2008年7月17日木曜日

明るい選挙について


 7月4日、長野市民会館で「長野市明るい選挙都市宣言・長野市
明るい選挙推進協議会40周年記念大会」が開催されました。開会
に当たり、私は主催者の一人として、以下のようなあいさつをさせ
ていただきました。

 長野市は、昭和43年3月に、民主政治の健全な発展を期するた
めには「選挙が明るく正しく行われなくてはならない」との理念の
もとに、「明るい選挙都市宣言」をしてから40周年を迎えました。

 選挙を明るく正しいものにしようという運動は、昭和27年に
「公明選挙運動」として始められました。この運動は、民間有志に
より始められ、その後、官民一体となって全国的に展開されたので
すが、この前年の統一地方選挙では、選挙違反が相次ぎ6万人もの
検挙者が出たり、昭和27年の衆議院議員総選挙に向けても禁止さ
れているはずの事前運動が盛んに行われていたりした、という状況
だったようです。
 名称は、その後「明るい選挙推進運動」に変わりましたが、活発
な啓発活動を行って今日に至っています。

 この間、長野市でも、国政選挙、地方選挙を含め数多くの選挙が
行われてきましたが、関係者の皆様方をはじめ、有権者のご理解と
ご協力により、大きな選挙違反もなく、また、選挙無効に発展する
ような選挙の管理執行上における大きな問題もなく経過してきたこ
とは、大変喜ばしいことです。

 しかしながら、理想選挙への道はなお遠い、いや、だんだん問題
が出てきていると言わざるを得ない状況を感じています。特に、各
種選挙における投票率の長期低落傾向は、全国的なものとはいえ、
誠に憂慮すべき現象です。
 皆さんご承知のとおり、昨年行われた長野市議会議員一般選挙で
は、初めて投票率が50%を割り、49.71%と過去最低を記録
しました。この投票率は、前回に比べ、3.11ポイント低下とい
う大変残念な結果でした。
 さらに、前回の市長選挙に至っては、約37%という状況であっ
たわけで、実に遺憾であると言わざるを得ない状況です。

 投票率の向上に関しては、選挙管理委員会の努力、白バラ友の会
の皆さんの献身的な啓発活動など、いろいろな方々にご尽力いただ
いているわけですが・・・残念ながら、低落傾向を止めるところま
での効果は上がっていないのが実態です(しかし、皆さんが活動さ
れているからこそ、現在の投票率が維持できていると言えるのかも
しれません)。

 選挙を通じて政治に参加することは、有権者の権利であり、自ら
に課せられた義務でもあります。改めて、有権者一人一人が一票の
大切さを認識し、積極的に投票に参加されるようお願いしたいと思
います。また、明るい選挙推進運動も、過去の啓発活動の枠組みに
とらわれず、時代に即した効果的な方策により推進する必要があり、
決意を新たに真剣に取り組まなくてはならないものと思っています。

 私があいさつで申し上げたのは、おおむね以上のような内容です。

 ここから先は、私の個人的な意見として聞き流していただきたい
のですが・・・日本は、選挙によって代表者を選出し、その代表者
に権力の行使を託すことで国民が政治に参加し、意思を反映させる
間接民主制の国です。真に民主的な社会を実現するためには、その
基本である選挙が正しく行われることが必須の条件であり、これは
常識です。

 ただ、この常識について、最近、私は疑問を感じています。「民
主主義」イコール「選挙」とは言えないのではないかということで
す。
 現状の投票率を見ると、半分にも満たない数の有権者によって代
表者が選ばれ、その代表者により国や地方の政治が動かされている
ことは少なくありません。果たして、これが、正しい民意を反映し
ている状況と言えるのでしょうか。日本人の経験として、独裁的な
国家体制の中で人々が血みどろの戦いを経て、選挙権を獲得してき
たという歴史がないからこのようなことになってしまったのでしょ
うか。

 権利と義務ということについても考えるところがあります。投票
は権利でしょうか、義務でしょうか、問いたい。仮に、義務だとす
れば、投票しなかった人に何らかの罰があってもよいのかもしれま
せん(事実、投票を行わないと罰金が課される国もあるようです)。

