2003年6月19日木曜日

地方交付税について(1)


(地方交付税の仕組み)
 皆さんも「地方交付税」(以下、「交付税」といいます。)とい
う言葉は耳にしたことがあるかと思いますが、市町村合併を進める
上で、この交付税という制度が大変重要になっています。そこで今
回は、この交付税の制度についてご説明したいと思います。

 地方財政(市町村)の根本は、国が定める標準的な市民サービス
を行うために、市民の皆さんからいただく地方独自の税金(個人・
法人の市民税、固定資産税等)だけでは足りない分を、国が交付税
で補ってくれる(最近は国もお金がないために、その分を市町村の
責任で借金しなさい、返済期に交付税で面倒をみるから、と言って
います)システムです。もちろん大企業があって、税金がたくさん
入るため、国から交付税が来ない自治体もあります。このような地
方自治体を、交付税不交付団体と呼びますが、長野県内では唯一
軽井沢町が該当しており、少し前には坂城町も不交付団体でした
(日本中では、都道府県を含めて現在約3300の自治体のうち、
105自治体が不交付団体だそうです。トヨタ自動車の本拠地の
豊田市などが有名です)。

 では、交付税はどういう基準で配られているかということを説明
しましょう。

 市町村を例にとって言えば、国は人口10万人の都市をモデル
(基準)として、それぞれの都市ごとの人口や面積等により必要な
補正を加え、その都市がどのくらいの行政経費がかかるかというこ
とを計算して(仮にA円とします)、そのA円まで保障します。
ですから、自治体の独自財源(仮にB円とします。主たるものは
地方税です)B円がA円より少ない場合(ほとんどの自治体はこの
場合にあたります)は、その不足分(A-B)を交付税として国が
地方自治体に配分するシステムです。

 市長に就任して、このシステムを知ったとき、ホッとしたことは
事実です。なぜなら借金がある(オリンピックをやるために施設等
で大きな借金があります)長野市でも、破産することはないという
ことです。国が保障してくれているのですから・・・・・。でもよ
く考えてみると、逆に長野市が頑張って収入を増やしたとしても、
その分は交付税が減額になる訳で、長野市としては努力する甲斐
がないのではないか、と思いました。地方自治体同士が、お互い切
磋琢磨して、住民の幸せを願って競争したり、特色を打ち出したり
・・・・そういう精神が希薄になる理由だと思いました。

 さて、交付税の大まかな仕組みは、以上述べたとおりですが、こ
の交付税は、地方自治体にとって一般財源として自由に使えるお金
です。でも細かい計算は財政の担当者でないと分からないというの
が正直なところです。

 自主財源の少ない自治体であっても、公共施設を整備して維持管
理したり、一定の行政サービスを提供できるのは、この制度による
ところが大きい訳ですが、ただ、人口一人当たりの交付税が、自治
体によって何十倍、何百倍も違うということを聞くと、いくらなんで
も少し不公平ではないかなあ、と感じる訳です。

 実は、国・県からもらうお金はこの交付税だけでなく、補助金・
負担金というのもあります。複雑で分かりにくいのですが、こちら
は使い方について細かく国が定めており、他の目的に使うことは認
められていません。見方によっては、地方自治体に対して国の省庁
が指図する力の源泉と言っても間違いではないでしょう。

 来週は、この交付税というものが、「三位一体の改革」や「市町
村合併」という大きな流れの中で、どのようにかかわってくるのかと
いうことについてご説明したいと思います。