今年の長野市議会3月定例会は、長野市を中心に行われている
「2005年スペシャルオリンピックス(SO)冬季世界大会・長
野」の日程の都合で、2月25日に始まりました。今週は、この3
月定例会で、私の施政方針として述べた概要をお伝えするものです
が、内容は2月25日の時点であることをご理解いただきながら、
お読みいただければ幸いです。
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「はじめに」
世界86の国や地域から約2,700名の選手団が参加する「2
005年スペシャルオリンピックス冬季世界大会・長野」が、エム
ウェーブで行われる開会式をスタートに開催されます。準備期間の
短い中で、なんとか開催にこぎつけた大会ではありますが、7年前
の長野冬季オリンピックを凌ぐ選手団が長野市を訪れます。世界か
ら集まる人々を温かく迎え、知的発達障害を乗り越えて頑張るアス
リートに大きな声援を送ることで、アスリートから素晴らしいメッ
セージが得られることと思います。この大会期間中は、感動に包ま
れた長野が世界で一番温かい地域になるはずです。我々が目指す障
害者理解の促進や心のバリアフリーを育むには、時間がかかります。
しかしこの大会で多くの市民の皆様が知的発達障害のあるアスリー
トと接することで、それらが大きく促進されることと思います。
「施政運営所信」
私は、平成13年11月に市長に就任して以来、市民の皆様との
パートナーシップによる「長野改革」を推進し、「元気なまち な
がの」を実現するため、今日まで、全力を挙げて市政運営に取り組
んでまいりました。
この間、景気低迷による税収の落ち込みや国の三位一体改革によ
る財政への影響、さらに、本年1月の合併により本市は大転換期を
迎えております。その中で、ようやく昨年、「長野改革」の礎とな
る具体的な方法論が出来あがりました。一つは、市民の皆様との協
働で進める「都市内分権」を市民の皆様に提案したこと、もう一つ
は、市政運営の原動力たる職員の資質向上を目指す「人事評価制度」
を構築したことであります。私は、この2つを焦らず慌てず一歩づ
つ着実に推進することによって、必ずや市民の皆様が長野市民とし
ての誇りと生きがいを持ち、魅力と活力のある社会が実現できるも
のと信じております。
行政は総花的ですべての施策・事業が重要でありますが、私は、
敢えてその中から、平成16年度の重点課題として、「市町村合併
と都市内分権の推進」、「行政改革の継続と民間活力の導入」、
「廃棄物処理対策の充実」、「教育環境・内容の充実」、「公共交
通機関を柱とした交通体系の整備・充実」の5項目を挙げて、一生
懸命取り組んでまいりました。紆余曲折を経ながら、ようやく少し
ずつ前へ進み始めたというのが実感でございます。
新年度を迎えるに当たり、更にこれら事業の推進、問題の解決に
精力的に取り組み、私の残された任期を、堅忍不抜(けんにんふば
つ)の志で大転換期の市政の舵取りをいたす決意であります。
現行の「第三次長野市総合計画後期基本計画」は、社会経済情勢
の変化や時代の潮流を踏まえ、前期基本計画の計画期間の完了を1
年早めて引き継ぎ、平成15年度にスタートさせたものです。その
ような中、少子高齢社会が予想以上に進み、まもなく人口減少社会
が到来すること、さらに、合併により中山間地域が大幅に増加し、
自然や観光資源が豊富になった反面、人口密度が低下したことなど、
今後の市政運営に大きな影響を及ぼす要因が増えたことから、新市
にふさわしい「第四次長野市総合計画」を策定してまいりたいと考
えております。
我が国は成熟社会と言われて久しく、物が溢れ、飽食の時代であ
ります。そして、市民ニーズは量から質に、経済的な豊かさから精
神的な豊かさに、その価値を求めるようになってまいりました。こ
の価値観の変化に応えて市民満足度を向上させるために、これまで
の効率化や利便性を重視し、交通網整備や高度情報化などを追求し
てきた「スピード社会」志向だけでなく、文化や伝統など、長い間、
先人が手間をかけて築いた「スロー社会」によって育まれたものを
見直そうとする機運が生まれてきました。今、改めて地域の文化・
