2002年7月4日木曜日

長野センタービル取得問題(その2)


 先週号では長野センタービルがどのような経緯で空きビルとなり、
そのためにどのような取り組みをしてきたかを書かせていただきま
した。今週は、長野センタービル取得のためにどのような活動をし、
今後どのように活用していく予定なのかについて書かせていただき
ます。

 私は市長に就任する前、商工会議所の副会頭として、また、NU
PRI(NPO法人・長野都市経営研究所)の理事長として、長野
センタービルの今後の在り方について各方面の方々といろいろ話し
合いました。その結果「長野センタービルは長野市に寄付する」し
か方法がないと結論付けました。もちろん私の仲間にも、行政が私
企業の契約行為の中にはいるべきではないと主張される方もいらっ
しゃいましたが、この経済情勢ではあのビルを競売しようとしても
民間では買えない。そうであると、あの長野市の核の場所がかなり
の間、空きビルとして灯りが消えたまま存在することになる。また、
現段階は大変な不況なので民間企業に元気がない、この際はぜひ行
政に出てほしい。景気がよくなったら再び民間が行政から買い戻し
たってよいではないかと考えたことも事実です。

 センタービルを長野市が取得するために、ダイエーに対し債権の
切り下げと担保解除の交渉に乗り出しました。(株)長野センター
ビル(以下NCBとします)関係者には、本当に自分たちの財産が
無くなってもよいのか意思確認をしました。残留したテナントの意
思もさぐりました。銀行にもいろいろお願いしました。もちろん弁
護士や会計士にも相談しました。そして、これが最善という考えを
まとめ、昨年8月末、長野商工会議所として長野市に対し、あのビ
ルの取得を陳情したのです。(寄付を前提にしていたのですが、結
果的には残念ながら、2億円を払わざるを得なくなったことは、申
し訳ないと感じてはいます。ただ実質的な価値は、約8億円程度と
いう話もありますのでお許し願いたい。また、この2億円はNCB
には一銭も入らず、ダイエーの担保抹消の対価として全額ダイエー
が取得します。その意味で、長野市はビルそのものの取得のために
2億円負担するのであって、NCBという民間企業の支援をするの
でないこともご理解下さい)

 その後、市長になった私は、今までと立場が変わってこのビルを
取得するかどうかを判断する立場になってしまいました。市役所内
の意見、そして議会の意見をできるだけ多く聞くように努めました。
職員の中には「ビルを寄付してもらっても毎年の固定資産税が入ら
なくなる」という意見もありましたが、私は、「ビルを所有してい
る会社はどうせ潰れる、そうすれば税が入らないことは同じだ。
もっと大切なことは、善光寺と長野駅、県庁と市役所、その交差す
る真中の場所、言葉を変えれば長野市の核が消滅しただけならまだ
しも、灯りが消え長く空きビルになることは街の活性化の面から、
なんとしても避けたい」ということを説明してきました。

 この議論の最中に提出された意見の中には、長野市がビルを取得
すると、今後この種の問題が生じた際、全てを受けなくては行政の
公平性を保てないという意見がありました。私はこれに対し、1.
長野市にとって有効な資産であり、有効に使える。2.実際価値よ
り相当低い価格で取得出来る。3.商工会議所など、公的組織等が
取得を求めている。という三つの条件を付け、その条件が整ってい
るなら、議会の了解を得て、積極的にならざるを得ないと考えまし
た。

 さらに、市民の皆様がこの問題についてどのように考えているか
をお聞きするため、1月20日に市民対話集会を急遽開催しました。
この集会には驚くべきことに516人の市民の皆様にご参加をいた
だき、賛成意見や批判的意見(反対意見は基本的に無かったと思い
ます)、更には具体的な活用方法に至るまで様々な意見が寄せられ
ました。この集会を通し、長野センタービルを長野市が取得すると
いう基本的方向性については、一定の理解をいただいているという
ことを確信する良い機会となりました。

 実際に長野センタービルを取得するに当たっては、一部の土地の
賃貸借契約や既存の借家人の権利関係をどのようにするか。また、
ビルの運営主体や改修費等の経費をどのようにしていくかなどの課
題も多くありましたが、関係者の皆様のご協力により解決すること
が可能となり、6月の市議会定例会においてご了解をいただき、正
式に長野市が長野センタービルを取得することとなりました。

 ビルの管理運営に関しては、長野商工会議所が主体となるTMO
(注)に委託する方針も認めていただきましたので、今後は、長野
市の財産となったあのビルを市民の皆様が利用しやすい施設とする
ため、公共性の高い市民ギャラリー、市民交流スペース、福祉関連
施設、商業施設やチャレンジショップとして再利用する案について、
検討を進めてまいりますし、これからも、地元商店街の皆様や住民
の皆様の意見をお聞きしていきたいと考えています。

 中心市街地の活性化には、核となる店舗のほかに、個々の商店の
魅力なくしては成り立ちません。そのためには行政のみならず、地
元商店街や経済団体等の自助努力、協力体制も大事な要素となって
おり、民間と行政のコラボレーション(協働)により街の活性化を
積極的に進めていきたいと思っています。

(注)TMO=タウンマネジメント機関の略。商店街・中核的商業
        施設の整備などの事業を運営・管理する機関