2007年12月27日木曜日

今年の最終メルマガです


 12月になると、各メディアが今年の10大ニュースの記事を特
集することが恒例になっています。長野市も少し前までは「今年の
長野市10大ニュース」を市報に載せていましたが、最近は「長野
市この一年」と題して、一年間の市内での主な出来事を掲載するこ
ととしています。たくさんの出来事がある中で、行政としては軽重
を決めることは、難しいし、失礼になるといったことが理由です。

 確かに最近は時の流れが速いせいか、ニュースの数が一年の間に
凝縮しているような感じであまりにも多く、今振り返っても、春や
夏ごろのことなどよく考えないと思い出せないことがあるほどです。
でもやっぱり今年最後のメルマガとなると、いろいろあった今年の
出来事を振り返ってみるべきであろうと考え、思い付くままに、書
き出してみました。

 風林火山、戸隠イヤー、市制施行110周年、善光寺本堂再建
300年、長野新幹線開通10周年、長野市農業公社の設立、ナシ
ョナルトレーニングセンター(NTC)の指定、NTTコールセン
ター誘致、第四次長野市総合計画スタート、浅川ダムを含む浅川治
水計画の認可、城山分室に長野市公文書館開館、ふるさとNAGA
NO応援団発足、県議会議員選挙、市議会議員選挙・・・

 もうとっくに10項目を越していますよね。日記を開いてみれば、
まだまだありそうですが、長野市にとってはもちろん、市長・鷲澤
にとってもということかもしれませんが、いずれも大きな出来事で
した。
 この中では、公文書館のことはあまり皆さんにお知らせしていな
かったように思います。これも歴史的にみれば、大きな出来事です。
長野市誌編さんの過程で集められた多くの資料をもとに歴史的な記
録資料として保存・利用する全国で51番目の公文書館が開館した
ものです。

 また、葛巻町・小岩井農場・網走・札幌手稲の視察訪問、長野青
年会議所のアスパック誘致のための台湾訪問、長野オリンピック記
念長野マラソンとアテネクラシックマラソンとの姉妹提携10周年
を記念してのアテネ訪問・・・公務として行くだけでなく、自ら行
きたかった、勉強したかったこともありました。

 長野県市長会会長就任、そしてそれ故に来年から始まる長野県後
期高齢者医療広域連合の初代広域連合長に就任しました。これも結
構忙しい、そして責任が大きいことを痛感しています。

 昨シーズンは一昨年に比べて雪が少なくて、道路の除雪予算は節
約できましたが、個人的にはスキーを十分には楽しめなかった。夏
は暑くて、地球温暖化防止対策が地方自治体にとっても、大きなテ
ーマとなってきた。これも大きなニュースといってよいでしょう。

 サッカーのAC長野パルセイロが北信越リーグで優勝を逃したこ
と、野球の信濃グランセローズが3位で北信越BCリーグの1年目
の戦いを終えたこと、長野県縦断駅伝競走で長野は常勝を目指して
いたのに全佐久に負けたこと、長野高校があと一歩で甲子園に手が
届きそうだったことなど、あとちょっとで・・・という残念なこと
もありましたが、北信越BCリーグが開幕し、地方でもプロスポー
ツチームが成り立つ可能性を信濃グランセローズが示したこと、県
高校駅伝では長野東高校の女子チームが優勝し、都大路では堂々と
した走りで健闘したこと、長野日大の野球部が秋季北信越大会で優
勝したことなど・・・スポーツの話題にもあふれていました。

 今年は葬式に参列した回数も随分多かったように思います。私の
母の死は高齢ですから仕方ないとあきらめていますが、ずっと年齢
の若い方、特に私にとって同世代の仲間が多く亡くなったような気
がします。寂しい限りですし、私だけ元気で跳んで歩いていること
が何か申し訳ないような気分になりました。

 作詞家「阿久悠」さんの死もショックでした。お会いしたことは
ありませんが、彼の文章の素晴らしさ、そして歌詞の素晴らしさ・
・・昭和13年生まれで私より若干の先輩ですが、素晴らしい歌を
たくさん残してくれましたし、文章もいつも納得する素晴らしいも
のでした。「時代おくれ」は私のカラオケナンバーの筆頭でしたし、
阿久悠ナンバーはいくつも歌えます。
 先日新聞の広告欄で、阿久悠さんの「清らかな厭世(えんせい)」
という本が出版されたことを知り、購入し、一気に読了しました。
死の寸前まで書いておられたようで、素晴らしい文章家を失ってし
まったとの思いを新たにしました。

