在籍して6年目
を迎えたチームと聞いていましたので、かなり緊張して観戦しまし
たが、見事4対0で圧倒的な勝利でした。新チームの結束は素晴ら
しい。滑り出し順調で、ホッとしました。
ただ、サポーター(観客)の数は、発表では2,200人余りで、
J2への昇格条件の一つとなる平均3,000人の目標には足りま
せんでした。もっと多くの皆さんに、球技場に足を運んでいただく
必要があります。
同日、松本山雅FCは、ブラウブリッツ秋田に逆転負けとのこと
でした。でも、観客は6,000人を超えていたとのことで、さす
がです。
30日、第2戦が行われました。相手は、その松本山雅。いわゆ
る信州ダービーです。
私は、この松本山雅がJFLでは圧倒的に強いと思っていますの
で、今回は胸を借りるゲームだと思っていました。アウェーの松本
市のアルウィンで行われたこの試合で、パルセイロは大健闘。前半
早い時間帯で1点先取。前半終了間際に同点にされ、後半は五分五
分の戦いだったのですが、やはり後半終了間際にゴールを決められ、
1対2で負けてしまいました。いずれもロスタイムでの出来事でし
た。最後はパルセイロが力尽きた感じでしたが、今後に十分期待で
きる試合展開だったと思います。1万1,000人を超えるサポー
ターの皆さんが球技場に足を運んでいただいたようで、次の長野市
のホームで行う信州ダービーも、大いに期待できそうです。
3試合目は、ホームに栃木ウーヴァFCを迎えて5月3日に開催
されました。
この試合も、パルセイロは前半早々に1点を先取。その後、両チ
ームが1点ずつを取り合い、2対1で見事今シーズン2勝目を挙げ
ました。今年のパルセイロは期待できます。
サポーターの数も、前回のホーム戦を約400人上回る
2,600人余り。
ぜひ、パルセイロの応援に来てください。みんなで盛り上がり、
そして、日本を元気にしましょう。