中国河北省石家庄市から、王大軍副市長を団長とする8人の友好
代表団の皆さんが、11月26日から28日まで長野市を訪れまし
た。石家庄市は、北京から高速道路を利用して車で約2時間半。人
口約1千万人の大都市です(長野市の人口が約38万8千人ですか
ら、友好都市とはいっても規模が桁外れに違います)。
石家庄市と長野市は、それぞれが省都・県都であり、内陸部に位
置し、地形や気候が似ていたことや両市において果樹栽培が盛んで
あったことなどから、1981(昭和56)年4月19日に友好都
市の調印・締結をして、今年で30周年の節目の年を迎えました。
締結当時の長野市長は、故柳原正之さんでした。その後、1983
(昭和58)年には、長野県が河北省と友好提携を締結しています。
友好都市締結以来、代表団や中学生の相互派遣のほか、本市は石
家庄市からのさまざまな分野の研修生を受け入れるなどの交流を中
心に友好を深めてきました。現在までの交流実績は、本市への受け
入れ総数が109団・821人、本市からの派遣総数が67団・
824人です。その間には、元市議会議員の千野昭さんが石家庄市
で川中島白桃の栽培を指導し、石家庄市から名誉市民の称号を受け
られたり、長野市の造園事業者が研修生を受け入れ、石家庄市の造
園事業に大きく貢献したり、長野市の企業が石家庄市で学校を建設
し、寄付したりするなどの交流もありました。
私は市長就任後の2004(平成16)年と、友好都市締結25
周年の2006(平成18)年の2回石家庄市を訪問しましたが、
その間の2年で石家庄市は大きく変貌し、その発展ぶりには目を見
張るものがありました。さらに、今回の訪日団の皆さんから見せて
いただいた石家庄市の現在の写真には、本当にびっくりしました。
その後の5年間で、まちは驚くほど開発が進んでいました。
石家庄市では、2007(平成19)年から2008(平成20)
年にかけてギョーザ中毒事件が、2010(平成22)年には日本
人が軍事管理区域を撮影したとして拘束された事件などがあり、実
態は正確にはよく分かりませんが、嫌な思いを抱いた時期もありま
した。しかし、こうしたことを克服しながら、今日の両市の関係に
発展してきたことを大切にしなくてはいけないと思っています。
26日、訪日団は新幹線で長野入りされました。JR長野駅のコ
ンコースで、市民、市議会議員の皆さんに大勢参加していただき、
盛大に歓迎式典を開催しました。訪日団をお迎えする男声合唱団
「ZEN」の皆さんの歌声が、とても印象的でした。
夕方から市内のホテルで、長野市と市議会への表敬、続いて友好
都市締結30周年記念レセプションが開催され、大勢の市民の皆さ
んにも参加していただきました。本来なら、市長室や議長室で表敬
を受けるべきでしょうが、この日は土曜日で市役所が閉庁していた
こともあり、できませんでした。
27日・28日は、訪日団の皆さんの希望により、経済団体との
交流や環境分野での視察をしていただきました。長野市としても、
交流をより有意義なものに発展させるためには、こうした具体的な
分野での情報交換、人・物の交流を促進したいと考えていましたの
で、関係団体・企業に積極的に働き掛け、効果の上がる視察の準備
を進めてきました。しかし、企業訪問などは日程の都合上、主に
27日の日曜日に設定せざるを得ず、訪問先の企業の皆さんには、
ずいぶんご迷惑をお掛けしました。それにもかかわらず、訪日団の
視察を快く受け入れていただき、また多くの社員の皆さんに玄関で
お迎えいただくなどご配慮いただき、本当にありがとうございまし
た。
以下、同行した秘書課国際室からの報告を中心にお話しします。
まず、経済団体との交流は、長野商工会議所、長野市商工会にご
協力いただき、また観光団体としてながの観光コンベンションビュ
ーローにもご参加いただき、懇談会と昼食会を開催しました。既に
北京や上海などに進出している企業や金融機関が、この懇談会を機
に、今後石家庄市との交流を視野に入れた交渉を希望する話や、両
市の観光資源を生かした観光交流の話など、かなり具体的かつ現実
的な意見交換ができたとのことです。
