2009年8月24日月曜日

中山間地域の活性化について



長野市域の面積の70%が中山間地域であることは、皆さんご存知
のとおりです。そして、来年1月1日に合併する信州新町と中条村
も中山間地域ですから、この割合は、もう少し上がることになりま
す。
長野市が旧豊野町、旧戸隠村、旧鬼無里村、旧大岡村と合併して以
来、本年で5年目を迎えたわけですが、この合併はおおむねうまく
いっていると思っています。さらに、2町村が加わりますが、私は
自信を持って、一体感の醸成、元気なまちづくり、都市部と中山間
地域の両立を目指した行政運営を進めていけると考えています。こ
の広い中山間地域を元気にすることなしに、長野市全体の活性化は
あり得ないと思っています。

中山間地域の活性化に向けて私が考えていることを少し述べさてい
ただきます。
日本の経済は、100年に一度の経済危機ということで、昨年の秋
以来、大変な状況になりました。その後、なかなか景気が回復して
こない原因は、いろいろあると思いますが、私が一番の原因だと感
じていることは、“需要不足”ということです。景気回復のために
は、有効な需要を喚起するのが大切だと思っています。

政策の妥当性については賛否両論があるようですが、国も「定額給
付金」や「休日は、どこまで行っても千円」「耐震改修」など、い
ろいろな景気刺激策を実施しています。道路や河川の改修などの公
共事業についても、景気刺激策として昨年よりかなり多くの予算が
支出されていると実感しています。ただ、全般的な景気上昇にはま
だ程遠いのではないか、とも感じています。公共だけでできること
には限りがあるということでしょうか。

円高で輸出が伸びないことも原因の一つでしょう。ですが、逆に輸
入資材は実質値下がりしているのですから、国内需要を増やすこと
が、今一番重要なのではないでしょうか。その国内需要がどこにあ
るか?ということが、これからの大きなテーマになると思っていま
す。

まだ限られた範囲ではありますが、ここ最近、グリーン・ニューディ
ール政策に関連する分野でかなり需要が出てきていると言われてい
ます。ハイブリッド車や電気自動車、太陽光発電のパネル、エコポ
イント商品などが典型的な例であり、これらは今後の成長分野にな
るのでしょう。

長野市としても国の景気刺激策に乗り、国の予算を取り込むことで、
できる限りの努力をしています。また、プレミアム付き商品券「な
がの“きらめき”商品券」を5億5千万円分発行し、市内の需要喚
起もしてきました。これらの施策は、それぞれ効果があったと思っ
ているのですが、規模の問題もあり、地方自治体としてできること
の限界を感じていることも事実です。

結局のところ、長野市にとってこれから最も可能性があるのは、
「農業分野」と「中山間地域活性化」ではないかと思っています。
言い換えますと、今まであまり重視されてこなかった、ある意味で
は、これまで投資不足だった分野に対してできるだけの投資をして、
高い生産性のある分野に育てることが重要だと思っています。
もちろん資金だけでなく、人が大切ですから、農業に、そして中山
間地域に人を送り込む仕組みづくりも必要でしょう。

以上、なぜ農業や中山間地域に注目しているかという、私の考えを
述べさせていただきました。具体策について、一部ではありますが、
もう少し触れさせていただきます。

(1)農業は、決して儲からない産業ではないことは、さまざまな
工夫や努力をして多くの収入を得ている方々がいらっしゃることで、
証明されています。確かに世界貿易機関(WTO)が進める貿易の
自由化により、農畜産物の輸入量が増大し、販売価格が低迷してい
ることで、日本の農業が圧迫されているのは事実でしょう。しかし、
それを跳ねのけて、大きな需要を獲得している農業者がいることは、
今後の農業振興にとって大きな希望です。
農業で生活していける人をもっと増やしたいと思っています。長野
市では、新たな農業者のやる気を醸成するために、新規の認定農業
者に奨励金を差し上げたり、セミナーを実施したりして、農業人口
の増加に努力しています。今後は農地の斡旋もしなくてはいけない
とも考えています。

(2)一般的に現在の農業に対しては、マーケテイング不足、高齢
化による人手不足、組織化できていない、機械化しても規模が小さ
すぎて効率があがらない、などの課題が挙げられています。これら
の課題については、集落営農や農業法人を立ち上げることで、解消
できるよう支援をしています。

(3)長野市農業公社を立ち上げて、農業を応援する体制も整えて
います。公社が取り組んでいる仕事を羅列してみますと、
・農産品を積極的に販売するため、農産物加工品ブランド「ながの
いのち」を立ち上げました。アンテナショップも中央通りに開設し
ています。
・土地の集約化に努めています。
・大型農業機械の貸し出しをしています。
・人手不足を補うため、「お手伝いさん」を募集し、有料ボランティ
アとして農家に派遣しています。
・都市部との交流事業ということで、農家民泊や農業体験を盛り込
んだ都市部の学校の修学旅行を受け入れており、かなり盛り上がっ
てきています。
・中山間地域に絞った施策としては、県との共同作業ですが、薬草
栽培に取り組みはじめました。また、バイオマスエネルギーの利用
も視野に入れています。

(4)農地を守ることも大切だと思っています。雇用の確保やまち
を元気にするためには、企業にも進出してほしいと思っています。
ただ、それには、それなりの面積をもった用地が必要になります。
これまでは、その対象として農地を割いてきました。しかし、長野
市の農業を守るためには、無制限に都市化することは許されません。
農地を保存していくということも併せて考えながら、用地を確保し
たいと思っています。

長野市には、広い中山間地域が存在しています。一方で、約40万
人もの人が住んでいる都市という性格も持ち合わせています。中山
間地域問題は、日本中が悩んでいる問題ですが、中山間地域と都市
部とが近接しているという特性をもつ長野市だからこそ、一つの自
治体内で、中山間地域と都市部が両立する考え方が必ず生まれるは
ずだと、私は信じています。

2009年8月24日