2009年9月14日月曜日

安心・安全のまちづくり



行政としてこのテーマを考える場合、大変幅が広くなります。昔か
ら言われてきたことに、“地震・雷・火事・親父”という言葉があ
りますが、現代では災害の領域、考え方はかなり変わってきていま
すし、市町村の対応もそれに応じて広がっています。今回は、安心・
安全のまちをつくるための考え方を整理してみました。

「安全」という面から考えますと、まず、災害を防ぐ、災害が発生
したときの被害を最小限にするということが大切です。長野市で起
こる頻度が高い自然災害は、家屋などへの浸水被害と、山間部での
土砂災害でしょう。

梅雨の時期から秋にかけて、長雨が続くと道路の冠水や住宅の浸水
被害が起こりやすくなり、消防団の皆さんには、土のうを設置する
など、一生懸命努力していただいています。大きな被害にはならな
い場合が多いのですが、雨量が多くなると、雨水を飲み込みきれな
くなる用水路や道路側溝があり、市民の皆さんにご迷惑をお掛けし
ています。このような場所の改修も毎年実施しているのですが、ま
だまだ追いついていないのが実情です。
こうした都市型水害を防止するため、都市排水路の整備や排水機場
の建設、雨水調整池の整備、各戸貯留施設の設置促進などの対策を
行っています。大規模な対策として現在は、長野運動公園の地下に
大きな雨水調整池をもう一つ建設中です。これが完成すると、長野
運動公園の地下では、これまでの約4.6倍にあたる2万8,000
トンの雨水を貯めることができるようになりますので、下流域の水
害を減らせると期待しています。

このほか、ハザードマップの作成や人的な水防態勢の整備など、ソ
フト面での対策も行っています。水防態勢の整備ということでは、
市主催の水防訓練を毎年実施し、消防局が中心となり、消防団、地
域の皆さん、建設業協会の皆さんなどに参加していただき、水防技
術や知識の向上を図っています。地域の防災組織と連携した訓練や、
県の消防防災ヘリも参加する訓練も行い、いざという時に慌てない
ように、そして安全意識の高揚に努めています。

都市部の洪水とは違う危険性があるのは、山間部に降った雨により
起きる土石流やがけ崩れなどの土砂災害です。土石流被害が発生し
ないよう、危険な箇所には、主として県に砂防堰堤をつくっていた
だいていますが、これも完全ではありません。特に長野市の西部、
昔から西山と言っている地域ですが、ここは崩れやすく、急しゅん
な山地であり、地すべりや斜面崩壊、土石流など、土砂災害が発生
する危険性が高い地域です。

西山地域ではありませんが、今年は、鬼無里地区と戸隠地区で相次
いで土砂災害が発生してしまいました。先日の7月末の大雨で、鬼
無里地区の大川林道では、約20カ所の崩落が起きて通行止め、8
月6日には戸隠地区の大雨により、道路決壊や住宅被害が生じてし
まったのです。
まだまだ砂防堰堤を入れなくてはならない場所はかなり多い、自然
のままにしておくことは、下流部に住んでいる方にとってはまさに
恐怖と聞いています。ですが、国の公共事業予算の削減もあってな
かなか追いつかない・・・お住まいの方々の安心度を高めるために
も、必要な事業が実施できるよう、国・県に要請していきたいと思
っています。

次は地震です。国全体では、発生の可能性が高いと言われる東海地
震、東南海地震、南海地震をはじめとした地震対策が行われていま
す。いずれも大変な被害が想定されている大きな地震です。
長野市では、過去一番大きかったと言われる弘化4(1847)年
の善光寺地震を想定して、防災倉庫や中山間地域での保存食糧など
の備蓄、避難所の指定、避難支援体制の整備、庁内外の危機管理体
制の構築などの対策を練っています。

建物の耐震化も行政の地震対策として重要な項目です。阪神・淡路
大震災では、犠牲者の約9割が建物の倒壊により犠牲になったとの
ことですので、建物の耐震化を進めることで、人命被害はかなり軽
減することができるでしょう。

最優先して進めているのは、学校施設の耐震化です。子どもは宝で
すし、いざ、というときに学校は、市民の避難所にもなることから、
国も予算を投入して頑張っています。長野市でも可能な限り早く耐
震化を完了すべく努力していますが、学校施設全400棟のうち、
何らかの耐震対策が必要な施設が今年4月の時点で138棟もあり
ます。これだけの建物の工事を一斉に実施することはできませんし、
耐震性にも差がありますので、危険度に応じて耐震化を進めていま
す。

