過去2週にわたって、松代を舞台に行われた“真田まつり”や
“真田サミット”など、この1年に私が経験したイベントについて
書いてきました。もちろんこの他にも、松代には素晴らしいイベン
トがたくさんあると思いますし、ここでは触れることができません
でしたが、松代の魅力の中心とも言える史跡松代城跡、長国寺を
はじめとする寺院建築、文武学校、武家屋敷、商家、城下町のおも
かげ、泉水路、古墳など、多くの歴史の宝物が現存しています。
さらに、歴史的な人物として、みなさん良くご存知の佐久間象山や
松井須磨子、そして、もしかすれば現代の私達が一番見習うべき人
物かもしれない恩田木工、あるいは松代藩に縁のあるいろいろな人
物がいらっしゃいますが、そんな人物の魅力を引き出し、徐々に現
代に蘇らせていく、そんな施策が松代にとって必要になってくるの
でしょう。
そういえばもう一つ、松代では「ミステリアス信州」という面白
いイベントがありました。これは、JR東日本・浅見光彦倶楽部等
が企画し、ミステリー作家で軽井沢町在住の内田康夫さん監修によ
るミステリーを基に、お客さんは探偵として、旅をしながら仕掛け
を推理していくというイベントです。今年で8回目ということです
が、固定ファンがたくさんいて、東京方面を中心に、毎回800人
以上の参加者があり、第1回から皆勤している人もいるぐらい面白
いイベントらしいのです。
過去信州のいろいろな場所、例えば鬼無里村、戸隠村、別所温泉、
飯山市等々を舞台にして、内田さんの監修の仕掛けを推理するイベ
ントとなっており、今年は「松代・小布施・渋温泉紀行」というこ
とで行われました。これは、新しい観光イベントの形かも知れませ
んし、松代を題材にしたイベント、演劇、音楽など、何でも良いと
思うのですが、このようなイベントが出来たらきっと素晴らしいPR
効果が出るように思います。できることなら、松代を舞台にした作
品を作っていただければうれしいなと思っています。
平成15年度で史跡松代城跡の修復事業が一段落しますし、旧神
田川跡地の駐車場建設も一応の完成をみる予定です。もちろん、真
田邸(新御殿)の修復事業はまだこれからですし、まち並み修景の
事業はまだまだ続きますが、過去松代に投資した金額は相当になって
いますので、そろそろ回収をしていきたい。すなわち善光寺と同じ
ぐらい多くのお客さんを松代に招き入れる、そんな時期になってい
るのではないでしょうか。
平成16年度を“松代YEAR”にしようということで、松代の
方々が動き出しました。10月29日、松代観光戦略推進会議準備
委員会が設立され、趣意書が承認されました。松代地区の住民が中
心となって、主体的に自らのまちの観光戦略を構築し、全国ブラン
ドの観光地として知名度の向上を図るというものであり、これから
どんな戦略が出てくるのか楽しみです。
アドバイザーとして、秋山智弘氏(横浜市在住)、上村道正氏(茅
ケ崎市在住)、石川利江氏(長野市在住)の三名が就任されました。
素晴らしい皆さんに就任していただいたと思っています。長野市と
しても体制強化のため、松代支所に職員を配置し、お手伝いをする
ことにしています。松代YEARを一過性のものに終わらせるのでは
なく、将来に向かってのきっかけとして、以後、市民みんなで長期的
視点に立って、いかに盛り上げていくか、が大切だと思っています。
さて、今年も残すところあと僅かになりました。何かと重苦しい
出来事が多い中、ようやく中心市街地の活性化策や世界に通用する
高度な技術としてナノテクノロジーが認められ、長野・上田地域が
「知的クラスター創生事業」の指定を受けるなど、将来が楽しみな
事業が見えてきました。また、来年(平成15年度)は善光寺御開
帳の年、次の16年度は松代の年です。市民の皆さん、長野の元気
のために頑張りましょう。
皆様とご家族がすばらしい新年をお迎えくださいますよう、お祈
り申し上げます。
来週(1月2日)号は、休刊とさせていただきます。新年号は1月
9日配信となりますのでよろしくお願いします。
2002年12月26日木曜日
松代YEARに向けて(その3)
2002年12月19日木曜日
松代YEARに向けて(その2)
今回は、11月10日(日)・11日(月)に松代を舞台に繰り
広げられた「真田サミット2002 inながの」について報告しま
