私が12年前に市長になった当時、市区長会総会のたびに言われ
たことが2つありました。一つは「長野駅から善光寺下駅までの長
野電鉄の地下区間を、何とか吉田地区まで伸ばしてほしい」。もう
一つは「旭山にトンネルを掘って、安茂里方面から浅川・若槻方面
に抜ける道を造ってほしい」というものでした。
当時は、建設に着手していた浅川ダムですら事業反対の動きが出
て、まったく進んでいない状況でしたから、区長会からのお話は夢
みたいなすごい構想で・・・私は考えた末、区長会の役員さんに
「その要望は下ろしてほしい」とお願いせざるを得ませんでした。
区長会の役員さんは私の要請を率直に聞いてくださいましたが・・
・今、若干の胸の痛みを感じています。あれで良かったのかなあ・
・・。
現在の長野市のハード事業については、10の大規模プロジェク
ト事業を中心にかなり頑張って道筋を付けてきました。まだ道路を
中心に、やらなくてはならない事業はいくつかありますが(前回の
かじとり通信に書いたとおりです)、一応一つの区切りは付けられ
そうだと感じていますし、これからはソフト事業を重点に考える必
要があると思っています。
ソフト事業の必要性については、7月4日、11日のかじとり通
信でお話しさせていただきました。長野市が展開を目指す、「人」
に注目した「シティプロモーション事業」に合わせ、「文化芸術の
振興」「スポーツ」「緑育」の3つを中心にお伝えしましたが、も
ちろんそれ以外にもソフト事業でやりたいことがたくさんあります。
「文化芸術の振興」「スポーツ」「緑育」についても再度触れなが
らお話しします。
(1)都市内分権は私の最重要施策です。戦後、日本の経済、社会
が発展するにつれ、人々の生活の基盤でもあった隣近所の関係
が薄れ、いつの間にか「隣は何をする人ぞ」という味も素っ気
もない社会になってしまいました。そんな社会を打破したい・
・・昭和46年に始まったお祭り「長野びんずる」は、地域の
コミュニティーをもう一度再生したいという思いから生まれた
もので、今では長野市の夏の風物詩にまで成長しました。当時、
私も青年会議所の一員として「長野びんずる」の創設に中心と
なって携わらせていただきました。びんずるに負けず劣らず各
地の祭りも元気に復活してきています。やはり、私の根底には、
人とのつながり、触れ合いを大切にしたいという願いがありま
す。市長に就任してからも、このことを常に念頭において市政
に取り組んできました。こうして「自分たちの地域は自分たち
でつくる」を旗印に、都市内分権を導入したわけです。
導入から4年が経過しますが、市内32地区全ての住民自治
協議会が、地域の魅力、資源を生かした活動に熱心に取り組ん
でいただいていると手応えを感じています。
引き続きコミュニティーの再生に向けた取り組みを行うとと
もに、これからは地域の自立に向け、住民自治協議会自らの収
入を増やす「もうかる」事業にも挑戦していただきたい。もう
かれば、そこに雇用が生まれますし、何といってもその事業が
継続していくのです。生産や販売、誘客活動組織などが住民自
治協議会ごとに立ち上がれば、より確実性が増します。さらに、
公民館活動とも連携できれば、人々の絆が深まり、地域の活力
が一層高まるだろうと思っています。
(2)スポーツや文化芸術を盛んにしたい。いろいろなスポーツが
ありますが、まずはサッカーとスケートで国際的に通用する選
手を育てたい。文化芸術活動も、(仮称)長野市民文化芸術会
館の芸術監督に内定した久石譲さんを中心に、素晴らしい活動
が進むことは間違いないでしょう。行政はその応援をする立場
です。
(3)緑育を全国に発信したい。篠ノ井中央公園からスタートした
緑育ですが、この活動を茶臼山へ、そして犀川の北側、北部地
域にも広げたい。矢澤秀成さんを中心に全国にも発信したいと
考えています。しかしながら、その矢澤さんは、長野市での取
り組みはもちろんのこと、全国各地での講演活動、テレビ番組
への出演など大変お忙しい方ですので、今後、講座などを増や
していくためには、早く矢澤さんの右腕になるような人材が育
ってほしいと思っています。
(4)自他共に認める環境先進都市を目指したい。太陽光発電など
自然エネルギーはもとより、長野市はバイオマスエネルギーの
利用を促進する環境をしっかり育てたい。同時に省エネルギー
や節電にも取り組んでいきたい。長野市で策定した環境マネジ
メントの確実な実行が大切と考えています。可能ならエネルギ
ーの地産地消も実現したい。ただこれは、コスト面がかなりき
つそうです。でもうまくいけば、地域の雇用にもつながるはず
ですし、新しい産業モデルになりそうです。
(5)中山間地域を豊かにして、人口を増やし、生産力を上げたい。
先日、中山間地域に事業を作るための補助を充実し、産業を興
す取り組みとして「やまざとビジネス支援補助金事業」を新た
に始め、6月に3つの提案を補助対象に決定しました。補助対
象となった3件はとても斬新なビジネスモデルの提案でした。
とにかく稼いでもらいたい。そして、自立へ向けた努力を促し
たい。さらなる新しいビジネスモデルの必要を感じています。
採用された事業のほか、今回応募してくれた皆さんが呼び水に
なって、多くのアイデアが寄せられることを期待しています。
人口を増やすための政策としては、雇用を生む企業の誘致な
どをして、安心して子どもを産み育てる環境を一層整えること
です。その上で、結婚する人を増やしたい・・・。結婚は楽し
いよ!という政策は、行政としてどのように展開したらよいの
でしょうか。まだよく分かりません。住民自治協議会の取り組
みによる新たな一手にも大いに期待しているところです。
(6)公共交通の再生を実現したい。新交通システムの導入も、財
政との兼ね合いがありますが、LRT(次世代型路面電車シス
テム)やBRT(バス高速輸送システム)にチャレンジしてみ
たい。自家用車をこれ以上増やさず、公共交通で街の中も中山
間地域もにぎわしたい。当面はバスをたくさん用意して、長野
市中に配置したい・・・なんて職員には言っています。運転手
の確保は大変ですが、雇用の創出につながれば・・・いずれに
しろ将来の持続性が大切です。
(7)国際都市としてさらに発展したい。それには、姉妹都市を増
やす。ユースオリンピックを招致する。そして、もう一度冬季
オリンピックの開催に挑戦したい。財政的なめどがたてば、都
市間交流の拡大にチャレンジしてみたいですよね。現在、姉妹
都市・友好都市協定を締結し交流を行っているのは、アメリカ
のクリアウォーター市と中国の石家庄市ですが、次の都市は東
南アジアでしょうか。それともヨーロッパでしょうか。冬季オ
リンピック開催都市との連携を考えるのはどうでしょうか。
今後数年間で、またはさらに長期的な計画をもってやらなくては
ならないことを書いたつもりですが、なんだか気が付けば、これか
らやりたい「夢」を語っていたようにも思えます。夢とはいえ、で
きるだけ具体的な取り組みを一つ一つ積み重ねていくことが重要で
す。長野商工会議所を中心に、ご当地検定「NAGANO検定」を
開始するといった新たな企画も動き出しています。行政だけでなく、
住民自治協議会、各種団体、全ての皆さんの具体的な取り組みが、
一つでも多く動き出すことが肝心なのです。