2005年3月10日木曜日

インターネットを活用した教育が内閣総理大臣賞を受賞しました


 この度、「長野市教育の情報化推進共同研究会」が、文部科学省
主催のインターネット活用教育実践コンクールで最優秀となり、内
閣総理大臣賞に輝きました。多くの方々の協力によって成し遂げら
れた偉業です。本当に嬉しいことです。

 情報技術の急速な発展により、様々な分野での情報化が進んでい
る中、長野市では、21世紀を担う子どもたちに高度情報通信社会
に対応できる「生きる力」を育むため、コンピューターの整備をは
じめ、情報教育の推進を積極的に進めてきました。

 小学校段階ではコンピューターに慣れ親しみながら、情報を適切
に活用する基礎的な能力を育成し、一人ひとりの個性の伸張や、能
力、適性に応じた学習指導を行うことを目指しています。また、中
学校段階では、小学校の学習を基に、より一層の情報活用能力の育
成を目指すとともに、各教科での活用を進めています。

 今回、その推進に当たって、学校現場の先生が主体となり、NT
T東日本の技術的支援を受け、共同研究体制で進めてきた活動の取
り組みをまとめ、インターネット活用教育実践コンクールへ応募し、
認められたものです。

 あのすばらしかった20世紀最後の冬季オリンピック開催に当た
り、日本のハイテクノロジーを世界にアピールしたい、ということ
で、長野冬季オリンピック組織委員会(NAOC)は最新の情報シ
ステムと通信ネットワークなど高度な技術を用いた大会運営を目指
していました。そして、長野市も地域の情報化とオリンピック支援
のため、当時の郵政省(現在は総務省)の自治体ネットワーク施設
整備事業として「長野市フルネットパイロットプロジェクト事業」
を推進し、市内若里に中核施設として「長野市フルネットセンター」
が整備されました。オリンピック時には競技の映像が競技関係者や
市民に提供され、好評を博したことは、ご記憶の方も多いと思いま
す。

 オリンピック終了後、フルネットセンターは、行政サービスの充
実と高度情報化、福祉・教育分野等のマルチメディア化による市民
生活の向上、人材育成を通じて地域産業の振興のための拠点として、
スイス(ローザンヌ)のオリンピック博物館所蔵のビデオライブラ
リーの視聴、高速で快適なインターネット環境、マルチビジョン、
設備が整った会議室、各種コンテンツソフトの制作を行うマルチメ
ディア編集室等が用意され、市民の皆さんに提供されています。

 さらに、この施設を中心に、市内の全小中学校を光ファイバーで
結び、教育面に活用しようという試みがスタートし、その発展が、
今回の内閣総理大臣賞受賞になったわけです。ある意味ではこれも
オリンピック資産と言えるかもしれません。このプロジェクトの実
施に当たっては、学校の先生方の努力とNTTの協力が大きかった
と思います。光ファイバー回線の使用料は最近でこそ安くなってき
たようですが、当時は大変高額なため学校で使うのは不可能だった
のですが、NTTが教育利用への研究と位置付けてくださったおか
げで助かりました。

 先生方は、教室での学習面から、ねらいに即した最適な教材を、
従来の教材と同じレベルで利用できるように工夫を重ねてこられま
した。例えば、授業実践を伴った体育や音楽、理科などの動画教材
を数多く作成し、学習用ポータルサイトですべて検索できるように
したそうです。

 また、活動は校内に留まらず、学校と地域の人々との交流や適応
指導教室での不登校傾向の子どもたちとの心のコミュニケーション
をサポートする活動も行ってきました。共同研究では、それぞれの
研究目標を掲げ、教師の個人資産だった教育に関するノウ・ハウを
一般化することがなされ、先進的な授業を通じて、その成果を他校
に広める活動を行うとともに、*e-ラーニングやテレビ会議の活
用など技術者と共に実現方法を検討し、授業に応用してきました。

 この研究を通じて、教師が関わって作成された動画教材は、現在
256教材、2950タイトルになったそうで、*教育情報ナショ
ナルセンター(NICER)へも教材提供することができました。
ちなみに動画教材の利用件数は、平成15年度は21万3千件、平
成16年度は25万1千件(平成17年2月現在)となっており、
日々の学習の中で日常化されてきているように感じます。

 この研究会の副会長であるNTT東日本長野支店長は、次のよう
な文章を書いておられます。「この研究活動は、信州教育の伝統を
受け継ぐ先生方の教育への熱意と、チャレンジ精神に溢れる精力的
な活動によって支えられてきました。我々NTTのスタッフもその
情熱に支えられ、いつの間にか「子どもたちのために」が合言葉に
なっていたようです」。

 先進技術を取り入れるのは、どんな場合にも抵抗があり、スムー
ズにいかないことが多い(抵抗勢力がある)のですが、このプロジ
ェクトは「産・学・官」の協力関係が理想的に進んだ例ではないで
しょうか。

 最後に、子どもたちのために、この受賞を契機として、コンピュ
ーターをすべての教室で、すべての先生が、当たり前のように授業
の中で効果的に使われることを期待いたします。

 e-JAPAN戦略、LGWAN(総合行政ネットワーク)、電
子市役所といった分かりにくい単語が蔓延しています。分からない
から拒否するのではなく、努力しましょう。間もなくITに抵抗感
が無い時代が来るのですから・・・・。

*e-ラーニング
 パソコンやコンピューターネットワークなどを利用して学習を行
 うこと。

*教育情報ナショナルセンター(NICER)
 国立教育政策研究所が整備している教育・学習に関する情報ネッ
 トワークの中核的なウェブサイト