9月1日は防災の日ということで、各地で防災訓練が行われまし
た。長野市でも昨年までは、毎年同じような内容で行ってきました
が、今年は少し趣きを変え、9月を防災強化期間と定め、全市的に
できるだけ多くの市民の皆さんに訓練を実践していただき、「地域
防災力」の向上を目的として計画させていただきました。
昨年までの防災訓練は、犀川の河川敷等の広場で全市的な催しと
して行われてきました。市民は勿論ですが、消防団の皆さん、消防
署、水道局等の市職員、警察等の関係行政機関に加えて、通信、電
気、ガス、建設等の関係事業者の皆さんにも参加していただき、防
災活動の具体的体験を行ったり、それぞれの連携を確認したり、県
の消防防災ヘリコプターにも出動していただく等、言わばデモンス
トレーションの要素も大きい行事でした。それはそれなりに有意義
な訓練ではありましたが、もう少し地域防災力を養う方法を考えよ
うということで、今回の試みになったものです。
9月4日土曜日の朝、市役所内に災害対策本部を設置し、震度6
強の地震が発生したという想定のもと、本部長(市長)以下各本部
員が集結し、30分後、1時間後、3時間後の3つのケースについ
て、それぞれどんな連携をとり、応急対策を実施するのか確認作業
を行いました。
途中、インターネット上で公開されている総務省消防庁の「防災
・危機管理e-カレッジ」を利用し、阪神淡路大震災の際にそれぞ
れの公務員が何を感じ、どんな行動をとったか、どう行動すべきか
を見ました。大変有意義だったと思います。
※「防災・危機管理e-カレッジ」ホームページ=
http://www.e-college.fdma.go.jp/
本部長の講評を求められましたので、私からは
1.実際の災害に遭った時、今日のように手際よく対処できるかど
うか心配。
2.報道によると、大被害が発生すると全国からボランティアが押
し寄せるようだが、その受け皿をどうするか、検討しておく必
要がある。
3.市民への広報やメディアへの対応をどうするかが、今日の訓練
には抜けているのではないか、の3点を申し上げました。
続いて城山小学校に移動。第二地区の防災訓練を視察しました。
学校の体育館とグラウンドに、自主防災会長さんを中心に大勢の市
民が集結し、各種の実践活動を体験しておられました。炊き出し、
建物倒壊後の救出に使う道具類の使い方、怪我人に対する手当て等
の実施体験に皆さん熱心に取り組んでいらっしゃいました。
皆さんはご存知だったでしょうか、NTTの新しい試みだと思い
ますが、「災害用伝言ダイヤル171」です。大災害時、離れた場
所に居る家族、親戚、友人が心配して一斉に電話をしてくるために、
電話がかかりにくくなってしまうことは良く知られていますが、そ
の解消のために「171」に電話して「無事ですよ」とか「避難所
にいます」とかを30秒以内で伝言しておくと、遠隔地からでも聞
くことができるサービスで、災害時に限定してご利用可能なもので
す。
携帯電話用の「iモード災害用伝言板」もあります。実際に災害
が起きたとき、固定電話のそばにいる可能性は100%ではありま
せんから、携帯電話の伝言板の方が有効かもしれません(今週、猛
威をふるった台風18号の際にもこれらのシステムが稼動しました)。
いずれにしろ、多様な通信手段の確保と新しいシステムの構築は、
災害対策として大変重要なことであります。
さて「災害は忘れた頃にやってくる」と良く言われますが、本当
にその通りだと思います。現在東海地震だけでなく、南関東、南海、
東南海、宮城沖など海溝型の大規模地震はいつ起きても不思議では
ないという状況であり、また政府発表では長野県内を縦断する糸魚
川―静岡構造線(フォッサマグナ)においてもマグニチュード8程
度の地震が今後30年以内に14%の確率で起こるという計算値を
示しております。
加えてNBC(核・生物・化学兵器)やテロ等(現に長野県庁を
爆破するというインターネット上への書き込みがあったとの報道が
ありました)に起因する災害の恐ろしさも指摘され、こうした災害、
危機に対して、直接地域住民の生命・身体・財産の保護を預かる公
務員の実践的な対応力はもとより、危機に際しての管理能力が問わ
れる時代になったと認識しています。
いざという時の対応の成否を最後に左右するのは、結局人間の力
量であり、災害対応の業務を遂行するためには、高度な判断力と豊
富な危機管理に関する知識の蓄積が求められます。大災害時に失敗
するのは「想像力の欠如」によるものが多く、大災害であればある
ほど、情報が入ってこないということは、阪神・淡路大震災でも明
らかです。少ない情報しか得られないあいまいな状態のなかで重要
な決定を下し得るのは、非常時の想像力です。
米国では、大災害時の対応行動の決定には、一つの原則があり、
普段から責任ある人はこれを常に頭に叩き込んでおくべきだとされ
ているそうです。
1.疑わしいときは行動せよ。
2.最悪事態を想定して行動せよ。
3.空振りは許されるが、見逃しは許されない。
こういう原則を踏まえながら、想像力を発揮する、ということが
大災害時には必要であります。その想像力は、常日頃からの問題意
識の蓄積により養われるものだということです。