先週は、広域連合の目的や活動内容についてご説明させていただ
きました。
私は、市長就任直後に広域連合の存在を知って「連邦都市」とい
うことを唱えました。合併というのは、個々の市町村の歴史や文化、
あるいは住んでいる人の感情を否定する、即ち合併した新しいまち
の名前が一番問題になりがちであることを考えますと、なかなか難
しい問題であると思うのです。
広域連合を強化し(例えば広域連合が、市町村に代わって徴税権
をもち、そして法的には可能だそうですが連合長や連合議会議員を
住民の直接選挙で選ぶ)、基礎的なことを広域連合で行うことがで
きれば、市町村合併をしなくても構成員の地方自治体の権限は自然
に小さくなるとともに、財政の合理化にもつながり、実質的に合併
と同様の効果を上げることが可能となり、国家全体としても良いの
ではないかと考えたのです。私はそんな都市像をイメージして連邦
都市を唱えたつもりです。
このことは、昨年2月、姉妹都市のクリアウォーター市を訪問し
たときの経験で実感しました。即ち地方自治体のあり方は日本のよ
うに一律ではなく、それぞれの自治体の考え方で行われていて、権
限の縮小と言った議論ではなく、その自治体でできることをやる、
あとは上位行政機関などにお任せということなのです。ちなみにク
リアウォーター市には教育委員会はありませんし、人口11万人の
市ですが、コミッショナー(日本の市会議員にあたる職務のようで
すが)は市長を入れて5人でした。余談ですが選挙の時の投票率は
30%ぐらいという話もお聞きし、びっくりしました。権限がどの
ように配分されているのか分かりませんが、長野市に比べるとはる
かに合理的なシステムだなあと感じました。
しかし昨年の5月の段階で、残念ながら総務省の考えはまず合併
ありきでして、広域連合を強化しようという発想はありませんでし
た。ただこのところ、総務省も少し変わってきたようで、合併市町
村に何らかの新自治組織を残す方向で、検討に入ったと聞いていま
す。
視点をどこに置くかの違いはありますが、基本的には長野市が検
討を始めた「都市内分権あるいは近隣政府が必要」という、私達の
主張と同質の話と考えています。合併により基礎的自治体である市
町村を大きくして、従来の市町村を区とするか、あるいは広域連合
を強化して市町村を実質的な区と同じ存在にするか・・・。よく考
えてみれば、市民の皆さんにとって違いは無いと思うのです。
さて、広域連合は構成市町村の合意さえ得られれば、かなり総合
的な施策ができることはご理解いただけたと思うのですが、似たよ
うな機構で「一部事務組合」という特別地方公共団体もあります。
複数の地方自治体が特定の目的を決めて仕事を共同で行うもので、
具体的に長野市は「長野地区農業共済事務組合(14市町村で構
成)」、「犀峡衛生施設組合(し尿の共同処理を行うための信州新
町や大岡村などとの組合」、「千曲衛生施設組合(更埴市や上山田
町などとの組合)」、「須高行政事務組合(須坂市や小布施町など
との組合)」に加盟しています。それぞれに管理者(首長)と議会
があって運営されています。
また、事務を共同で行うという発想とは少し違いますが、「受託
事業」という形式もあります。具体的には、長野市消防局が周辺10
町村の消防事務を引き受けているもので、例えば信濃町には長野市
消防局信濃町分署が置かれていまして、長野市消防局が全体を管轄
しています。もちろん「受託」ですから、必要な経費はそれぞれの
町村から長野市がいただいております。常時消防という考えが出て
きた歴史はそれほど古くはなく、特に小さな町村ではもともと消防
職員がいなくて、消防団が全てを担当していた時代が長かったのだ
そうです。なぜなら、常時消防を維持するには、非常にお金がかか
るからです。
以上、現在、合併がホットな話題として論議されていますが、広
域連合、一部事務組合、受託、といった実質的に市町村の権限を縮
小して、広域行政を行うシステムはいろいろ存在しているというこ
とです。少し考え方を変え、自由にやらせてもらえれば、地域のア
イデンティティーを守りながら、全体の行政コストを下げる方法論
はあると思うのです。そのことをぜひ知っていただき、その利点・
欠点をご理解いただきたい、それと私の唱えた、若干曖昧ではあり
ますが「連邦都市」(法的に現段階では無理のようです)との関連
もぜひ知っていただきたいと考えて、2回にわたり広域連合につい
てご説明させていただきました。
長野広域連合のホームページは
http://www.area18-nagano.or.jp/index.html
です。