2009年9月9日水曜日

市民会館・市役所第一庁舎の建て替えについて



長野市民会館は、昭和36年に完成、築48年、市役所第一庁舎は
昭和40年に完成、築44年です。いずれの建物も耐用年数は60
年ですから、もうしばらく使用できるはずでした。ところが、平成
18年に第一庁舎の耐震診断を実施した結果、震度5強以上の地震
で倒壊の恐れがあることが分かったのです。市民会館は、それより
5年も古いことから、耐震診断を実施してもお金の無駄ということ
で、劣化診断だけにとどめました。

対策としては、耐震補強工事をするという選択肢もあるのですが、
高額な費用を掛けてこの工事をしても、建物の寿命を延ばすことは
できません。結局は、5~10年後に建て替えの検討をしなければ
ならないということで、無駄な投資になってしまうのです。
また、建設から50年近く経過していますので、老朽化が著しい上
に使い勝手も悪く、維持費も割高になるなど、マイナス面も多く抱
えています。
このようなことから、現在、この二つの施設の建て替えを検討せざ
るを得なくなっています。

このことについては、市議会でもご意見を頂いていますが、“ハコ
モノ行政”に対して批判的な世論の流れもあり、議論が分かれると
ころです。論点は、市民会館の建て替えの是非で、意見は大きく二
つだと思っています。

一つは、第一庁舎も市民会館も建て替えが必要だ、というご意見で
す。
市役所の庁舎は、日常的に多くの市民の皆さんが訪れる場所であり、
かつ、災害発生時には、市民の安全・安心を守る拠点となる場所で
もあるので、耐震強度が万全な施設として建て替えるべきである。
市民会館は、完成以来、長野市民の文化芸術の振興や大きな会議の
開催に重要な役割を果たしてきており、今後とも必要である。市民
会館を廃止した場合、その他の施設では十分な利用の代替はできな
い、というご意見です。

それに対してもう一つは、第一庁舎の建て替えは仕方ないが市民会
館はいらない、というご意見です。
長野市には、ホクト文化ホール(県民文化会館)やオリンピック関
連施設もあるので、市民会館は不必要。将来の負担になる“ハコモ
ノ”は極力少なくすべきであり、建て替える必要はない、というご
意見です。

この二つのご意見に対し、私が考えていることを申し上げます。
第一庁舎の建て替えについては、おおむね多くの方の賛同を得たと
感じています。市民会館についてですが、私は、「建て替えは必要
である」と考えています。具体的に幾つかの理由を申し上げます。

(1)オリンピック施設は、建物の主たる利用目的が違いますので、
音楽会、舞踊、演劇、講演会などに使用するには不向きです。そし
て、音響が悪いこと、あるいはその都度、舞台装置を設置するのに
手間とお金が掛かり、市民の皆さんに手軽に文化芸術を提供する施
設とは言えません。すなわち、市民会館の代替施設にはならないと
いうことです。

(2)ホクト文化ホール(県民文化会館)の大ホールの収容人員は
約2,000人、中ホールは約1,000人です。1,000人程
度以下のホールは市内に幾つかありますが、約1,700人収容の
長野市民会館がなくなると、1,000人を超える人数を収容する
施設は、ホクト文化ホールの大ホール以外には無くなってしまうの
です。長野市の文化芸術を推進する立場から、また、学術会議など
を誘致する立場からも、そして、長野市民が利用する成人式や消防
出初式などでも使いたいと考えていますので、ホクト文化ホールだ
けではどうしても需要に応じられない、複数の施設が必要だと考え
ています。興行的な催しを開催する立場の方々からも、同様の申し
入れを頂いています。

(3)市内の文化団体、舞踊団体、音楽団体等々から、必要性につ
いて多くのご意見を頂いています。もちろん、意見は同じではなく、
例えば音楽団体などからは、音響効果の良い音楽専用ホールを・・・、
といったご意見です。ただ、これは、建設が決まってからの問題で、
どの分野に重点を置くかという議論だと思っています。結局、多目
的ホールにせざるを得ないのかなと感じてはいるのですが・・・。

(4)もう一つは、財政的な理由です。いずれの地方自治体も財政
が苦しいことは皆さんご存じだと思いますが、この建て替えには別
の要素もあります。長野市は平成17年1月1日に、豊野・戸隠・
鬼無里・大岡の4町村と合併しました。その合併により、市庁舎・
市民会館に「合併特例債」という有利な起債を利用できることにな
っているのです。
「合併特例債だって借金ではないか」とおっしゃる方もいますが、
そのご指摘は正解だと思っています。ですが、この借金に限っては、
国が7割を交付税で面倒をみてくれるということですから、地方自
治体にとっては大変有利で、利用しない手はないと思っています。
今後、このようなチャンスは、まずあり得ません。そして、地方自
治体にとっては、合併をすることで得た国からの支援ですから、利
用することをためらう必要はないとも思っています。

ただ、この支援には、平成26年度までに建設を完了しなくてはな
らないという制限事項が付いていますので、今、検討を進める必要
があるのです。何年か後に建て替えを検討すればいいとした場合に
は、財源確保のタイミングを逃してしまうことになり、市の健全財
政を堅持するという観点からすると厳しいと思っています。「合併
特例債」が無いとすると、費用をどこからひねり出してくるか、か
なり難しい問題です。

以上、私が市民会館の建て替えが必要だと考える4つの理由を申し
上げました。ぜひご理解いただきたいと思います。
このほか、長野市民会館と第一庁舎の建て替えに関して考えている
ことを申し上げます。

(1)街の中心施設として、市民会館をぜひ誘致したいという声が
複数の地区から上がっており、調整が難しいと感じています。市と
しては、可能性のある10カ所の候補地から、現実的に建設が可能
な3カ所に絞り、検討しています。

(2)高齢化が進む状況において、さまざまな手続きがワンフロア
で完了できる体制が必要になってきています。建て替えに当たって
は、住民サービスの充実を主眼に、また、防災面にも配慮した人に
優しい建物になるようにしたいと思っています。

(3)長野市では、環境に配慮した都市になりたいということで、
あらゆる対策を行っています。そして、今後つくる全ての公共施設
に加え、既存施設であっても比較的新しく設置可能な施設には、全
て太陽光発電システムを導入することを決めています。
残念ながら、現在の市民会館は、エネルギー効率が悪く、維持コス
トも高いことから、環境にやさしい施設ではないことは事実です。
新施設は、徹底的な環境対策を行い、現段階で考えられる理想的な
施設とすることで、維持費を40~50%カットできると見込んで
います。第一庁舎も、環境配慮型の建物のモデルになるような省エ
ネ施設にしたいと思っています。

以上、市民会館の建設と市役所第一庁舎の建て替えについての考え
方を説明させていただきました。環境対策ということも含め、長野
市の将来にとって大変有効であり、市民の皆さんのためになる施策
だと思っています。
いずれにしても、できるだけ次の世代の負担を軽くし、負の資産を
残さない、という観点でのご判断をお願いします。

2009年9月9日