2007年9月27日木曜日

PET/CT検査体験記


 皆さん、“PET”をご存じですか?
 先日、初めてPET/CT検査を体験しましたので、今回はその
報告をします。

 PETとはPositron Emission Tomogra
phy(ポジトロン エミッション トモグラフィー)の略で、微
量の放射性物質ポジトロン(陽電子)とブドウ糖から合成した18
F-FDG(フルオロデオキシグルコース)という放射性医薬品を
注射し、その体内分布を特殊なカメラ(PET/CT)で撮影する
新しい画像診断法ということです。JA長野厚生連は、昨年度末、
この最新の医療診断機器をがんの早期発見・早期診断を目的として
導入されました。

 従来のCTやMRは、がん細胞の形・大きさを調べるものですが、
PET検査は「がん」など体の中で活発に活動している細胞を画像
化して表すことができるため、8ミリメートル程度の「がん」でも
発見できる場合があると長野PET・画像診断センター発行のパン
フレットに書いてあります。

 ほかの検査、画像診断により病患を疑う、あるいは病理診断によ
り、転移・再発など、確定診断が得られない場合、威力を発揮する
とのことで、従来の検査よりがんの発見率は高いようです。
 肺がん・乳がん・大腸がん・脳腫瘍(のうしゅよう)などなど
・・・パンフレットには発見できそうな多くのがんの種類が書いて
あります。

 私の父は約45年前、48歳、脳腫瘍で亡くなりましたが、当時
原因が分かって東大病院で手術するまでに数年間、東京と長野の間
を往復し、結局助かりませんでした。脳腫瘍の字を見て、現在なら
多分助かっていた・・・医学の進歩がもう少し早かったら・・・正
直感じました。

 検査の前日は、普段どおり過ごし、翌朝は、水・お茶以外は口に
いれてはいけないと言われていましたので、守りました(検査前、
4~6時間に食事をすると、糖代謝が盛んになり、がん細胞との区
別がつきにくくなり、正確な診断ができないとのことです)。

 9時前に長野PET・画像診断センターへ到着、受付で自己負担
分の検診料金を支払い(パンフレットには、保険が適応される場合
は約3万円、保険適応以外の場合は約9万円とあります)、更衣室
で検査着に着替えてから、看護師から問診を受けました。

 インフォームド・コンセントというのでしょう、看護師から、丁
寧にこの検査の説明、放射性物質の説明などをしていただき、検査
を了解する書類に署名をしました。それから先に説明した薬剤(F
DG)を静脈注射しました。別に痛くもなく、普通の静脈注射でし
た。

 それから60分間、安静室で休みました。この時間、私は少し困
りました。部屋はきれいですし、いすも快適なのですが・・・私は
眠っているときは別として、何もしないでいるのは苦手なものです
から、読みかけの本を持っていったのですが、読書は禁止と言われ
てしまいました。要は検査薬剤が全身を巡るように、安静にするこ
とが必要で、本を読むと頭に血が上って、代謝が強く出てしまい、
がんとの区別がつかなくなる・・・そんなことであろうと思います。

 退屈な60分間が経過して、いよいよ撮影開始。寝台に乗り、C
TやMRでおなじみの円形ドームの筒に全身を滑り込ませ、約20
~30分間、撮影装置は頭の方へ前進したり、足の方へ後退したり
・・・いろいろ動いていました。不覚にも私は眠ってしまい、その
間に体を動かしてしまったのではないかと心配でした(前にCTか
MRを撮ったとき、動いてしまうと正確に分からないと医師に言わ
れたことが、気になっていました)。でも担当の方から、少しぐら
い動いても問題ありませんと言われ、安心しました。
 あっけなく撮影が終わり、寝台から解放され、更衣室で検査着を
着替えて、一休み。これで検査は終了です。

