2006年10月26日木曜日

中山間地域の再生に向けて


 10月15日、長野市の北東部浅川地区の坂中地区にお伺いしま
した。
 平成18年度「豊かなむらづくり優良集団表彰『関東農政局長
賞』」の受賞祝賀会でした。

 坂中地区は、浅川の市街地から県道を北へ登っていくと、飯綱町
へ通じるトンネルがありますが、その手前を右に曲がってちょっと
上がったところにある山あいの30軒あまりの集落です。

 この集落が、このたび農林水産省主催の「豊かなむらづくり優良
集団表彰」の「関東農政局長賞」を受賞したのです。農林水産省も
味なことをやるなと思いながら、訪問しました。本当はもう一つ上
の大臣賞を狙っていたらしいのですが・・・でも局長賞というのも
素晴らしいことです。何しろ長野県では唯一だということです(こ
の賞の最高は天皇賞まであるとのこと、挑戦はまだまだ続くのでし
ょう)。

 地域のお話を聞く中で、なるほどと思いました。
 平成12年度から、中山間地域等直接支払制度の協定締結を機に、
共同取組活動を通して、荒廃農地の利活用に着手し、その活動の中
で直売所の開設や、地元浅川小学校とジャガイモ、大豆栽培を通じ
た交流活動などを行ってきたことが、高く評価されての受賞とのこ
とでした。

 予定では、直売所の盛況ぶりを見たいと出掛けたのですが、着い
たのがお昼過ぎでしたので、既に売り切れ、直売所は片付いていま
した。常連客がいて、かなり遠くからも来てくださるそうで、一週
間に一回の店開きらしいのですが、すぐ売り切れてしまうとのこと
です。商売をやったことのある立場からは、うらやましい状況にび
っくり、もっと商品を集めて、たくさん売れば良いのに・・・と思
いました。JA(農協)さんが集荷するには、小規模すぎるのだそ
うです。

 今回の坂中地区一連の活動については、地域の皆さんが信頼を寄
せる代表の齊藤義信さんというリーダーがいたこと、中山間地域等
直接支払制度の交付金を農業に投資できたこと、そして、なにより
坂中地区のまとまり、チームワークの良さを発揮して、さまざまな
取り組みを実践してきたことが原動力となっていると感じました。

 また、市としても放牧豚による遊休農地の解消、電気柵の支援な
どもさせていただきましたが、この放牧豚の取り組みは、そのアイ
デアと採算を考えた取り組みで、感心しました。齊藤代表がその道
の大家らしいのですが、一石三鳥ぐらいの効果を狙った事業と拝見
しました。

 今後も地域が主体となってJA(農協)や県、市ほか関係機関と
の連帯を深め、中山間地域活性化のモデル的ケースとして、さらに
発展されることを願い、市としてもできるだけの応援をしていくつ
もりです。欲を言えば、今後は集落全体で営農体制を整え、集落営
農につながるよう期待しています。市では、これまで、各地区の遊
休農地活性化委員会を通じて、地元農業者グループなどが実施する
直売所の設置や遊休荒廃農地の復元などの事業を支援してきている
のですが、この集落ではそれを見事に生かしていると感じました。
マーケティングをもう少しやれば、きっと発展するのでは・・・と
思いました。

 市としては遊休農地の解消、地産地消の推進、さらには地域コミ
ュニティーの醸成につながる活動を通して、地域の活性化が進むよ
う引き続き支援していこうと考えておりますが、まだまだ決定的な
支援策とはなっていません。来年4月に農業公社(仮称)を発足さ
せて、とにかく農業を活性化しようと努力しているのですが・・・。
日本中が困っているテーマ、なかなか決め手が見つかりません。

 話は変わるのですが、今まで中山間地域問題、農業再生について
各地を訪問し、いろいろな経験をさせていただきました。農作業に
はあまり縁の無い生活をしてきた私にとっては、とても新鮮な経験
でした。前にも報告したことがあるかもしれませんが、感想を報告
させていただきます。

 信更地区「遊休農地を活かす会」のそば収穫祭
 平成16年11月に、信更地域の農業振興・地域活性化のため、
遊休農地の復元とそば栽培の活動を展開されてきた「遊休農地を活
かす会」のそば収穫祭にお伺いしました。
 この会は、遊休農地の増加を憂慮した地元有志が自ら出資金を出
し合い、活かす会を立ち上げ、16年度、遊休農地の復元2.9ヘ
クタールを含む5ヘクタールでそば栽培を行った(18年度には、
さらに遊休農地を復元して約10ヘクタールでそば栽培を行った)
とお聞きしています。この収穫祭でいただいた「そばがき」が大変
おいしかったことを今でも覚えています。
 この会の活動は、地域の活性化を地域の皆さんが自ら考え、動く
ことで切り開いて実践したという意味で、他の中山間地域のモデル
となるものです。今後も地域が主体となり、行政、関係機関との協
働のもと、中山間地域の活性化に向けた取り組みが各地域で展開し
ていくよう願っています。

