2006年10月12日木曜日

第2回JOCスポーツと環境・地域セミナー


 9月22日、県民文化会館で、JOC(日本オリンピック委員会)
と長野市の共催により、第2回「JOCスポーツと環境・地域セミ
ナー」が開催されました。

 このセミナーは、長野冬季オリンピック競技大会開催当時から、
スポーツを行う上で環境への配慮が大変重要であるという認識が急
速に高まったことが契機となり、IOC(国際オリンピック委員会)
が中心になって、スポーツと環境問題について研究する、あるいは
スポーツ界から環境保全についてアピールしていこうという意図で
行われている国際的なセミナーです。長野オリンピックの時も開催
されましたし、2001年には長野市で第4回IOCスポーツと環
境世界会議が開催されました。その後、イタリアのトリノで開催さ
れた世界会議の折には、長野から塚田前市長さんが参加され、長野
オリンピックでの取り組みについて、演説されたこともありました。

 今回の長野での開催は、その国内版ということで、JOCが第1
回を昨年大阪市、第2回を本年長野市で開催したものです。この二
つの都市は、JOCとパートナー都市協定を結んでいる都市である
ことから、選ばれたということです。

 当日はJOCから竹田会長、水野環境委員長のほか、スキーノル
ディック複合競技の荻原兄弟(お兄さんは参議院議員です)、バレ
ーボールの大林素子さん等、有名なオリンピック選手の皆さんが出
席されました。また、県内外のスポーツ団体の方々も出席されて、
それぞれ現場で環境保全に取り組んでいること、苦労していること、
感じていることを語られました。以下、それぞれの方の発言の要約
を記します。

 竹田JOC会長
 「2001年長野市で「この星にスポーツを」というテーマで
「IOCスポーツと環境世界会議」を開催して以来、JOCはスポ
ーツ界の環境保全に積極的に取り組んでいます。その一環として毎
年地域セミナーを開催することになり、今年はJOCパートナー都
市第2号の長野市で開催することとなりました。
 呼吸のための空気、泳ぐための水、観戦時に出るごみなど環境と
スポーツは密接な関係があります。各団体が環境保全に統率力を発
揮して欲しい。」

 荻原健司・荻原次晴さんの基調講演
 「現役時代、ヨーロッパアルプスで毎年練習をしていたが、行く
度にアルプスの氷河が少なくなっていくのを感じていた。地球温暖
化を考えると、千年後にスキー競技が存在しているか心配です。」

 大林素子JOC環境アンバサダー
 「現役時代は、練習の時、体育館に冷房をかけて、管理された温
度の中で練習をしていたが、最近では、経費の削減と環境の事を考
えて冷房はかけず、照明も最低の明るさとするなど、現場での変化
を感じる。選手のユニホームの再利用や応援品のリサイクルも年々
進んでいます。」

 水野正人IOCスポーツと環境委員
 「基調講演で荻原さんから地球温暖化による雪不足のお話があっ
たが、昨年は例年にない豪雪で、矛盾したお話のように思われる方
もおられると思う。しかし、昨年の豪雪も地球温暖化に関係してい
る。それは、北極付近にある寒気が、地球温暖化により暖められた
空気によって大量に大陸側に押し出された結果、豪雪となったもの。
 今は危機的状況という認識が薄いかもしれませんが、今ならまだ
間に合います。誰かではなく、私たち一人一人の問題として次世代
への責任を果たす役目があるのです。」

 各競技団体の環境保全への取り組みについても発表がありました。

 丸山仁也 国際スキー連盟技術代表
 長野オリンピック時の滑降競技における環境への配慮について話
されました。

 黒岩敏幸 日本スケート連盟スピードスケート強化スタッフ
 「私も現役時代、浅間温泉スケート場での大会で気温が下がらず、
大会の当日に会場をエムウェーブに変更して、選手・役員みんなで
移動したという経験をした。我々、一人一人が、生活して快適な環
境、スポーツができる環境を守っていかなければならない。」

