皆さん、“PET”をご存じですか?
先日、初めてPET/CT検査を体験しましたので、今回はその
報告をします。
PETとはPositron Emission Tomogra
phy(ポジトロン エミッション トモグラフィー)の略で、微
量の放射性物質ポジトロン(陽電子)とブドウ糖から合成した18
F-FDG(フルオロデオキシグルコース)という放射性医薬品を
注射し、その体内分布を特殊なカメラ(PET/CT)で撮影する
新しい画像診断法ということです。JA長野厚生連は、昨年度末、
この最新の医療診断機器をがんの早期発見・早期診断を目的として
導入されました。
従来のCTやMRは、がん細胞の形・大きさを調べるものですが、
PET検査は「がん」など体の中で活発に活動している細胞を画像
化して表すことができるため、8ミリメートル程度の「がん」でも
発見できる場合があると長野PET・画像診断センター発行のパン
フレットに書いてあります。
ほかの検査、画像診断により病患を疑う、あるいは病理診断によ
り、転移・再発など、確定診断が得られない場合、威力を発揮する
とのことで、従来の検査よりがんの発見率は高いようです。
肺がん・乳がん・大腸がん・脳腫瘍(のうしゅよう)などなど
・・・パンフレットには発見できそうな多くのがんの種類が書いて
あります。
私の父は約45年前、48歳、脳腫瘍で亡くなりましたが、当時
原因が分かって東大病院で手術するまでに数年間、東京と長野の間
を往復し、結局助かりませんでした。脳腫瘍の字を見て、現在なら
多分助かっていた・・・医学の進歩がもう少し早かったら・・・正
直感じました。
検査の前日は、普段どおり過ごし、翌朝は、水・お茶以外は口に
いれてはいけないと言われていましたので、守りました(検査前、
4~6時間に食事をすると、糖代謝が盛んになり、がん細胞との区
別がつきにくくなり、正確な診断ができないとのことです)。
9時前に長野PET・画像診断センターへ到着、受付で自己負担
分の検診料金を支払い(パンフレットには、保険が適応される場合
は約3万円、保険適応以外の場合は約9万円とあります)、更衣室
で検査着に着替えてから、看護師から問診を受けました。
インフォームド・コンセントというのでしょう、看護師から、丁
寧にこの検査の説明、放射性物質の説明などをしていただき、検査
を了解する書類に署名をしました。それから先に説明した薬剤(F
DG)を静脈注射しました。別に痛くもなく、普通の静脈注射でし
た。
それから60分間、安静室で休みました。この時間、私は少し困
りました。部屋はきれいですし、いすも快適なのですが・・・私は
眠っているときは別として、何もしないでいるのは苦手なものです
から、読みかけの本を持っていったのですが、読書は禁止と言われ
てしまいました。要は検査薬剤が全身を巡るように、安静にするこ
とが必要で、本を読むと頭に血が上って、代謝が強く出てしまい、
がんとの区別がつかなくなる・・・そんなことであろうと思います。
退屈な60分間が経過して、いよいよ撮影開始。寝台に乗り、C
TやMRでおなじみの円形ドームの筒に全身を滑り込ませ、約20
~30分間、撮影装置は頭の方へ前進したり、足の方へ後退したり
・・・いろいろ動いていました。不覚にも私は眠ってしまい、その
間に体を動かしてしまったのではないかと心配でした(前にCTか
MRを撮ったとき、動いてしまうと正確に分からないと医師に言わ
れたことが、気になっていました)。でも担当の方から、少しぐら
い動いても問題ありませんと言われ、安心しました。
あっけなく撮影が終わり、寝台から解放され、更衣室で検査着を
着替えて、一休み。これで検査は終了です。
その後あらためて、撮影した検査画像を見ながら、説明を受けま
した。全身を縦(頭の方から撮った映像)、横(体を横から撮った
映像)前(体を前から撮った映像)の三つに分けて撮影した映像、
そして、その映像をそれぞれ3ミリメートルの厚さに輪切りにした
状況が次から次へ映し出され、医師からいろいろ説明していただき
ました。
PET/CTの画像は、PETの画像とCTの画像を簡単に融合
させて表示できるので、悪い部分があると、そこへFDGが異常集
積(色が変わる)しているので、分かるとのことです。
幸いなことに私はどこにも異常集積がなく、すなわち、がんはな
いとのご宣託を頂いたものと思っています(「検査結果のご報告」