す。今回で5回目を迎えるこのサミットは、真田氏に縁のある全国
の市町村が一堂に会し、連携を深めることを目的としているもので、
今年は長野市が当番市ということで、当然のことながら松代で行わ
れました。
1日目には、松代文化ホールで基調講演や参加首長によるシンポ
ジウムなどが開催されました。基調講演では信州大学人文学部の笹
本教授の話をお聴きしましたが、大変感銘を受けました。教授は、
山梨県の出身で、戦国時代の研究家として特に武田信玄について、
お詳しい方です。真田氏が武田信玄に仕え、戦国時代を生き抜いた
知恵と戦略をいろいろ話された後、「長野市民は松代のことを知っ
ていますか?愛していますか?誇りを持っていますか?」と問い掛
けられました。市民が誇りを持っていない所へ「観光客に来てくだ
さいと言ったってそれは無理でしょう」ということです。
また、松代は戦国の乱世をたぐいまれなる武勇と知略で生き抜い
た真田氏が、徳川幕府によって移封されてから、250年間居城と
した場所。一番長く居た場所だけに、いろいろな史跡が残っている、
所縁も深いということでしょうか。
サミットのメンバーは13市町村ですが、今回の出席は11都市
でした。笹本教授の司会で、パネルディスカッションを行いました
が、それぞれ真田氏との関係、そして自治体としての取り組み等を
お話しいただき、参考になりました。第1回サミットは真田氏発祥
の地、真田町で行われ、第2回は上田市、第3回は群馬県沼田市と
続き、昨年の第4回は宮城県白石市で行われ、来年は秋田県の岩城
町、その後は和歌山県の九度山町で開催することが決まりました。
それぞれ何故サミットのメンバーか、真田氏とどんな縁があるのか、
初めての私には全てを覚えられませんでした。来年、日程等の都合
で私が参加できるかどうかは未定ですが、ぜひ行ってみたいもので
す。
サミットのアトラクションで郷土芸能が演じられましたが、これ
は見事でした。私は笹本教授と隣合わせの席で拝見したのですが、
教授は「さすが松代だなぁ」としきりに感心しておられました。私
も通常の郷土芸能とは違う「大門踊」などは、十万石の風格を残し
て歴史を感じさせるものと思いましたし、笹本教授は「ぜひ県の無
形文化財の登録をすべきだ」とおっしゃっていました。子どもたち
の演ずる「勝どき太鼓」も他とはちょっと違うなぁ!と思わせる見
事さだったと思います。
1日目の行事が終って、松代ロイヤルホテルで交流会が開催され
ましたが、その時私達が宴会でよくやる“北信流”は松代が発祥の
地ということで、正式な作法によりやっていただきました。遠来の
首長さん方をお客様として、観世流の謡を肴に“お盃(おさかずき)”
を差し上げたのですが、首長さん方はかなりびっくりしておられた
ようです。
2日目、私は日程の都合がつかず、松代の視察にはお付き合いで
きませんでしたが、各首長さん方は、真田十万石城下町の史跡をき
っと楽しんでいただけたことと思います。
松代の隣の若穂地区にも、松代に劣らぬ史跡がたくさんあるそう
ですから、松代・若穂という河東地区は、長野市でも最も歴史や文
化の遺産に恵まれた地域といえるのではないでしょうか。
来週は、平成16年度に計画している「松代YEAR」を中心に
お知らせしたいと思います。
2002年12月12日木曜日
松代YEARに向けて(その1)
今年は何度か松代を訪れましたが、訪れる度に松代の奥深さを感
じています。限られたエリアの中に、古代の古墳群から真田十万石
の町並み、近代の大本営移転予定地であった地下壕まで、数々の歴
史が集積されており、他に類をみない「不思議なまち」と言われて
いますが、本当にその通りです。今回から数回に分けて、私の経験
した松代のことを書いてみたいと思います。
今年も「第47回信州松代 真田まつり」が10月12日・13日の
2日間にわたり行われました。絢爛豪華な衣装に身を固めた真田
武士や、きれいに着飾ったお姫様など、馬上豊かな松代藩真田十万
石行列は見事でした。特に、真田家14代当主の真田幸俊氏(慶応
大学講師)の殿様ぶり(初代真田信之公役)はご立派でしたし、長
野市の姉妹都市クリアウォーター市から、交換教師で来ていただい
ているステイシー・リトルさんの小松姫の女武者ぶりも大変魅力的
で、多くの見物客の喝采を受けていました。