 国の動きは国際関係の複雑化、国会のねじれ現象などの故か、い
ろいろ問題があるように感じます。年末恒例になっている、京都の
清水寺の貫主が揮毫(きごう)される世相を表す漢字一文字、今年
は「偽」でした。大方納得したものですが、それをもじって日本経
済新聞には、今年の企業経営は「偽・誤・蝕」という側面が浮かぶ
が、音読みすると三国志の「魏・呉・蜀」のようであるがずいぶん
と意味合いが違うという内容の記事がありました。うまい言い回し
を発想するものだと感心しました。
 長野市のことで言えば、もちろん課題山積みではありますが、一
歩一歩確実に前進していると思っています。

 以上、思い付くままに書いてきましたが、まだまだありそうです。
また、書いてきたことを一つ一つ詳しく説明していれば、切りがな
い感じですので、この辺で終わりにさせていただきます。

 一年間、メルマガにお付き合いいただいたこと、感謝しています。
明日は市役所の仕事納め、その後の年末年始の休みが楽しみです。
皆さんも、英気を養って、新しい年を張り切って迎えていただきた
いと願っています。
 私も残る任期2年足らず、全力疾走で市政運営に取り組みます。

※次回のメールマガジンは、平成20年1月4日金曜日に配信予定
です。

2007年12月20日木曜日

戸隠スキー場がオープンしました


 12月15日(土)待ちに待った戸隠スキー場が、今シーズンの
オープンを迎えました。冬になって、周辺のスキー場がオープンし
てにぎわっているニュースを聞くと、長野市のスキー場も早くオー
プンしてほしいと待ちわびていたわけですが、ようやく待望の日が
やってきました。

 ただ残念なことに、この日はまだ積雪量が十分でなく、動いてい
たリフトは一基だけ、ゲレンデも正面バーンの一部だけでしたが、
初滑りを楽しもうという大勢のお客さんに来ていただき、リフトは
長蛇の列、大混雑で(こんなことは最近あまり無いことです)・・・
うれしいオープンになりました。

 ゲレンデで戸隠神社の宮司さんによる「安全祈願祭」が行われ、
シーズンの安全を祈願した後、長野市主催でスキー場開きを行いま
した。お客さまとしては長野市議会、環境省戸隠自然保護官事務所、
林野庁北信森林管理署戸隠森林事務所などの代表者が参列してくだ
さいました。

 その後、子どもたちの松明(たいまつ)行列、デモンストレータ
ーによる模範滑走、そして戸隠太鼓の演奏が行われました。抽選会
では、私がくじを引いたり、プレゼンターを務めました。たくさん
の方に景品をお渡ししましたが、最高賞の新型のカービングスキー
は東京からのお客さん、スノーボードは千葉からのお客さんと、遠
くから来ていただいたお客さんに当たりました。また来場してくだ
さればありがたいですね。

 戸隠スキー場は、昭和38年の開設以来、大勢のスキーヤー・ス
ノーボーダーにご利用いただき、地域の雇用創出と観光振興に大い
に寄与してきたものです。首都圏をはじめ関西方面からの来場者も
多く、戸隠村時代、そして長野市になってからも、観光戦略プラン
の中でも、重要な位置付けになっているところです。

 昨シーズンは近年まれにみる雪不足のため、県内のスキー場は営
業期間を短縮するなど、その影響は甚大で、戸隠でもオープン初日
から全面滑走とはなりませんでした。しかし人工降雪機をフル稼働
し、また地元の皆さんの応援によりゲレンデへの雪出し作業を行っ
たこともあって、シーズン中の利用者は、前年度を上回る素晴らし
い結果となりました。まさに地域の皆さんの努力の結果でした。

