人間余裕をもたないと駄目だなあと最近つくづく感じます。仕事
に追いかけられていることも大切ですが・・・心の豊かさは生まれ
ないのではないでしょうか。
ある方から、お前の最初の公約は、ニュー・パブリック・マネジ
メント(*1)だったよと言われました。それが、形を変えて例の
5原則「入りを量りて、出ずるを為す」「市民とのパートナーシッ
プ」「簡素で分かりやすい市政運営」「民間活力の導入」「無私・
他利の精神」になったのだと強弁し、自分では納得しています。
そこで、これまでに市長になってから取り組んできた政策で、自
分ながらアイデアを出してきちんとやったなあということを、自慢
話みたいで恐縮ですが書いてみます。
(1)まず第一は、長野市の借金を減らしたことでしょうか。
2001(平成13)年の市長就任当時、長野冬季オリンピックが
終了したばかりでしたので、一般会計(2000(平成12)年度)
での借金は結構多額で1,804億円(ピークは1997(平成9)
年度の1,921億円)でした。私はこれを当時の一般会計規模
1,300億円ぐらいまで圧縮したいと考えました。方法論として、
毎年200億円返済して100億円借りるという原則を決めて実行
しました。順調に毎年100億円程度、減ってきたのですが、途中
6町村との合併がありましたので、若干返済計画を見直しましたが、
まあ順調に返済してきたと思います。今後については、大規模プロ
ジェクト事業が最盛期に入りますから、また借金は増えていきます
が、想定の範囲内のことで心配はありません。
(2)職員の退職手当基金を積み立てたことも、当時としてはかな
り思い切った施策でした。企業社会と違い、行政は退職金を積み立
てるルールがなかったようなのです。どうするかというと、予算編
成時、新年度の予定退職者を数え、退職金を掛け合わせて金額を算
出し、その金額をその年の予算に盛るということでした。当時は、
巨額の退職金や年金で企業は苦慮しているのに、行政は関係ないと
いうのは絶対におかしいと考え、退職手当基金を制度化しました。
市の資金繰りが苦しい時もあり、財政部長が本年度の予算では基金
の積み立てができないと泣きを入れてきたこともありましたが、結
局、目をつむって積み上げてきました。
なぜ私がこだわったのか。それは、長野冬季オリンピックの準備
段階で長野市は職員を大増員しており、30歳代中ごろの年代の職
員が大きく膨れていました。その人たちが定年を迎えるとき、多分
25年ぐらい後のことでしょうが、退職金が多くて一般会計の予算
が組めなくなるのでは・・・という恐怖でした(後で分かったこと
ですが、行政には退職手当債という制度があり、借金をして先送り
ができるらしいのですが・・・多くの自治体は団塊の世代が退職す
るとき、この制度を使ったようです。長野市は使っていません)。
退職金の話題でもう一つ。2005(平成17)年の4町村との
合併後、旧町村職員の退職金として長野市に約11億円の請求が長
野県町村総合事務組合(現・長野県市町村総合事務組合)からきま
した。過去に退職金が不足し、組合が肩代わりしていた分をどこに
も請求できないということで、結局、長野市が負担することとなり
ましたが、これには本当に驚きましたし、割り切れない思いをしま
した。
(3)組織全体のスリム化を図れたことも大きいのではないでしょ
うか。職員数を減らし、スリムな組織にすることは大切なのですが、
一番難しいのは公務員の身分保障制度がありますから、民間企業の
ようなリストラは実質的にはできないわけで、私もすべきではない
と考えています。そこで、いろいろ考えて取り組んだことは、民営
化の推進、PFI(*2)、指定管理者制度の導入、そして正規職
員の新規採用をその年に退職する職員数より減らす、ということで
した。急激なスリム化は難しいけれど、長期的に考えれば、職員数
はかなり減ってきています。
そしてなんといっても大きかったのは、市町村合併です。豊野町、
戸隠村、鬼無里村、大岡村、信州新町、中条村の6町村と合併した
ことで、一時的には職員数は増えましたが、合理化を進め、予定ど
おりスリムな体質に近づいています。
一つの例を挙げますと、合併前の旧長野市の若槻地区は、人口が
