2013年4月11日木曜日

中山間地域振興のための新たな一手・・・


 中山間地域を何とかしたい、元気にしたい・・・これは私にとっ
て大きなテーマです。
 しかし、これは全国共通の問題で、なかなか決め手がないのが実
情です。「理念だけではどうにもならない。具体的な手段を考えよ
う」。都市内分権に踏み込んだのも、ある意味、この問題が頭にあ
ったことは事実です。
 1月10日のかじとり通信で、「私の需要喚起策」として中山間
地域で未利用となっている土地の国有化を提案したのもその手段の
一つなのですが、これは国家への提言ですのですぐに実現できると
は思えません。それとは別に具体的な政策を考えるべきだろうと、
日々思案しています。
 こうした中、中山間地域の振興のために本年度から新たに創設し
た制度や地域の取り組みなどについて紹介します。

1 長野市やまざとビジネス支援補助金
 この制度は、市域の面積の約4分の3を占める中山間地域で、地
場野菜などの地域資源を生かした事業の拡大や起業を目指す事業者
に1千万円を上限に補助するもので、4月8日から希望者の募集を
始めました。募集は5月13日までですが、長野市ホームページや
新聞に掲載されたその日から、市内はもとより県外からも問い合わ
せがあるそうです。

 想定している事業としては、
○リンゴ、桃、大豆などの農産物を活用したジャム、おやき、お菓
 子などの加工食品の製造・販売
○農家レストラン、ジビエ料理レストラン、農家民宿の運営
○インターネットビジネスによる農産物の販売や空き家・空き店舗
 の活用
○高齢者の見守りを兼ねた買い物代行 などです。

 この制度は、「副市長プロジェクト」により庁内関係部局の積極
的な議論を重ね創設したもので、中山間地域の地域資源を活用して
「ビジネス」を展開し、地域における雇用の創出や地域内への経済
波及、地域の課題解決など、地域の活性化につなげることを目的と
して、地域内外の個人や団体が実施する事業に対し補助金を交付す
るものです。
 
 私は常々、中山間地域の振興には「もうかる農業」が必要不可欠
だと申し上げていますが、農業で高い収入が得られれば、地域に雇
用を生み、継続性が高まり、中山間地域の振興に必ずや貢献するも
のと信じています。この補助金が具体的にどのような効果を生み出
すか・・・。過去いろいろな事業をやっていますが、どうもうまく
いきませんでした。「兵力の逐次投入はいましむべし」ということ
わざのとおり、この際大規模に補助をしていくことにしました。

 多くの反対者がいるTPP(環太平洋経済連携協定)への参加も、
安倍首相が交渉参加に踏み切った以上、ただ反対していても意味が
ありません。いかに対処するかを考え、必要であれば国に対し支援
策を要求すべきと考えます。ピンチはチャンスと考えましょう。農
業に関していえば、農産物の品質では海外に十分太刀打ちできるは
ずです。もし価格が下がったら、その分を国が補償する考えを施策
として要望すべきだと思いますし、国でも検討を始めたという新聞
報道がありました。

 昭和40年ごろでしたか、自動車の輸入自由化の論議が華やかで
した。当時は、「自由化されたら、自動車産業は壊滅する」と言わ
れていました。でも、結果はどうでしたか・・・。
 確かに事情は違いますし、「夢みたいな話をするな」と言われそ
うですが、私は自由な競争の中で、強い産業をつくっていくことが
必要だと思っています。

2 小田切地区「うんめえ塾」
 小田切地区住民自治協議会では、復元した遊休農地を農作業体験
の場として提供する「小田切うんめえ塾」の塾生を募集しています。
若者の流出、高齢化といった中山間地域共通の課題を小田切地区も
抱えていますが、遊休農地を活用し、市街地などから多くの人に訪
れてもらい、おいしい農産物や住民との交流など地域の魅力を発信
することを目的としています。地区の活性化につなげようと始まっ
た「うんめえ塾」(塾長は、長野市農業委員の酒井昌之さんです)
は今年が2年目で、昨年9月13日のかじとり通信でも紹介させて
いただきました。ジャガイモや野沢菜、大根、ソバの栽培など3コ
ースがあり、参加費は1回200円です。
 昨年の様子については、長野県地方自治研究センターが発行する
機関誌「信州自治研」2013年3月号でその盛況ぶりが報告され
ていますが、参加者の満足度や今後の課題について参加者へのアン
ケート結果を基にしっかり検証されています。一過性のイベントで
はなく、「自分たちの地域を活性化させたい」という地区の皆さん
の熱い思いが伝わってきます。「自分たちの地域は自分たちでつく
る」。地域のこうした元気な取り組み、挑戦に、私も励まされてい
ます。

3 若穂地区に食肉加工センターを建設
 野生鳥獣による農林業被害は、年々増加しています。2012
(平成24)年度の野生鳥獣の捕獲実績は、イノシシが571頭、
ニホンジカは229頭ですが、捕獲されてもほとんどの場合埋設処
分されていました。こうしたことから若穂地区では、この捕獲され
た獣肉を新たな地域資源として有効活用し、地域産業の活性化と有
害鳥獣に負けない地域を目指し、若穂ジビエ振興会を設立して若穂
保科高岡地区に食肉加工施設を建設しました。
 
 施設は既に完成しており、これから食肉処理業および販売業の食
品営業許可を取得し、6月から稼動を始める予定です。しかし加工
が進んでも、消費の拡大が伴わなければ在庫を抱えてしまいます。
そこで、市としては若穂ジビエ振興会や市内飲食店、食品関係業者
などと連携し、ジビエメニューの開発や家庭で手軽に調理できるレ
シピを研究・作成するなどして普及を進めます。また、食肉を飲食
店へ卸すとともに、一般消費者向けにスーパーなどで店頭販売する
取り組みも進め、消費の拡大を図ります。
 食肉の販売が進めば、捕獲者の捕獲意欲も向上し、捕獲の促進が
図られ、有害鳥獣による農林業被害も減少します。地域の活性化に
つながるものと期待しています。

4 北信農業共済組合事務所の移転
 私はこの2月、北信農業共済組合の組合長理事に就任しました。
そしてこのたび、同組合は、岳南、岳北、長野、須高の旧支所を廃
止し、新しい事務所を豊野支所2階に統合・移転し、4月3日に開
所式を行いました。平成17年1月の市町村合併以降、豊野支所庁
舎の空きスペースの活用も課題であったため、長野市にもメリット
のある移転となりました。

 農業共済というのは、農家が自然災害による被害を受けた場合、
その損害を、農業者の皆さんが出し合った共済掛金などを原資とし
て国が補償する一種の保険制度であり、農業を強化するための施策
の一つなのですが、この保険の充実を国に要望することも農業振興
には必要な対策ではないかと考えています。すなわち、共済金の支
払い対象の中に「農産物の価格の低下」も入れてほしい・・・これ
についても、国が検討を始めたという報道がありましたが、一考に
値する施策と考えていますし、実現に向けて国に要望していこうと
思っています。農業共済組合と国が、一体になって補償することが
大切だと考えます。

 TPP対策として、組合自体の業務の効率化・合理化は当然です
が、一番強化しなくてはならないのは、農業で生計が成り立つため
の施策です。TPPで農家の皆さんが一番恐れているのは、外国か
らの安い農産物の輸入によって、国内農産物の価格が下落し、農業
だけでは食べていけなくなることでしょう。

 近年の農業を取り巻く状況は、農業就業人口の減少、高齢化の進
行、TPPの交渉参加などますます厳しくなっています。農業共済
制度につきましても、TPPの参加を前提にした対策の一つに考え
るべきです。