具体的には、構造耐震指標(IS値)が0.3未満の施設は、平成
24年までに耐震化工事を終わらせることにしています(構造耐震
指標とは、建物が地震にどのくらい耐えられるかを表す指標で、学
校施設については0.7以上を確保する必要があります)。より危
険度が高い施設から対策を実施し、平成26年度には、9割の耐震
化を完了させる予定です。ただ、耐震補強工事を実施しても建物の
寿命を延ばすことにはなりませんので、古い施設は建て替えていま
す。

そのほかの耐震対策としては、昭和56年以前に建築した個人所有
の木造住宅の耐震診断を無料で行っています。診断により補強が必
要と判定された場合には、補強工事にも補助金を用意しています。
これまでに、約2,000戸の診断を行い、約100戸の補強工事
を補助しました。
また、病院やお店など、たくさんの人が利用する特定建築物の耐震
診断に対しても、今年度から補助金を用意しており、市内の建物の
耐震化を促進し、安心して住めるまちにしていきたいと考えていま
す。

市役所第一庁舎や長野市民会館の建て替えもこの延長線上にありま
す。
長野市民会館は昭和36(1961)年、市役所の第一庁舎は昭和
40(1965)年の建設で、第一庁舎のIS値は0.23という
ことで、極めて危ないとのことです。市民会館はそれより5年も古
いことから、耐震診断はせずに劣化診断だけにとどめました。

“ハコモノ行政”に対する批判的なご意見や、自治体の財政が厳し
いということで、この建て替えについてはさまざまなご意見がある
かと思いますが、多くの方々が利用する施設ですから、問題を放置
しておくことはできません。
前回のブログでも書かせていただきましたが、合併特例債を利用す
ることで、建設費の約7割を国にみてもらえるというチャンスは、
この先まずないでしょう。建設時期を先送りすることにより、合併
特例債を利用しないとすれば、建設費の捻出は今以上に困難になる
と思っています。

いずれにしろ、昭和56年以前に建築した建物は、耐震補強工事が
必要ですし、耐用年数からすると、あと5~10年後には建て替え
をせざるを得ないのが実情です。市民の皆さんのご意見を踏まえて
さまざまな面から考え、建て替えるか否かを含め、ここで結論を出
さざるを得ないと思っています。

「安心・安全のまち」ということで、主として水害、土砂災害、耐
震対策について述べてきましたが、そのほかにも、考えなくてはな
らないテーマがいろいろあります。
気象面では、最近の報道によると、雷や竜巻が頻繁に起きている、
台風も停滞気味で大きな降雨災害を起こしているようです。大規模
な台風が長野市を直撃したのは、昭和34年の伊勢湾台風だけとい
う印象なのですが、いざ本当に来襲したら、慣れていないだけに被
害は大きいと思います。台風の来襲を防ぐことは困難ですが、情報
を早くお伝えするようにして、危険から身を守っていただけるよう
にするしかないと思います。

安全を求める以上、農業被害も無視できないことだと思います。冷
害、ひょう、有害鳥獣、いずれも農家の仕事の意欲を奪う災害です。
雪害も、暖冬で少なくなっているとはいえ、大雪となれば深刻な被
害が発生します。雪にはプラス面もあるのですが・・・過ぎたるは
及ばざるがごとしです。

以下に列記した項目も「安心・安全のまち」には大切なものでしょ
う。行政としては、これらすべての撲滅に、全力を挙げなくてはい
けないと感じているところです。
・交通事故・・・市内では、年間の死者が一番多い項目です。
・犯罪・・・振り込め詐欺、暴力団犯罪、覚せい剤など、あらゆる
犯罪防止に努めることは市民社会の義務でしょう。
・疫病(新型インフルエンザ)・・・保健所も持つ長野市としては、
とても重要な項目のひとつになります。
・火事・・・安心・安全のまちにするためには、これも重要な項目
です。
・構造物・建造物の欠陥や劣化による事故・・・設計ミス、経年変
化の確認やメンテナンスの不足など、安心・安全のためにぜひとも
事前に防ぎたい事項です。

まだまだ、たくさんあるとは思いますが、安心・安全は市民生活の
中の一番の原点でしょう。あらゆることに目配りしなくてはならな
いのが、市町村行政です。

2009年9月14日