約2万人で、同地区にある若槻支所の正規職員は4人でしたが、そ
のお隣りの豊野町は、人口は約1万人で正規職員数は77人(保育
園、給食センターなどを除きます)でした。現在の豊野支所の職員
数は17人ですから、行政の規模が大きくなることで、それぞれ同
様の業務を担当していた部署が集約され、経費の削減、職員の適正
な再配置が可能となったわけです。
また特に、市議会議員さんの定数は、旧長野市プラス4町村(豊
野町、戸隠村、鬼無里村、大岡村)で合併前は96人でしたが、合
併後46人となり、さらに2町村(信州新町、中条村)を加えた現
在の議員定数は39人ですから、合併の効果は大きいですよね。
こうした合併に併せ、民間活力の導入、即ち民営化や指定管理制
度の導入を推進した結果、全体ではスリム化につながったと思って
います(アメリカ・ジョージア州サンディスプリングス市(人口
10万人弱)の市の正規職員は4人ということで、市業務の大半は
包括的業務委託により行われているそうですが・・・そこまでは無
理でしょう)。
(4)地域のことは地域で決める・・・私の一丁目一番地の政策が、
住民自治協議会を中心にした都市内分権であることは、皆さんご承
知いただいていると思います。地域の皆さんが、地域は自分たちの
手でつくるものと考えていただき、一生懸命に取り組んでいただい
ていることは、とてもありがたいことで、住民自治協議会の活動は
活発化してきていると感じています。
住民自治協議会の体制になる前は、各地区への補助金などは団体
ごとに交付されていましたが、住民自治協議会へ地域いきいき運営
交付金として一括配分したことで使い勝手が良くなり、元気に活動
していただいていると考えています。予算総額は、個々に配分して
いた時代よりは多少増えていますが、それほど大きくなっているわ
けではなく、地域の活性化を考えると、市からの交付金がより効果
的に活用されていると感じています。さらに、「これからは、地域
でもうかる仕事をやりましょう」とお願いしています。やる気のあ
る人がどのくらいいるか分かりませんが、外部から来てもらっても
よいと思っています。
行政がこれまで関わっていた業務を、住民自治協議会が主体とな
って取り組んでいただく。行政のスリム化と地域の活性化が同時に
できる一石二鳥の政策です。
住民自治協議会に市立公民館の指定管理者になっていただこう・
・・この政策も、なかなか進まなかったのですが、ようやく手を挙
げていただく地区が出始めました。
その他、国に対する要望も機会あるごとに提言してきました。中
山間地域の土地を全て国が買ってしまったらどうか、生活保護受給
者の自立支援策など、かじとり通信でも折に触れ書かせていただき
ました。
以上、盆休みを挟んで5回のかじとり通信で、長野市の将来につ
いて、私の経験を交えて書かせていただきました。首長の任期は3
期12年が限度だと申し上げている理由もお分かりいただけたので
はないでしょうか。
さて、このかじとり通信の配信については、市長選挙前というこ
ともあり、「長野市のサーバー(公的な機関)から配信することを
来月から自粛させていただく予定」と8月1日付けでお伝えしまし
た。9月からは前例に倣い、私のブログを立ち上げて発信しようと
考えていましたが、長野市の状況や私の考え、感じていることを市
民の皆さんをはじめ、かじとり通信をお読みいただいている皆さん
に確実にお届けする方法としては、やはりこれまでと同じように長
野市メールマガジンとして配信させていただくのが最適だろうと考
えるようになりました。従いまして、来週以降も、これまでどおり
毎週木曜日に配信させていただきますので、何とぞご理解いただき、
引き続きかじとり通信をお読みいただければ幸いです。
この5回分のかじとり通信が、将来の長野市の市政運営に少しで
も参考になれば、これに勝る幸せはありません。
*1 ニュー・パブリック・マネジメント:行政に、民間企業経営
の理念(競争原理や成果主義など)を取り入れ、効率化を図るもの
*2 PFI:Private Finance
Initiative:民間の資金、経営能力および技術的能力を
活用して公共施設等の設計、建設、維持管理、運営等を行う手法