カチューシャの唄の縁で知音都市交流(*)を続けている島根県
金城町(島村抱月の生誕地)の方々も参加してくださり、信政隊と
して行列に加わってくださいました。松代の方々もそれぞれ何々隊
と名乗って、総勢260名が行列をつくり、松代の町を約4時間か
けて行進をされたようで、大変な御苦労だったと思いますが、多く
の見物客を喜ばせてくれました。
当日、松代の方々がたくさん参加いただいていることは当然ですが、
篠ノ井商工会議所の渡辺会頭さんや上山田町商工会の飯島会長
さんをはじめ、市内外の商工・観光の関係者の皆様が応援に駆けつ
けてくださり、地域間の連帯が感じられる大行事でした。また、町の
有志の皆さんが運営する人力車が出ていました。この人力車は、
なかなか高級品のようで、お値段は軽自動車よりもちょっと高いと
いうことで、大変素晴らしいものでした。残念ながら、この日には乗
ることができませんでしたが、違うイベントで乗る機会がありました。
そこには車や自転車とは違う世界の風景がありました。是非一度
乗ってみてください。
なお、前夜祭も行われ、ストリートパフォーマンスも盛大に行わ
れたようで、役員の皆様や委員会の皆様の努力もさることながら、
ボランティアの皆様のパワーが確実についてきていることを感じさ
せるお祭りでした。
平成15年度は、松代城の太鼓門復元を記念し、行列の出発地が
史跡松代城跡に変わるそうです。一段と雰囲気が盛り上がるのでは
ないでしょうか。太鼓門から出陣していく武者行列の姿が今から目
に浮かびます。
来週は、真田氏にゆかりの深い市町村が一堂に会し、広域的な連
携や交流を深めながら個性と魅力あるまちづくりについて研究を行
っている「真田サミット2002 in ながの」について報告させていた
だきます。
(*)知音都市交流(ちいんとしこうりゅう)
カチューシャの唄に縁のある都市が集まって交流している事業です。
女優(歌手)・松井須磨子(長野市松代町)、作曲家・中山晋平(中野市)、
作詞家・相馬御風(新潟県糸魚川市)、演出家・島村抱月(島根県金城町)
の四つのまちが集まって交流しています。
2002年12月5日木曜日
中核市サミット2002in長崎
11月27、28日の両日、長崎市で中核市サミットが行われ参
加しました。中核市(*)は現在全国で30市あります。今回のサ
ミットには、28市から市長をはじめ代表者が出席し、中核市の抱
える問題や、より一層の権限移譲の必要性等について協議をいたし
ました。
サミット冒頭には、元内閣官房副長官で現・地方自治研究機構理
事長である石原信雄氏の記念講演が行われました。石原氏は、中核
市制度創設に向け積極的に活動された方であり、講演の論旨は、
1.中核市が求めている税財源の移譲を含む税財政制度の抜本的な
解決は、一挙には無理であろう。ただし、将来のあるべき姿、
方向性は示されなければならない。
2.政府が進めている合併推進策によって、期限の平成17年3月
になると、力の有る自治体(都市)と、力の無い自治体(町や
村)に二極分化し、団体の格差は広がるであろう。
3.政令指定都市と中核市の垣根は限りなく低くなり、都道府県と
市との業務配分が問題になる。市町村が基礎的自治体の役目を
果たすことになれば、都道府県の役割は軽くなり、府県制に変
えて道州制を想定する議論が始まることになる。過去、知事会
が反対して取り上げられることがなかったが、かなり幅広く議
論が出てくるであろう。
4.力の有る自治体と無い自治体を同等に扱うことは、国として問
題であろう。このことは、行政の立場で考えてはいけない、住
民の立場で考えるべき時にきている。小規模町村の扱いを含め、
21世紀の基礎的自治体の在り方を、遅くとも来年10月を目
途に、決めなくてはならない。
5.21世紀の地方自治をリードするのは、中核市である。
以上、中核市の会議における記念講演であるが故に、多少お世辞
の分もあるかも知れませんが、でも中核市の市長としては、かなり
納得できる内容でした。
続いて行われた分科会は、次の三つのテーマに分かれて各市長が
意見を述べました。分科会は、
第1分科会 「都市の環境政策」
第2分科会 「既成市街地整備」
第3分科会 「地方分権改革」
に分かれており、私は第2分科会に出席し、長野センタービル
