2009年7月2日木曜日

長野市の上下水道事業(2)


 今回は、長野市の上水道事業の統合についてご報告します。
 長野市営の水道事業は、昨年度4つに統合(上水道事業、戸隠簡
易水道事業、鬼無里簡易水道事業、大岡簡易水道事業)するまでは、
14もの事業(上水道1、簡易水道事業10、飲料水供給施設1、
簡易給水施設2)があったのです。

 なぜ、14もの水道事業があったかと言いますと、平成17年に
合併した際に、それぞれの旧町村が運営していた簡易水道など13
事業を引き継いだことに原因があります。
 合併と同時に一元化すれば良かった、と言ってしまえばそれまで
なのですが、公営企業(上下水道局)で運営している長野市の財産
管理の方法や基準と、旧町村営での基準が一致しなかったことから、
それができなかったのです。
 そのため、これらの事業をいったん環境部で引き継ぎ、公営企業
の基準に合わせるための準備を進めてきました。このたび、それが
整ったことで、統合できることになったのです。

 なお、平成17年の合併を経験して、私も初めて知ったことなの
ですが、同じ水道でも水道法という法律によっていろいろな区別が
あるのです。いずれも水源から取水し、水道管を通じて各戸へ給水
するという仕組みは同じですが、以下のような区分になっています。
(1)上水道(給水人口が5,001人以上)
(2)簡易水道(給水人口が101人から5,000人まで)
(3)飲料水供給施設(給水人口が50人から100人まで)
(4)簡易給水施設(給水人口が20人から49人まで)
 このうち、「飲料水供給施設」と「簡易給水施設」というのは、
水道法による水道に当たらないそうで、保健所において「要綱」を
定め、指導を行っているというものです。

 合併まで十分に意識していなかったことで、もう一つ驚いたこと
があります。それは、水道事業には、行政ではなく、地区や住民の
皆さんによる組合が運営している民営の施設があることで、市内に
は27もあるのです。いずれも飲料水供給施設や簡易給水施設など
の小規模施設が多いのですが、戸隠地区の中社区のように簡易水道
を運営しているところもあります(これらの事業は、地区特有のも
のですから、料金体系は地区ごとに違っているでしょうし、維持管
理経費も当然地区の負担のはずです)。

 ただ、合併旧町村ばかりでなく、篠ノ井、川中島、更北地区にも
数多く存在しています。これは、この地域の県営水道の給水開始が
昭和41年からと遅かったことで、それ以前に集落ごとに整備した
施設が現在も使われている、ということのようです。

 4月から上下水道局で担当することになった市営の4つの水道事
業ですが、今後、導水管の新設などにより水源や浄水場の統廃合な
どを進め、平成28年度末までにすべて上水道事業に一本化するこ
とにしています(前述の通り、民営のものは別です)。

 ただ、それでも県営水道の問題は残ります。篠ノ井、川中島、更
北地区と信更地区の一部は、市営水道ではなく、県営水道の供給区
域なのです(この県営水道は、長野市南部地域だけでなく、千曲川
流域の千曲市、坂城町、上田市の一部にも供給しています)。
 従って、料金体系も市営水道とは違いますので、市民の平等とい
う観点からは問題が残ります(ただし、県営水道の給水地域でも下
水道は長野市の事業ですから、こちらは同料金です)。
 この点について、県では水道の広域化を計画しているようです。
将来は県営水道と長野市上下水道局が合併することになるかもしれ
ません。

 もう一つの問題は「おいしい水」の問題です。最近、ペットボト
ルに入った水を買ってお飲みになる方も多いと思います。ちなみに
あの水は、1本当たりに換算してみますと、水道水の約1,100
倍もの値段になるそうです。上下水道局としては、せっかくの需要
を取られてしまっているわけですから、飲料水を供給する義務があ
る同局にとってこの水は、大変な強敵だと言えます。上下水道局の
売り上げが下がっている原因の一つと申し上げても良いでしょう。

 数年前から、当時の水道局には、「もっと水道水を飲んでいただ
けるような政策をとるべきだ。私の経験から言えば、東京の水道水
はまずいけれど、長野の水はおいしい。十分太刀打ちできるだろう」
と私は主張してきたのですが・・・。
 このメルマガを書くに当たって、上下水道事業管理者から話を聞
いたのですが、「市長の経験はもう古い。現在の東京の水はおいし
い。東京都は大きな投資をして、高度浄水処理(オゾン処理、活性
炭処理、膜ろ過処理)という処理をして、異臭味などのない水をつ
くっており、昔とは違う。それと、水は冷やして飲めばおいしい」
とのことでした。「じゃあ、長野市でもその高度浄水処理を取り入
れよう」と言ったのですが、ばく大なお金が掛かるようです。

 実は、年々水道水の需要が減ってきており、公営企業が行う水道
事業の採算性が悪化しつつあることも問題なのです。人口減少の時
代、節水機器の普及、前述のペットボトル入りの水、企業や団体の
地下水利用・・・地球環境を考えた場合、節水は良いことではある
のですが、上下水道局の経営を考えると頭が痛いことでもあるわけ
です。将来、水道料金の見直しが必要になるのかもしれません。

 また、いずれは公営企業という経営形態の問題も議論になりそう
です。実質的には市の直営なのですが、公営企業ということで、企
業と同じように収入と支出をきちんと計算し、採算を取らなくては
なりません。これは当然です。
 ただ、公営企業の採算のとらえ方には、これまでずっと疑問を感
じてきました。公営企業では、資産形成のため、企業債という借金
をすることがあります。ところがその借金は、資本に組み入れるこ
とになっているのです。もちろん借金ですから返済はしていくので
すが、本来的には負債として計上すべき性質のものであり、資本を
返済するというのは、どうも私の感覚からは理解できないのです。

 先ごろ総務省では、公営企業の会計基準の見直しを打ち出しまし
た。具体的にどのように変更されるかは、まだ分かりませんが、少
なくても資本や負債のとらえ方は一般企業と同様にしてもらいたい
と思っています。
 この見直しにより、公営企業独特の会計基準が改正できるとすれ
ば、外部資金を導入することも考えられるようになるかもしれませ
ん。将来的には、公社などの独立法人化、あるいは、もう一歩進め
て株式会社化して株式を上場する、なんてことが起こる可能性もあ
るのかなと感じています。

 すなわち、外部から資本出資をしていただき、公営企業から別の
法人形態に移行することで経営を安定させる、ということも将来の
問題として考えておく時期なのかもしれません。