2008年7月3日木曜日

ものづくりへ(1)


 6月24日、移動市長室ということで、長野高専(独立行政法人
国立高等専門学校機構長野工業高等専門学校)を訪問させていただ
きました。長野高専は、45年も前の昭和38年に開校し、5年間
の一貫教育という特色を生かして、主に工学・技術系の専門技術者
を養成してきた学校です。当初は、国立の学校として開校しました
が、国の行政改革の一環で、平成16年から独立行政法人になって
います。

 長野高専の個々の先生方には、市の審議会などでいろいろお世話
になっていますし、平成18年には、長野高専と長野市とが相互に
連携・協力するための協定も結ばせていただいています。しかし、
国の教育機関という性格からでしょうか、これまでは、市内にあり
ながら、市との直接的な関係はあまり深くないと感じていました。
 実は、私も、長野高専の開校以来、一度も訪問させていただいた
ことがなかったのです。

 今回は、5月に静岡県沼津市で行われた「ロボカップジャパンオ
ープン2008沼津」というロボットサッカー大会で準優勝したロ
ボットを見せていただけるということで、訪問させていただきまし
た。このロボットは、7月14日から中国で行われる世界大会に出
場することも決定しています。

 見せていただいたのは、攻めと守りを受け持つ各1台のロボット
で、2台1組になって相手チームと対戦するというものです。これ
らは、ロボットの構造に強い小市くんと、動きを制御するプログラ
ムが得意な柳川くんという、長野高専の「航空・ロボット製作部」
に所属する2人の学生が協力してつくったのだそうです。

 ロボットは、電池で動くのですが、スイッチを入れると、壁に囲
まれた四角いコートの中で、赤外線を発するボールを感知しながら、
勝手に動いて試合を進めていってしまうという優れものです。この
日は、相手になる同様のロボットがなかったことから、別の学生が
遠隔操作するロボット1台との対戦を見せていただきました。試合
では、遠隔操作していた学生が判断を迷っているほんの一瞬のうち
に、準優勝したロボットがゴールを決めてしまいました。

 もう1台、周囲に壁がないコートで、コートの床の色を識別しな
がらサッカーをするロボットも見せていただきました。まだ調整中
とのことで、十分にその性能は発揮できなかったようですが、弁当
箱程度の大きさしかないロボットの中に、いろいろな機能が詰まっ
ているのですから、すごいものです。こちらは、世界大会のデモン
ストレーションへ出場するのだそうです。

 そのほか、長野高専のさまざまな施設も案内していただきました。
旋盤や溶接機をはじめ、鋳物をつくる設備など、ものづくりの基本
となる施設のほか、「地域共同テクノセンター」という産学連携交
流施設、インクジェットの応用技術やさまざまなものを立体的にコ
ピーする技術など、最先端の技術が利用できる装置を備えた施設な
ども見せていただきました。

 立体的にコピーしたものを幾つか見せていただいたのですが、人
の顔やおもちゃをはじめ、須坂市動物園の人気者“ハッチ”も小さ
くコピーされていました。立体的なコピーと言っても、成形と同時
に着色する技術はまだないそうで、見せていただいたのはみんな白
色でした。でも、データとしては色の情報も読み取っているとのこ
とで、近い将来、本物と区別がつかないような立体コピーが、あっ
という間にできるようになるのかもしれません。

 これらの施設は、長野高専の校長先生をはじめ、先生や職員の方
にご説明いただいたのですが、最先端の技術になればなるほど私に
は難解で、理解しきれないことも多かったように思います。研究途
上ということなので無理もないのでしょうが、先端技術を施す工程
が、それぞれ別の装置になっているのです。生意気なことを言わせ
ていただくと、各装置をつなぐ技術がもっと確立されれば、私でも、
もう少し理解できるかな?とも感じました。
 案内していただいた施設では、多くの学生たちが製作に取り組ん
でいたのですが、みんな目を輝かせ、熱心に作業をしていた姿が印
象に残っています。

 最後に、数人の学生の皆さんと懇談させていただきました。懇談
の中で、学生の皆さんの出身地の話になったのですが、お聞きして
みると長野市外出身の方もかなり多いようです。また、2人いた5
年生に来春の就職先を尋ねると、2人とも長野市内に拠点のある企
業への就職が内定しているとのことでした。

 長野高専には、現在1,000人もの学生が学んでいるそうです。
市外からも大勢の学生が長野に来ています。長野で学び、身に付け
た専門技術を長野の企業で生かしてもらえる、これはありがたいこ
とです。そして、そういう若い人たちが活躍できる環境を長野にも
っと用意して、ドンドン採用してくれる、そんな企業がたくさんで
きると良いと思っています。
 ただ、現代はグローバルな時代です。長野で学んだことをもとに、
世界で活躍してほしい、そんな気持ちがあるのも事実です。

 私は、市長就任当初から、長野を元気にしていくためには、もの
づくりを大切にしていかなくてはいけないと考えてきました。しか
し、長野市内の製造業のバロメーターとも言える「製造品出荷額」
は、最近こそやや持ち直してきてはいますが、ピークだった平成9
年の約60%にまで落ち込んでしまっているのです(これは、大手
製造メーカー工場の撤退や市外への移転が続いたことが響いていま
す)。

 県内の景気は、「南高北低」とも言われ、北の長野市としては悔
しい思いをしています。ものづくり企業の不振が大きい、何とかし
なくては・・・いつも頭から離れないテーマです。市内のものづく
りを盛んにし、「元気なまち」につなげていけるように、さまざま
な学校や企業とも連携を深めていく必要があると、改めて感じたひ
とときでした。

 今回のことに関連して、皆さんにご紹介しておきたいと思ってい
ることがありますので、次回、もう少し、ものづくりについて書い
てみたいと思います。