 しかしながら、昨今のスキー産業は、スキー人口が大きく減少す
る一方、施設の供給過剰もあって、一段と厳しさを増しています。
長野市の飯綱高原スキー場と聖山パノラマスキー場の二施設は、指
定管理者制度による管理運営になり、存続をかけて努力しています。
戸隠スキー場についても、持続的な運営を図るため、現在、庁内で
「観光施設等民間活力導入プロジェクト」を立ち上げ、スキー場を
中心に、牧場、キャンプ場といったグリーンシーズンを含めた総合
的な活性化策を研究しているところです。

 戸隠の魅力はスキーだけではなく、グリーンシーズンの素晴らし
さ、神秘的な雰囲気をかもし出す戸隠神社、全国的に有名な戸隠そ
ば、辛い戸隠大根・・・売り出したいモノはたくさんあるのです。
思い出しましたが、戸隠山の蟻(あり)の塔渡り、八方睨(にらみ)
なども、学生時代に登山として楽しんだ記憶がありますし、冬、ス
キー場の頂上から見る戸隠山の景色は息をのむほど素晴らしい。

 今シーズンは、戸隠スキー場開設45周年の節目の年で、戸隠イ
ヤーにも当たりますので、シーズンを通じ宣伝・PRを図り、また、
パンフレットにもある「楽しい、美味しい、美しい」の言葉どおり、
魔法の粉雪、美味(おい)しい食事、そして素晴らしい眺望と、三
拍子そろったスキー場を全面に押し出し、来場者の増加を図ってい
こうと考えています。

 オープンの日の翌日、前日滑れなかったことが残念で、日曜日な
のだからぜひ滑りに行きたいと思っていましたが、朝起きたらひど
い雪降り・・・これでは駄目だとあきらめていましたら、10時ご
ろ雪がやんで日が出てきました。
 急きょスキー仲間に電話、ぜひ行こうと伝えました。その人も少
し前に戸隠スキー場に電話してみたら、昼からもう一つのリフトを
動かす予定とのことなので、勇躍出発しました。
 当日でも、思い立ってすぐ行ける近さにスキー場があるのはあり
がたいですね。

 午後1時前は、昨日と同じリフト一本でしたので、混んでいまし
た。そこで何本か滑って、食事をして待っていましたら、高速クワ
ッドリフトが動き出しました。
 あわてて食事を終えて、滑りに行きました。うれしかった。でも
“メノウ”のコースはまだ滑ることができませんでした(ここ数日
の降雪で、18日から“メノウ”のコースも滑走可能となりました
)。何本か長いコースを楽しく滑って・・・この次に来るときはも
っと良いコンディションで滑れるだろうと期待を込めて、この日の
スキーを終了しました。

 皆さん、スキーは楽しいですよ。特に中高年の方々にお勧めです。
前にも書きましたが、カービングスキーによって、現在のスキーは
革命が起きているのです。すごく楽なのです。昔スキーをやった方
で、スキー場が混んでいてリフトで待たされることが多くてやめて
しまった方、大人になって仕事が忙しくてやめた方、スキーでけが
してそれ以後やめた方・・・いろいろな理由でやめた方がいるので
しょうが(私の場合は社会に出たころから、ゴルフが面白くなって
しまい、スキーからは知らず知らず遠のいていました)、レンタル
スキーでよいですから一度カービングスキーを使って、滑ってみま
しょう。私と同じように、はまりますよ。道具さえあれば、それほ
どお金が掛かる遊びではありません。ひとシーズン安く遊べるし、
健康にも良い、友人もできる・・・素晴らしいスポーツです。

 今週22日の土曜日には、飯綱高原スキー場と大岡の聖山パノラ
マスキー場もオープンを予定しています。それぞれのスキー場が工
夫を凝らし、各種イベントを企画していますので、皆さんぜひお出
掛けください。

2007年12月13日木曜日

中小企業の経営に携わった者として(2)


 前回は、中小企業の経営に携わった者の立場で不合理と思われる
ことについて書きましたが、今回は企業経営全般について、感じて
いることを書かせていただきます(番号は前回の続きです)。

