長野市に縁があり、首都圏でさまざまな分野で活躍されている皆
さんにお願いして、平成19年10月に「ふるさとNAGANO応
援団」を設立してから4年がたちました。メンバーの皆さんがお持
ちの高度な専門知識、豊かな経験、広い人脈から、これまで多くの
ご意見、アドバイスを頂くとともに、広く長野市をPRしていただ
くなど、まさに長野市の応援団として活動していただいています。
今年新たに二人の方をお迎えし、メンバーは現在38人です。いず
れも心強い皆さんです。新メンバーのお二人をご紹介します。
鎌原正直さん(三菱レイヨン株式会社取締役社長/長野市出身)
柄澤康喜さん(三井住友海上火災保険株式会社取締役社長/長野
市出身)
長野市の存在感をもう一段高めるため、新たな視点からのご支援
をお願いします。
メンバーの皆さんには、実際に長野市にお越しいただき本市の現
状を視察していただいたり、都内での意見交換会に参加していただ
いたりしています。今年の視察は10月29日に行い、イヤーキャ
ンペーンを展開中の篠ノ井地区と信州新町地区を訪問していただき
ました。意見交換会は、11月28日に都内で開催しました。
今年の意見交換会では、「中山間地域の活性化」「ながのシティ
プロモーションの推進」「長野県短期大学の4年制化」の3つにテ
ーマを絞り、まず私がそれぞれの現状や課題について説明し、その
後、意見交換に移りました。以下、それぞれのテーマについてお話
しした概要と、それに対してメンバーの皆さんからどんなお話があ
ったか、要約させていただきながら、できるだけ意見交換会の雰囲
気が伝わるようにご紹介したいと思います。
(1)中山間地域の活性化
長野市域の約4分の3の面積を占める一方で、人口は市全体の約
1割である中山間地域の活性化は、大きな課題です。小・中学生農
家民泊誘致受入事業や、本年度から始めた農業政策の目玉である新
規就農者支援事業、農業法人化事業、薬草栽培など、中山間地域の
活性化を探る各種取り組みについて説明しました。また、野生鳥獣
による農作物の被害がとても大きいことなどについてお話ししまし
た。ちなみに会場では、長野市農業公社の「ながのいのち」ブラン
ドの新商品として、若穂保科地区の農家グループ「信州ほしな食彩
園」さんと洋菓子店「手作りケーキ工房キャロット」さんが共同開
発した「シフォンケーキ」と「ほし~な・りんご姫(アップルパイ)
」を皆さんにお配りし、ご賞味いただきました。
まず、最初に話題となったのは農家民泊事業についてです。「小
・中学生が農家民泊し、農業を経験することは大事なことだ」「山
がきれいだ、星がきれいだというように長野市にほれ込んでくれれ
ば、なおいい」といったうれしい感想を頂きました。また、薬草栽
培については、「どの薬草を選ぶかが非常に重要であるため、戦略
的に考えなければならない」といった専門分野からのご意見や、新
規就農者支援事業については、「補助金を出すというやり方もある
が、根本的にビジネスモデルをどう変えていくかという開発を両建
てでやる必要がある」といった意見も頂きました。
また、「国土交通省が、2050年の1平方キロメートルメッシ
ュの人口予想を出している。それによると、現在、人が住んでいる
場所の21%が無人化するとしている。また、現在、人が住んでい
る場所の60%が、人口が半減するという予測をしている。このよ
うな長期見通しを踏まえて中山間地域対策をどう考えるのかお聞き
したい」と、この問題の核心を突くご質問もありました。
私はまとめとして、「中山間地域や農業の活性化については、好
意的な意見の方だけではない。『もう遅い』という意見もある。し
かし、行政としては、何としても農業を活性化し、農業で食べてい
けるようにしなければならない。農業は、やり方によってはもうか
る。そして、現在の何となく閉塞(へいそく)感のある社会の中で、
付加価値を生み出していく産業は、農業である。そのため、農業が
活性化するための振興策をさらに推進したい」と申し上げました。
(2)ながのシティプロモーションの推進
シティプロモーションとは、人口減少時代など社会構造の大きな
変化が予想される中で、地域ブランドの確立などにより都市の魅力
を高め、市外から人や企業などの資源を獲得し、都市づくりを進め
ていこうという考えです。本年度から本格的に取り組みを始めてお
り、オリンピック開催都市であることを旗印に、海外に向けても発
信していきたいと考えています。ふるさとNAGANO応援団との
連携の重要性についてもお伝えしました。
このテーマについては、「今、多くの自治体がアジア諸国に売り
込みをしているが、外国から見ると、それぞれの自治体が別々に売
り込みに来るので混乱している。複数の県で連携してはどうか。そ
して、若い世代に影響力のあるカリスマ・ブロガーを呼び、観光地
を回ってもらいブログを書いてもらうなど、費用対効果の大きいア
プローチを取っている事例もあり、こうしたことを戦略的に行う必
要がある」と、インターネットを利用したSNS(ソーシャル・ネ
ットワーキング・サービス)を活用するご提案を頂きました。また、
「日本は海外の観光客誘致が戦略的に欠けている。山間部を利用し