 その後あらためて、撮影した検査画像を見ながら、説明を受けま
した。全身を縦(頭の方から撮った映像)、横(体を横から撮った
映像)前(体を前から撮った映像)の三つに分けて撮影した映像、
そして、その映像をそれぞれ3ミリメートルの厚さに輪切りにした
状況が次から次へ映し出され、医師からいろいろ説明していただき
ました。
 PET/CTの画像は、PETの画像とCTの画像を簡単に融合
させて表示できるので、悪い部分があると、そこへFDGが異常集
積(色が変わる)しているので、分かるとのことです。
 幸いなことに私はどこにも異常集積がなく、すなわち、がんはな
いとのご宣託を頂いたものと思っています(「検査結果のご報告」
という文書を別に送付いただきました。良性の腫や、変性性変化
(要は加齢ということでしょうね)は認められるものの、異常では
なく、治療の必要はないとのことでした)。

 ただびっくりしたのは、医師から「腰と右肩が痛くないですか?」
と言われたことです。腰はもう何十年も痛いし、肩は50歳ころの
四十肩以来、痛むことは事実ですが、我慢できないことはないので、
時々指圧に通っているぐらいで過ぎてきているのですが、これは変
性性変化だそうで、そこを指摘されてしまいました。がんだけでは
なく、調子の悪いところまで発見されてしまうようで、すごい機械
が出来たものと感心しました。

 なお、PETには弱点もあるとのことでした。
 一つは、病巣が発見しにくい場所、すなわち検査薬FDGが集ま
りやすい場所があるのだそうです。ブドウ糖を大量に消費する脳や
心臓、FDGの体外への排出ルートになっている腎臓やぼうこう、
そのほか胃などで、FDGがたくさん集積するこれらの場所は、P
ET画像では色濃く映し出され、その周辺にがんがあったとしても
見つけ出すことが難しいのだそうです。
 二つには、がんの種類によっては発見しにくいものがあるとのこ
とです。
 FDGの集まり具合をがん発見の基準としているため、FDGが
集積しにくいがんを見つけるのは苦手だそうです。

 いずれにしろ、PET/CT検査は従来の画像診断に比べて、画
期的な検査法ではありますが、この検査で見つからないがんもあり、
またFDGの集積があっても必ずしも悪性腫瘍ではない場合もある
とのことで、要は万能ではないということでしょう。

 なお、長野PET・画像診断センターのセンター長の照井頌二先
生は、東北大学医学部出身の医学博士、国立がんセンター中央病院
放射線診断部核医学診断の権威で、厚生連がこのセンターをつくる
に当たって、がんセンターから来ていただいたとのことです。
 また、宮川副センター長も、千葉大学医学部出身で、同じく国立
がんセンターから、お出でになった医学博士です。
 照井先生いわく「PETは万能ではありませんが、いろいろなレ
ベルがあります。このセンターの機材は間違いなく世界標準です。
長野市をはじめ、近隣市町村、ならびに各JAの地域住民の健康を
支える重要な施設として貢献できるよう頑張りたい」と話していら
っしゃいました。

 私は、こういう新しい機材は、機材の性能も当然ですが、その映
像を読みとることができる担当者が重要であると思っています。

 話は変わりますが、私は8月に長野市民病院で毎年の例ですが、
人間ドックを受診しました。市民病院が100床の増床工事に取り
組んでいることは、皆さんご存じだろうと思いますが、新病棟は先
日完工し、現在は旧病棟の改修、リニューアルに取り組んでいます。
来年にはすべて完成して、長野市医療の重要拠点として活躍してく
れるはずです。

 市民病院の人間ドックは本年度から新病棟で装いも新たにスター
トしています。待合ホールや更衣室などが広くなり、また、すべて
の検査が健診センターと隣の内視鏡センターで完結され、昨年まで
のように外来者と顔を合わせることのないよう受診者のアメニティ
ーやプライバシーに配慮してあります。そして、1日10人の定員
を平成19年6月から20人に増やし多くの方に受診していただけ
るようにしました(スタッフの確保や需要の状況を考慮しながら、
将来30人枠としていきたいと考えています)。

 私は久しぶり、のんびりと人間ドックを受診し、最後に「オール
A」ですと診断され、大満足で市役所へ戻りました。
 以上、最後は市民病院の宣伝になってしまいましたが、十分に満
足いただける環境が出来上がったと私は思っています。一年に一回
は、ぜひ人間ドックで健康状態を確かめられたらいかがでしょうか。