11月27、28日の両日、長崎市で中核市サミットが行われ参
加しました。中核市(*)は現在全国で30市あります。今回のサ
ミットには、28市から市長をはじめ代表者が出席し、中核市の抱
える問題や、より一層の権限移譲の必要性等について協議をいたし
ました。
サミット冒頭には、元内閣官房副長官で現・地方自治研究機構理
事長である石原信雄氏の記念講演が行われました。石原氏は、中核
市制度創設に向け積極的に活動された方であり、講演の論旨は、
1.中核市が求めている税財源の移譲を含む税財政制度の抜本的な
解決は、一挙には無理であろう。ただし、将来のあるべき姿、
方向性は示されなければならない。
2.政府が進めている合併推進策によって、期限の平成17年3月
になると、力の有る自治体(都市)と、力の無い自治体(町や
村)に二極分化し、団体の格差は広がるであろう。
3.政令指定都市と中核市の垣根は限りなく低くなり、都道府県と
市との業務配分が問題になる。市町村が基礎的自治体の役目を
果たすことになれば、都道府県の役割は軽くなり、府県制に変
えて道州制を想定する議論が始まることになる。過去、知事会
が反対して取り上げられることがなかったが、かなり幅広く議
論が出てくるであろう。
4.力の有る自治体と無い自治体を同等に扱うことは、国として問
題であろう。このことは、行政の立場で考えてはいけない、住
民の立場で考えるべき時にきている。小規模町村の扱いを含め、
21世紀の基礎的自治体の在り方を、遅くとも来年10月を目
途に、決めなくてはならない。
5.21世紀の地方自治をリードするのは、中核市である。
以上、中核市の会議における記念講演であるが故に、多少お世辞
の分もあるかも知れませんが、でも中核市の市長としては、かなり
納得できる内容でした。
続いて行われた分科会は、次の三つのテーマに分かれて各市長が
意見を述べました。分科会は、
第1分科会 「都市の環境政策」
第2分科会 「既成市街地整備」
第3分科会 「地方分権改革」
に分かれており、私は第2分科会に出席し、長野センタービル
(旧ダイエー長野店ビル)をはじめとした中心市街地の再生に向か
っての取り組みを話しました。どこの市も大型店の撤退等で、中心
市街地の空洞化で苦しんでいる実態が語られましたし、行政が倒産
ビルを買い取るために何十億円も投資したという話もありました。
古いビルとはいえ、長野市が長野センタービルを二億円で買い取っ
たのは安いのかなと思いました。
歩きたくなる街、居住人口の増加、公共交通機関の再生等は、い
ずれの都市でも重要テーマと考えられているようでした。また、中
核市はそれぞれ歴史と文化があるということも痛感しました。
さらに、私からは長野市は合併した都市の特徴として中心市街地
が三つある。一様には扱えない。それぞれの地域の特性や歴史を生
かし、特色ある街づくりをしたい。一極集中でなく、多軸構造の街
を目指すという話をしました。
以上の記念講演や分科会のまとめとして、次のような長崎宣言を
決定しました。
中核市サミット長崎宣言
国では、地方分権改革推進会議が設置され、地方の大きな変革と
なる地方分権改革が推し進められています。
中核市は、地域住民のニーズに応えて、自主的、自立的かつ効率
的に行政運営を行うために、都市経営能力を高め、自己決定・自己
責任の原則に基づいた自立的な行政システムの構築を目指す必要が
あります。
そのためにも中核市は、行財政改革、広域行政、少子・高齢化へ
の取り組みなど諸施策を展開することで21世紀の新しい都市を創
造しなければなりません。
私たちは、地方自治体の先駆者として、中核市の役割と責務を認
識し、市民と協働のまちづくりを全国にアピールするため、次のと
おり宣言します。
1 中核市は、地方自治の充実のため、権限移譲、自主財源の確保
に取り組み、自主的・自立的な行政運営を推進します。
2 中核市は、それぞれの歴史、文化に根ざしたまちの特性を活か
しながら、都市基盤の整備に努め、都市機能の再構築による魅
力的なまちづくりを推進します。
3 中核市は、市民、事業者と一体となって、日常生活や事業活動
による環境への負荷を軽減し、大気・水・廃棄物などの物質の
健全な循環を保ちながら、環境の保全と汚染の未然防止に努め、
安全で環境にやさしいまちづくりを推進します。
サミットの会議などの合間を縫って、長崎市内のまちなみを拝見
させていただきました。一番印象に残ったのは、路面電車です。民
間企業の経営とのことですが、環境にはやさしいし、安い料金で、
ウイークデイにもかかわらず、昼間から多くの皆さんや観光客が利
用していました。横断歩道橋の上から停留所に降りることが出来る
とか、道路幅が広いこと、市域が狭くて人口が多い(市域は長野市
の半分で、人口は42万人)から採算が合うのでしょうが大変便利
です。私もホテルからグラバー園まで行くのに利用させてもらいま
したが、乗り継ぎも含めて100円でした。日本中が路面電車を廃
止した時期に頑張った先見性を羨ましく思いました。ただ、バリア
フリーとはいえないのは、悩みでしょう。
もう一つ印象的だったことは、長崎県では市町村合併が大変積極
的に進められていることでした。現在、長崎県には79市町村があ
りますが、この内、95%に当たる75市町村が合併のための法定
・任意合併協議会をすでに設置しており、平成17年3月までに合
併する方向で検討が進められています。すなわち、長崎県では離島
を含めて、ほとんどが財政力や行政能力の高い市になってしまうか
も知れないということです。
市町村合併への取り組みは「西高東低」といわれています。九州
をはじめとした西側では積極的に合併が検討されており、逆に東北
・北海道ではなかなか進まないということだそうです。
中核市サミットの中でも話が出ましたが、地方自治体というもの
の考え方が、地域によって大きく違っていることについて、改めて
驚かされました。
以上、中核市サミットに参加しての感想をお話させていただきま
した。
*中核市
政令指定都市以外の都市で、人口や面積が比較的大きな都市につい
て、その事務権限を強化し、出来る限り住民の身近なところで行政
を行うようにした都市制度です。
要件としては、人口30万人以上であり、人口50万人未満の市に
あっては面積100平方キロメートル以上とされています。
長野市は、平成11年4月に中核市へ移行し、2,778の事務が
県から移譲されました。