伝統を保存・再生することに重点を置いた「スロー社会」の大切さ
が見直されております。
本市は合併により市域が広がりましたが、この「スピード社会」
と「スロー社会」の共存を目指したまちづくりを進め、市域すべて
を画一的にするのではなく、各地域の特色を生かした多軸型都市を
目指す、そのために第四次長野市総合計画を策定してまいりたい、
と考えたわけです。
国の三位一体改革は、その内容が明らかになるにつれ、本市にと
って予想以上に厳しいものとなりました。国庫補助負担金の廃止・
縮減の振り変わりとされる税源移譲は十分でなく、地方交付税も実
質的には減額となっております。さらに、景気低迷等により自主財
源の根幹をなす市税収入の落ち込みなどにより厳しい財政環境とな
っており、これまでも、事務事業の見直しや徹底した経費の節減に
努めてまいりましたが、既存の枠組みの中での見直しには限界があ
り、構造的転換を図らなければならない時期にきております。
平成14年度、15年度は、基金をほとんど取り崩すことなく、
有利な起債等を活用しながら、入りを量り、出ずるを為してまいり
ましたが、今年度、そして、新年度は、基金の大幅な取り崩しを余
儀なくされております。そこで、まだ財政的な体力に余力のある今
だからこそ、将来にわたる市の健全財政の堅持を目指し、本市財政
の構造的改革に取り組む必要があると考えております。このため、
本年3月に外部有識者による「長野市財政構造改革懇話会」を設置
し、新年度中には新たな財政基盤の確立を図ってまいりたいと考え
ております。
「重点課題」
一つ目は、行政改革の更なる継続と民間活力の導入であります。
行政改革については、行政改革大綱及び実施計画に沿って、既存の
枠組みや従来の発想にとらわれず、民間委託・民営化の推進、さら
に、指定管理者制度の活用を積極的に進め、市政全般にわたって、
効率的、かつ、効果的な行政運営改革に取り組んでまいりたいと考
えております。なお、行政評価については、事後評価、補助金・負
担金等の評価、及び、翌年度の新規事業の事前評価を実施し、新年
度の予算編成に反映いたしました。
二つ目は、都市内分権の推進であります。地方分権の進展による
自治体の役割の増大や、住民自治と地域コミュニティの重要性が再
認識されており、本市では、将来を見据えて現在のコミュニティ活
動や行政サービスを更に向上させるため、職員レベルにおいて「長
野市版都市内分権」の調査・研究を進めてまいりました。都市内分
権は、地域住民と市との協働による取り組みの中で、地域の課題を
迅速かつ効果的に解決するための新しい仕組みとして提案している
ものであり、実施に当たっては、市民の皆様の御理解と御協力が不
可欠であります。
三つ目は、中心市街地の再生であります。中心市街地の活性化に
ついては、「中心市街地活性化基本計画」を策定した3地区の内、
長野地区は、策定後5年を経過しました。この間、策定当時予想し
ていなかった中央地域の大型店の相次ぐ倒産・撤退、空き店舗の増
加などが起こる一方、もんぜんぷら座の取得、市街地再開発の進展
など、中心市街地を取り巻く環境が大きく変化しております。そこ
で、新年度は中心市街地活性化の柱である居住について「都心居住
促進等調査」を実施するとともに、市民と協働によるまちづくりを
推進するため、市民が組織する団体が一定の地域の公共施設の環境
美化活動を自主的に行う「表参道アダプト・プログラム(環境美化
里親制度)」を新設するなど、中心市街地の活性化に向けた取り組
みを推進してまいります。(中心市街地の活性化についての取り組
みは、2月3日配信のメルマガ145号でご紹介しました。)
四つ目は、地域産業・経済の活性化であります。景気回復への足
取りはまだまだ重い状態が続いておりますが、新年度は、新産業の
創出・育成、魅力ある食文化の創出、さらに、観光交流の推進を図
り、本市への経済波及効果の向上に努めてまいります。
五つ目は、中山間地域の振興であります。合併により広大な面積
を擁することになりました中山間地域は、美しく豊かな自然に恵ま
れていると同時に、水源の涵養や洪水の調整などの多面的機能は大
変重要な役割を果たしており、都市部と均衡ある発展を図る必要が
