長野市の人口は平成19年にピークを迎え、その後、わずかずつで
はありますが減少し続けています。合計特殊出生率は1.43で、
県下80市町村の中で65番目です。全国平均の1.37を上回っ
てはいますが、確実に若年層が減り続ける傾向にあります。
先日のブログでもご紹介させていただきましたが、「第4回 次世
代育成環境ランキング」において、長野市が子育てしやすい都市と
して3位に評価されたことは、とても嬉しいことで喜んでいます。
しかし、少子高齢社会の中で若年層が減り続ける傾向をみますと、
この評価だけで満足してはいけないとも思っています。
まず、子育ち・子育て支援施策について幾つか考えを申し上げます。
今年度から、市内の全54小学校区のうち、17校区で「長野市版
放課後子どもプラン」を実施しています。この事業は、放課後の安
全で安心な居場所を子どもたちに提供するとともに、遊び・学習・
各種体験活動をするための場として、地域の皆さんと協働して既存
の児童館・児童センターと小学校施設を活用して実施しているもの
です。
安心して子育ち・子育てできる環境を整備することは、少子化対策
の第一歩だと思っています。かつて地域には、「地域の子」という
概念があり、地域の子は地域が護り育てるという考え方が、無意識
のうちに浸透していました。「長野市版放課後子どもプラン」は、
地域の皆さんと協働して子育てのためのより良い環境を整備する事
業であり、現代版の「地域の子」育成支援体制づくりでもあると思
っています。できるだけ早く、全校区で実施体制を整備しなければ
いけないと考えています。
なお、「放課後子どもプラン」の利用料についてですが、検討をお
願いした審議会の意見では「有料にすべき」という答申を頂いてい
ます。しかし、各地区の市民会議や、市議会でいただいたご意見か
ら、有料化することにかなり強い抵抗感があることが理解できまし
た。さらに、現在17校区で先行実施している「放課後子どもプラ
ン」が無料だということもあり、散々迷った末ですが、私としては、
少子化対策の重要な施策として、利用料は無料とすることが良いと
いう結論を出すに至りました。このことは、マニフェストにも記載
しています。
今年の12月から長野市版ブックスタート「おひざで絵本」事業を
始めることにしています。これは、絵本を読み聞かせながら、赤ち
ゃんと向かい合うひとときを持っていただくために、絵本をプレゼ
ントする事業です。絵本は、7~8カ月児健康教室の際にお渡しす
ることにしています。その際には、読み聞かせの大切さなどについ
てもお話もさせていただき、選定委員会で選定した5冊程度の本の
中から1冊選んでいただくことにしています。対象となる保護者の
方にはぜひお受け取りいただき、赤ちゃんの豊かな心の成長を促す
とともに、親子の絆を深めていただきたいと思っています。
妊婦健康診査についても今年の4月から公費負担回数を拡大してい
ます。妊婦健康診査は、妊娠中のお母さんの健康状態や赤ちゃんの
発育状態などを定期的に確認する大切な健診です。これまでも妊婦
健康診査費用の一部を公費で負担してきましたが、医師会など関係
機関との連携により、これまでの5回を14回に拡大しました。安
心して出産を迎えていただきたいと思っています。
このほか、こども広場、子育て支援センター、ファミリーサポート
センター、一時保育、休日保育、病後時保育などによる子育て支援、
協賛店拡充による「ながの子育て応援カード事業」など、長野市独
自の施策を充実していくことはもちろんですが、税制面や諸手当の
面でも、子どもが多いほど優遇される社会システムを構築すること
も必要だと考えています。また、保護者の労働環境に子育てに関す
る十分な配慮を加え、安心して子育てができる環境づくりにも力を
入れていきたいと考えています。
また、新政権の誕生により、国の新たな子育て支援策が具体化して
くることになるでしょう。こちらも大いに期待したいと思っていま
す。
福祉というよりは教育分野ですが、子どもに関することで少し付け
加えさせていただきます。
先日の新聞報道などにもありましたが、残念ながら長野市では、児
童・生徒の不登校が小・中学校ともに増加傾向にあり、国・県の平
均を上回っている状態です。引き続き、不登校児童・生徒の受入れ
施設である中間教室の充実を図るとともに、不登校を予防するため
に必要な手立ては積極的に実施していきたいと考えています。
特に、今年度からは、全小・中学校で「Q‐U(楽しい学校生活を
おくるためのアンケート)」を実施しています。このアンケートを
実施すると、児童・生徒の意欲や満足感、学級集団の状態などを診
断することができ、不登校の予防に活かせるそうですので、大いに
期待しています。
いずれにしましても、教育現場を預かる先生方と力を合わせ、教育