たり、オリンピック開催都市であることを生かしたりして、短期間
であれば地元の農村に泊まっていただくなど、文化とコラボレーシ
ョンした形で田舎を売りにして、単価を高く取れるビジネスもある
のではないか。森林があって、神秘的なコンテンツがあって、国際
的な知名度もあって、スキーもできて、これだけの観光資源があれ
ば、そういった売り込みもできる」といった海外を視野に入れたご
意見も頂きました。
また、篠ノ井・信州新町地区の視察に参加されたメンバーの方か
らは、「両地区ともいいものはある。それを丁寧に掘り起こしてい
く日々の努力が大切だ」というご意見を頂いたほか、「鬼の無い里」
という地名の由来に昔から興味があり、今年初めて鬼無里を訪れた
というメンバーの方からは、「非常に古い歴史や神話がある鬼無里
と、多くの神話や伝説が残る隣の戸隠を一体的に生かしたらどうか」
という提案を頂きました。これはまさに今取り組んでいる「いいと
き観光エリア事業」に一致するものであり、その取り組み状況を説
明し、またネーミングについてもお話ししました。実は、「いいと
き」は、飯綱・戸隠・鬼無里の頭文字を取って、私が名付けました。
シティプロモーションについては、今回メンバーの皆さんから頂
いたご意見をはじめ、さまざまな立場の皆さんのご意見・ご提案を
お聞きしながら、本市の魅力度アップや活性化につながる取り組み
を進めていきたいと考えています。
(3)長野県短期大学の4年制化
長野県短期大学の4年制化については、今年7月に、「長野県短
期大学の将来構想に関する検討委員会」において、長野県の高等教
育を一層充実させるため、長野県短期大学を改組し、新たな公立4
年制大学に転換することが必要との提言に至りました。所在市であ
る長野市としても、長年の悲願であり、大変喜ばしいことです。こ
れまで、独立行政法人という運営形態が所在市として応援しやすい
のではと申し上げ、また、大学機能の一部が中心市街地に設置され
ることとなれば若者が行き交うまちにつながることから、平成24
年度をもって閉校予定の市立後町小学校跡地の利用についても県へ
提案していることをお話ししました。
このテーマについては、多くのご意見を頂きました。まず、現在
の大学を取り巻く社会環境を踏まえ、「現在の短期大学の学科構成
や取得可能な資格を見ると、これまでは教育関連に就職できていた
と思うが、今後子どもの人数が減ると、当然就職先も減ることが予
想される。女子大ということで言うと、日本は、先進諸国の中で最
も男女平等が遅れており、女性の産業振興力が一番生きていないと
いう意味で、「埋蔵金」という言われ方もしている。これをどう生
かすかが重要で、例えば経済学、経営学に強い女子大にするのも手
である。差別化をしていく、また、長野の地域資源を生かして産業
につなげていくという切り口で、4年制移行に伴う学部構成も戦略
的に行っていく必要があると思う」「私立大学においては、今年3
月に卒業予定だった学生の5分の1ほどが就職留年している状況で
あり、就職できる力をどう身に付けるかということが重要である。
資格を取ればいいというものではないので、世界中どこへ行っても
働けるというキャリアマインドを養成する大学にしなければ、4年
制化しても意味はない。日本国内に大学が多すぎるという声もある
が、世界的な水準でみると日本の大学進学率はかなり低い。アジア
の中でも日本より低い国はあまりない」といったご意見がありまし
た。
また、学部構成の話にもなり、「学部は、流行を追ってつくれば
良いというものではない。大学などの教育機関は常勤の教授や講師
が熱心に教育するというのが基本であるが、それだけでは不十分で
ある。東京から長野へは新幹線で1時間30分であり、千葉からだ
と八王子の大学に行くよりも信州大学に行く方が楽である。そうい
った利点を生かせば、東京の人材を非常勤講師として活用できるの
で、学部構成という枠を超えて新しい取り組みをしていってほしい」
「実務教育と既にある教育をどう組み合わせるか、教育を受けても
就職できない人をどこで生かすか、ということについては産業政策
と連動させる必要がある。4年制大学の学部構成を検討する際に、
個々の分野の専門の方々だけで議論するのも深掘りができていいが、
横のつながりを考慮するべきである」といった意見がありました。
私はこれに対し、「現在の教員の専門性を全く生かさずに新しい
ものをつくるというのは現実的ではない。そのため、徐々に変えて
いくということもあり得る。しかし、私としては、既存のものにこ
だわらず新しいものにしていくことを強く主張していきたい」と申
し上げました。
いずれにしても、この県短4年制化は長野県が主体となるもので
すから、メンバーの皆さんから頂いたご意見を参考にし、今後大学
の所在市の立場から、県に提言していきたいと考えています。
今回も、さまざまな分野でご活躍中の皆さんから、大変貴重なご
意見を頂きました。毎回思いますが、行政とは違った視点からのご
意見に、なるほどと思う点を多々発見することができます。今年の
意見交換会も大変有益なものとなりました。
お忙しい中ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。