 公職選挙法という法律があります。この法律は、国会議員や都道
府県・市町村議会議員、知事、市町村長の選挙のルールを定めてい
るのですが、選挙運動でしてはいけないことが羅列されています
(してはいけないことがあまりにも多く、当初は私も驚きました)。
 金権選挙を防止し、公正な選挙を行えるようにすることは当然必
要なのですが、これでは、選挙運動も萎縮してしまうかもしれませ
ん。買収だけはいけないとして、あとは何をやってもよい、では言
い過ぎですが、現在の状況に即して、もう少し分かりやすくすると
いうのも一つの方法かもしれません。そして、インターネットも、
もう少し自由に利用できればよいと思うのですが・・・。

 立候補する側の質も問われなければいけません。選挙に、そして
政治に興味関心を引くためには、候補者としての政策はもちろんで
すが、人物も重要です。単なる人気だけでなく、周りを引き付ける
だけの求心力をもっているか、燃え上がるような熱情を生み出せる
人物かどうか・・・難しい注文ですが、このような要素も必要でし
ょう。

 公務員や選挙で選ばれている人が立候補する場合に、その職を辞
めなくてはいけないという規定もあります。
 この決まりは、ある意味、公平性を欠いているようにも思うので
す。会社の社長や従業員、自営業の人とか、作家、タレント、弁護
士や司法書士など“士”のつく職業の人も、現職のまま立候補でき
ますよね。
 同じように公務員も現職のまま立候補でき、当選したら辞めると
いうことでもいいのではないでしょうか。辞めてから立候補すると
いうのは、リスクが大き過ぎると思うのです。
 確かに、首長や議員、公務員が仕事上の立場や機会を利用して選
挙運動を実施すれば、とても有利に働いてしまいますから、理解で
きないわけではありません。ただ、この決まりをなくすことができ
れば、もう少し幅広く立候補者が出て、より関心度が高い選挙にな
るような気もしています。

 代表者を選ぶ方法として、江戸時代から続くと言われる面白い決
まりをご紹介します。
 先日、松代で設立総会が行われた善光寺回向柱(えこうばしら)
寄進建立会に出席したときにお聞きした話ですが、建立会の会長人
事は、建立会の最後の打ち上げ式で、時の会長が予告なしに次の会
長を指名するのだそうです。その人事には誰も異議を唱えない、指
名された本人も断ることができないことになっていて、指名された
人は次の御開帳まで6年間会長職を務める、これが江戸時代から続
く伝統だそうです。そして、会長としてふさわしい人がちゃんと選
ばれてきたようです。松代流でうまい方法だなあ・・・と感じまし
た(でも、思い返してみると、うまく運営されている組織の代表者
選びは、実質的にこれと同じように行われているような気がしてい
ます)。

 以上、私の勝手な意見を書かせていただきましたが、地方選挙の
低投票率を憂いての発言としてお許しください。
 最後に、40周年記念大会の大会決議文を掲げて終わりにいたし
ます。

 大会決議

 昭和25年4月、民主政治の健全な発展を願い、その根幹をなす
明るく正しい選挙の実現を期して、公職選挙法が制定されました。
 本年は、我が長野市が昭和43年に「明るい選挙都市宣言」をし
て、40周年を迎える意義ある年であります。
 私たちはこの間、政治の重要性を深く認識し、創意工夫をこらし
た啓発活動を展開し、選挙本来の意義とその重要性を訴え、投票総
参加のために鋭意努力を重ねて参りました。
 しかしながら、投票率の低落傾向には依然歯止めがかからず、と
りわけ少子高齢化が進む中、若年層の政治・選挙離れは、大変深刻
な状況にあります。
 地域のそして国の将来を正しく決定していくためには、私達有権
者一人一人が一票の大切さを認識し、積極的な、投票による政治参
加が不可欠であります。
 特に、若年層の有権者には、次代を担う社会の一員としての自覚
を求めるとともに、家庭や地域の中で積極的に、政治や選挙につい
て語り合えるような環境作りをしていくことが、今、選挙啓発関係
者のみならず全ての市民に求められています。
 明年秋には、任期満了による市長選挙の執行が予定されています。
この機会に臨み、改めて、明るい選挙啓発の趣旨並びに重要性を強
く訴え、時代に対応した啓発活動の展開と、政治に関する意識の更
なる高揚を図り、明るい選挙の実現を強力に推進します。

 平成20年7月4日

 長野市明るい選挙都市宣言40周年記念大会
 長野市明るい選挙推進協議会40周年記念大会