 芋井地区の影山地区を訪問
 平成17年4月に、みどりの移動市長室で中山間地域等直接支払
制度を活用した農地を拝見させていただきました。
 復元された水田は、約1ヘクタールが耕作放棄地となっていたと
いうことですが、それを感じさせないほど立派な水田となっており、
大変な努力と、また、地域を活性化させようという思いが感じられ
ました。
 この他にも、300本のひまわりを植栽したり、ホタルのすむ環
境づくりのための水路を造ったりと、誰もが親しめるような場をつ
くっていらっしゃいました。機会があれば、こういった時期にも訪
れてみたいと思いました。

 「ファーム更北」の小麦(ユメセイキ)収穫祭
 平成17年9月に、本市の農業重点施策の1つである「地域奨励
作物支援事業」で奨励作物に指定している「小麦」の生産に取り組
まれてきたファーム更北にお伺いしました。遊休荒廃農地であった
ところを復元して3ヘクタールに小麦を作付けし、17年春に初め
て収穫ができ、収穫祭を迎えられたときのことです。
 現在市内では、ファーム更北をはじめ、「そば」の生産組織が1
地区、「大豆」の生産組織が2地区に設立されるなど、徐々に生産
拡大に結び付いてきています。
 ファーム更北の皆さんは、17年秋の麦の作付けも、昨年の2倍
の6ヘクタールに拡大を計画(18年秋の麦の作付けは、12ヘク
タールに拡大を計画)しているとお聞きしました。今後も遊休農地
の解消と、地域奨励作物の生産拡大、地産地消に向けた取り組みが
ますます拡大していくことを願っています。

 七二会東部大豆生産組合の大豆収穫祭
 平成18年1月には、七二会地区の農業振興・地域活性化のため、
遊休農地の復元を含めた大豆栽培の活動を展開されてきた「七二会
東部大豆生産組合」の大豆収穫祭にお伺いしました。
 遊休農地の増加を憂慮した五十平・倉並・坪根区の地元有志が、
中山間地域等直接支払制度の協定更新に伴い、かつてこの地で盛ん
だった大豆生産を復活させようと「七二会東部大豆生産組合」を立
ち上げられました。設立1年目の17年度は、遊休農地の活用
1.7ヘクタールを含む6.4ヘクタールで大豆を栽培し、出荷さ
せたとのこと。その大豆から作った淡い青色の「豆腐」は、味覚だ
けでなく目も楽しませてくれたと印象に残っています。
 地域の農業振興を地域の皆さんが自ら考え、実践したという意味
で、他の中山間地域のモデルでありました。今後の活躍を大いに期
待したいと思います。

 私の友達
 私の友達のなかに、素晴らしい、私にはとても真似のできないこ
とに取り組んでいる人もいます。彼は、JA(農協)関連の組織に
勤めて、定年で退職したのですが、「自分は長いこと農業の世界で
世話になった、恩返しがしたい」と仲間を募って、やめようとして
いるリンゴ畑を借りてリンゴ栽培に取り組んでいます。まだ持ち出
しばかり、苦労多くして実入りは無いようですが、でも一生懸命努
力して頑張っています。応援したい、そして彼の取り組みの中から、
行政としていかにしたら良いか、アイデアを聞きたい・・・そんな
思いで期待しています。

 各地域を訪問してみて、遊休農地の解消や地産地消の推進などの
実績を上げている地域では、リーダーの存在が大きいと感じました。
その信頼できるリーダーが、地域の活性化には必要なのだと改めて
感じました。

 中山間地域で生活する人たちは、厳しい条件の中で、頑張ってい
ます。後継者も多くは地元から離れてしまって、一人暮らしの高齢
者が多くなっているのが実情です。でもそういう地域が長野市域の
70%なのです。何とかしたい、市全体を考えるとき、周辺部が元
気になり、そこに生活基盤ができる・・・私の友人の中には「それ
は無理だ!」という人もいます、私の心の片隅にはそんな思いも無
いわけではありません。

 でもそれでは困るのです。国土は荒れ、きれいな水、きれいな空
気、素晴らしい景色、癒やしの場・・・そんなものが失われていく、
農業だけでなく森林資源も駄目になっていくでしょう。本当の意味
での地産地消こそ地域を活性化する源なのかもしれません。