3月1日から3月長野市議会定例会が始まりました。定例会は3
月、6月、9月、12月と年4回開催されます(その他、必要に応
じ臨時会もあります)が、特に3月定例会は、新年度の予算審議を
中心に新年度の市政運営の根幹に関わることがたくさんありますの
で、開催期間も長く、市長にとっては緊張を強いられるものです。
長野県でも、2月県議会定例会が始まりました。田中知事の議案
説明で見過ごすことができない発言をされていますので、二つ書か
せていただきます。
一つは、長野市にある長野養護学校を長野市へ移管したいという
発言です。理由は生徒の8割が長野市出身の子どもであるというこ
とと、全国で中核市を含む109の自治体が市(区)立の養護学校
を設置しているからというものです。
まず申し上げなくてはならないのは、養護学校は、学校教育法で
都道府県に設置が義務付けられているということです。確かに他県
で市区町村が設置しているところはあるようですが、その場合多分
いろいろな事情・歴史的経緯があるはずです。109という数字は
施設数であり、設置している自治体の数は61というのが正しい数
字です。合併が進んだ現段階でも市町村の数は約1800以上あり
ますから、設置している自治体が61というのは、全国的にみれば、
ほんのわずかな数です。特殊事情と言ってもよいのではないでしょ
うか。また、8割が長野市の子供であるということですが、それは
長野市の人口が一番多く、また、養護学校が長野市にありますから
多くても不思議ではないと思います。長野市民が多いからという理
由なら、たくさんある県立高校はもっと多いのではありませんか?
ましてやこのような重要な事項にもかかわらず、知事の議案説明
の前日、県教委の職員が市教委に長野養護学校の移管の要望(県教
委のなかでは議論されなかったと先日報道されました)・・・そん
な簡単な問題ではないはずです。どんな案件でも、普通なら庁内で
十分検討した上で県と市の担当者が何度も話し合い、難しい問題な
ら県議会議員や市議会議員の意見もお聞きして、方向を決め、実行
する場合には新年度予算に盛っていくのが手順ではないでしょう
か・・・この件だけでなく、市町村に関係することを事前に協議も
なく突然出すのが知事の姿勢のように思われます。
知事の議案説明で、障害のある子もない子も分け隔たりなく、自
律的・自発的に学べる環境づくりをしていくと言っている県が、自
らの責任とその理念を放棄している行為にほかならないと思います。
私は報道関係の皆さんに囲まれ事情を聞かれ、思わず「県は責任放
棄でしょう」と申し上げました。
もう一つは、浅川治水問題です。知事の発言を議案説明要旨で確
認しましたが、「長野市は浅川と千曲川の合流点の機場の強化だけ
でやれと言っている、一国平和主義みたいでよいのか」という意味
の発言です。
私(この場合は長野市河川課)はそのようなことは言っていません。
この点について少し詳しく長野市の考えを申し上げます。
浅川が千曲川に合流する地点には、農地を水害被害から軽減する
目的で浅川排水機場(浅川最下流に流れてきた水を千曲川に排水す
る施設)があります。千曲川は犀川を含めた上流の地域でたくさん
の雨が降りますと、浅川が合流する付近では、すぐ下流の狭窄部
(川幅が上流に比べて極端に狭くなっているところ)の影響もあっ
て徐々に水位が上昇していきます。その結果、浅川では千曲川に洪
水を流し出すことが出来なくなり、場合によっては千曲川から逆流
し浅川に流れ込んでしまうことがあるため、合流点に設置してある
樋門(逆流を防止するための水門)を閉めます。樋門を閉めると、
浅川では上流から流れてくる洪水が溜まる一方ですから排水機場の
ポンプを運転し、溜まってしまう洪水を千曲川に出すという機能を
排水機場は持っています。
今回、県が示した案は千曲川と浅川が抱えるこのような固有の問
題を解決したいというもので、排水機場の増設と輪中堤、遊水地を
建設することで、一定の目標まで水害に遭うことを無くしたいとい
うものでした。長野市では、水害に遭う恐れのある地域の皆さんと、
随分前から水害をどうやって無くしていくかということを話し合っ
てきていますが、一部老朽化してしまった排水機場の更新と一定量
の増設については地元の皆さんと意見が一致していますので、今回
県から担当課に事前に話があった時に、その主旨を県の担当者に申
し上げました。
どんな“メモ”が県知事に報告されたのかは分かりません。ただ
報告内容が悪いのか、県知事が曲解したのか、あるいはわざと悪意
に解釈したか・・・いずれにしても、これほど重要な事項について
相手に内容確認をせず、一方的に県が書いた“メモ”のみを議案説
明の根拠とすることは、あまりに軽率です・・・長野市の意見は過
去の流れのなかでも明らかなのですから。
また、県が計画した遊水地や輪中堤は地形や現地に設置してある
排水路などの施設と組み合わせて考えてみますと、機能的に目的を
達成出来ないと考えられること、また、仮に洪水を排除あるいは流
入出来たとしても、その管理に要する経費が未来永ごうに渡って河
川管理者に負担を強いることから極めて現実的でないこと、また、
地元住民の皆さんにも環境面も含めて受け入れられないことが予想
されることなども担当課から事前にお話しました。
改めて申し上げますが、県知事の議案説明にあったような発言は
しておりませんし、排水機場の設置によって全量を排水することは
非現実的であり、長野市としても全く考えられないことです。
県知事の発言の翌日、県の青山出納長が浅川問題で説明に来られ
ましたので、冒頭この点を指摘、訂正を申し入れました。出納長の
弁明は、知事の発言内容を知ったのは前日の夜中だったということ
です・・・はからずも知事の県政運営方針について庁内では十分検
討していないこと、多分出納長も変な発言であるということを自覚
しているということを、証明してしまったのではないでしょうか。
浅川治水については、外水、内水に限らず、河川整備計画を国が
認可するかどうかが一番大切です。特に内水については、大きなポ
ンプ(排水機場)で単に千曲川に流してしまえば良いというもので
はないのです。上位河川である千曲川がそれだけの洪水を飲み込め
るかどうかが大切ですから、国はそんな大きなポンプは認めないと
いうことだって考えられるのです。
県は地元に案を発表するなら、まず国と相談し、国が認可する可
能性を探ってからにすべきです。5年も経って、まだ認可される可
能性があるかどうかわからない案を示すことは、問題を混乱させる
だけであり、行政への不信感を増幅してしまうだけと私は思います。
この二つの件、さまざまな信頼感が問われているテーマではない
でしょうか。