皆さんは国の史跡の指定を受けている大室古墳群をご存知ですか?
この大室古墳群を多くの皆さんに知っていただけるよう、7月7日
にかねてから整備してきた古墳館が完成し、その開館式と祝賀会が
開催されました。古墳群の真中に瀟洒(しょうしゃ)な建物と駐車
場が整備され、館内にはトイレやお休み所のほかに、古墳の様子が
わかるように分布図、構造説明板、出土品などが展示されており、
あまり大きな建物ではありませんがきれいに整備されていました。
駐車場までの道路の整備が十分ではなく、乗用車でもすれ違いはか
なり窮屈な状態ですが、古代の人々が作り上げたこの古墳を見学に
来ていただければ幸いです。長野電鉄の河東線の大室駅で下車して
いただけば、歩いて15分くらいです。途中には古い神社や田園風
景もあって楽しい散歩道かなとも思っています。
開館式には地元の皆様や関係者が大勢出席していただいたことは
勿論ですが、この大室古墳を国の史跡に指定していただくことに大
変お力をいただいた「史跡大室古墳群整備委員会」の先生方も参列
いただき、大変意義の深い式になりました。特にその先生方の中で、
現在山梨県立考古博物館館長の大塚初重明治大学名誉教授は、昭
和26年に大室古墳群における初の発掘調査に参加されて以来、半
世紀を越す年月の間、先生のライフワークとしてこの調査に取り組
んでこられ、また、戦後のまだ食べ物が少ない時代に村の皆さんか
らリンゴを差し入れていただき、同行学生と食べながら発掘作業に
携わったことなど、思い出話をされました。先生の長いご努力に驚異
と尊敬の念を抱くとともに、古墳の発掘は地元の皆さんと一体になっ
て進めるものなのだということを教えていただいたように思います。
開館式に先立ち、私は寺尾小学校の子供達や校長先生と一緒に、
古墳館から谷あいの古墳群の中を約1時間半にわたり歩いてきまし
た。杉林に囲まれた山道は、里の暑さを忘れさせてくれるすがすが
しさの中、あちこちに古墳が存在し古代へのロマンを駆り立ててく
れました。そして、途中から左手の作業道路に入り、山の上に登って
みると、市内を展望できる素晴らしい景観になります。普段運動不
足の私が、小学校の子供さんに負けてなるものかと一生懸命歩きま
したので疲れましたが、ホワイトリングが真正面にそして善光寺平
が一望に臨める場所に着いたとき、その疲れが吹っ飛んだような気
持ちになりました。
ただ、若干の心配は、この散策路に数ヶ所のゴミの不法投棄が見
受けられたことです。私たちの郷土の貴重な資産を次世代に引き継
ぐため、今後このようなことが起きないような対策も必要になると
思います。
祝賀会では、この古墳にかかわってきた方々、特に当時寺尾中学
校に在籍しておられた故栗林紀道先生、そして若き同僚であった北
村保先生の大変な努力、そして寺尾中学の生徒達の協力があったこ
とを教えていただきました。その時の調査記録が全ての出発点だっ
たようで、北村先生の栗林先生に関する当時の思い出話しは、聞く
者を思わず涙ぐませるようなご挨拶でした。
国の史跡に指定された範囲に存在する古墳は約200ぐらいだそ
うですが、5世紀から8世紀にかけてかけて造られ、この地域に現
存している古墳は500基以上が存在しています。石を積んだ積石
塚がこれほど密集した古墳群がほかに存在しないということですし、
天井が三角屋根をした合掌形石室は、全国でも40例ほどしか知ら
れていませんが、この大室古墳群には25基が分布しているなど、
大変貴重なものであります。その調査はようやく端緒についたとい
うことのようで、調査と整備はこれからも続くようです。
多くの謎を秘めた日本最大の積石塚古墳群「大室古墳群」を、こ
の夏ぜひ体験してみてください。