2009年9月18日金曜日

産業政策について考えていること



産業政策は、都市経営に必要不可欠な政策です。
産業政策とひと口に言いましても、農業、林業、商業、工業、観光
など、さまざまな分野がありますが、それぞれ雇用の確保、食料や
生活用品の生産・流通・販売・・・と、欠くことができない大切な
役割があります。そして、都市活力の源でもあり、産業のないとこ
ろでの私たちの生活はあり得ません。
市民の皆さんの生活を護るうえで、欠くことができない産業を振興
していくことは、行政政策として、当然、重要な要素になりますし、
行政の側としては、税収確保という側面もあります。
今回は、企業立地という視点から、長野市の産業政策を考えてみた
いと思います。

地方都市では、大都市に比べて企業数が多くはありませんので、そ
れだけ、一つ一つの企業が大切な存在になります。つまり、地方都
市では、一つの企業の存在感が大きく、地域社会そのものの中で大
きな役割を果たしていると言ってよいでしょう。

ただ、最近では、「企業の社会的責任」ということが、当然だと考
えられるようになってきました。企業の最大の目的は、利益を上げ
ることですが、そのほか法令遵守はもちろん、社会貢献活動をはじ
め、情報公開や地球温暖化対策などの社会的責任も果たすべきだと
いうことです。それゆえに、ただ利益を上げることだけに徹してい
る企業は、地域の中で信頼を得られず、浮き上がった存在になって
しまう傾向もあるように感じます。結果的には、本来の利益追求活
動にも、支障を来たす可能性、つまり、社会的な制裁が加わり、企
業が倒産・整理されることもあり得るわけです。

このように見てきますと、地方行政の産業政策の柱は、以下の三つ
になると考えています。
(1)市内の既存企業や個人経営者の活動を検証・支援し、育てる。
(2)新たに長野市へ優秀な企業の誘致をはかる。
(3)新たに市内で起業しようとする人の支援に取り組む。

この三本の柱を実現するために、具体的には次のような施策が重要
だと考えています。

(1)企業の研究開発・販売促進を支援する体制の構築
長野市ものづくり支援センター(UFO)などを利用して、産・学・
官が協力して企業の研究開発・販売促進を支援する体制の構築、充
実が必要だと思っています。

(2)資金支援体制の充実
金融機関・自治体などの制度資金やエンジェル税制(ベンチャー企
業投資促進税制)などを活用できる体制の充実も必要です。同時に、
信用保証協会などと連携し、雇用を護り、創出するための緊急融資
体制の充実も大切だと思っています。

(3)新たな企業の誘致
具体的には、工業系を中心とした企業団地の造成が急務になってい
ます。長野市は、過去に造成した工業団地をすべて売り切ってしま
い、企業を誘致したくてもできない状況でもあります。国の方針に
より、農業用地の転用が難しい中で、あまり広大な面積の工業団地
はできませんが、7ヘクタールの用地を確保しました。すでに、幾
つかの企業からの打診があるようです。市内には空きビルもかなり
あります。これも誘致という面では紹介していきたいと考えていま
す。

(4)進出企業への支援
進出企業のスタートが順調にいくように、いろいろな補助金を用意
することも大切です。長野市では、必ずしも土地を買っていただか
なくても良いように、市有地をリースする制度も整備しています。

(5)誘致する企業の検証
どんな企業なのか、経営者の理念、行動についても調査する必要が
あると思います。ただこれは、経営者などが変わることもあり、経
営環境も変化するものですから、決定打にはなりませんが、企業風
土が長野に合うか、将来性はどうかなど、調べておきたいものです。

100年に一度の不況と言われるこの時代、新しい企業を誘致する
のは、なかなか難しいテーマだとは思いますが、長野の強みを生か
して努力していきたいと思っています。

強みは、交通手段、特に関東圏との近さ、穏やかな人の気持ち、そ
して、高原特有の空気の良さ、UFO、信州大学工学部、長野高専
等の存在をあげることができるでしょう。文化・歴史・美しい自然、
暮らしやすさ・・・こんな点が挙げられます。中山間地域が多い点
も将来のプラスになる可能性を感じています。

弱みは、土地利用の制約です。平地が少ないところから、あまり大
きな工場団地は無理。それと上越市が近いとはいえ、海が無い(大
量輸送を必要とする企業には向かない)ことも弱点でしょう。また、
道路、通信網などのインフラもまだまだ整備する必要がある・・・
そんな点も弱点です。

それら、長野の弱点を克服する努力は続きますが、利点・欠点を承
知して進出してきていただける企業、特に今、弱点を利点に変える
産業が求められると思っています。その一番の候補は、農業、食の
産業、林業を利用した新エネルギー産業のような予感があるのです
が・・・。

2009年9月18日