2002年9月26日木曜日

田中知事にお会いしました


 9月20日、田中知事が長野市役所に来庁されました。すでに新
聞等でご存知の方もいらっしゃると思いますが、用件は浅川ダムに
関することでした。

 当初は選挙期間中にお話のあった「お出かけ知事室」としてお越
しになるのかなと考え、全庁的に何をお話しすべきかということの
検討をしていたのですが、その後、お出かけ知事室ではなく、浅川
ダムの件でお越しになるということが分かりましたので、長野市と
しては、9月市議会定例会での討論やメールマガジンで明らかにし
ていることをきちんと整理し、申し上げるべきことを事前に準備い
たしました。

 当日は、知事や同行者の外にも、メディアの皆さんがカメラも含
め大勢お見えになりましたので市長室は満員、おそらくこんなに人
が入ったのは初めてだと思います。

 田中知事が言われたことは、

 1.浅川ダムを止めることについて了解して欲しい。
 2.浅川の治水について、議会に示した枠組みのお話があり、ダ
   ム無しの代替案を作成するので協力して欲しい。

 という二点が中心でした。

 私からは、選挙期間中に知事が今後市町村と十分話し合っていく
ということを言っておられましたので、あえてそのことを確認させ
ていただいた後、選挙期間中に個人的な批判をしたつもりはないが、
もし誤解して受け止められているようなら申し訳ないとお詫びした
上で、ダムに関しては、次のようにお答えいたしました。

1.ダムを止めるということについては、事業主体の県がおっしゃ
  ることですから、長野市としては賛成とか反対とかのコメント
  は控えさせていただく。なぜなら、私は治水にこだわっている
  わけで、その手段であるダムにこだわっているわけではないか
  らです。

2.県では推進本部をおつくりになって治水の代替案を検討してお
  られるそうですので、長野市としては代替案が示された後に、
  検証して対処させていただく。

 ということです。そして、長野市としては今後の課題として二つ
に分けて考えているので、対応をお願いしたいと申し上げました。
その二点とは、

1.ダムを造るにあたっては長野県と長野市、それと地元の対策委
  員会等と結んだ確認書、契約書等がいくつもある。これらは治
  水問題とは関係なく、ダムを止めるとすれば、一括解決しなく
  ては行政の信頼は失われる。県がダムを止める以上、まずこの
  問題に主体的に取り組み、至急解決して欲しい。もちろん長野
  市も契約の一方の当事者でもあるのでお手伝いはする。

2.もう一点は浅川の治水問題で、これについても新幹線にからむ
  県、市、鉄建公団と地元との確認書が存在するし、契約書はな
  いまでも、何十年かの間、地元住民の皆さんと積み重ねてきた
  約束が沢山ある。これらについては、県が作成する代替案が示
  されてからでないと対処出来ないので、なるべく早く示して欲
  しい。その後、長野市からの提案として、国、県、関係市町村、
  地元団体等と協議会を作って話し合ったらどうか、という意味
  のことを申し上げました。

 知事からは「ダム無しの代替案作りを長野市も一緒にやって欲し
い。」というお話がありましたが、私から「県知事の脱ダム宣言以
来、河川の安全度を切り下げないで、ダムによらない代替案を長野
市なりに検討してきた。しかし、財政的な問題も含め、流域の状況
を考えると実務的には困難であるという報告を受けている。一緒に
と言われても、長野市としてこれまで検討してきた以上の治水対策
の提案をすることは困難と考えられ、かえってご迷惑になる可能性
もある。ご相談があれば、もちろん最大限の協力はさせていただく
が、基本的には代替案は県の責任で作成していただきたい。なお、
あえて“一緒に”というご要請であれば、庁内で検討します。」と
お答えいたしました。消極的と取られたかも知れませんが、現実的
な問題としては仕方ない対応と考えています。

 会談の中で知事は、県の土木部では「ダム無し」での治水は可能
であり、その可能性を実現する立場に立っており・・・・・・とお
っしゃっているわけですから、その理由、根拠、データ等を是非と
も具体的にお聞きしたい、それを基に長野市としても検討していき
たいと考えています。

 私から提案した協議会の設置については、平成9年に改正された
河川法のもとで河川整備計画を変更する場合には、流域市町村の意
見を聞くことが義務付けられていますし、国の認可も得なくてはな
らない。そうであるならば、皆が一堂に会して話す方がスムーズに
いくのではないかと、県の立場を考えた上での提案だったのです。
しかし、会談後に行われた県庁での記者会見の席上、知事は否定的
な見解を示されたようです。

 私とすれば、県から代替案が提案されて意見を求められた場合、
市民の意見はもちろんですが、国や流域市町村の意見を聞かなけれ
ば、長野市として勝手な答えは出せないと思いますので、一堂に会
して協議する方が早いと考えた上での提案だったのですが、ご理解
いただけなく残念です。

 以上が田中知事との会見の内容ですが、長野市長とすれば、知事
の脱ダム宣言を受けて以来(私個人は途中からですが)いろいろな
問題を庁内組織で検討してきた結果を誠実にお話ししたもので、こ
れで良かったと考えています。

 ちょっと意外だったのは、浅川の治水対策は「最初にダムありき」
ではなく、昭和40年代に長野県が行った沿川住民への提案は河川
改修案であった。しかし、それではどうしても河川の幅が広くなり
すぎるということで、地元の理解が得られず、結果としてダム案が
浮上したという事実をお知りになっていなかったように感じたこと
です。

 なお、この問題については、私が治水の安全度の切り下げは絶対
に困る、ということを申し上げている根拠を最後に付け加えさせて
いただきます。

 具体的な例をあげるとするならば、裾花川(浅川ではありません)
は過去に何度も氾濫し、長野駅周辺から犀川の周辺まで水浸しにな
った記録が幾つも残っています。その裾花川に2つのダムができた
のは昭和40年代から50年代にかけてのことでした。それ以来、
浸水被害が出たことは私の記憶にはありません。以後、裾花ダムは
私達長野市民の水瓶としても毎日お世話になっていることは皆さん
ご承知の通りです。

 平成7年7月に梅雨前線の影響で大雨が降って、裾花川の堤防が
溢れる寸前になったことは、まだ記憶に新しいと思います。でも、
裾花川には2つのダムがあったからこそ、ぎりぎりのところで溢水
せず助かったことは事実であり、そのダムは国の従来の安全度の基
準に基づいて造られていたのです(浅川ダムの計画も同じです)。

 もし裾花川が国の安全度の基準を下げて造られていたら、どうな
っていたのだろうか。結果論ですので、「もし」という話は意味が
ないかも知れませんが、私は大変な事態になっていたと思います。
ましてや、最近は世界的な異常気象と言われており、いつどんな雨
が降るか誰も予測がつかないのではないでしょうか。せめて国が決
め、全国で実施してきた安全率は最小限守る、それは行政として当
たり前のことだと思っています。
 「ダム無しで安全が守れる代替案」を是非作りたい、それが現在
の心境です。