2007年9月6日木曜日

長野市の財政指標が悪化?(2)


 前回は、長野市の平成18年度決算数値や、「経常収支比率」
「実質公債費比率」という指標から見た財政状況について書かせて
いただきました。今回は合併の影響と新たな財政指標について書か
せていただきます。

 市議会での議論の中で、財政状況の悪化は、平成17年1月1日
の4町村との合併が影響したのではないか、という話がありました。
 確かにこの合併により、経常的に支出すべき経費や公債費も増加
しましたが、その一方で財政規模も増えたことや、旧長野市の財政
規模に対して、合併した旧町村の規模が小さいことから、合併によ
る影響はそれほど大きくなく、このたびの「経常収支比率」と「実
質公債費比率」の上昇については、合併による影響ではないと思わ
れます。

 平成18年度決算を見てみますと、合併前の平成15年度は長野
市を含めた5市町村の普通会計の歳出総額1,397億円に対し、
平成18年度(5市町村での合併後の長野市です)は1,335億
円と大幅に減少しております。また、市債(借金)の残高も、合併
時に長野市は約231億円を引き継ぎましたが、平成15年度と平
成18年度の残高の比較では、約261億円減少しており、おおむ
ね順調に返済は進んでいると考えています。

 借金残高を減らすことができた主な要因は、事務事業の多くが長
野市の制度に統一されて経費の増加は見られるものの、スケールメ
リット(規模を大きくすることで得られる効果)を生かした効率的
な行政運営に努めたことや「選択と集中」により事業を厳選してき
たこと、さらには、財政の健全化に向けて、新たな借り入れなどを
一定程度抑制してきたことによるものと考えています。

 さらに国の合併支援策がありました。
 合併することによって、通常ならば掛からないさまざまな臨時的
経費が必要となります。また、合併したからといって、直ちにすべ
ての面において、スケールメリットが働くものではなく、時間も必
要です。国ではこれらの要因に対して地方交付税で支援しており、
平成17年度から平成19年度までの3年間で60億円ほどの支援
がありました。
 地方交付税の総額が大幅に減少する中で、これらの支援を受けら
れるということは、大変ありがたいことです。

 もちろん、合併のマイナス面もありました。長野県町村総合事務
組合脱退精算金(これは過去、既に支払った町村職員の退職金の累
積です)約11億円、豊野町土地開発公社の保有土地の地価値下が
り問題、鬼無里の廃棄物処理問題など、引き継ぎしたさまざまな課
題の中で苦慮した問題はありましたが、一応の解決を見ています。

 いずれにしろ、個々の市町村にとってプラス・マイナスはあるで
しょうが、日本全体でみれば、合併は市町村行政にとって最大の合
理化であり、隠れ負債などもオープンにすることで、健全化が図ら
れるものだと私は思います。
 したがって、私は、合併による財政悪化は極めて軽微であったと
結論付けています。

 北海道夕張市の破たんを背景に、国において、各自治体の財政状
態を的確に把握すべく、本年6月に「地方自治体の財政の健全化に
関する法律」が制定されました。
 この法律は、自治体の一般会計のみならず、特別会計、企業会計
のほか、関係する公社や一部事務組合など、連結ベースでの財政状
況を各種の指標により把握して、一般会計などを対象とした「実質
赤字比率」だけでなく、自治体の全会計を対象とした「連結実質赤
字比率」、一般会計などが負担する元利償還金やそれに準ずる経費
の比率である「実質公債費比率」、さらには、将来負担すべき実質
的な負債の比率である「将来負担比率」、これら4つの指標によっ
て、自治体の財政状態を表そうというものです。

 これらの比率の算出方法や警戒ライン、危険ラインなどの基準は、
まだ発表されておらず、今後、その詳細が示されるということです
が、このうち「将来負担比率」は、単に赤字額や借金の規模だけで
なく、将来の負担能力、返済能力をも加味した比率となる予定との
ことであり、自治体の財政状態がより的確に表され、これまでの私
の不満が解消される指標になることを期待したいと思います。