昨年この時期のかじとり通信に、3期目の任期の折り返し点とい
うことで、市長として残り2年でやりたいこと、またはめどは付け
ておきたいことを書かせていただきました。やりたいことと言うよ
りは、やらなくてはならないことと言った方が良かったかなと感じ
ています。
あれから、1年があっという間に過ぎてしまい、3期目の任期も
残り1年になりました。そこで、今回のかじとり通信では、昨年申
し上げた項目を検証しながら、残りの1年間、どのように市政を運
営していくのか考えてみました。
1 ソフト部門
(1)都市内分権の着実な推進と市民の自立・自治意識の確立
都市内分権の本格実施から3年目を迎えました。地区ごとの温度
差はあっても、市内32地区全ての住民自治協議会(住自協)が、
地域の特性を踏まえた活動に熱心に取り組んでいただいており、私
としては手応えを感じています。
住自協のさらなる自立に向けた支援策として、本年度から、新た
に事務局長の人件費に対する財政支援を始めました。住自協は、地
域コミュニティー再生の中心として徐々に存在感を示し始めていま
す。住自協が「隣は何をする人ぞ」的な考えでなく、「自分たちの
町は自分たちでつくる」という意気込みで地域課題に取り組んでい
くためには、1、2年の短期で交代する役員さんだけでは運営や事
業の継続性に支障があるという声をお聴きし、住自協に思い切って
事務局長を雇用してもらい、頑張ってもらおうというものです。
住自協会長さんをはじめ、区や自治会の代表者として地域のけん
引役になり、住自協の中枢部分を担っている区長さんなどが連携し
ながら、地区におけるまちづくりの長期計画を作ったり住自協の中
に法人をつくったりして、県や市などのさまざまな支援メニューを
活用しながら、「もうける」ことを目標の一つとし、前向きにトラ
イしてほしいと欲張りな期待を掛けています。
地域活動の妨げとなる要因の一つは、過疎化の進行です。人口減
少は中山間地域だけでなく中心市街地の課題でもありますが、住自
協から具体的な提案を頂きながら、市としても元気が出るような活
動を、一生懸命支援していきたいと考えています。
(2)中山間地域の振興
中山間地域が、若年層を中心とした住民の流出とそれに伴う高齢
化、農作物の野生鳥獣被害などの重く大きな課題を抱えていること
は、皆さんご承知のとおりです。
前述した住自協の事務局長の雇用支援の件とも関連があるのです
が、中山間地域のある市内13地区の住自協には、地域活性化推進
員の雇用に対しても支援しています。地域活性化推進員は2009
(平成21)年度から配置していますが、各地区の課題解決に向け
て地域が主体となった取り組みや事業を行うために、本年度から各
住自協で雇用してもらうように変更したものです。人材については、
地区内に適任者がいれば、その人を採用してもよいし、場合によっ
ては地区外から採用してもよいのではないかと考えています(公募
もありです)。買い物弱者や農家民泊への支援など、各地区それぞ
れの課題解決に向けた具体的な活動が始まっているとのことですが、
今後は、中山間地域の振興を含めた新しい条例の設置も検討し、長
い目で中山間地域の活性化に取り組む必要性を感じています。
中山間地域の活性化は、「副市長プロジェクト」の一つに位置付
け、「地域活性化の基盤整備」や「日常生活と地域コミュニティー
への支援」を中心に検討を進めています。
地域活性化の基盤整備については、中山間地域で一定の収入を得
ながら安心して住み続けることができるように、来年度の新規事業
として、雇用の受け皿にもなり得る多角的なビジネスが展開できる
モデル事業の検討を進めています。中山間地域の活性化には、地域
の皆さんの「強い思い」が大切で、今必要なのは新しい「アイデア」
だと思っています。さらに、そこに「行政の支援」を加え、新たな
ビジネスの創出を目指すものです。
本市では、中山間地域に限らず市内全域を対象に、国に先駆け昨
年度から「新規就農者支援事業」を実施して(国では本年度から
「新規就農総合支援事業」を開始)、新たな農業の担い手の確保・
育成に努めています。これらの事業により、昨年度は21名、本年
度はこれまでに国と市の支援事業を合わせて11名が、新規就農支
援対象者に決定しています。今後は、地域での受け入れ体制づくり
が大切と考えています。
地域の特産品開発、ITを活用した販売促進、軽トラ市の開催、
直売所の整備、「(仮称)ながのマルシェ」の構築も意欲的に進め
られています。農業については、ぜひとも売れる、もうかる農業を
目指してほしいと思います。
野生鳥獣被害は年々大きくなっています。その原因としては、農
地の耕作放棄により、野生獣の隠れ場所となる茂みが増えたことな
どが挙げられています。被害を防ぐためには、茂みをなくし緩衝帯
を整備するとともに防護柵を設置する必要があります。また、猟友
会員の高齢化による減少対策として、狩猟免許を所持していない人
でも、銃器を使わない網やわなによる捕獲に限り、猟友会員の指導
