長野市では、今年の4月1日から、庁内の上水道事業と下水道事
業の所管を統合し上下水道局へ事業を一本化しました。
このことをお聞きになり、「え!上下水道局以外でも水道や下水
道事業をしていたの」と思われる方もいらっしゃると思います。ご
もっともなことで、公営企業として行っている上下水道事業以外の
事業をご存じの方は、あまり多くないのではないでしょうか。
実は、産業振興部(農業関係)や環境部、各支所が行っている事
業、個人が行っている事業もあり・・・そのほか、県営水道がある
こと、合併により旧町村の事業を引き継いだこと、国の施策がいろ
いろに分かれていることなどが原因で、長野市の上下水道事業は大
変複雑なシステムになっていました。
このたび、ようやく一本化できた、と言って良いと思います(ま
だ県営水道や合併処理浄化槽のこともありますので、すべてではあ
りませんが)。
2年ほど前になりますが、篠ノ井山布施地区の農業集落排水事業
(下水道)が完成し、一連の農業集落排水事業がすべて完了したこ
とを機に、このメルマガで、長野市の下水道事業について紹介させ
ていただいたことがあります。
その中では、
(1)長野市の公共下水道事業は、昭和28年から始まっているこ
と。
(2)現在の長野市では、公共下水道事業(特定環境保全公共下水
道を含む)、農業集落排水事業、合併処理浄化槽事業の、大き
く三つの事業により、全戸水洗化を目指していること。
(3)長野市の下水道整備工事は、平成24年度までにほぼ完了す
る予定であること。
(4)以下のような課題があること。
・工事が難しい場所の整備に向けた努力が必要。
・市民の皆さんに下水道管を接続していただかなくてはならな
い。
・敷設から50年以上経過している下水道管もあり、不断のメ
ンテナンスが重要になっている。
・市民の皆さんにご負担いただく料金が、公共下水道・農業集
落排水など、事業の種別によって異なっている。
・上下水道局の健全経営、技術研究の継続が必要。
というようなことを書かせていただきました。
このメルマガ以降、今回までに進展したこととして、二つのこと
が挙げられます。
一つは、現在進めている下水道事業の進ちょく状況です。以前ご
紹介させていただいたときの公共下水道事業人口普及率(平成18
年度末)は73.8%、農業集落排水・合併浄化槽を含めた全体の
普及率は83.7%でした。
それから2年経過した平成20年度末では、公共下水道事業人口
普及率は84.1%(10.3%増)、全体の普及率は88.7%
(5.0%増)にまで整備が進みました。
平成24年の工事完了に向けて、さらに努力していきたいと考え
ています(ただ、公共下水道を整備することにしている区域の中に
も、費用対効果の面から公共下水道事業での整備が困難だと考えら
れるところもあります。今後は、合併処理浄化槽の設置にすること
を含め、あらためて市民の皆さんを交えて効率的な整備手法を検討
していく必要があると考えています)。
もう一つは、課題として挙げさせていただいていた料金の問題が
解決したことです。これまで事業の種別によって異なっていた料金
体系ですが、4月の上下水道局への事業統合に合わせ、すべて公共
下水道の料金体系に統一しました。農業集落排水が整備されている
地区にお住まいの皆さんの中には、値下げになった方も多いと思い
ます。
ただ、実際のコストとしては、公共下水道に比べて規模が小さい
農業集落排水・合併処理浄化槽が割高であることは事実です。しか
し、同じ水洗化であるのに、お住まいの場所によって料金が異なっ
てしまうことは不公平だということで、公共下水道側の経営にとっ
ては、若干不利ではありますが、このたびの統一となったものです。
皆さんにとって、下水道の整備手法ということはあまり身近な話
ではないと思いますので、ここで少し説明させていただきます。
まず、公共下水道ですが、以下の3つの方式があります。
(1)単独公共下水道
地方公共団体が単独で整備・管理する下水道で、主として市
街地(都市計画区域)で整備する方式です。長野市では、おお
むね第一から第五、芹田、古牧、三輪、吉田、大豆島、安茂里
地区の汚水を大豆島地区の「東部浄化センター」で処理してい
ます。
(2)流域関連公共下水道
複数の市町村が共同で整備・管理する方式です。長野市が関
係する千曲川流域関連公共下水道は、県が下水道幹線と終末処
理場を整備管理し、そこへ市町村が公共下水道を接続するとい
う方式で、市町村は、整備面積に応じた建設費用と汚水の量に
応じた処理費用を県に支払っています。
この流域下水道には、上流処理区と下流処理区があります。
上流処理区は、篠ノ井、川中島、更北地区と、松代地区の一部
のほか、千曲市や坂城町が対象で、更北地区にある「アクアパ
ル千曲」で処理。下流処理区は、おおむね古里、朝陽、柳原、
長沼、若槻、若穂、豊野地区のほか、須坂市や小布施町、高山
村を対象に、長沼地区にある「クリーンピア千曲」で処理して
います。
(3)特定環境保全公共下水道
観光地などの環境保全を目的とする公共下水道で、市内では
芋井(飯綱高原)、若穂、松代、戸隠、鬼無里地区の一部で採
用しています。飯綱高原の汚水は「東部浄化センター」、若穂
・松代の汚水は「クリーンピア千曲」、戸隠、鬼無里は単独の
処理場で処理しています。
農業集落排水事業というのは、農村地域振興の一環として、公共
下水道で整備できない地域を対象に農林水産省が進めてきた水洗化
事業です。市内には、浅川、芋井、篠ノ井、七二会、信更、豊野、
戸隠、鬼無里地区に21カ所あり、それぞれ単独の処理場で汚水を
処理しています。
合併処理浄化槽は、各戸に個別の浄化槽を設置して水洗化するも
ので、下水道管を敷設することが費用対効果や技術的に難しい離れ
た場所にお住まいの方々を対象に設置をお願いしています。また、
下水道区域内でも下水道管の敷設までに時間がかかる場所にお住ま
いの方々にもご利用いただいています。
市内の合併処理浄化槽には、市町村設置型と個人設置型とがあり
ます。
市町村設置型というのは、行政が浄化槽を設置・管理し、お住ま
いの方からは、使用料金を頂く方式です。これは、旧戸隠村と旧鬼
無里村が実施していた方式で、ご利用いただけるのは現在も両地区
だけになっています。
これに対して個人設置型というのは、個人が費用を負担して浄化
槽を設置・管理する方式で、戸隠・鬼無里以外の地区が対象です
(設置費用が高額になるため、設置工事に対して補助金を交付し、
負担を軽減する制度があります)。
このように、市町村設置型と個人設置型では費用をご負担いただ
く仕組みが大きく異なっていますので、いずれ何らかの統合を考え
なくてはいけないでしょう。
これまでは、国土交通省所管の公共下水道は「上下水道局」、農
林水産省所管の農業集落排水事業は「産業振興部」、環境省所管の
合併処理浄化槽事業は「環境部」というように、補助制度などを所
管する国の省庁に合わせて市役所の担当部署も異なっていたわけで
す。
水洗化という同じ目的の事業を行いながら、庁内に幾つもの担当
部署があるのは、以前から不合理だと思っていましたし、市民の皆
さんに対応する窓口の分かりやすさという点でも問題があったと思
っています。
今回、個人設置型の合併処理浄化槽(環境部所管)を除き、上下
水道局に一元化することで、これもほぼ解消することができました。
来週は、上水道事業についてご報告します。