9月10日(水)、長野市から上越市へ向かって北進していく新
幹線の工事現場を、日本鉄道建設公団(鉄建公団)の方のご案内で
見せていただきました。中野市や飯山市、そして県境のトンネル工
事が進捗している現状をつぶさに見て回りました。
ただ、見せていただいた翌日の11日未明に、トンネル内の工事
現場で崩落事故が発生し、怪我人が出たとのことであり、十数時間
前にその現場にいた者としてびっくりでした。怪我をされた方の一
日も早い回復を心からお祈りいたします。
以下、私が見たり、聞いたり、感じたことを書かせていただきま
す。
視察では、まず長沼地区で新幹線車両基地全体を見渡し、説明を
受けました。最高時速300km前後の速度で走っている新幹線の
車両の整備関係は大変なのだろうなという想像はつきますが、車で
いえば車検と同じような大掛かりな整備は仙台でやり、ここでは日
常の整備をするのだそうです。レールと車輪が直接触れているわけ
ですから、摩耗は相当なものということは容易に推測できます。
レールの修理は大変なので、車輪に鉄を付け足して真円にするの
だそうですが、いろいろな工夫があるものだと感心させられました。
北陸新幹線が延びた場合、次は、金沢市の先に車両基地を予定して
いるとのことでした。
長野市として困っているのは、この車両基地をつくるに当たり、
鉄建公団、長野県、長野市、地元新幹線対策委員会が交わした建設
協議の確認書(協定書)の存在です。
昨年、浅川ダムの中止が決まった時点で私は県知事に対して、こ
の協定の扱いをどうするのか、治水の技術的問題ではないので早急
に解決して欲しいと申し入れしているのですが、この一年間何の動
きもありません。長野市も協定参加者の一員ですから責任が無いと
はいえませんが、協定に反した治水対策を決定したのは県ですから、
県が対応策を提示していただかなくてはどうにもなりません。行政
の信頼を早く取り戻して欲しいものです。
次の現場として、中野市の壁田、西笠原地区、岩井東、等の高架
橋工事現場を視察しました。第五千曲川橋梁工事現場では、ピア
(橋脚)のすぐそばまで行って、その大きさにびっくり。1本約1
億円かかるそうでして、なるほどと思わせるコンクリートの塊でし
た。ちなみに、トンネル以外の部分は“あかり”と言うのだそうで
す。
車中では、飯山市内の駅の位置や都市計画の話を聞きながら、こ
の時期、完成までには随分時間がかかるのではないかと想像しつつ、
市内を抜けて今回事故のあった飯山トンネルの現場へ行き、地下に
もぐってトンネル工事を見せていただきました。
飯山トンネルは、上倉工区と富倉工区の二つの現場で地下に下り
てみましたが、どちらも難工事のようです。北陸新幹線工事では、
長野オリンピック後、難工事が予想された飯山トンネルに最初に取
り掛かったのだそうですが、案の上大変な苦労をされているようで、
特に富倉工区の山の地質が、掘削後に膨れてトンネルの穴を小さく
してしまう性質があるそうです。
トンネルを掘る場合、柔らかい地質の方がはるかに難工事とお聞
きしました。このため、富倉工区の場合、最初に少し大きいトンネ
ルをつくり、そこにH鋼を丸く曲げた土留めで支え、コンクリート
を吹き付ける。硬い地質であればこれで終わるのですが、ここでは、
さらにその内側にもう一度H鋼とコンクリートの吹き付けを行い、
二重に壁を作るのだそうで大変時間のかかる工事だそうです。
トンネルの一番突端(今回事故が起きた場所)を、切羽(キリハ)
というのだそうですが、そこで働く人はみんなベテランで、8人ぐ
らいの方が働いておられました(意外に少ないと感じたのですが、
それだけ機械化されているということでしょう)。全員削岩機、ブ
ルドーザーなど、何でもこなせるようで、日本中の現場を経験して
いるベテランだそうです。そういえば、案内してくださった剣持局
長さんも、あの青函トンネルの導入坑を掘り上げたプロで、これら
日本の技術の粋を集めて工事が進んでいる、と実感しました。
ただ今回の事故は、その難しい富倉工区ではなくて、比較的順調
に進んでいる上倉工区で起こったようです。新聞紙上の図をみると、
トンネルの途中で崩落が起きたわけではなく、土を掘っている先端、
つまり切羽の部分に山の圧力が加わって(柔らかい土だからでしょ
う)土がトンネル内に崩れたようです。
トンネル構内は整理整頓され、清掃もきちんとしてありましたの
で、非常によく管理された中で細心の注意を払って仕事が進められ
ている印象でした。事故の起こる可能性は素人の私には全く感じら
れませんでしたし、そうでなければ、あそこまで素人の視察は許可
されなかったでしょう。
以上、素人の見聞録ですが、新幹線が北陸につながるまでには、
今度の事故がなくても、まだまだ時間はかかるようです。長野・
富山間は認可(平成13年4月)の日から概ね12年強後に完成
の予定となっているようですが、完成が待たれます。