2002年7月25日木曜日

ごみ問題を考える


 20世紀は、大量生産、大量消費、そして「大量廃棄」の時代で
した。科学技術の飛躍的な進歩、そして額に汗して皆が一生懸命
働いた結果、私達は便利で物質的には豊かな社会を手に入れまし
たが、その反面で失ったものもまた多かったのではないでしょうか。

 ローマクラブ(注1)が1972年に出した最初の報告書『成長の
限界』は“地球の有限性”についての様々な因果関係を科学的に
予測したものであり、私達に地球の資源は有限だということを教え
てくれましたし、1973年の第一次石油ショックは、資源の枯渇と
いうことが現実の社会に起こり得るということを示唆してくれたの
です。しかし、資源や環境問題を意識していても人間はなかなか
変われない。より便利で、より豊かな生活を夢みて依然として努力
している。海・湖沼・河川・大気の汚染、砂漠化の進行、森林資源
の枯渇、オゾン層の破壊、最近の異常気象など、そんな話を聞くと、
「我々は今破滅に向かって突っ走っているのだ」とおっしゃる識者
の言葉も何となく真実性を帯びて感じられる。そのくらい地球環境
は深刻な状況であり、地球の生き残りに向けて地球全体で考え、
対策を講じなければならないのだと言われています。先進国の温室
効果ガス排出量について、法的拘束力のある数値目標を各国毎に
設定した京都議定書が結ばれたのも、そんな時代の流れを敏感に
捉えたものなのでしょう。天然資源の消費を抑え、環境への負荷
をなくす持続可能な社会の構築が不可欠になったということです。

(注1)ローマクラブ=1968年に世界の科学者、経済学者などが
集まって活動を開始した民間団体。環境・人口問題など地球的規模
の課題に取り組んでいる。

 平成12年6月2日に公布された循環型社会形成推進基本法では、
循環型社会を構築するための人類全体の優先順位を示しました。
1.廃棄物の発生抑制
2.使用済み製品の再利用
3.回収品を原材料にリサイクル
4.資源として利用できないごみを製鉄所などでエネルギーとして
  利用
5.残った廃棄物の埋め立て等の適正処理

 というものであり、この基本法を決めたということは、非常に重
要なことという認識があって、今後いろいろな法律が作られる、そ
の予告みたいなものでしょう。

 さて、長野市行政の中で、その趣旨を生かすためにどうすればよ
いか、関係部局が中心になって一生懸命考え、施策に取り組んで
います。今年、長野市が環境マネジメントシステムの国際規格であ
るISO14001を取得したのはその手始めであり、今後「ながの
環境パートナーシップ会議」の皆さんと相談しながら、ダイオキシン
対策、省エネ、温暖化防止、循環型社会への取り組み、ごみ対策
などあらゆる場面で最大の努力をしてまいります。ただ平成13年度
のごみ処理量は、「減量しましょう」という取り組みにもかかわらず、
過去最高になってしまいました。これにはいろいろな原因があるの
でしょうが、まだ分析は終っていません。しかし、ダイオキシン対策
の一環で野焼きを禁止し、家庭にあった小型焼却炉の使用をや
めていただいて回収したので、今までは家庭で焼却していた落ち
葉や枝下ろしの小枝や刈った芝などが、可燃ごみとして出てきたと
いうことが考えられます。全てを堆肥化するのは無理でしょうから、
一時的な問題として受け入れざるを得ないのかも知れません。ただ
いずれにしても、リサイクルや焼却をするには大きなエネルギーと
経費がかかりますので、資源物も含めてごみ総量を減らすというこ
とが、最も重要であることは間違いありません。

 行政の立場としては、市民や事業者の皆さんと行政の三者が連
携共同して、環境共生のまちづくりを進める「ながの環境パートナ
ーシップ会議」を通して、ごみ問題の解決をどうしても行わなけれ
ばなりません。

 市民の皆さんには賢い消費者として、まずごみの分別というやっ
かいな作業にご協力をお願いします。リサイクルを進めるためのポ
イントは、まず分別、それも技術の進展に伴ってだんだん細かい分
類を示して分別をお願いすることになるのではないでしょうか。
ごみにならない製品等の購入に努めていただくことも必要でしょう。
また、長野市環境美化連合会を通じ、各区の環境美化推進会長さん
にお願いし、ごみの分別・減量に関してリーダーシップをとってい
ただいてますが、こういった地域住民と一体となった取り組みも
さらに必要となるでしょう。

 さらに、事業者の皆さんには、製造・販売者としての立場からご
みになりにくい製品等の製造・販売とともに、ごみ発生量の少ない
原材料を使用していただく。また、リサイクルしやすい製品づくり
や使用済み製品の回収システムを考える、等々をお願いしていく
ことになるでしょう。

 行政は市民のコンセンサスを得ながら、リサイクル製品などを購
入するグリーン購買、ごみ減量への取り組み、リサイクルのシステ
ム作り、そしてごみ処理の最終処理をすることになるのでしょう。

 そんな中、市としてはリサイクルを推進するために、新たな分別
をはじめました。これは、容器包装リサイクル法という法律の要請
でもあるわけですが、家庭ごみの容積比で約1/3を占めるといわ
れているプラスチック製容器包装の分別です。集められたプラス
チックは再生プラスチックの原材料やエネルギーとして効率的にリ
サイクルされることになります。現在、市内の10%のお宅でモデ
ルとして分別していただいてますが、来年度はモデル地区を一部
拡大し、平成16年度には全市で実施できるよう準備をしています。
プラスチック製容器包装を分別することは、最終処分場の延命化
にも直結することなので、ぜひご協力いただきたいと思います。

 こうしたそれぞれの役割分担をお願いしてごみの減量に取り組み、
そしてその取り組みが相当の効果をあげたとしても、焼却施設や最
終処分場などの必要性をゼロには出来ないでしょう。もちろん理想
は不必要にしたいけれど、現状の技術水準や社会の仕組みを考える
と、最低限の施設整備をしなければならない、それも迷惑施設的な
イメージを転換し、地域づくりの核になるような施設として整備し、
周辺の環境を美しくする取り組みを最大限にやらなくてはならない
ことを覚悟して、計画段階から地元の皆さんはもとより市民の皆さん
の意見をお聴きする中から整備を進めることが重要でしょう。

 長野市の一般会計(平成13年度、約1300億円)に占めるごみ
処理費に関する支出は約38.7億円であり、構成比では約3%
ですが、そのうち約1/4は、各集積所から清掃センターや最終処分
場へ、ごみや灰を運ぶ費用が占めています。この他にも最終処分場、
リサイクルプラザ建設、ダイオキシン類対策工事など施設整備に伴う
経費でも、平成4年からの10年間で約142億円を費やしています。
これらの費用は今後増加することはあっても減ることはないでしょう。
ごみの発生が減らない限りは・・・・・・。でも何とか減らしたい、
税金の投入を少しでも減らしたい。ごみ処理経費の削減のためには
発生するごみの量を減らし、リサイクルも経費がかかることを認識し、
処理する量そのものを極力減らしゼロ・エミッション(注2)をどの
ように図っていくか、民間感覚で何が何でも取り組んでいきたいし、
模索していかなければならないのです。市民の皆さんのアイデアを
ぜひお寄せください。

(注2)ゼロ・エミッション=工場からの排水・排ガス・廃棄物・熱
などの汚染物排出をゼロにする試み。