 百瀬公基 日本近代5種・バイアスロン連合理事
 「バイアスロン競技においては、発射される弾の鉛が大きな問題
となっている。競技会場地に鉛を残さないため、弾の回収に取り組
んでいる。」

 中村慎 日本アイスホッケー連盟理事
 「競技運営の中でエネルギー対策、資源対策として、両面コピー
の徹底、事務連絡はメールで行う等の取り組みを行っている。実際
に推進していくためには、成果や目標が明確になるようにデータを
取ることが大事である。また、成長の早いジュニア選手用に、小さ
くなってしまった靴をリユースする等の取り組みを行っている。」

 そして、私からはセミナーの冒頭で、遠路長野にお出でいただき、
セミナーを盛り上げていただいた方々に感謝した後、次のような話
をさせていただきました。
 
 「自然との共存、平和と友好」を基本理念とした長野オリンピッ
クの開催から本年で8年がたちます。「愛と参加の長野オリンピッ
ク」の実現を目指し、「子どもたちの参加促進」「美しく豊かな自
然との共存」「平和と友好の祭典の実現」と3つのテーマがありま
したが、この中で「自然との共存」は長野オリンピックの大きな目
標であり、課題でした。
 雪と氷の上を競技の舞台とする冬季競技は、多かれ少なかれ自然
への影響は避けられないものですが、この影響を最小限にとどめる
ことが「美しく豊かな自然との共存」の前提です。ボブスレー・リ
ュージュ競技会場「スパイラル」では、自然の地形をできるだけ変
えないようにするため、世界で初めて上り勾配のあるレイアウトを
採用しました。また、コースの冷却には地球環境を破壊するフロン
ガスの採用を避け、世界で初めてアンモニア間接冷却方式を採用し
ました。また、オリンピック村やメーンプレスセンターなどの食堂
では「りんごの食器」が使われ、使用後は固形燃料や段ボール、た
い肥に利用するといった試みも行われました。このような環境に配
慮したスポーツ大会の運営という経験は、昨年の3月に開催された
スペシャルオリンピックス長野大会においても引き継がれ、選手団
ホテルの食器や大会運営要員の弁当容器には、リサイクル可能な素
材のトレーが、大会中の全ての食事に使用されました。

 21世紀は「地球環境時代」と言われています。スポーツだけで
はなく、私たち人間の日常生活は、資源やエネルギーを大量に消費
し、廃棄物を大量に発生させるなど、環境に大きな影響を与えてい
ます。
 人類が「持続可能な発展」を遂げていくためには、環境に配慮し、
従来の意識とライフスタイル、そして社会のシステムをも変えてい
かなければなりません。

 長野市では、2004年2月に「長野市地域省エネルギービジョ
ン」を策定し、2010年のエネルギー消費量を各部門で1990
年レベルに戻す事を目標に、市民・事業者・市のそれぞれにおいて、
省エネルギーへの取り組みが行われています。
 本年度、長野市では、省エネルギービジョンの重点施策のひとつ
である「ESCO(エスコ)事業」を、長野オリンピックのアイス
ホッケー競技会場「アクアウイング」のある「長野運動公園総合運
動場」に導入しました。
 ESCO事業は、民間のノウハウや資金を活用し、省エネルギー
化を実現しようとする取り組みであり、長野運動公園総合運動場の
場合は、これまでに比べ、年間の消費エネルギーは約2割、二酸化
炭素の排出量は約3割、光熱水費も年間3千万円余り削減されるこ
とが見込まれています。
 今後、体育施設など公共施設への導入を順次拡大していきますが、
これらの体育施設をご利用いただくスポーツ関係者の皆さまに、省
エネルギーと環境に配慮したスポーツ活動を実践いただくことで、
その効果も倍増するものと思います。ぜひ、ご協力をお願いします。