監督の下で、補助者として捕獲作業に携わることができる「集落等
捕獲隊」の結成を進めていければ、被害対策に効果がありそうです。
イノシシ肉を料理に活用しようというプロジェクトも進行していま
す。
(3)公共交通機関の再生
バスや鉄道などの公共交通を新しい発想で再生・活性化させ、都
市のインフラとして将来にわたって維持していくことは、大変重要
です。バス交通の利便性向上に向け、10月27日からバス共通I
Cカード「KURURU(くるる)」の運用を開始しました。カー
ドの販売数は、10月31日現在で6,253枚となり、今後、利
用者が順調に伸びていくものと期待しています。将来は買い物時や、
図書館などの施設でも利用できるよう、利用範囲をどんどん広げて
いきたいと考えています。
また、次世代型路面電車システム(LRT)を含めた新交通シス
テム導入の可能性について、調査を始めました。新交通システムの
導入は、大きな経費が掛かることや現在の道路利用などを考えると
一朝一夕にできるものではないと感じています。しかし、将来の市
の交通体系を見据え、新年度策定予定の交通ビジョンにつなげてい
くための大事な調査ですので、課題や問題点を整理して総合的に検
討していきたいと考えています。また、新幹線金沢延伸に伴いJR
からしなの鉄道株式会社に経営が移管される長野以北並行在来線の
利用促進を図るため、長野-豊野駅間における新駅の設置について
も基本調査を始めました。
なお、3月に廃線となった長野電鉄旧屋代線の跡地については、
沿線地域の活性化を図るため、駅周辺および鉄道用地の跡地活用に
ついて基本構想案を作成し、地域での話し合いを進めています。
(4)長野市民病院の黒字化
「長野市民病院中期経営健全化計画(公立病院改革プラン)」に
掲げる2013(平成25)年度の黒字化を前倒しして、昨年度決
算で黒字化を達成することができ、一つの「区切り」が付きました。
これは、一つには国の「病院の機能分化・強化と連携」というビジ
ョンに合わせて、がん、脳卒中の診療など高度な医療や、救急医療
へ積極的に対応してきたことの結果です。1995(平成7)年の
市民病院開設以来続けてきた病院の増床、充実、強化を図るための
投資が、ようやく実を結び始めてきたこともあります。
まだ累積赤字もあり、先端医療を担う市民病院の役目を果たして
いくためには今後も投資が欠かせません。経営的には大変ですが、
市民病院でなければできないことに取り組み、診療水準の向上に努
めながら、この基調を維持できるように取り組んでいきたいと考え
ています。
(5)いいとき(飯綱・戸隠・鬼無里)構想の進展と戸隠・飯綱高
原スキー場の経営改善
飯綱、戸隠、鬼無里の3つの地域が持つそれぞれの魅力をうまく
結び付けて、地域の観光を振興し、地域を市民の憩いの場にすべく
頑張っています。
パワースポットブームで多くの観光客にお越しいただいている戸
隠では、7月に戸隠キャンプ場・戸隠牧場のリニューアル整備が完
成し、日本最大級のキャンプ場となりました。最盛期の夏休み期間
中には、3万人を超える利用者があり、連日、多くのキャンパーで
にぎわいました。また、新たな取り組みとして、乗馬を魅力の一つ
に加えた、戸隠・飯綱高原の一体的な振興策も考えており、来年度、
「全日本エンデュランス馬術大会」を開催したいと日本馬術連盟に
お願いしています。さらに、鬼無里には本州随一のミズバショウの
群生地として有名な奥裾花自然園があります。
これらの地域には、豊かな自然、信仰、物語、トレッキング、マ
ラソンなどキーワードがたくさんあり、多くの可能性を秘めている
地域だと期待しています。
スキー場事業についても、いいとき構想の中に入れて、大きな期
待を込めて取り組みを始めています。スキー場は長野市にとって冬
の重要な観光資源です。昨シーズンは誘客のために、女性をターゲ
ットにしたプロジェクト(戸隠スキー場)を実施したり、ファミリ
ー層を取り込むために動く歩道を設置(飯綱高原スキー場)したり
しました。今後も各スキー場の特色を生かした誘客に引き続き努力
します。
(7)歴史、文化、芸術を大切にするまちづくり
地域の観光資源を生かした「地域ブランド化」を推進し、各地域
の魅力を高めようと2004(平成16)年度から実施してきた
「イヤーキャンペーン事業」や「エコール・ド・まつしろ」、また、
未来を担う子どもたちに文化芸術に親しんでもらうために、本年度
から実施している「子どもたちのための文化芸術プログラム事業」、
まちに潤いを与える「野外彫刻設置事業」など、歴史と文化、そし
て芸術の薫り漂うまちづくりは大切なことだと考えています。新市
民会館がオープンする2015(平成27)年春を目指して、長野
の文化・芸術活動を大きく進展させる基盤にしたいと考えています。
以上、少し長くなりましたが、ソフト部門について説明しました。
次回のかじとり通信では、ハード部門とソフト・ハード部門の両方
に関する事項についてお話ししたいと思います。