2009年8月17日月曜日

公共交通問題について



最近の選挙では、マニフェストの重要性について語られることが多
くなっています。自分の任期(市長の場合は次の4年間)に何を実
行するのか、ということを文章にして市民の皆さんと約束するので
すから、これはとても重要です。
併せて、こちらは、まだ、あまり話題になってはいませんが、マニ
フェストに掲げた内容が本当に実現できたのか、ということを検証
することも重要だと思っています。

そこで、10月の市長選挙に向けて、まず、4年前に私が皆さんと
お約束したマニフェストと、その進ちょく状況を示した資料を提示
させていただきました。進ちょく状況の資料は、長野市が評価した
ものですから、言わば私の自己評価のようなものですが、私が市民
の皆さんにお約束したことがどう実現したのかということを示す資
料としてお読みいただきたいと思っています。
私としては、将来的にマニフェストの進ちょく状況を検証する外部
委員会をつくるような制度の必要性も感じていますが、いかがでし
ょうか。

前回申し上げたとおり、10月の市長選挙に向けたマニフェストに
ついては、現在、詰めの作業をしているところですので、現段階で
はまだ結論が出ていません。そこで、このブログでは、マニフェス
トに盛り込めるかどうかは別として、今、長野市にとって大切なこ
とは何か、ということを書かせていただきたいと思っています。
まず今回は、公共交通の問題について書かせていただきます。

公共交通は、社会の大切なインフラですが、経営している事業者だ
けでは解決が困難ないろいろな問題を抱えるようになってきていま
す。
このような問題を解決するために国では、公共交通の活性化・再生
を通じて魅力ある地方を創出するということで、「地域公共交通の
活性化及び再生に関する法律」をつくりました。この法律が施行さ
れたことで、地域の関係者が連携して取り組む事業に対して、国か
ら総合的な支援が得られるようになったのです。つまり、公共交通
の改善に取り組む地域を国が応援してくれるということです。
現在、長野市では、公共交通関係で以下の三つの協議会を設置し、
検討を行っています。いずれも、この法律に基づいて設置したもの
です。

(1)長野市公共交通活性化・再生協議会
(2)長野電鉄活性化協議会
(3)しなの鉄道活性化協議会

モータリゼーションの進展、都市構造の変化、そして、人口減少時
代を迎えて、公共交通機関の経営が危機に陥っていることは、皆さ
んお分かりのことと思います。これら三つの協議会は、国の支援を
得ながら、関係機関等が集まって、再生に向けてどうしたらよいか
を検討する協議会です。

(1)長野市公共交通活性化・再生協議会
長野市の公共交通の主力であるバスを主体に、検討する協議会です。
長野市では、主として川中島バスと長電バスの二社に、市内及び近
郊の公共交通を担っていただいていますが、両社とも利用者の減少
により厳しい経営状況になっています。
昨年6月、親会社が事業再生計画に基づき金融支援を要請した川中
島バスから、不採算路線廃止などの提案を受け、長野市としては、
当面の問題は処理して市民の皆さんに影響が出ないようにしました。
しかし、対症療法では根本解決に程遠いと考え、前記のバス会社2
社やタクシーなどの公共交通事業者を含め、関係行政機関、公安委
員会、利用者、学識経験者、民間団体、道路管理者などにも加わっ
ていただき、この協議会を設置しました。現在は、ワーキンググル
ープによる検討をしているところです。

(2)長野電鉄活性化協議会
長野電鉄の屋代線では、慢性的な赤字が続いており、経営が難しい
局面になっているとのことから、長野市、須坂市、千曲市の沿線関
係者や長野電鉄など関係機関が集まって設置した協議会です。
長野電鉄屋代線は、大正11年に開通した由緒ある路線で、平成
14年までは「河東線」という名称でした。乗客数は、昭和40年
度の330万人をピークに、平成19年度には、その14.7%、
48万人にまで落ち込んでおり、年間1.8億円の赤字、累積損失
は50億円を超えているとのことです。さらには、近い将来、車両
の更新や、変電所、線路などの施設更新の時期が迫っており、新た
に30億円以上もの多額な投資が必要になってくるのだそうです。
長野市とすれば、関係者が連携して長野電鉄の活性化・再生に資す
る具体的な施策を展開し、沿線地域におけるバス等を含めた公共交
通利用者全体が増加するよう、沿線地域の皆さんと意見交換するな
かで、検討していきたいと考えています。

「長野市公共交通活性化・再生協議会」、「長野電鉄活性化協議会」
とも、専門家のコンサルタントに入っていただいて調査を進めてい
ます。

(3)しなの鉄道活性化協議会
しなの鉄道は、軽井沢-篠ノ井間の鉄道です。長野新幹線の開業と
ともに並行在来線として経営分離されて平成8年に誕生しました。
創業以来かなり頑張って合理化などに取り組んでおり、期間損益で
は黒字を出せるところまで努力してきていただいていますが、残念
ながら乗客数は減少しています。合理化も限界、値上げも限界とす
れば、この経営もなかなか難しい局面を向えているものと考えられ
ます。
こちらの協議会は、長野県、沿線市町及び沿線商工団体、観光団体、
利用者、しなの鉄道が構成メンバーで、事務局は上田市です。

以上、三つの協議会を立ち上げて研究・議論を始めていますが、い
ずれも簡単ではありませんので、この段階で私がマニフェストに結
論を入れることは、好ましくないと判断しています。ただ、長野市
民の皆さんの足を守るために最大限の努力をするということは、お
約束したいと考えています。

三つの協議会の議題ではないのですが、長野市の公共交通機関をめ
ぐる問題はこのほかにもいろいろあります。
一つは、北陸新幹線の金沢延伸に伴う並行在来線の問題です。この
問題は、長野県が責任をもって解決すると、かなり以前に発表して
いますので、安心はしています。しかし、市民の皆さんの生活にも
関係がある路線ですので、長野市としても、県にお任せしていれば
良い、とばかり言ってはいられない問題です。
もう一つ、JR東日本の篠ノ井-長野間の問題もあります。これは、
JRにお任せするより仕方がないようですが、しなの鉄道や並行在
来線の問題ともつながっていることですので、双方の利便性、そし
て、新潟県側のことも考慮して考えなくてはならないと思っていま
す。

また、市町村合併によって引き継いだ市営バスや、需要が少ない中
山間地域で運行している乗合タクシー、社会福祉協議会で運行して
いる福祉自動車、小学校統合によるスクールバス・タクシー、大岡
地区のハッピー号なども公共交通機関としての役割を担っています。
このほか、ご好評をいただいているおでかけパスポート、市内に3
路線あるぐるりん号の位置づけ、あるいはタクシー業界のことも考
慮していかなくてはならないテーマだと考えています。

根本的な問題として、公共交通機関の再生は、お金さえかければ解
決できる話です。言い換えれば、いくらまで市費を投入するのか、
という問題に帰結するのだと思っています。費用対効果が常に問わ
れている、でも、地域の皆さんにすれば移動手段は必要、しかし、
あまり乗っていただけない、そんなジレンマを常に抱えながら、解
決に向けて頑張っていかなくてはいけないテーマです。

2009年8月17日