2002年7月11日木曜日

長野市野外彫刻のこと


 去る7月2日に南長野運動公園で第29回長野市野外彫刻賞受賞
作品の表彰式とその作品の除幕式を行いました。これは平成13年度
の分の除幕式で、本来的には今年の3月までに行うべきだったので
すが、三人の作者がそれぞれ製作活動で海外に出ていらっしゃった
りしていたため、日程がなかなか合わずこの時期になったものです。

 宮脇愛子さんの「うつろひ」という作品は、水生植物をイメージ
したものでしょうか、水の中から繊細な金属で出来た水草のような
ものが伸びて、風に揺れている、そんな作品でした。前田哲明さん
の「UNTITLED 02-A」という作品は、これも金属で出来て
いましたが、密集した林を想わせるこれまた素晴らしい作品。
いたずらされそうでちょっと怖いのですが、作者は「大丈夫、メン
テナンスもやりますよ」と言ってくださいました。山根耕さんの
「つなぎ石 作品-38」という作品は、10トンぐらいの巨石2個
と8トンぐらいの巨石の組み合わせ、地下100mの石切り場から
切り出した石だそうで、運動公園の池の水ととても合って「作品
にふさわしい場所に置かせていただいて有り難い」とおっしゃって
いたのが印象的です。いずれもどちらかというと、抽象的な作品で
すが、南長野運動公園の雰囲気にはとてもマッチした彫刻のように
感じました。

 この野外彫刻賞について少し調べてみました。発案されたのは、
故夏目忠雄市長さんで昭和48年のことだそうです(昭和48年と
言えば第一次オイルショックの年、29年も前のことです)。以来、
毎年3~6作品を設置してきていますが、当初は民間企業の寄付金
に長野市が土台等の設置費を負担するという形で行われてきたよう
ですが、企業もそういつまでも継続は出来ないということになり、
以来、長野市が中心になって資金を出し、柳原市長、塚田市長と
歴代の市長が毎年継続してきているものです。

 今年の除幕式で野外彫刻は、総計124作品になりました。これは
凄いことです。これだけの彫刻をもっている都市はまずありません。
これは市内全域を美術館になぞらえた「野外彫刻ながのミュージア
ム構想」を展開し、野外彫刻をとおして芸術文化を身近に感じるこ
とのできる潤いある環境づくりを進めているものであり、長野市の
誇り得る素晴らしい財産として、将来「野外彫刻のまち」ということ
で世界に売り出せること確実です。

 ここまで来る事ができたのは、はじめた頃、審査委員長を務めて
いただいた、土方定一(ひじかた ていいち=元神奈川県立近代
美術館館長)さんという大物先生が審査員として権威をつけていた
だいたこと、若手彫刻家の登竜門にしようという意図があったよう
ですが、それが完全に定着したこと、そして過去に入選して設置さ
れた作品の作者から、文化勲章の受賞者が2人出るなど、このイベ
ントが間違っていなかったことを証明していると思います。

 ただ、これだけの成果があるのに、一般的な知名度がまだまだ低
い。長野市民にとってもそうですが、市外から、長野の野外彫刻を
見に行こうという声が聞こえてこないことは残念です。宣伝が下手
ということも事実ですが、長野市が広いため124作品が分散してい
て、皆の印象にあまり強く残っていないことも原因ではないでしょ
うか。過去は相当数をそれぞれの地域に分散してきたので、これか
らは皆さんと相談の上、そろそろどこか場所を決めて、集中的に話
題になるような置き方も必要なのではないでしょうか。

 当初の選考方法は、いろいろな作品の中から選考委員さんたちの
提案で数点選び出し、買取交渉をし、決定後に設置場所を選定して
いたようです。現在はまず設定場所を長野市が各地区の希望や設置
可能性などを調査しておいて、選考委員さんにその場所を視察して
いただいて、個々の作風からその場所に一番ふさわしいと思われる
方を選定し、交渉するというやり方をとっています。いずれの方法
が良いか、ということは無いのでしょうが、今のやり方は、どちら
かといえば地区要望が強く出て、順番や持ち回りとなることは避け
られないようです。

 野外彫刻は永久にその場所に残るものですから、その地域にとっ
ては大切な芸術品として、また、地域のシンボルと考えていただき
たいと思うのは当然として、作者の皆さんにとっても、ご自分の分
身を設置するようなものですし、将来長い間の市民の鑑賞に耐える
ものでなくてはならない。やり直しは出来ないということで、大変
なプレッシャーのようです。これらの作品を大勢の皆様に鑑賞して
いただくため、昭和54年度から野外彫刻めぐりを実施しております。
今年度も5月~11月にかけて、7回実施いたしますが、殆どのコ
ース(定員20名)が抽選になるほどの盛況ぶりです。「広報ながの」
でもお知らせしていますので、お時間がありましたらぜひお申し込み
ください。

 長野市とすればこの野外彫刻展がますます発展し、権威が高まり、
話題にもなって、将来「野外彫刻のまち 長野」として世界に情報
発信をしていければうれしいなあ、と夢見ています。