という文書を別に送付いただきました。良性の腫や、変性性変化
(要は加齢ということでしょうね)は認められるものの、異常では
なく、治療の必要はないとのことでした)。
ただびっくりしたのは、医師から「腰と右肩が痛くないですか?」
と言われたことです。腰はもう何十年も痛いし、肩は50歳ころの
四十肩以来、痛むことは事実ですが、我慢できないことはないので、
時々指圧に通っているぐらいで過ぎてきているのですが、これは変
性性変化だそうで、そこを指摘されてしまいました。がんだけでは
なく、調子の悪いところまで発見されてしまうようで、すごい機械
が出来たものと感心しました。
なお、PETには弱点もあるとのことでした。
一つは、病巣が発見しにくい場所、すなわち検査薬FDGが集ま
りやすい場所があるのだそうです。ブドウ糖を大量に消費する脳や
心臓、FDGの体外への排出ルートになっている腎臓やぼうこう、
そのほか胃などで、FDGがたくさん集積するこれらの場所は、P
ET画像では色濃く映し出され、その周辺にがんがあったとしても
見つけ出すことが難しいのだそうです。
二つには、がんの種類によっては発見しにくいものがあるとのこ
とです。
FDGの集まり具合をがん発見の基準としているため、FDGが
集積しにくいがんを見つけるのは苦手だそうです。
いずれにしろ、PET/CT検査は従来の画像診断に比べて、画
期的な検査法ではありますが、この検査で見つからないがんもあり、
またFDGの集積があっても必ずしも悪性腫瘍ではない場合もある
とのことで、要は万能ではないということでしょう。
なお、長野PET・画像診断センターのセンター長の照井頌二先
生は、東北大学医学部出身の医学博士、国立がんセンター中央病院
放射線診断部核医学診断の権威で、厚生連がこのセンターをつくる
に当たって、がんセンターから来ていただいたとのことです。
また、宮川副センター長も、千葉大学医学部出身で、同じく国立
がんセンターから、お出でになった医学博士です。
照井先生いわく「PETは万能ではありませんが、いろいろなレ
ベルがあります。このセンターの機材は間違いなく世界標準です。
長野市をはじめ、近隣市町村、ならびに各JAの地域住民の健康を
支える重要な施設として貢献できるよう頑張りたい」と話していら
っしゃいました。
私は、こういう新しい機材は、機材の性能も当然ですが、その映
像を読みとることができる担当者が重要であると思っています。
話は変わりますが、私は8月に長野市民病院で毎年の例ですが、
人間ドックを受診しました。市民病院が100床の増床工事に取り
組んでいることは、皆さんご存じだろうと思いますが、新病棟は先
日完工し、現在は旧病棟の改修、リニューアルに取り組んでいます。
来年にはすべて完成して、長野市医療の重要拠点として活躍してく
れるはずです。
市民病院の人間ドックは本年度から新病棟で装いも新たにスター
トしています。待合ホールや更衣室などが広くなり、また、すべて
の検査が健診センターと隣の内視鏡センターで完結され、昨年まで
のように外来者と顔を合わせることのないよう受診者のアメニティ
ーやプライバシーに配慮してあります。そして、1日10人の定員
を平成19年6月から20人に増やし多くの方に受診していただけ
るようにしました(スタッフの確保や需要の状況を考慮しながら、
将来30人枠としていきたいと考えています)。
私は久しぶり、のんびりと人間ドックを受診し、最後に「オール
A」ですと診断され、大満足で市役所へ戻りました。
以上、最後は市民病院の宣伝になってしまいましたが、十分に満
足いただける環境が出来上がったと私は思っています。一年に一回
は、ぜひ人間ドックで健康状態を確かめられたらいかがでしょうか。
2007年9月27日木曜日
PET/CT検査体験記
2007年9月20日木曜日
長野市暴力追放市民集会
開催されました。
暴力により、市民生活が脅かされることは断じて許されることで
はありません。この暴力追放市民集会は、暴力団による暴力をはじ
めあらゆる暴力を社会から追放するために、区長会を中心とした市
民の皆さんによる草の根運動が、多くの市民や企業の皆さんのご理
解を得て大きな市民運動となり、始められたものです(長野市暴力
追放市民協力会は長野市区長会、長野商工会議所など73団体で構
