7月7日、千曲市の屋代駅から、長野電鉄屋代線の電車に乗って
きました。この日は、みどりの移動市長室で、若穂地区の住民自治
協議会を訪問し、屋代線の存続について意見交換することになって
いましたので、ぜひその前に乗っておきたかったのです。
屋代線の平成21年度の経常損益は、1億7,000万円の赤字。
加えてこれまでの累積赤字は50億円を超えているそうで、非常に
厳しい経営状況になっています。
大正11年に開通した屋代線は、長野電鉄の中で一番古い鉄道路
線です。もともとこの路線を敷設した目的は、須坂の繭・絹糸を国
鉄の駅へ輸送することだったとお聞きしています。最盛期の昭和
40年度には、年間330万人もの乗客があったそうです。
昭和30年代中ごろのことですが、私にとって屋代線(当時は河
東線)といえば、こんなことがありました。上野駅から信越線の列
車に乗って帰郷する際、間違えて私は湯田中行きの車両に乗ってし
まい、気が付いたら須坂の手前。慌てて降りて、須坂駅で長野行き
に乗り換えた・・・こんなことを思い出しました。
以前は、国鉄が屋代駅から長野電鉄へ乗り入れていたのです。そ
して、このころの車内は、かなりにぎやかだったと記憶しています。
そのピークから、毎年のように乗客が減り続け、昨年度は46万
人(ピーク時の約14%)にまで減少してしまいました。特にショ
ックなのは、昨年度は屋代線を何とか存続させたいという地域の皆
さんの努力がすでに始まっていましたから、増えないまでも一昨年
度に比べて同等の数字にはなると考えていたのですが、さらに1万
人減ってしまったことです。
本年度は、若穂地区の皆さんを中心にさらにいろいろなイベント
に取り組んでおられますから、乗客は増えると思っていますが、ど
んな数字になるか・・・期待しています。
7月に入って、屋代線の活性化・再生を目的に、国の法律に基づ
いて策定した「長野電鉄屋代線総合連携計画」および「活性化・再
生総合事業計画」による実証実験が始まりました。電車やバスによ
る増便、終発時間の繰り下げ、サイクルトレイン、割引回数券の発
行など、さまざまな事業を実施しています。
私もその実態を確かめたいという思いもあり、屋代駅から乗車し
たわけですが、私と同行した市職員、テレビカメラで取材をしてく
れたメディアの皆さんを別にすると、2両編成の電車に乗っていた
お客さんは2人だけでした。まあ、7月から実験的に増やした臨時
運行の電車ですから、仕方ないのかなと思いますが・・・お客さん
が少ないのは厳しいことです。
松代駅からは、若穂地区の住民自治協議会の皆さんや「プロジェ
クト・チーム屋代線」の皆さんがこの電車に乗ってこられましたの
で、車内は一気にとてもにぎやかな雰囲気に変わりました。若穂の
綿内駅まで、説明をお聴きしたり、質問させていただいたりしなが
ら皆さんとご一緒しました。
皆さん大変な意気込みで、沿線の風景を写真に撮り、市の「地域
やる気支援補助金」をフル活用して、パネルを作って若穂地区の各
駅に飾ったのです。とてもきれいな写真ですので、注目度は一気に
上がるでしょう。皆さんもぜひご覧になってみてください。
駅舎を利用した学習塾についても、説明がありました。
もしかすれば、廃線になるかもしれないという危機感を持ちつつ
も、明るく頑張っているという印象を強く感じた次第です。これは、
住民自治協議会長のお人柄の影響かもしれません。
綿内駅で電車を降り、若穂地区の綿内中町区公民館で懇談会を開
催しました。この公民館は、綿内中央土地区画整理事業で施工した
大きな住宅地の中にある地域公民館です。10年前に事業が終わっ
たばかりで、新しく、すてきな家が建ち並ぶ快適そうな住宅地でし
た。
懇談では、住民自治協議会の中の「プロジェクト・チーム屋代線」
のメンバーを中心に、屋代線の存続に向けたさまざまな活動につい
てお話をお聴きしました。私のあいさつ、住民自治協議会長のあい
さつに続いて、住民自治協議会の役員の皆さん、「プロジェクト・
チーム屋代線」のメンバーの皆さん全員が発言されました。
屋代線の話題では、住民自治協議会で企画した「電車にゆられて
たっぷりと古代の旅」には272人、「電車にゆられて小さな旅・
松代編」には168人も参加した、綿内駅前のスーパーが突然撤退
してしまったが電車まで無くなったら困る、障害者施設の通所者が
利用しているので屋代線は必要、高校生が電車で通学している、
11月ごろ存廃が決まると聞いているが心配・・・。これらがすべ
てではありませんが、屋代線をぜひ残してほしいというご意見がた
くさんありました。
一方、そんな意見に交じって、イベント頼りでは活性化は難しい、
住宅地をもっと造りたい、若穂には蓮台寺のアジサイなど花がたく
さんあるので、花でまちおこしをしたい、もっと利用しやすく、ま
とめてお金を出すことなどが必要、個人の力では限界だ、日替わり
通勤運動の強化や税金を投入する必要を感じる・・・このようなご
意見もありました。
皆さんからのお話を踏まえ、最後に私から、
(1)公共交通は都市のインフラであると以前から主張してきてい
るが、公共交通の必要性を理解していただいても、乗っていた
だけなくてはどうにもならない。
(2)公共交通機関を維持するための費用を皆で負担するという考
え方もある。懇談でも同様の提案があったが、方法の一つとし
て、沿線の皆さんに1世帯1万円の年間フリーパスを買ってい
ただく、ということも考えられる。1世帯10万円では難しい
と思うが、1万円であれば可能かもしれない。
(3)道路を改良して、自動車の利便性を良くしすぎると、電車の
乗客が減ってしまうことにもつながる。バランスが難しい。
そんなお話をさせていただきました。
年間フリーパスについて少し補足します。長野電鉄屋代線の年間
赤字額は、投資を別にして1億7,000万円。そして須坂市や千
曲市も含め、屋代線沿線には2万1,000世帯あります。このう
ち1万7,000世帯の皆さんに年1万円のフリーパスを買ってい
ただければ、この赤字が消える計算になるわけです。
もちろん、この計算どおり単純にはいかないと思いますが、将来
的には、技術革新や新規の工夫により、コストが下げられる可能性
もあります。そのほかの手段、例えば駅舎や駅前広場の使い方の工
夫、そして住民が増える方策の実行、観光開発なども必要でしょう。
いずれにしてもこの不況の時代、何をするにも簡単ではありませ
んが、可能性を検討してみることも大切かもしれません。