発展目覚ましい石家庄市ですが、環境問題、特に大気汚染が喫緊
の課題のようです。訪日団の中に電動自動車会社の取締役の方がお
られ、日本の環境技術に高い関心を示し、日本の電気自動車をぜひ
見たいとのことで、長野三菱自動車販売株式会社と長野日産自動車
株式会社を訪問していただきました。中国の自動車産業も近年大き
く発展していますが、電気自動車に関しては日本がかなりリードし
ているようで、両社においては電気自動車に試乗し、熱心に専門的
な質問をされたそうです。それならばと、前回のかじとり通信でも
お伝えした長野市で実証実験中の電動バスを見ていただくよう私が
提案し、実際に試乗もしていただきました。特に、車体に電気プラ
グを接続せずに充電できる非接触充電方式に興味津々であったそう
です。
中国でも高齢化が進んでいて、介護や生活支援といった高齢社会
問題が顕著になっているとのことで、老人福祉施設・ケアハウス南
長野を視察していただきました。私は、かつて中国で人口増への対
策として行われていた「一人っ子政策」のしわ寄せみたいなものが、
いずれ出てくると思っていたのですが、そろそろそんな時代に入っ
ているのかもしれません。
今回の訪日団の中に物流会社の総支配人の方がおられたことから、
長野運送株式会社を訪問し、日本の環境に配慮した物流体制やシス
テムについて視察していただきました。また、近年石家庄市では、
健康志向の高まりにより、低カロリーのきのこなどが人気だそうで、
視察したホクトメディカル株式会社では、現地での製品販売などに
ついての具体的な情報交換が行われたようです。
こうした懇談会や視察のほかに、長野市日中友好協会の皆さん主
催の歓迎宴にも出席されました。両市の交流が30年間続いている
のは、長野市日中友好協会の皆さんによる草の根の交流なくしては
語れません。歓迎宴では、踊りや歌などで大いに交流を図ることが
できたようです。
その他、訪日団の皆さんは、茶臼山動物園や松代を視察し、28
日に長野市を出発されました。JR長野駅でのお別れの際には、涙
を浮かべていた方もおられたとのことです。
訪日団の団長は、若干44歳にして大都市石家庄市の副市長を務
めている王大軍さんです。王団長は、帰国を前にして、「もっと長
野市に滞在して、多くの企業関係者と懇談したり、自然の宝庫であ
る戸隠や鬼無里に行ったりしたかった。東京より長野を、より広く、
深く知りたかった」とおっしゃってくれたそうです。そういえば、
王団長は、長野駅に到着して開口一番、「空気がおいしい」。そし
て、「まちがきれいだ」と何度もおっしゃっていました。
また、「長野市には人間の手が加えられていない素晴らしい自然
がある。そして、長い歴史を感じさせる建物や風景が、まちの中で
も取り壊されずに残っている。冬季オリンピックにより高速道路や
新幹線も整備され、都市と自然と文化が共存するコンパクトでとて
もきれいなまちだ」と絶賛してくれました。そして、市民の皆さん
のおもてなしの心を強く感じたそうです。
日本の料理も楽しまれたようで、新鮮な野菜やきのこの“おひた
し”を「おいしい」といって気に入ってくれたそうです。中国の人
は、油っぽい料理を好むのかと思っていましたが、意外です。
王団長は、「日本と中国は、歴史上つらい出来事があった。今も
反日感情を持つ人がいる。しかし、これからはお互いがパートナー
として、両市にとって何が有益か、両市の理解と信頼関係を築きた
い。そのためには、経済、観光、そして市民同士の交流をもっと推
進しよう。石家庄市のほとんどの市民は長野市を全く知らない。今
度長野市から石家庄市に来ていただく時は、市民との交流、そして
長野市をPRする場を設けたい」とおっしゃったそうです。表敬訪
問や記念レセプションでも、王団長は私に両市のこれからの友好交
流を熱く語ってくれました。
今度は、長野市が石家庄市を記念訪問する予定です。市民の皆さ
んの参加も募り、将来につながる効果の高い訪問を今から考えてお
きたいと思います。
最後になりましたが、今回の記念事業にご協力いただきました全
ての皆さんにお礼を申し上げます。