成され、会長は長野市長、副会長は長野市議会議長、長野商工会議
所会頭、長野市区長会長が就任しています)。
歴史をたどると、集会は昭和62年に第1回が開催され、本年で
21回目を数えます。この間、暴力追放意識の高揚はもちろん、暴
力団事務所の撤去などに、大きな成果を収めています。
しかしながら、平成4年3月に暴力団対策法が施行されてから、
既に15年余りが経過していますが、資金源を求めて活動している
暴力団は、いまだに根絶されず、「不当要求」や「ヤミ金融」、
「振り込め詐欺」、「民事介入暴力」などの方法で資金獲得に暗躍
しており、社会情勢の変化に対応して一層多様化・巧妙化し、市民
生活の中に侵入し、脅威を与えているのが実情です。
また、長崎市では当時の現職市長が選挙期間中(故伊藤一長氏、
彼は全国市長会長にも立候補しており、有力候補と目されていまし
た)に、暴力団員によって銃撃され、亡くなるという信じられない
事件や、愛知県長久手町では拳銃による発砲立てこもり事件で警察
官が殉職するなど、暴力団関係者による凶悪な犯罪が発生し、住民
の不安が高まっている状況があります。
毎日の生活を安心して送れる明るく住みよい長野市を築くために
は、我々行政の努力はもちろんですが、暴力団を「恐れない」、暴
力団に「金を出さない」、暴力団を「利用しない」の「三ない運動」
をみんなで再確認し、実行することが最も大切なことではないかと
思います。この「暴力団追放三ない運動」を当日配られたパンフレ
ットから抜粋し説明しますと
暴力団を恐れない・・・勇気をもって届け出
私たち一人一人が暴力団は社会の敵であることをしっかり認識し、
その存在を認めず、恐れず、暴力団と対決姿勢をもつことが大切で
す。市民にとって暴力団は確かに怖い存在ですが、そうかといって
不必要に恐れる必要はありません。大切なのは、一人一人が暴力団
との強い対決意識を持つとともに、こうした意識を持った地域や職
域の仲間同士が、警察や暴力追放県民センター等と互いに連絡を取
り合い、みんなで一致団結して暴力団に立ち向かっていく勇気を持
つことです。泣き寝入りはやめましょう。
☆いんねんをつけられたり、被害を受けたらすぐ警察へ。
☆暴力団の犯罪を知ったときもすぐ警察へ。
☆組事務所の様子が普段と変わった状態であったらすぐ警察へ。
暴力団に金を出さない・・・利用者は暴力団の仲間
暴力団利用者は、暴力団の不当な力を利用して、自己の目的・欲
望を早期に達成しようとするものであり、その限りにおいては、暴
力団と同視すべき反社会的存在であるということになります。
☆債権取り立てを頼まない。
☆手形割引や融資を頼まない。
☆店の用心棒を頼まない。
☆交通事故の示談を頼まない。
☆トラブルの仲介を頼まない。
暴力団を利用しない・・・資金源を絶つ
俗にヤクザ業界は“一兆円産業”といわれていますが、これらの
収入の多くは、「みかじめ料」や「民事介入暴力」などによって得
たものです。そして、これらがすべて暴力団の活動資金になってい
るのです。
一度出せば、必ずまた出さなくてはならなくなります。暴力団の
「脅し」や「甘い言葉」にのってお金を出さないようにしましょう。
☆用心棒料などを出さない。
☆債権取り立てや示談を頼んで手数料などを出さない。
☆覚せい剤に手を出したり、賭博やノミ行為の客とならない。
☆弱みをつくらない健全な生活を営む。
☆弱みに付け込まれても金を出さない。身動きできなくなる前に警
察に相談する。
☆暴力団から品物等を買わない。
☆暴力団が関与する業者には仕事を出さない。
それとともに、市民・警察・行政の三者の連携を一段と強化して
いくことにより、暴力団の住みにくい環境づくりが実現していくも
のと確信しています。
当日の式典で、長野中央警察署の奥署長があいさつの中で話され
たことですが、長野市内の暴力団組織は、9組織で構成員140人
とのことでした。
式典後、県警本部刑事部組織犯罪対策課の青木暴力団排除対策官
に「最近の暴力団情勢と各種業からの暴力団排除について」と題し
て講演していただき、大会宣言を長野市PTA連合会の松本副会長
が力強く読み上げ、満場の拍手で承認されました。
その後、長野市民会館前で整列し、県警音楽隊を先頭に、市役所
-長野大通り-権堂-中央通り-トイーゴ広場まで街頭パレードを
行い、市民にアピールしました。
2007年9月13日木曜日
三国同盟成る!
