2002年7月2日火曜日

浅川ダムの安全性について(号外)


 田中県知事がとうとう浅川・砥川のダム中止を決定してしまいま
した。今後どのような展開になるかは不明ですが、ダム建設が永久
に駄目になってしまったのか、それともこのあと展開が変わって復
活できるのか、それは分かりません。ただ現段階としては、知事の
発言は単なる宣言みたいなもので、実際には発注していた工事契約
は破棄するとしても、法的には河川法に基づく河川整備計画の変更
を作って国の認可を得るという手続きに入るまでは、この問題は一
歩も進まないということになりそうです。

 ただ、市長としては、流域住民の生命と財産を守る義務を有する
わけで、今回の知事発言はどうしても納得がいきません。理由は脱
ダム宣言以来一年半の間、ダム推進派にとって全く無駄な時間をす
ごす中で、中止するならどのような代替策をとるかという具体的な
話が一つもないまま、「それは、これから検討します」では、いっ
たい何を考えていらっしゃるのかということです。

 当初、浅川ダムの完成予定は平成19年3月だったわけで、この
ダムさえ完成すれば100年に一度の大雨にも耐えられるというこ
とで、みんな枕を高くして寝ていられると考えていたのですが、現
在の状態では安全な日々を送ることができるのかは、何時になるか
分からないということでしょう。

 脱ダムは結構ですが、浅川・砥川の治水対策について「工事の一
時中止の為、もしかすれば2年ぐらいは遅れるかもしれませんが、
代わりにこうしますから皆さん安心して下さい。」という具体策が
ない限り、首長としては絶対に認めません。また、河川整備計画の
策定においても市町村長の意見が一番重要ということを、国土交通
省の河川局長さんから確認してきましたので、このこともお知らせ
しておきます。

 さて、県議会で知事のダム中止発言がある前までは、あのような
論理性に欠けた検討委員会の答申を読んで「やっぱり浅川はダムが
必要なんだ」と知事が考えられるのではないか、という淡い期待も
あったことは事実です。従ってあの発言があるまで私は、答申のあ
り方については批判してきましたが、知事への批判は控えてきたつ
もりです。しかし、6月県議会において「あの答申を尊重する、ダ
ムを止める、具体案として緑のダムと遊水地」との発言をお聞きし
て、これは駄目だと判断し、長野市、豊野町、小布施町の流域三自
治体はもちろん、砥川の岡谷市、下諏訪町の首長さんたちと連携し
行動をおこしました。長野県市長会としても異例の速さで反応し、
知事や県会に対し「具体案を早く」という陳情を行い、国に対して
も意見を求めてきたわけです。

 さて、私はこのメールマガジンで数回にわたり、浅川ダムについ
て基本高水流量のことを中心に述べてきました。それだけが原因と
は申しませんが、この基本高水流量に関しては、市民の皆様の理解
が深まり、田中知事ですら浅川の基本高水流量は450立方メート
ルを当面の目標にすると言わざるをえなくなりました。要は既往最
大の330立方メートル、あるいは350立方メートルで良いとお
っしゃる方々の理論が、いかにご都合主義のまやかし議論であった
かということが明らかになったわけで、その意味では答申も無視さ
れ、この基本高水の論議は終ったと思います。知事は「当面の目標」
とおっしゃって問題の先送りをして延命を図り、将来の変更に含み
を持たせていますが、相当合理的な理由がない限りそれは無駄な努
力でしょう。

 ただ、もう一つの論点、すなわちダムが安全なものかという議論
は、私が敢えて発言を避けたこともあって若干消化不足でもあり、
市民の皆さんに分かりにくかったかなと反省しています。私は検討
委員会の浅川部会の始まった際、「安全論議はプロの世界、素人が
議論しても感情論になるだけ」と考え、ダムの安全性を議論した
「浅川ダム地すべり等技術検討委員会」における日本的権威10人
の学者さんがまとめた結論以上のものはないと考え、あえて議論し
ませんでした。私は地質とか断層という話に全く素養はありません
ので、その考えに今も変わりはありませんが、ただそのことの説明
責任については若干問題があった。私は説明責任をいうときは説得
責任も伴うと思っています。もう少し市民のみなさんに分かってい
ただける話をすべきだったと思います。

 そこで、今後はダムについて様々な角度から検証を行い、重力式
ダムと穴あきダムの特性、ビオトープなど新しい水辺の文化、鉄砲
水を防ぐ最良の手段としてのダム、ダム100年の歴史における土
質と工法・同一土質・断層上の例、緑のダムへの日本学術会議の答
申と沿川における遊水地は可能性、治水は上流と下流のコミュニケ
ーション、などのテーマについて、何回かにわたり配信してみたい
と思います。若干不定期になるかも知れませんが、市民の皆さんに
ご理解いただけるよう、素人の私が理解した部分を書いてみたいと
考えています。