本市では、2005(平成17)年に合併した豊野・戸隠・鬼無
里・大岡の4地区に、「市町村の合併の特例に関する法律」に基づ
く地域審議会を設置し、地域の重要課題の解決などについて審議し
ています(2010(平成22)年に合併した信州新町・中条地区
については、合併協議中に、住民自治協議会設立に向けての検討委
員会が既に立ち上がっていたので、同じような組織を2つ設置する
必要はないということになり、地域審議会を設置していません)。
4地区の各地域審議会の委員の皆さんとは、年に1度、地域にお
ける課題や要望などについて意見交換をするため、懇談会を行って
います。8月29日に開催した本年度の懇談会では、豊野支所庁舎
の2階空きスペースの有効活用、戸隠地区の滞在型観光地づくり、
鬼無里地区の雇用の場を創出するために、長野森林組合の木質ペレ
ット燃料製造の推進や鬼無里小学校と鬼無里中学校を小中一貫校と
した場合の空き校舎を利用した高齢者向け福祉施設の誘致、大岡地
区の定住者増加策に関連する大岡保育園の存続など、それぞれの地
域に密着した話題について懇談しました。
豊野支所庁舎の空きスペースについては、合併直後に金融機関か
ら入居の申し入れがあり、使用料を頂いて1階に入ってもらってい
ますが、最近になってようやく、空いている2階にも来年4月から
北信農業共済組合が入ることが決まりました。使用料はもとより、
会議室の改装や組合の公用車駐車場整備のための費用は、全額農業
共済組合に負担していただけるので、ありがたいことです。また、
さらに空きスペースになっている旧議場については、豊野地域審議
会の会長さんから、地域の皆さんの芸術文化活動・コミュニケーシ
ョンの場として使用したいと要望を頂きました。しかし、隣接する
公民館の利用率が低いため(5割程度)、今の段階で新たに整備す
ることは難しいと説明しご理解を求めるとともに、より広い観点か
ら有効活用できるかどうか検討していきたいと申し上げました。
戸隠地区における滞在型観光地づくりの話題の一つとして、地域
の方から次のような話を頂きました。「38年ほど前に渡欧した時、
スイスのツェルマットという町では、地区外からマイカーを一切入
れず、タクシーや馬車、電気自動車で移動していた。本当に魅力的
な町で、戸隠に重ね合わせて見ていた。その場しのぎの計画ではな
く、何十年先はこうありたいという思い切った計画も大事。ドイツ
でも、環境に配慮し、自動車をシャットアウトした観光地があるが、
現在非常に多くのお客さんを集めている」といった内容でした。
合併当時、戸隠地区の皆さんがそれまで検討を重ねてつくり上げ
てきた構想の中に、中社地区や宝光社地区をバイパス道路で結んで、
神社前の通りに自動車を入れないようにしたいというものがあった
ことを覚えています。地形的にはかなり難しいと思いましたが、実
現できれば素晴らしいと感じたことは事実です。
鬼無里地区の木質ペレット燃料製造などによる雇用創出の話題は、
65歳以上の人口が地区全体の50%を超え、過疎化、高齢化が切
実な問題となっている実情が背景にあります。「山あいの地区では
70歳以上の高齢者世帯が占める割合が突出して高く、草刈りなど
の公益活動を続けていくことが難しい」「地区役員の選出などに大
変苦労している地区がある」「現在ある巡回販売や宅配サービスも、
採算面から廃止されることも想定され、買い物困難者の増加が危惧
(きぐ)される」「地元雇用の場が減って若者や子どもの数が減少
し、小学校への新入生は年に4~5人という状況が続く見込みであ
る」などのさまざまな課題が出されました。また、高額な通学費が
ネックとなり、子どもの高校進学を機に家族で地区外へ転出する例
があるなど、高校がない地域における通学に関して何らかの対策を
要望されました。
なお、本市では、こうした状況を踏まえ、中山間地域を対象とし
た買い物困難者や草刈りなどの状況調査を始めました。調査結果に
基づき、中山間地域の支援策のさらなる検討を積極的に行いたいと
思います。
大岡保育園の存続については、「若い定住者が困ることのないよ
う、大岡保育園を存続させてほしい」との要望を頂きました。私か
らは、「大岡保育園のように著しく園児が少ない保育園では、集団
保育の実施や効率的な施設の運営の観点から課題がある。住民自治
協議会や保護者の皆さんと園の存続について協議しているが、現在、
社会福祉審議会で審議している『長野市公立保育所の適正規模及び
民営化等基本計画』の結果を踏まえた上で、一定の結論を出したい」
と申し上げ、意見交換の結果、来年度については、本年度と同数の
園児が見込めることから、運営を継続することにしました。
この4地区に限らず、また人口や面積の大小に関係なく、各地区
にはさまざまな課題や要望があり、地区の皆さんからは、要望活動
や元気なまちづくり市民会議などを通して、数え切れないほどの要
望を頂いています。行政としては、緊急性や地域性を十分考慮した
上で、できる限り対応するよう努めていますが、これからの地域づ
くりを進めていくためには、行政に「これをやってほしい」と要望
するだけではなく、今まで以上に「自分たちはこうした活動をやり
たい。そのために行政はこのような支援をしてほしい」という発想
を大切にしていただきたいと考えています。
市の地域いきいき運営交付金、地域やる気支援補助金、やまざと
支援交付金や、県の地域発元気づくり支援金など、県も市も支援メ
ニューを用意し、地域のやる気を積極的に支援しています。草刈り
などの道路整備や遊休農地解消に向けた農作業支援でもいいのです。
そして、いずれは、こうした作業のために人を雇用すること(他の
地区から雇ってもらっても構いません)などにも範囲を広げたいと
考えています。「自分たちのまちは、自分たちがつくる」。主役は
地域の皆さんです。住民自治協議会が地域コミュニティーの核とし
て頑張ることを期待しています。
話は変わります。昨日19日に浅川ダムの建設現場で定礎式が開
催され、出席しました。定礎式とは、ダム基礎部分の立ち上がりを
記念するとともに、清められた礎石をダム本体に納め、ダム工事の
安全と完成するダムが永久堅固で安泰であることを願うものです。
1971(昭和46)年の予備調査から始まった浅川ダムの治水
対策は、実に40年余りの歳月を経て、ようやく大きな節目を迎え
ることができ、「一つの区切りだなあ」と感じました。
「脱ダム宣言」による大混乱がなければ、浅川ダムは既に完成し
ていたはずで、振り返ってみると、「本当にいろいろなことがあっ
たなあ」というのが正直な感想です。
行政の最も基本的な責務は、住民の生命と財産を守ることです。
今後は、一日も早くダムが完成することを願うとともに、浅川下流
域の内水対策をはじめ、中流域の堆積土砂撤去、上流域の土砂流出
対策など、残された事業が早期に進められ、浅川流域全体が一日も
早く、安全で安心して暮らせる地域となるよう、さらに気を引き締
めて取り組んでいかなければならないと思っています。
もう一つ、新たな時代に向けて大きくかじを切ったと感じた出来
事は、政府が「2030年代の原発稼動ゼロ」という方針を打ち出
したことです。ただし、閣議決定の文言には「原発ゼロ」は盛り込
まれず、具体策を明記した文書(「革新的エネルギー・環境戦略」)
は参考扱いとされるようですから、何も変わっていないと感じてい
ます。
原発については、いまだに議論が尽くされておらず、今後解決し
なければならないさまざまな課題があると思っています。再生可能
エネルギーについて、利用をどれだけ拡大できるのかまだ明確には
分かりませんが、本市としては、最大限利用できるよう努力してい
きたいと思っています。