9月1日、恒例の川中島古戦場まつりが開催されました。
この祭りは、更北商工会(現・長野市商工会更北支部)が中心に
なって、区長会など地域の方々が皆さんで盛り上げてきていただい
ており、400有余年前の昔、川中島の戦いで犠牲となった幾千の
霊の追悼を込めて毎年9月第一土曜日に開催されています。今年で
14回目になるとのこと、年々盛んになっていると感じています。
今年は特にNHKの大河ドラマ「風林火山」の放送もあって、祭
りの主催者側も運営にいろいろ工夫し、例年より多い約5万人の人
出があったそうです。私としては、「甲斐の国」甲府市から宮島市
長、「越後の国」上越市から木浦市長をお迎えしてのイベントは格
別に盛り上がったと感じています。
午後、オープンニングの後、赤の鎧(よろい)の武田隊、青の鎧
の上杉隊、そして黄色の鎧の村上隊による模擬合戦や太鼓演奏など
が行われて雰囲気が盛り上がったところで、米沢藩古式砲術発砲演
武、さらに吟剣詩舞大演舞会が、八幡原史跡公園の特設ステージで
繰り広げられました。
また、隣接の八幡社境内の首塚の前では、私も出席して川中島の
戦い特別追悼慰霊祭が厳かに執行されました。
その後、私も含めた3人の市長が、特設ステージの上で、武田徹
さんの軽妙な司会によって、それぞれのお国自慢や信玄公、謙信公
に関する話、風林火山にまつわるイベントの話などで盛り上がりま
した。
私からは、400年の時を越えて、往時の戦いでの犠牲者追悼の
意味を込めたこの祭りに、甲斐の殿様(甲府の市長)と越後の殿様
(上越の市長)がそろってこの合戦場に登場されたことは、歴史的
に見ても非常に意義深いことではないか・・・とあいさつしました。
このあと、甲府市、上越市に長野市を加えた3市で、観光分野に
おける3市協定(集客プロモーションパートナー都市協定)を締結
しました。戦国時代ならさしずめ「三国同盟」と言っても良いと思
います(この協定は既に上越市と長野市は締結していたのですが、
「川中島の戦い」を共通のテーマにぜひ3市でということで3市協
定になったものです)。
3人の鼎談(ていだん)と協定調印を終えて、祭りの最後を飾る
花火のスイッチを一緒に押して、花火大会が始まりました。例年よ
り多い約3,500発の花火が、古戦場の夜空を彩りました。この
盛り上がりを一過性のものに終わらせることなく、引き続き3市が
力を合わせて盛り上げていきたいと思いました。
甲府市の宮島市長からお聞きした甲府市の風林火山への取り組み
について、報告しますと、「甲斐の国・風林火山博」は、関連の展
示や各種イベントを通じ、ドラマの世界をより深く知り、体感して
いただくとともに、史実に基づき武田信玄や軍師「山本勘助」につ
いて探求しているとのこと。さらには、山梨県に点在する関連史跡
の紹介や厳選した地場産品などを展示販売する官民協働による博覧
会で、8月31日には、当初目標の20万人を大きく上回る30万
人目の来場者をお迎えすることができたとのことです。
長野市の「体感!川中島の戦い2007」の展示館入場者数の当
初目標は22万人で、8月末に10万人目のお客さんをお迎えした
ばかりですから、30万人という数字を7カ月で達成されたという
のは、うらやましい限りです。でも、ドラマの中で川中島の登場は
まだ先ですから、これからだと思っていますし、八幡原史跡公園を
訪れていただいているお客さんは、数倍おられるようですから、そ
の方々を展示館まで誘導できれば大きな数字が達成できると思って
います。
大勢のお客さんを迎えることができるよう、皆さん頑張りましょ
う。
上越市の木浦市長にお聞きした取り組みは「第82回 謙信公祭」
に、ドラマで謙信役を演じて好評を博しているGackt(ガクト)
さんが、約500人の武者を率い、白馬にまたがり、「いざ出陣じ
ゃ!」と軍を鼓舞すると、沿道に詰め掛けた約8万人のファンが熱
狂したとのことです。Gacktさんの見事な騎乗ぶりは、大変印
象深かったようです。
そして、今年だけでなくNHK大河ドラマが2年後、上杉家の重
臣直江兼続を取り上げることに決まったということで、さらに熱気
が続いていくことを期待すると話していました。
確かに、Gacktさんの謙信役は、テレビでみても迫力、そし
て魅力いっぱいですよね。最初配役を聞いた時には、私なんか全く
知りませんでしたので、意外に感じたことを覚えていますが、いま
やすっかり主役になってしまった・・・そんな気がしています。