(5)前にも書いたかもしれませんが、土地の減価償却を認めるべ
 きではないかということです。これは中小企業のことに限りませ
 んが、例えばバブルの時、高い土地を買ってしまった。それは経
 営者の見通しが悪かったのですから、仕方がないのですが、土地
 が極端に下がってしまった場合、企業が土地の評価を下げること
 が必要だと思います。しかし税法では土地の評価損を認めていま
 せんので、売って損を出すより仕方ないようです。
  でも必要な土地を売るわけにはいきませんし、買い戻すために
 は、新たな失費(登録免許税など)が発生することになり不合理
 です。不動産鑑定士の評価で、買った価格より下がっていたら、
 その下がった分は損として損金計上を認めるべきです。
  その代わり、上がっていたらその分に課税する必要はあるので
 しょうが(旧日本電信電話公社の発行した電話加入権の債券も償
 却を認めていたら、大きな問題にならずに済んだはずです)。
  いずれにしろ土地でもうけようというのは、問題があるとも思
 っているのですが・・・。

(6)次に、不良債権の問題。不良債権の問題が顕著化した時、国
 はこれを早期に解決するため「金融再生プログラム」を策定し、
 銀行を監督する金融庁から銀行に対し、不良債権の基準を厳格に
 して不良債権比率の改善を強く求めましたが、このことが結果と
 して、中小企業、特に名門といわれる小さな企業の破たんにつな
 がっています。バブル崩壊前は、銀行は、土地などの担保となる
 資産がしっかりとあれば、借り入れたお金をすぐ返せとは言わな
 かったのです。金利さえ払えば、元金まで返せとは言われなかっ
 たはずです。

  しかし、資産がデフレで減少する中で、期限までに元金を返せ
 ない場合は、不良債権と見なす、土地を売ってでも返さなくては
 ならない、いわゆる貸しはがしという現象が起きてしまったので
 す。

  銀行の立場からいえば無理もないことでしょう、不良債権処理
 により自己資本が減ると、例えば国際決済銀行として認められな
 くなるとか、さらに自己資本が無くなってしまうと信用を失い、
 銀行の倒産にもつながるわけで、現に幾つかの銀行は破たんしま
 した(一般の企業でも同じですが・・・)。

  企業は、結果として資金を銀行から借り入れしても、安心して
 経営に専念できない、返済期限までに何とかしなければならなく
 なり、手元の現金でやりくりするか、市場から株式やファンドと
 いう形で調達せざるを得なくなったのです。(これも安心して借
 りていられるわけではないのは当たり前です)。

  株式を発行して得た資金は、金利を払う必要はありませんし、
 返済の義務はないのですが(永久債といってよいでしょう)、配
 当を出す必要があります。配当は利益から税金を納めた残りから
 払うものですから、金利よりはるかにコストがかかりますし、経
 営に参加権のある株主の言い分や要求を聞かなくてはなりません
 から、金利分だけでは文句が出るわけで、無理をして配当を増や
 すこともありそうですし、赤字なら取締役の入れ替えも求められ
 ます。

  銀行からの借り入れで資金を得た場合には、銀行の意見を聞か
 なくてはなりませんが、銀行は企業の継続が大切ですから、一部
 の一般株主のようなむちゃは言いませんし(私はそれを信じてい
 ます、でもグローバル・スタンダードのルールの下では怪しくな
 っているようですが)、企業にとっては、はるかに資金コストは
 低くなるはずです。不良債権基準が厳格化されたことが、企業社
 会、地域社会を変えた一番大きな要因だったと思っています。

(7)ルールの問題とは違いますが、政府の経済政策について、企
 業の法人税の引き下げが議論されています(政府税制調査会の答
 申では当面見送るとされました)。理由はグローバル競争の中で、
 企業の競争力を強めるためだそうですが、ちょっと順序が違うの
 ではないか・・・と感じています。
  現在、大企業は好調で、利益が上がっている、法人税の減税の
 恩恵を受けるのでしょうが、中小企業は利益が上がっていない、
 つまり所得税の減税をしても、その恩恵をほとんど受けられない
 と言ってもよいのではないでしょうか。

  今、日本の喫緊の課題は財政の再建、すなわち国債の発行額、
 発行残高を減らすことではないか、そして次は格差是正(大企業
 と中小企業、大都市と地方、格差はいろいろあります)ではない
 かと思います。
  減税する余地があるなら、減税しないで財政再建を、あるいは
 格差是正を優先すべきと思うのですが、どうでしょうか。大企業
 の競争力は、現段階で十分強い、故に利益を上げているわけです
 から、順番としては、減税より財政再建、格差是正です。

