2014年8月29日金曜日

徒然の記 №33 企業組織


前に、公益団体や宗教団体、さらには政治団体については、私の考え方をお話しましたが、企業関係の話はほとんどしてありませんでした。でも、なんだかんだと言っても、私は企業人として生きてきているわけですから、今日はその話をしましょう。

  企業組織は、合名・合資・有限・株式など、古くからいろいろな形態がありますが、現在は、中位以上のほとんどの企業組織は、株式会社形態が多くなっており、自由社会の根幹をきめる社会制度であると言っても良いと思います。組合などは、個々の組織を温存しながら、多くの力を結集して成果を上げようという組織ですから、根本的には会社組織の延長線上にあるものと考えるのが正しいのでしょう。農業法人も規制は多いけれど、根本は同じ組織の一つと言えるのではないでしょうか。戦後の農地解放によって受けた農家のメリットと大地主撲滅の流れが、現在の農業の惨状を引き起こしている、即ち自由社会の中で規制を温存している社会・・問題を私は感じています。

会社組織は、自由に設置できるものであり、運営もあまり制約がないものであるべきと、私は考えていますが、いろいろな矛盾もあると感じています。即ち「株式」というのは個人や企業等が集まって、出資してつくるものですから、目的に賛同する多くの人達が出資者になることが重要です。そして出資した金額に応じて議決権を有するべき組織であるべきでしょう。

 昔と言っても、私が息子の小学校のPTAの役員をやっていた頃、校長室で、尊敬する校長先生と二人で雑談していた時、次のような会話をしたことがあります。

校長先生「鷲澤さんの会社の資本金はいくらですか?」

 鷲澤  「2100万円です」

 校長先生「株主さんは、誰ですか?

 鷲澤  「名義上は良く分かりませんが、実質は私一人です。私の自由に 出来ます」

校長先生「それで、会社の売り上げは・・・・?」

鷲澤  「100億円近いでしょう」

校長先生「何故・・・そんなことができるのですか?」

鷲澤  「うーん・・・先生、そのことにお答えするためには、簿記学からはじめて・・・経営学等・・・・とても短時間では、答えられません・・・・」

 私はこの先生が大好きで、折にふれていろいろな話をさせていただきましたが・・・・・正直に言って、教育の世界の常識は、経済社会とは違うなあということが多かったように思います。私の住む経済の世界の方が良いと言うわけでは、全くありませんでしたが・・・自由という立場だけは、私の方が有難いのだと思ったことは事実です。

 会社を興す場合、一人、あるいはその関係者(親類など近親者)のみを出資者に限ることは、本来ではないはずですが、株式というのは物と同じで売買も出来ますし、長い間には株主間の意見の違いなどもあって、喧嘩わかれや組織が集約されていくこともあります。

 ただ最近はコンプライアンスが重視され、あらゆる組織は自由であるはずなのですが、社会的な影響がおおきくなってきますと、法律でいろいろな規制がうまれてくることは避けられないわけです、独占禁止法が生まれて、競争に一定の制限が加えられたり、農業は国の根本という発想からか、株式会社の参入は制限されている面もありますし・・・日陰や騒音、排水、廃棄物から、企業の行動の自由が制限されてくるのは、当然ですし、人を雇用する場合、法で定められた最低賃金や労働時間、未成年者の保護、外国人労働者問題等が、最低限守られなければならない法律として、定められていることは当然ですし・・・

自由であるべき企業活動も、徐々に規制が強まってくることは、仕方がないことでしょう。

 さらに道徳面からも、正義に基づく活動が重視されてきています。

企業は儲けることばかりでは尊敬されず、きちんと「社会の為の行動」をすべきであることも大切であるいうことが、世間一般に認識される時代になったように感じています。企業ボランテイアとかメセナとか文化活動という言葉が大切になってきています、経営者は常にそのことを意識しなければならない時代でしょう。

 
 企業の社会的活動と私益の追求を一致させるのが、理想なのでしょうが、なかなか難しい、また「社会のための行動」といっても、全て同じではありませんし、本業をおろそかにしては駄目でしょう。

私が所属した長野青年会議所の目標は「明るい豊かな社会を築こう」でした。でも青年会議所の活動に熱心すぎて、会社がおかしくなった例(それだけの理由では無いでしょうが)は、枚挙にいとまがありません。まず自分の基盤をしっかりさせることも、当たり前ですが、必要です。

 単独の組織(個人も含めて)ではなかなか難しいことも、商工会議所、商工会、協同組合、中小企業団体中央会、農業協同組合(中央会)、経営者協会など、経済関係の諸団体は、皆の力で目的を達成しようとする団体でもありますから、仲良く協力しあって仕事に取り組んでいくことは、大切です。(個々の利害は違いますから、難しい場面もありますが)

 企業組織を考えるうえで、重要なことがあります。

より良くしよう、より儲けたい、永続的な企業にしたい、より高く、大きく、誇り高い企業でありたい・・・当たり前のことですが、二つの重要ポイントがあります。

    株式の公開をしている会社かどうか

上場会社か非上場会社かでは、大きな違いがあります。

株主総会、取締役会、議事録の整備、監査役等を整備し、組織運営をきちんとやる必要があります。

これは上場会社の場合、他人に資本を出してもらうわけですから、自分(社長)の会社という観念を捨てないといけないと思うのです。(捨てるというのは無理でしょうから私物では無いという観念でしょうか)

