参議院議員通常選挙が6月24日に公示され、7月11日の投票
日に向けて各政党・候補者は一斉に走っています。
参議院は、3年ごとに半数の議員が選挙の洗礼を受けることにな
っています。そして、衆議院と違って解散がありません。すなわち、
この選挙では、今後6年間、国会議員として活躍していただく人を
選ぶことになるわけです。
選挙について直接的に意見を述べることは、首長という私の立場
からすべきではないと思っていますので、ここでのコメントは差し
控えます。ただ、参議院そのものについて、私は以前から疑問を感
じていることがありますので、今回は、そのことに触れさせていた
だきます。
私が疑問に感じているのは、国会が衆・参の二院制を採っている
ことが無駄ではないかということです。外国の例はあまりよく知り
ませんが、一院制が多いと聞いています。日本の憲法で決まってい
るのだから仕方がないといえばそれまでですが、衆議院だけで国会
の機能は十分果たせるのではないかと以前から思っていました。
衆・参両院の性格が全く違い、役割も違うのなら意味があるかも
しれません。衆議院は政党政治の根幹ですから、政党中心に動くこ
とは仕方ないでしょう。それに対して参議院は、政党とは一線を画
した存在になり、相応の権限を持つようになれば良いと思うのです。
衆議院と参議院の議決が違ってしまう、いわゆる“ねじれ現象”
も、本当の意味の話し合いが行われるのならば良いのですが、現在
のような形では国会審議を複雑にしているだけのように思います。
参議院には、衆議院の行き過ぎをチェックしたり、衆議院の解散
中に国会の機能を代行したりする役割が期待されているようですが、
果たして機能しているのでしょうか。
戦前の貴族院は、政党政治の防波堤という意味合いを持っていた
そうです。貴族院なんて民主主義とは正反対の組織と言われそうで
すが、戦前のことを勉強している中で、「明治維新の元勲が生きて
いる時代には、政党政治家が跳ね上がっても元老が抑え込んでいた。
ところが、昭和になって、生きている元老は西園寺公望1人になり、
抑えが利かなくなって太平洋戦争に飛び込んでいってしまった」と
いう意味の本を読んだことがあります。
現在の参議院にそれほどのパワーを求めることは無理でしょう。
しかし、貴族院のように大御所が選ばれるルールがあれば、新しい
仕組みが生まれるかもしれません。
戦後、参議院になってからも昭和30年代ごろまでは、緑風会と
いう、政党とは一線を画した会派が院内で力を持っていたように記
憶しています。政争とは無縁、大所高所から意見を主張する会派で、
議決に際しては個人の判断と責任で賛否を決めたそうです(実際は
よく知りません。ただ、一服の清涼剤として貴重な存在だったと言
われています)。
この緑風会が力を失ったのは、自由民主党と日本社会党が二大政
党として出現した、いわゆる55年体制ができたときだそうです。
参議院にもだんだん政党の手が伸びて、無所属は無力だという気運
が支配するようになり、衆議院、参議院の区別が無くなってしまっ
たと言われています。それは決して良いことではなかったのでは・
・・と私は思うのです。
解決策として、参議院議員には党議拘束を禁止する、というのは
どうでしょうか。
最近いろいろな本を読んでいて感じることですが・・・民主主義
というのは、歴史の中では比較的新しい考え方であり、成熟したも
のではない・・・すなわち、万能ではないのではないか、というこ
とです。民主主義の起源として、古代ギリシャに陶片追放という制
度があったと子どものころ勉強しましたが・・・。
古代ローマでも、共和政(どちらかというと民主政に近いはず)
から帝政になり、それなりの人物が皇帝に選ばれてきたから、ロー
マ帝国が長く続いたと言えるのでしょう(不適格な皇帝はそれなり
に排除されてきたことも事実のようです)。
現在の民主主義は、民主主義の顔をしていながら、実は独裁者が
支配しているのではないでしょうか。あのヒトラーでさえ、最初は
民主主義的な方法で勢力を築いてきたということです。そして、現
代の日本でも、民主的に選挙で選ばれたはずなのに、いつの間にか
民主的なリーダーではなく、独裁者のようになっている・・・そう
感じている国民が大勢いるというのも実態ではないでしょうか。
そもそも民主主義とポピュリズムは、どこが違うのでしょうか?
選挙公約を見ていると、程度の違いこそありますが、結局ポピュリ
ズムにならざるを得ない・・・前政権、前々政権が実施した定額給
付金や子ども手当の支給、高速道路料金の値下げあるいは無料化・
・・そのほかたくさんありますが、すべてポピュリズムに基づく選
挙対策のように見えるのです。
選挙のために意地を張る、そうでないと選挙に勝てない・・・た
とえ良い政策でも政争のために賛成しない。こんなことが繰り返さ
れてきたように思います。
ただ今回の選挙には、消費税引き上げの話が出てきました。私と
すれば、日本のことを真剣に考えたまともな政策がようやく出てき
たと、ホッとしているのが心境です。どう考えても選挙には不利と
思われる増税の話が打ち出されたこと、ポピュリズムだけではない
ことを感じさせます。
グローバル社会の必然として、企業減税についても話題になって
きました。実施されれば、国として減収の可能性があるのでしょう
が、国際競争に打ち勝つためには、仕方がない選択でしょう。
そして、選挙は本当に最善の方法なのでしょうか?以前このメル
マガで、松代町の善光寺回向柱寄進建立会の会長の選び方を報告し
たことがあります。前任者が真剣に考えて後任者を指名する、とい
う伝統的なあの選び方は、素晴らしいと感じています。
とはいえ、参議院議員選挙は今後の国政を左右する重要な選挙で
す。期日前投票もすでに始まっています。棄権しないで大切な1票
を投じてください。