(8)税金は国にとって、もちろん地方自治体にとっても、一番大
 切な財源ですから、納めることは当然ですし、国民として納税す
 ることは義務です。ただどこにどのような税金を求めるか、その
 ルールが難しい、極めて政治的な判断が絡んでくる問題です。そ
 して公平・公正でなければ誰も納得しないでしょう。
  各団体、業界は、自分たちが発展していくために、国に対して
 いろいろ働き掛けをしており、結果として、国はその内容も考慮
 し、公平・公正の視点を参酌して、現在の税制と補助制度ができ
 ており、国家が運営されているのです。

  中小企業はその折衝力、政治力が弱いと昔から感じています。
 ひところ中小企業大臣をつくるべきだという運動がありましたが、
 実現しませんでした。中小企業にとって不合理と思われる税制が
 長いこと存在してきたと感じています。そして、税制と補助金は
 密接な関係があります。社会全体としては、公平に税金を徴収し、
 政策的に必要とする分野に対して、補助金などを交付しているわ
 けです。中小企業は、商工会議所などへの団体補助は別として、
 個々の企業は直接補助金を受けていないことを自らの誇りとして
 きたのです。しかし、中小企業の現状を考えると、国はもっと個
 々の企業の実態を見て、政策を考えるべきではないでしょうか。
 また中小企業はもっと社会に対し、きちんと主張すべきことは主
 張すべきではないか・・・会社経営を離れて6年、中小企業の現
 状を第三者的に見れるようになって、私はそんな気分でいます。

 以上、二週にわたって、中小企業の経営に携わった者として不合
理と感じていた事柄について、思いつくままに書いてみました。既
に見直されているものもありますが、長い間、胸の中にあったもの
を吐露させていただいたということで、お許しください。

2007年12月6日木曜日

中小企業の経営に携わった者として(1)


 私が40年間中小企業の経営に携わり、その後市長になったこと
は、前にメルマガで書かせていただきました。市長就任以来約6年
たって、社長時代のことは忘れかけていることも多いのですが、当
時、企業社会に対する税制度など、このルールは不合理だと主張し
ていたことが幾つかありました。
 前からこのことをぜひメルマガで書きたいと思っていましたが、
いざ書く段階で改めて、現在のルールを調べてみたら、随分変わっ
ていました。6年前、私が社長時代不満に思っていたことは、だい
ぶ改善されてきているなと感じました。

 現在、大企業は好調なところが多いようですが、中小企業はまだ
まだ不況で苦しんでいます。これではいけないと感じたのでしょう
か、あるいは国も中小企業に対する見方を考えたのでしょうか、税
制度はかなり変更されていました。うれしいことです。でも少し遅
すぎたようには感じていますが・・・。

 日本経済の強さの要因は、いろいろあるでしょうが、私は、中小
企業がたくさん存在することによって、経済が支えられていること
にあると信じています。特に長野市のように、地域を引っ張ってい
く大企業(リーディングカンパニー)があまり存在していない地方
都市では、中小企業の存在こそが、地域の雇用や税収を確保し、地
域社会をけん引していく、まさに地域の核心であるといつも感じて
います。その中小企業が元気に永続性のある組織として成長・発展
をしていくためには、どうしたらよいか・・・難問ではありますが、
いずれにしても、中小企業にとって不合理と感じる政策が徐々に改
善してきており、この流れをさらに強めていきたいものです。
 今回は、私が社長時代、何に不満を感じ、そして、それが現在ど
う変わったのか、書いてみることにしました。

(1)同族会社の留保金課税。これは今年度から中小企業が適用対
 象から除かれたようです。そもそもこの税金は不合理であり、も
 っと早く改善するべきだったと感じています。ご存じない方もい
 らっしゃると思いますが、会社が利益を上げた場合、まず法人関
 係税を納め、残った利益から配当や役員賞与などを支払い、そし
 て将来のために、あるいは会社の成長のために社内に留保・積み
 立て(留保金)することは当たり前のことです。しかし、私が社
 長時代はその留保金に対して10~20%を課税するということ
 が行われてきました。税金が高かったのです。私は過去何十年間
 もこれを納めてきました。すべての企業に同じなら仕方ないです
 が、この税は非同族会社には適用されませんでした。大部分の中
 小企業は同族会社ですから、中小企業にとって極めて厳しい税制
 度でした。