(旧ダイエー長野店ビル)をはじめとした中心市街地の再生に向か
っての取り組みを話しました。どこの市も大型店の撤退等で、中心
市街地の空洞化で苦しんでいる実態が語られましたし、行政が倒産
ビルを買い取るために何十億円も投資したという話もありました。
古いビルとはいえ、長野市が長野センタービルを二億円で買い取っ
たのは安いのかなと思いました。
歩きたくなる街、居住人口の増加、公共交通機関の再生等は、い
ずれの都市でも重要テーマと考えられているようでした。また、中
核市はそれぞれ歴史と文化があるということも痛感しました。
さらに、私からは長野市は合併した都市の特徴として中心市街地
が三つある。一様には扱えない。それぞれの地域の特性や歴史を生
かし、特色ある街づくりをしたい。一極集中でなく、多軸構造の街
を目指すという話をしました。
以上の記念講演や分科会のまとめとして、次のような長崎宣言を
決定しました。
中核市サミット長崎宣言
国では、地方分権改革推進会議が設置され、地方の大きな変革と
なる地方分権改革が推し進められています。
中核市は、地域住民のニーズに応えて、自主的、自立的かつ効率
的に行政運営を行うために、都市経営能力を高め、自己決定・自己
責任の原則に基づいた自立的な行政システムの構築を目指す必要が
あります。
そのためにも中核市は、行財政改革、広域行政、少子・高齢化へ
の取り組みなど諸施策を展開することで21世紀の新しい都市を創
造しなければなりません。
私たちは、地方自治体の先駆者として、中核市の役割と責務を認
識し、市民と協働のまちづくりを全国にアピールするため、次のと
おり宣言します。
1 中核市は、地方自治の充実のため、権限移譲、自主財源の確保
に取り組み、自主的・自立的な行政運営を推進します。
2 中核市は、それぞれの歴史、文化に根ざしたまちの特性を活か
しながら、都市基盤の整備に努め、都市機能の再構築による魅
力的なまちづくりを推進します。
3 中核市は、市民、事業者と一体となって、日常生活や事業活動
による環境への負荷を軽減し、大気・水・廃棄物などの物質の
健全な循環を保ちながら、環境の保全と汚染の未然防止に努め、
安全で環境にやさしいまちづくりを推進します。
サミットの会議などの合間を縫って、長崎市内のまちなみを拝見
させていただきました。一番印象に残ったのは、路面電車です。民
間企業の経営とのことですが、環境にはやさしいし、安い料金で、
ウイークデイにもかかわらず、昼間から多くの皆さんや観光客が利
用していました。横断歩道橋の上から停留所に降りることが出来る
とか、道路幅が広いこと、市域が狭くて人口が多い(市域は長野市
の半分で、人口は42万人)から採算が合うのでしょうが大変便利
です。私もホテルからグラバー園まで行くのに利用させてもらいま
したが、乗り継ぎも含めて100円でした。日本中が路面電車を廃
止した時期に頑張った先見性を羨ましく思いました。ただ、バリア
フリーとはいえないのは、悩みでしょう。
もう一つ印象的だったことは、長崎県では市町村合併が大変積極
的に進められていることでした。現在、長崎県には79市町村があ
りますが、この内、95%に当たる75市町村が合併のための法定
・任意合併協議会をすでに設置しており、平成17年3月までに合
併する方向で検討が進められています。すなわち、長崎県では離島
を含めて、ほとんどが財政力や行政能力の高い市になってしまうか
も知れないということです。
市町村合併への取り組みは「西高東低」といわれています。九州
をはじめとした西側では積極的に合併が検討されており、逆に東北
・北海道ではなかなか進まないということだそうです。
中核市サミットの中でも話が出ましたが、地方自治体というもの
の考え方が、地域によって大きく違っていることについて、改めて
驚かされました。
以上、中核市サミットに参加しての感想をお話させていただきま
した。
*中核市
政令指定都市以外の都市で、人口や面積が比較的大きな都市につい
て、その事務権限を強化し、出来る限り住民の身近なところで行政
を行うようにした都市制度です。
要件としては、人口30万人以上であり、人口50万人未満の市に
あっては面積100平方キロメートル以上とされています。
長野市は、平成11年4月に中核市へ移行し、2,778の事務が
県から移譲されました。