あります。
六つ目は、学校教育の充実であります。将来を担う子どもたち一
人ひとりの個性・能力や創造性を伸ばし、心豊かでたくましく、責
任をもった行動が出来る子どもを育むため、新年度も積極的に学校
教育内容の充実や学校環境の整備を図ってまいります。
七つ目は、子育て環境の整備であります。今年度中に、平成17
年度から向こう5年間の「長野市次世代育成支援行動計画」を策定
いたしますが、新年度は、経済団体等との連携を図り、仕事と子育
てが両立できるよう、より一層の推進を図ってまいります。また、
児童相談に関する体制の充実を図るとともに、虐待をはじめとする
要保護児童の早期発見や適切な保護をするため、関係機関からなる
連携組織をつくってまいります。さらに、子育てに関する不安の軽
減や各種情報の提供、民間保育所の保育士の加配、私立幼稚園の運
営補助、また、子育て支援センター、休日保育、一時保育等の特別
保育事業の充実に努め、子育て支援を推進してまいります。
八つ目は、公共交通機関を柱とした交通体系の整備・充実であり
ます。本市では、市民の移動手段の確保と、分かりやすく利用しや
すい公共交通網の実現に向け、「長野市バス路線網再編基本計画」
を策定中であります。本年1月から実施しましたパブリックコメン
トに基づき、市民の意見を計画に反映し、3月末には計画を策定す
る予定であります。
九つ目は、高度情報化の推進であります。新年度から、長野市行
政情報高度化推進計画」に基づき、順次、ケーブルテレビ施設を整
備するとともに、電子市役所の構築、インターネットを活用した映
像配信システムの構築を推進してまいります。
最後に、環境対策の充実であります。今日における様々な環境問
題に対しましては、「地球規模で考え、地域で行動する」ことと
「市民・事業者・行政が協働して自主的に取り組む」ことが大変重
要となってきております。
本市では、平成12年に「長野市環境基本計画」を策定いたしま
したが、環境問題の変化を踏まえて新年度に見直しを行い、環境の
保全と創造に関する施策を推進してまいります。また、この計画を
推進するため、市民、事業者、行政の協働組織である「ながの環境
パートナーシップ会議」を設けておりますが、更に関心を高めてい
ただくために積極的にPRを行い、より多くの市民、事業者の皆様
に加入いただきまして、「アジェンダ21ながの-環境行動計画」
に掲げられた様々なプロジェクトを具体的に推進してまいります。
「むすび」
今、国をはじめ、各都道府県・市町村においても、行政改革を前
面に打ち出して取り組んでおります。もちろん、私も行政改革を本
市の最重要課題として取り組んでまいりましたが、私が思う行政改
革の本質は、「分かりやすい行政」、「市民参加の行政」、そして、
「行政コストの軽減」の3つにあると考えます。私は、市民とのパ
ートナーシップによる長野改革を目指してまいりましたが、今のと
ころ、市民の皆様の真の自主性・主体性による行政参加を形成する
には、まだまだ時間がかかると思っております。それは、行政が分
かりづらいという事が、実は、市民参加を阻害する大きな要因とな
っていることを感じました。
そこで、私は、「政策決定のしくみ」や「財政のしくみ」、さら
に「使用することば」を中心に、市民の皆様に分かりやすくしてい
くことを常に心掛けてまいりたいと考えております。そして、この
ことを実践することにより、行政の「情報公開」と「説明責任」を
果たすとともに、市民の皆様にとって行政がより身近なものとなり、
市民参加による社会形成につながっていくものと考えております。
新年度も、職員共々一丸となって積極的に取り組んでまいりたい
と考えておりますので、市議会議員の皆様、市民の皆様には、格別
のご理解とご支援を賜りますよう心からお願い申し上げます。
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以上が長野市議会3月定例会での施政方針の概要でございます。
なお、全文につきましては、
http://www.city.nagano.nagano.jp/ikka/shomu/gikai.htm
に掲載されておりますので、そちらもご覧ください。