(2)次は、事業用資産に対する相続税の重さです。事業用資産は、
 会社の将来を思って一生懸命に貯めた内部留保、古い取得原価の
 安い土地を所有しているが故の含み益などありますが、そういう
 ものも含めた自分の会社の株式評価が不合理なのです。少なくと
 も企業の内部留保は所得税を納めた残りですから、相続の際に、
 また課税されるのは、不合理です。

  結果として、一株当たりの評価額は、通常の上場会社の株式に
 比べて大変割高になる例が多いのです。今回これも手直しされる
 ようで、先ごろの新聞報道によると、政府が来年の通常国会に提
 出する予定の「中小企業事業円滑継続法案」では、中小企業の自
 社株の相続に限り、民法で定める遺留分の特例を認めた上で、贈
 与株式の評価額を贈与時に固定できる制度や、オーナー経営者の
 生前に自社株の継承で他の相続人と合意して、家庭裁判所の認可
 を受ければ、基礎財産から生前贈与された自社株を除外できるよ
 うになるとのことです。
  当時は、相続対策に相当神経を使わなくてはなりませんでした。
 しかも自己株式(家業)ですから売るわけにもいかない、また売
 れないと思うのです。結局、物納もできず年賦払いにしてもらっ
 て、相続税を何年もかけて納めていく・・・これも極めて酷な税
 金であると思っていました。私は父を早く亡くし、何の準備もな
 かったため、株式に関する相続税の納税に10年間、大変苦労し
 ました。

(3)寄付金税制。これも不合理と思える税制度です。企業の寄付
 金は、原則損金算入はできない利益金処分ということになってい
 ますが、一定額は会社の経費として認められています。その限度
 額は確か資本と所得の金額で決められているはずですが、私の社
 長時代、私の会社で年間10万円ぐらいだったと思います。
  ですから資本金が大きい大企業にはある程度の枠があるのです
 が、中小企業にとっては、極めて小額となるわけで、寄付を頼ま
 れた場合、基本的には税金を納めた残りの中から出すことになり
 ます。
  何千万円、何億円といった大きな寄付金は大企業でしかできそ
 うにもありません。地域社会での寄付金はそんなに大きくはあり
 ませんが、お祭りへの寄付、PTAへの寄付、どこかのお祝い事
 (ご祝儀も基本的には寄付と同じです)、今ならNPOへの寄付
 もあります。せいぜい数万円から多くて何十万円の単位でしょう
 が、これを会社の経費に認めないということは理解に苦しみまし
 た。
  商工会議所の副会頭時代、いろいろなイベントなどの事業資金
 のため、寄付金集めに奔走しましたが、大変苦労しました。世の
 中、というより地域企業は地域社会とのお付き合いが大切であり、
 それはまた企業のためでもあり、地域活性化にもなると思うので
 す。
  例えばNAOC(長野オリンピック冬季競技大会組織委員会)
 への寄付は、当時、大蔵省の特別許可があったから、制限なしだ
 ったことを思うと、地域で生きる中小企業の経営者にとっては不
 満があります。

(4)同族会社の行為計算の否認。これも不合理な制度と思われる
 ものです。すなわち同族会社が行う行為について、ものによって
 会社の経費とは認めないということでしょう。(3)と同じこと
 かもしれません。会社の役員の賞与を経費に認めないというのも、
 このたぐいのことかもしれません。最近は一定の金額は認められ
 るようになり、逐次金額も増えているようです。行為計算の否認
 というのは、企業が決算を組んで税務署に申告したとき、その申
 告に対し、認めないということです。

 以上、会社経営に携わっていた時に感じていたことを、書かせて
いただきました。基本的には、国の税制度は、まず税金をとること
を優先し、それが中小企業の自由な企業経営を制約しているのでは
ないか、当時はそんな思いがありました。
 長くなりましたので、今回はこの辺にして次回、もう少し違う視
点で書いてみたいと思います。