2012年9月13日木曜日

農業を生かした地域づくり


 高齢化などによる農地の荒廃と遊休農地の増加は、長野市だけで
なく多くの自治体が抱える課題です。こうした中、若槻地区住民自
治協議会の「コミわかグリーン倶楽部」が、遊休農地の活用策とし
て取り組む市民菜園(約70アール)が人気だと聞きました。その
取り組み方法などについてぜひ話をお聞きしたいと思い、同倶楽部
元代表理事で長野市監査委員でもある轟光昌さんを市役所にお呼び
し、関係部局長も出席して勉強会を開きました。

 同倶楽部は、雑草が生い茂るまでに荒廃した農地を地権者から借
り受け、土壌を整備し、区画割りをして、市民菜園として市民に貸
し出すことを目的に発足しました。市民菜園「コミわか農園」は住
宅地に近接していることもあり、定員を超える申し込みがあるほど
順調とのことです。なお、同倶楽部は、指定管理者として近くにあ
る蚊里田市民農園(サラダパーク蚊里田)の管理・運営も行ってい
ます。

 しかし、轟さんによると、2010(平成22)年の倶楽部設立
から今日に至るまでには、さまざまな苦労があったそうです。
 当初は住民自治協議会の事業として行うことを考えていたそうで
すが、法人格を持たない住民自治協議会では市民農園の運営は不可
能ということが分かり、一般社団法人として同倶楽部を立ち上げま
した。水利用のために用水組合の許可を取ることや、元水田のため
新たに土を入れて畑用に改良するなどしなければなりませんでした。
また、区画の測量や区画割りは、地元の長野工業高等専門学校の生
徒さんにもお手伝いいただいたそうです。

 その後、利用者を募り、抽選を行い、契約する運びとなったわけ
ですが、利用者の約半数の皆さんが農業の素人ということで、倶楽
部が講習会を開催して野菜栽培の「いろは」を指導したり、定期的
にパトロールをして困り事などの相談に乗ったりもしているそうで
す。
 また、周辺住民から、堆肥が臭う、野焼きをしている、機械の音
や話し声がうるさい、路上駐車や駐輪が迷惑といった苦情もあった
そうで、モラル向上の啓発活動を行うなど、貸し出しを始めてから
もさまざまな対応が必要であったとのことです。

 小田切地区住民自治協議会でも、100万円の長野市地域やる気
支援補助金を受けて、5月下旬から新たな取り組みとなる農業塾
「小田切うんめえ塾」を立ち上げました。市街地の住民との交流を
促進し、農産物や地域の魅力を発信することを目的としています。
長野市農業委員の酒井昌之さんを塾長に、荒廃農地約37アールを
整備し、ソバや野沢菜、大根などの栽培に活用するとのことです。
初回のソバの種まきには、市街地などから定員の2倍近くに当たる
約40人が集まったそうです。

 2つの事業を紹介しましたが、轟さんの言葉をお借りすれば、住
民自治協議会という公的な組織の事業であることが、利用者にとっ
ては安心であり、信用できるのだそうです。私としては、各住民自
治協議会に一つずつ法人をつくり、「もうかる事業」を手掛けても
らいたいと思っています。住民自治協議会には、事業の規模が大き
くなればなるほど、経理などの専門知識を持った人が欠かせなくな
るでしょうが、やはり行動力あふれるリーダーが何よりも必要です。
良きリーダーとなる人を探すことが一番大変だなあと感じています。

 農業に関する元気な話題といえば、小・中学生農家民泊事業が本
年も好調です。
 この事業は、昨年度から急激に成長していて、芋井・信里・七二
会・信更・鬼無里・大岡・中条地区において実施されています。昨
年度は37校、4,139人もの小・中学生を受け入れました。本
年度はこれまで43校、6,816人と昨年度を大きく上回る人数
を受け入れています。なお、鬼無里地区では、東日本大震災で被災
した岩手県大槌町の吉里吉里(きりきり)中学校の1年生24人を
招待しました。
 中山間地域の活性化のための大きな事業として、より魅力的で、
かつ、安全な受け入れ体制を構築したいと考えています。

 遊休農地の活用や農家民泊事業といった取り組みは、地域の実情
や特性を生かし、自分たちの地域が元気になる素晴らしいものだと
思います。みんなで知恵を絞り、汗をかくことから、いろいろな可
能性が広がっていくのだと思います。小さな取り組みが、いずれは
地域色豊かな独自の事業に成長する。他の地域にはない「これこそ
自分たちの地域の誇るもの」を発信することが大事なのです。