環境の改善に努めていきたいと思っています。
青少年の健全育成という視点も大事にしていきたいと考えています。
インターネットや携帯電話などの普及により、今の社会は、大変便
利になりました。
しかし、子どもたちを取り巻く環境にもたらしているものは、有害
な情報の氾濫や、事件に巻き込まれるきっかけとなるなど、必ずし
も良いことばかりではありません。犯罪が低年齢化しているとも言
われています。次代を担う青少年を健全に育成することは、私たち
大人に課せられた大きな課題です。これまで以上に、学校や地域、
ご家庭とも連携を図れるようにしながら、青少年の健全育成、非行
防止に努めていきます。
次に、高齢者、障がい者施策について申し上げます。少子高齢社会
なのですから、子どもたちだけではなく、高齢者、そして障がいを
持つ方にとっても、安心して健やかに暮らせる社会を維持していく
ことが市政運営の基本だと思っています。
人口総数に占める65歳以上の割合を示す高齢化率は、長野市全体
で23%に達しています。これは、超高齢社会と言われる状況です。
また、中山間地域においては高齢化率34%で、3人に1人が高齢
者という著しい高齢化が進行しています。20年後には、長野市全
体が現在の中山間地域とほぼ同じレベルの超高齢社会を迎えるとの
予測もありますので、長野市にとって高齢者、障がい者施策はとて
も大事な施策です。
基本とすべきは、高齢者も障がいを持つ方も、健康で生きがいのあ
る、その人らしい生活を住み慣れた家庭や地域で送れるよう、環境
を整えていくことだと考えています。そのためには、保健・医療・
福祉の連携を強化するとともに、地域で支え合い、ともに生きてい
く仕組みを皆でつくっていくことが必要です。
また、いきいきと自分らしく暮らすため、生涯学習・スポーツ環境
の充実、積極的な社会参加を促進することも不可欠だと思っていま
す。お一人お一人の元気が長野市の元気をつくっていくはずです。
個別の高齢者、障がい者施策は、大変多岐にわたっており、とても
ここだけでご紹介することはできませんので、ベースとなる考え方
を幾つか申し上げます。
まず、高齢者、障がい者をはじめ、すべての人に優しいバリアフリ
ー、ユニバーサルデザインのまちづくりを進めることは、行政の基
本的な役割だと思っています。公共交通を維持することはもちろん
ですが、進展する高齢化社会に対応するためには、日常的なことは
近い範囲の移動で済むコンパクトシティの実現も重要です。その意
味では、歩いて行ける近所のお店・商店街を守ることも福祉施策の
一環と言えるでしょう。
地域医療を維持することも重要です。長野市の医療体制は、行政と
長野市・更級・上水内・須高の各医師会の皆さん、そして長野赤十
字病院などの基幹となる病院との協力関係を柱に、市民の皆さんの
けがや病気を治療したり、健康を守ったりすることに万全を期して
います。
市内の医療体制は、大規模な病院としては、長野市民病院、長野赤
十字病院、そして厚生連の篠ノ井・松代・若穂の各病院(来年1月
の合併で新町病院も入ります)、国立東長野病院、NTT病院、長
野中央病院などがあります。開業医の先生方には、大病院と連携し、
良き協力・補完関係をもって、長野市の医療を支えていただいてい
ます。
中山間地域については、信更・小田切・信里・戸隠・鬼無里・大岡
地区に長野市として診療所を設置しており、先生方に辺地医療に取
り組んでいただいています。
地域の中の助け合い体制を維持することも大切だと考えています。
この一環として、昨年度から七二会地区など3つのモデル地区で
「中山間地域自治活動支援事業」を始めました。平成22年度から
は、中山間地域の11地区すべてで実施したいと考えています。
この事業は、そう遠くない将来、市内全域で実施する必要性が生じ
るのかもしれません。まず、中山間地域で実施することで、さまざ
まなノウハウを蓄積していきたいと思っています。
高齢者の皆さんの“元気”も応援していきます。「ながのシニアラ
イフアカデミー」の拡充、「おでかけパスポート事業」の継続、人
気の高いマレットゴルフ場整備など、社会とのつながりを保ち、生
きがいを持って健康で自分らしく生きるための環境整備にも積極的
に取り組んでいく必要があると考えています。
そもそも、市町村行政が目指す根本的な目標は、市民の皆さんの幸
せを実現することです。そして、その実現のために必要なことは、
「福祉」と「教育」であると、ある方から教えていただきました。
その通りだと思います。加えて、両者の共通項として、“心のケア”
ということがこれまでにも増して大切になっていると感じています。
幅が広く、画一的な施策だけでは実現できないテーマですが、あら
ゆる場面を想定して、市民の皆さんの幸せを追求したいと考えてい
ます。
2009年9月29日