2003年10月16日木曜日

教師の適格性について(その2)


 公務員は、リストラがないから羨ましいとか、気楽だねという方
がいらっしゃいます。このことについて、公務員の処分等を定めた
地方公務員法や国家公務員法などでは、民間のリストラ等に当たる
「分限処分」というものがあります。

 この分限処分とは、(1)勤務実績が良くない場合(2)心身の
故障のため職務の遂行に支障がある場合や長期の休養を要する場合
(3)職務に必要な適格性を欠く場合(4)職制や定数の改廃、予
算の減少などで職場がなくなったり、職員数が過剰になった場合な
ど、公務能率を維持するために問題が生じた際、任命権者の権限で
降任、免職、休職、降給させることができるというものです。

 分限処分に似た処分としては、公務員の不祥事などの際によく目
にする「懲戒処分」があります。その中でも最も処分の重い懲戒免
職は、職務上の義務に違反したり、全体の奉仕者としてふさわしく
ない非行があった場合に、公務秩序を維持するとともに、個人とし
ての責任を問うために行われるもので、この場合、退職手当が支給
されません。

 しかし実際には、教師を含めた公務員に分限免職の処分が行われ
るケースは非常に珍しいようです。職務上の義務違反に対する制裁
として行われる懲戒免職に比べて、免職させる基準の設定が難しい
ためだと言われています。したがって、職員としての身分を持った
まま、長期間にわたって断続的に休職を繰り返している例も見られ
るとのことです。

 確かに、『問題先生』というのは、昔からみんなが困っていたこ
とです。私の経験談になって恐縮ですが、長野市・県のPTA会長
や長野市教育委員に就任していた当時(昭和50年代の話です)、
どうしようもない理不尽な事柄に何度も出会いました。「学力不
足」というような“明確”な理由ではなく、教職員組合も認めてい
る教壇に登れない先生とか・・・・。まあ具体的に申し上げること
は避けますが、問題のある先生がいたことは事実です。

 また、保護者の方から私に担任の先生の非を訴えられ、何とかし
て欲しいという電話は、かなりの数があったように記憶しています。
電話口できちんと名前を名乗られた方のお話については、学校側に
お伝えし善処をお願いしましたが・・・・・。

 時には、市の教育委員会に訴えたこともあります。ただ、長野市
の教育委員会には人事権がない(義務教育の先生は県職員です)の
で、市教委から県教委に対し、免職や休職にすべきと上申しても、
県教委の見解は、分限処分に関する具体的な基準がないため、裁判
になった場合勝てないという理由で、重い処分はできないという返
事がありました。

 理由はともかく、「駄目なモノは駄目」というシステムが機能し
ていないことには参りました。法的には分限免職という制度がある
のですが、現実にはこの制度の適用は難しいのでしょう。先生とい
うのは、大切な子供達を預けているのですから、人間的にも学問的
にも、素晴らしい人であって欲しいと願うのは、保護者の皆さんに
とって当たり前です(そのために、先生の給料は一般の行政職より
も高く設定されているのですから)。

 私は、ほとんど全ての先生は素晴らしい人格者であることを知っ
ています。ただ、残念なことにごく一部にどうしようもない先生が
いる、そのことが問題であり、その人のために教師全体が駄目だと
言われている現状を何とかしたい。指導力不足教員を認定する制度
あるいは長野県教育委員会の取り組みは、それがようやく動き始め
たということでしょう。

 先生も人間ですし、人数も多い。難しい教員採用試験に合格して
も、何年か経つうちに病気になる人もいますし、努力不足の人もい
ます(学力不足はその一つでしょう)。ストレスから教職に耐えら
れない人が出る可能性もあります。その時、退職していただくシス
テムがきちんと機能していない状況は、まことに嘆かわしいと言わ
ざるを得ないというのが私の長い間の思いでした。

 「指導力不足認定制度」や、長野県教育委員会の取り組みは、よ
うやく本来の機能が発揮されつつある兆候として喜びたいと思いま
す。