    同族会社かどうかも、大きなポイントです。

 会社の大小には関係なく、特定の株主の支配権が、特定の人に集中している場合(その比率は忘れました)、同族会社ということになり、普通会社と比べれば税法上は、不利な点があるようです。ただ個人経営と違って、法人経営にはそれなりに有利なことがあるのですから、感謝の気持ちを忘れてはいけません。

   

私は、ひと頃、自分の会社を公開して、上場会社にしたいと夢をみたことがあります。一種の株式公開ブームのようなものがあり、株式を売り出して創業者利潤で、税金が安いことを利用して、大きな資金を獲得する成功物語が、かなりあったようで、私も羨ましく思ったものでした。

株式会社ですから、多くの方に、株式を持ってもらうことは、それが可能ならばよいことでしょうし、資金的に豊かになり、大企業の仲間入りをし、有名にもなりますし、今後の投資資金も獲得できれば・・・・良いことづくめで嬉しいし、個人的にも株式売却で、お金儲けが出来ればいいなあ!・・ただ個人的な利益については具体的にあまり考えていませんでしたが、何となく憧れていたと思います。(本当かどうかは定かではありませんが、アメリカの例では、自分で会社を起業し、良い会社になったら、他人に会社を高く売り付けて、自分は、悠々自適の生活をするのが理想だという話をきいたことがあります。私には考えられない発想ですよね)

 証券取引所には面倒な規約があって、それをクリアしなくては、上場できないことはわかっていました、東証一部とか二部の区分けがあって、それなりのステイタスもあり、企業の格も重要でした。当時、私の会社に株式公開の資格があったかどうか、必ずしも自信があったわけではないのですが、まあ大丈夫だろうといった軽い気持ちでした。

 ただ、熟慮した結果、自社の株式の公開計画は、中止しました。

    まず、炭平は、我が家の家業であること、他人に経営を左右される危険性があることをすべきではない。親父が戦地から引き揚げて事業を再開してしばらくして、個人事業から株式会社にしたようですが、きっかけは個人営業では税金が高くてかなわないと親父が言っていたことをなんとなく記憶しています・・・が、それだけではなかったと、今は感じています。法人化はしたけれど、・・・・何が変わったかははっきりしていませんが、実態は個人営業と変わりはありませんでした。ましてや株式公開なんて夢にも考えていなかったはずです。ただ個人営業のままでは、現在の規模には成長していなかっただろうなあと思っています。(一番は人が集まらなかったでしょう)

    確かに親戚や知人に、株式を持ってもらうことは考えたらしい形跡はあるのですが、実現せず、名義上の株主はいたはずですが・・・家族や少数の親戚の名前でした。私が社長になってから、この辺の整理には頭を使いました。

    確かに株式を売り出す(出資してもらう)ことにより、多分、会社の借金はその分少なくて済んで、自前の資金(出資してもらった資金は、会社にとっては自己資金)だけで運営できれば、当面は楽ですよね。

    ただ、他人資本に対しては、当然のこと金利に相当する配当を出さなくてはならない、意見も聞かなくてはならない・・・・自己資本とは言え、他人さまに出資していただいているのですから、配当分は税金と同じ、社外流出ですよね

    借金に頼ることが不必要な体質が出来るとすれば、ありがたいけれど、そんなことをしなくても、幸い当社には、戦後の株式会社設立以後に限っても、過去の蓄えは、かなりあるし、信用度もまずまず、取引銀行との関係も良好、社員も信頼できるし、得意先とのコミュニケーションも良好、商社活動に重要な仕入れ先との関係も良好で、さしあたっての資金需要に困ることはない。・・・鷲澤個人の信用は、当時の規模の店を運営するのに、十分だったようです。

    何よりも経営に他人の介入を招きたくない、自由に、自己責任で、やっていきたい。

    景気は常に変動することを覚悟しておく必要がある、景気の悪い時、あるいは当社の経営が何らかの理由でピンチになったとき、他人資本がはいっていたら、迷惑をかけることになる。一番怖いのは、取引先の経営難(即ち倒産)だが、取引先の動向に注目して危険を予知する能力を磨いていく必要は、常にある。

 いろいろな理由をつけていますが、結局他人資本を使って経営をする自信がなかったということですか。まあ借金だって他人資本をつかうのと違いはないのですが・・・・

何年か経ってから、即ち将来、株式を公開する可能性はないわけではないと感じていますが、多分それは、後継者の責任で考えることでしょう。

 いずれにしろ、同族会社の在り方などについて、私の社長時代には、同族会社にはどう見ても不利な税法があったこと、悔しい思いをしたものです。「社内の留保金に一割の課税がプラスされる、いわゆる留保金課税」「行為計算の否認」など・・・まあ、そう言った問題は、国の税制改革で、現在はかなり改善されてきているようですから、当時とすれば仕方ない面もありますが、その分(過去獲られた分)を返してもらえれば、いいがなあなんて夢みています。