2009年10月2日金曜日

合併の話、そして広域行政



平成17年1月1日、長野市が豊野町・戸隠村・鬼無里村・大岡村
を編入合併してから、もう5年目を迎えています。
この合併は、現段階では良かったと評価しています。地域審議会や
元気なまちづくり市民会議などの場で、合併地区の市民の皆さんの
意見を十分お聞きして市政に反映していますし、合併協議で話し合
われたことは、実現に向かって順調に動いています。
財政的には、借金が増えるのではないか、との心配もありました。
確かに一時的には増えましたが、借入金の総額はすでに合併前の水
準以下になっており、この問題は克服しています。

長野市全体として考えてみますと、新しく長野市になった地域の
“財産”が素晴しいと感じています。ここでは、一つ一つ申し上げ
ませんが、豊野・戸隠・鬼無里・大岡の4地区には、素晴しい景色、
人情など、有形、無形の魅力的な“財産”があり、その“財産”が
それぞれの地区の個性を引き立てています。そして、各地区では、
その個性を発揮しつつも長野市の一部としての一体感は増してきて
おり、全体として「長野市」の存在感を大きくしていると感じてい
ます。これは、合併によって得られた大きなメリットだと言えるで
しょう。

長野市全体として受けるメリットは、このほかにもいろいろありま
すが、財政面でのメリットも大きいと思っています。
全国の多くの市町村は、国から地方交付税の交付を受けています
(地方交付税は市町村にとって、独自の税金と同様、自己財源とし
て算入できる重要な財源です)。例えば、長野市と合併した旧町村
への交付税は、それまで別々に算定されて交付されていました。こ
れが、合併により一つになるわけですから、国としては、一つの自
治体として算定することで、交付額を減らすことができるようにな
ります。これは、国にとって大きなメリットです。

一方、合併した市町村側としては、交付額が減ってしまうわけです
が、その分、組織や歳出などの合理化、合併によるスケールメリッ
トを活かすことで十分にカバーできます。行財政改革の面でも市町
村合併の効果は、とても大きいということでしょう。

ただ、今回の合併では、国の合併促進策として、この地方交付税の
減額がこの先10年間猶予されることになっています。つまり、交
付税の算定に当たっては、平成26年度まで合併がなかったものと
見なして、旧町村別々に算定した交付税が長野市に一括して交付さ
れることになっています。10年分を合計すると、かなりの金額に
なりますから、長野市にとって、これも大きなメリットだと言える
でしょう。

でも、10年後には交付税が減ってしまうというご意見があります。
それは事実です。ですが、その後もさらに5年間の激減緩和措置が
あり、急激に減額されないことになっていますから、本来の算定額
になるのは15年後の平成32年度からです。当然、合併により増
えた歳出もあるわけですから、それまでにしっかりと行財政改革を
実施して、減額に耐えうる体質にすることが重要だと思っています。

前述のとおり、合併によって増えた借金には、5年を経たずに返済
し、解消できました。合併によって増えた職員の数も15年かけれ
ば適正数にできると考えていますし、さまざまな諸施策もスケール
メリットを活かせば、対応は可能です。

そして、来年の1月1日、長野市は、新たに信州新町と中条村を編
入合併します。
1年半におよぶ長い合併協議を経て、合併調印、市町村議会の議決、
県議会の議決、そして、県知事から総務省へ届出され7月31日に
総務大臣による告示が行われたことで正式決定しました。
長野市とすれば、過去の経験を生かし、きちんとした体制で取り組
んでいきたいと考えています。市民の皆さんには、もう一段大きく
なる長野市に多いに期待していただきたいと考えています。

合併とは違いますが、自治体同士が協力しあって事務事業に取り組
むことができるよう、国ではいろいろな広域行政システムを示して
います。地方自治体は、それぞれ独立した存在であって、お互いに
不可侵であることは当たり前です。ただし、小さな自治体では、ス
ケールメリットが働かない分、どうしても不利になることもありま
す。
そこで、共同で取り組んだ方が効率の良い事業については、この広
域行政システムを利用して、幾つかの自治体が集まって事業を実施
しています。

まずは、「広域連合」です。長野市が長野広域連合に属しているこ
とは、私もメルマガで何度かお知らせしましたので、ご存じだと思
います。長野広域連合で行っているのは、特別養護老人ホームの運
営、介護保険の要介護度の認定審査、ごみ処理施設建設に向けた準
備作業などの事業です。広域連合ごとに実施している事業は異なり
ますが、このような広域連合は、県内に10あります。

そのほか、県内で1つしかない「長野県後期高齢者医療広域連合」
という組織もあります。後期高齢者医療広域連合は、都道府県ごと
にすべての市町村が加入する広域連合を設けることが法律で定めら
れていることから、長野県でも県内全市町村で一つの広域連合を組
織したのです。
私も創立期の2年間、市長会長であったが故に連合長を務めたので
すが、すべて国が決めた通りに仕事を進めただけで、典型的な“形
式だけの地方自治”だと感じました。これでは、広域連合ではなく
県の業務とした方が効率的ではないか、というのが私の率直な感想
です。

広域連合に似たようなシステムですが、「一部事務組合」という仕
組みもあります。広域連合が幅広くいろいろな事業に取り組めるの
に対し、一部事務組合は、特定の事務について協力し合うための仕
組みです。例えば長野市では、し尿処理や火葬場などの設置運営の
一部を近隣の市町村と共同で実施しています。
ちなみに、市町村(長野市を含めて)は「普通地方公共団体」です。
それに対して、広域連合や一部事務組合などは、「特別地方公共団
体」と言われています。

事務事業を「委託」するという仕組みもあります。消防・救急業務
を例にしますと、長野市では、委託を受けて周辺5町村の消防・救
急業務も行っています。この場合、長野市は受託して費用を頂いて
いる立場ですが、共同で特別地方公共団体をつくるのではなく、応
分の費用を負担して普通地方公共団体に委託することで、広域行政
を実施する方法もあるのです。

さらに総務省では、今年度当初から「定住自立圏構想」という仕組
みを本格的に推進しています。これは、広域連合でも一部事務組合
でもなく、中心になる市と周辺市町村が1対1で締結する協定に基
づいて役割を分担し、相互に連携する仕組みとのことで、これも広
域行政の一つと言えるでしょう。
言葉だけでは、なかなか難解な部分もありますが、今年度から全国
22圏域で先行実施するとのことですから、長野市にとって必要か
どうかの検討も含め、今後の動向を見極める必要がありそうです。

このように、さまざまな選択肢がありますが、市域を超えて実施で
きる行政のスリム化、効率化があるということもご理解いただきた
いと思います。

2009年10月2日