2010年8月12日木曜日

合併記念特別展


 現在、信州新町美術館・化石博物館では、長野市・信州新町・中
条村合併記念の特別展として「横井弘三童心画展」と「化石特別巡
回展」を開催しています。少し前のことになりますが、7月24日
にそのオープニング式典を行いました。

 式典ではまず、中条虫倉太鼓の皆さんに、勇壮な響きの素晴らし
い太鼓の演奏を披露していただきました。長野市にはたくさんの太
鼓グループがありますが、また一つ新しいグループが仲間入りした
ということでしょうか。
 本年の1月1日に3市町村が合併し、はや7カ月。少しずつ旧市
町村の枠を越えた交流が進んできているように感じています。

 信州新町と縁の深い横井弘三は、明治22年に飯田市で生まれ、
26歳の時に二科展で樗牛(ちょぎゅう)賞を受賞して華々しくデ
ビューした画家です。翌年には二科賞を受賞するなど“日本のアン
リ・ルソー”と言われて評判となったそうです。

 その後、社会に作品が受け入れられないなど、苦難の時代もあっ
たようですが、晩年に信州新町に滞在した際に描いた作品30点が
当時の水内小学校に寄贈され、これらが現在の信州新町美術館に収
蔵されています。
 そのほかにも、市内にはたくさんの作品が残されており、今回の
特別展は、公立の施設に寄贈された作品や資料など約100点を集
め、展示しているものです。塚田前長野市長さんも立派な作品をお
持ちになっており、今回、この特別展のためにお借りしました。
 普段お目にかかることのない作品をご覧いただける貴重な機会で
す。どうぞごゆっくりご鑑賞ください。

 次に、「化石特別巡回展」についてです。善光寺平西部の西山地
域一帯は、400万年から500万年前は海であったことが、地層
の調査などから分かっています。特に中条地区では、貴重な化石が
たくさん見つかっています。
 例えば、昭和45年に裏沢(うらさわ)の沢筋で発見されたシン
シュウゾウの上顎(うわあご)化石は県内最古のゾウ化石だそうで
す。また、平成7年に同じ裏沢から発見されたセイウチの祖先の化
石も極めて貴重な物とのことです。
 さらに、昨年8月には土尻川でダイカイギュウの肋骨(ろっこつ)
の化石が2本見つかり、県内最古のダイカイギュウ化石として話題
を呼びました。

 そのほかにも、信州新町、鬼無里、戸隠、七二会など、各地区で
貴重な化石が多数産出しており、この巡回展を通して夢とロマンに
あふれた太古に戻ることができると感じています。
 今回の展示でこれらの化石をご覧いただき、この地が海であった
こと、さまざまな海の生物がこの地を泳ぎ回っていたことなどに思
いをはせてみてください。そして、この地が形成されてきた歴史も
学んでいただきたいと思います。これらも、長野市の大きな財産で
す。
 合併を契機として、西山地域は、昔から地層も風土もつながって
いたことがきっとご理解いただける、そんな展覧会になりそうです。

 信州新町での展示は8月29日までですが、その後、9月から
12月にかけて、中条公民館、戸隠地質化石博物館、生涯学習セン
ター、市立博物館を巡回する予定です。
 さらに、この期間中には地層観察バスツアーや講演会、シンポジ
ウム、ギャラリーツアーなど、盛りだくさんな内容を計画していま
す。大勢の市民の皆さんや県内外の皆さんに足を運んでいただき、
長野市が海だったことを実感していただきたいと思います。

画しており、11月3日から信州新町美術館と有島生馬記念館で行
うことにしています。
 皆さんご存じだと思いますが、有島生馬は、兄が小説家の有島武
郎(たけお)、弟が同じく小説家の里見〓(とん)(注)という家
に育った洋画家・文学者です。信州新町には8回も来訪されており、
犀川のダム湖を琅鶴湖(ろうかくこ)と命名するなど、信州新町と
は深い縁があります。
 こうしたことから、鎌倉にあった生馬の邸宅が取り壊されること
になった際、住民の寄付により、この地に移転改築されたのが有島
生馬記念館だそうです。「有島生馬展」では、生馬と関係の深かっ
た「一水会(いっすいかい)」の作家を中心に、知友作家(ちゆう
さっか)の作品の展示を予定しています。

 また、生涯学習センターと市立博物館で行う巡回展では、生馬の
代表的な油彩画や家族の作品、生馬の遺品などを展示し、生馬が残
した偉大な業績を紹介する予定です。
 この展覧会を通して有島生馬の人となりを紹介すると同時に、有
島生馬記念館の存在も全国にアピールしたいと思っています。こち
らもぜひ、ご覧ください。

 最後に、皆さんに知っておいていただきたいことが一つあります。
実は、長野市は、市立美術館を持っていませんでした。ただ、市内
に美術館が無いわけではありません。公立では長野県信濃美術館・
東山魁夷館、そして民間には、北野美術館、水野美術館などなど、
立派な館があるのですが、「市立」美術館は無かったのです。北信
美術会などの文化芸術団体の皆さんからは、ぜひ市立美術館を造っ
てほしいとの陳情を頂いていましたが、なかなかその段階になりま
せんでした。
 信州新町美術館は合併前、信州新町立でしたので、合併で長野市
立となったわけです。これにより、初めて「長野市立美術館」がで
きたことになります。みんなで盛り上げていただきたいと思ってい
ます。

 今回の特別展開催の目的は、信州新町地区と中条地区の資源やお
宝を知っていただくことです。また、併せて地域間の交流や文化の
伝承などにも貢献できればありがたいと思っています。この特別展
をきっかけに、新たな交流の輪が広がることを期待し、特別展開催
にご協力いただいた皆さんに感謝し、この展覧会が盛会であること
を祈念して、私の報告とします。

(注)「とん」の漢字は、弓ヘンに享