この大河ドラマ「風林火山」を契機に、この3国同盟ともいえる
集客プロモーションパートナー都市協定が結ばれましたので、「川
中島の戦い」という「縁」を縦糸に、観光交流事業や首都圏を対象
とした共同誘客事業を展開していきたいと考えています。
2007年9月6日木曜日
長野市の財政指標が悪化?(2)
前回は、長野市の平成18年度決算数値や、「経常収支比率」
「実質公債費比率」という指標から見た財政状況について書かせて
いただきました。今回は合併の影響と新たな財政指標について書か
せていただきます。
市議会での議論の中で、財政状況の悪化は、平成17年1月1日
の4町村との合併が影響したのではないか、という話がありました。
確かにこの合併により、経常的に支出すべき経費や公債費も増加
しましたが、その一方で財政規模も増えたことや、旧長野市の財政
規模に対して、合併した旧町村の規模が小さいことから、合併によ
る影響はそれほど大きくなく、このたびの「経常収支比率」と「実
質公債費比率」の上昇については、合併による影響ではないと思わ
れます。
平成18年度決算を見てみますと、合併前の平成15年度は長野
市を含めた5市町村の普通会計の歳出総額1,397億円に対し、
平成18年度(5市町村での合併後の長野市です)は1,335億
円と大幅に減少しております。また、市債(借金)の残高も、合併
時に長野市は約231億円を引き継ぎましたが、平成15年度と平
成18年度の残高の比較では、約261億円減少しており、おおむ
ね順調に返済は進んでいると考えています。
借金残高を減らすことができた主な要因は、事務事業の多くが長
野市の制度に統一されて経費の増加は見られるものの、スケールメ
リット(規模を大きくすることで得られる効果)を生かした効率的
な行政運営に努めたことや「選択と集中」により事業を厳選してき
たこと、さらには、財政の健全化に向けて、新たな借り入れなどを
一定程度抑制してきたことによるものと考えています。
さらに国の合併支援策がありました。
合併することによって、通常ならば掛からないさまざまな臨時的
経費が必要となります。また、合併したからといって、直ちにすべ
ての面において、スケールメリットが働くものではなく、時間も必
要です。国ではこれらの要因に対して地方交付税で支援しており、
平成17年度から平成19年度までの3年間で60億円ほどの支援
がありました。
地方交付税の総額が大幅に減少する中で、これらの支援を受けら
れるということは、大変ありがたいことです。
もちろん、合併のマイナス面もありました。長野県町村総合事務
組合脱退精算金(これは過去、既に支払った町村職員の退職金の累
積です)約11億円、豊野町土地開発公社の保有土地の地価値下が
り問題、鬼無里の廃棄物処理問題など、引き継ぎしたさまざまな課
題の中で苦慮した問題はありましたが、一応の解決を見ています。
いずれにしろ、個々の市町村にとってプラス・マイナスはあるで
しょうが、日本全体でみれば、合併は市町村行政にとって最大の合
理化であり、隠れ負債などもオープンにすることで、健全化が図ら
れるものだと私は思います。
したがって、私は、合併による財政悪化は極めて軽微であったと
結論付けています。
北海道夕張市の破たんを背景に、国において、各自治体の財政状
態を的確に把握すべく、本年6月に「地方自治体の財政の健全化に
関する法律」が制定されました。
この法律は、自治体の一般会計のみならず、特別会計、企業会計
のほか、関係する公社や一部事務組合など、連結ベースでの財政状
況を各種の指標により把握して、一般会計などを対象とした「実質
赤字比率」だけでなく、自治体の全会計を対象とした「連結実質赤
字比率」、一般会計などが負担する元利償還金やそれに準ずる経費
の比率である「実質公債費比率」、さらには、将来負担すべき実質
的な負債の比率である「将来負担比率」、これら4つの指標によっ
て、自治体の財政状態を表そうというものです。
これらの比率の算出方法や警戒ライン、危険ラインなどの基準は、
まだ発表されておらず、今後、その詳細が示されるということです
が、このうち「将来負担比率」は、単に赤字額や借金の規模だけで
なく、将来の負担能力、返済能力をも加味した比率となる予定との
ことであり、自治体の財政状態がより的確に表され、これまでの私
の不満が解消される指標になることを期待したいと思います。